第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 中枢神経障害の回復機序に関するアンマスキング(unmasking)の説明として適切なのはどれか。

1. 神経損傷で抑制シナプスが活動しなくなったために機能が発現する。
2. 脱神経のために受容体抗体ができ興奮性を高める。
3. 神経線維が脱神経領域に伸びてシナプス形成する。
4. 損傷部位より下位の組織が再編成されて機能する。
5. 軸索切断後、近位部から神経線維が再生する。

解答:1

解説

 損傷後の中枢神経、シナプスの形成・再生が生じ回復する。①損傷された軸索の新しい発芽、②隣の軸索からの側枝発芽、そして③アンマスキング(サイレントシナプスの顕在化ともいう)がある。アンマスキングとは、通常は機能していなかったシナプスが、病変などにより既存の影響から解放されたときに顕在化することである。よって、選択肢1.神経損傷で抑制シナプスが活動しなくなったために機能が発現する。が正しい。

 

2.✖ 「中枢神経障害」の回復機序ではなく、末梢神経障害の話である。脱神経(筋が神経の支配を受けなくなった状態)を受けると興奮を伝えられない。
3.✖ 神経線維が脱神経領域に伸びてシナプス形成することは、中枢神経障害の回復機序であるが、アンマスキングの説明ではない。上記解説の②隣の軸索からの側枝発芽の説明である。
4.✖ アンマスキングは、損傷部位より「下位の組織」ではなく通常機能していなかったシナプスが機能することである。再編成されることもない。
5.✖ 軸索切断後、近位部から神経線維が再生することは、中枢神経障害の回復機序であるが、アンマスキングの説明ではない。上記解説の①損傷された軸索の新しい発芽の説明である。

 

 

 

 

 

22 成人に対する一次救命措置で正しいのはどれか。

1. 呼吸数を測定する。
2. 人工呼吸は10回以上連続して行う。
3. 胸骨圧迫は 1分間に10 回の頻度で行う。
4. 人工呼吸は胸が上がる程度の空気を吹き込む。
5. 胸骨圧迫は胸が 1cm 程度沈む強さで圧迫する。

解答:

解説

一次救命処置とは?

 一次救命処置とは、呼吸が止まり、心臓も動いていないと見られる人の救命へのチャンスを維持するため、特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置であり、胸骨圧迫と人工呼吸からなる心肺蘇生法(CPR)、そしてAEDの使用を主な内容とする。

1.✖ 呼吸確認は行うが、呼吸数の測定は行わない。目視だけで迅速に行う。
2.✖ 人工呼吸は、10回以上連続して行うことはしない。人工呼吸ができる場合は、30:2の割合で胸骨圧迫に人工呼吸を加える。つまり、30回連続で胸骨圧迫を繰り返した後、人工呼吸を「10回以上連続で行う」のではなく2回繰り返し、すぐに胸骨圧迫を再開する。ちなみに、約1秒かけて息を吹き込む。(人工呼吸ができない、ためらわれる場合は胸骨圧迫のみ行う。)
3.✖ 胸骨圧迫は、「1分間に10 回の頻度(10回/分)」ではなく100〜120回/分の速さで圧迫を繰り返す。
4.〇 正しい。 人工呼吸は胸が上がる程度の空気を吹き込む。
5.✖ 胸骨圧迫は胸が、「1cm程度」ではなく5〜6cm程度沈むように圧迫を繰り返す。ちなみに、小児の場合は胸の厚さの約1/3の強さで行う。

 

 

 

 

 

 

23 対象者を現在の生活習慣から喫煙群と非喫煙群とに分け、喫煙に起因する将来の脳血管障害の発生を明らかにする疫学研究法はどれか。

1. 横断研究
2. 記述的研究
3. コホート研究
4. 症例対照研究
5. 無作為化比較試験

解答:3

解説

1.✖ 横断研究とは、一時点での疾病の頻度と分布をありのままに記述し、疾病の発生要因の仮説を立てる方法である。曝露と疾病の関連が観察されたとしても、因果関係までは分からない。
2.✖ 記述的研究とは、横断研究と時系列研究を称したものである。集団における疾病の頻度と分布を人・時間・場所の面から客観的に記述し、疾病の発生要因について仮説を立てることであり、疫学研究の第一段階である。
3.〇 正しい。コホート研究とは、現時点(または過去のある時点)で、研究対象とする病気にかかっていない人を大勢集め、将来にわたって長期間観察し追跡を続けることで、ある要因の有無が、病気の発生または予防に関係しているかを調査する方法である。
4.✖ 症例対照研究とは、症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法。曝露と疾患発症の関連を明らかにする。
5.✖ 無作為化比較試験とは、対象者を無作為に介入群(検診など、決められた方法での予防・治療を実施)と対照群(従来通りまたは何もしない)とに割り付け、その後の健康現象(罹患率・死亡率)を両群間で比較するもの。

 

 

 

 

 

24 嫌気的代謝の過程で生成される物質はどれか。

1. クエン酸
2. コハク酸
3. フマル酸
4. ピルビン酸
5. αケトグルタル酸

解答:

解説

嫌気的代謝(解糖系)とは?

解糖系とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。このグルコースから乳酸への変換経路は、酸素の関与なしに起こりうるので、嫌気的代謝(解糖)と呼ばれる。

【クエン酸回路とは?】
クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)とは、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。グルコース→ピルビン酸酸→アセチルCoA→【クエン酸回路】(オキサロ酢酸)+クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→サクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸となる。

1.2.3.5.✖ クエン酸/コハク酸/フマル酸/αケトグルタル酸は、好気的解糖(クエン酸回路)で生じる。
4.〇 正しい。ピルビン酸は、嫌気的代謝の過程で生成される。ピルビン酸は、好気性条件下ではアセチルCoAを生成しクエン酸回路へつながるが、嫌気性条件下ではピルビン酸から乳酸が生成される。

 

 

 

 

 

25 フレイルの説明で正しいのはどれか。

1. サルコペニアと関連がある。
2. 体重は増加している者が多い。
3. 虚弱高齢者とは区別される病態を有する。
4. 地域在住高齢者での該当者は2%程度である。
5. 精神的な活力の低下は判断の要素に含まれない。

解答:1

解説

フレイルとは

フレイルとは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態のことをいう。多くは、「健康状態」→「フレイル」→「要介護状態」と経過する。
定義:加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態。

1.〇 正しい。サルコペニアと関連がある。サルコペニアとは、加齢や疾患により、筋肉量が減少することで、握力や下肢筋・体幹筋など全身の「筋力低下が起こること」である。フレイルの原因として関与も注目されている。
2.✖ フレイルの診断基準として、体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少が含まれる。
3.✖ 虚弱高齢者と同義語である。
4.✖ 2013年の65歳以上の高齢者を対象とした調査によると、フレイルの状態の高齢者は約11.5%であった。65~69歳では5.6%であるのに対し、80歳以上では34.9%と、加齢に伴ってフレイルの割合が上昇している。
5.✖ 気力の低下などの精神的な活力の低下も判断の要素に含む

フレイルの基準
  1. 体重減少(6か月間で2~3㎏以上)
  2. 易疲労感
  3. 歩行速度の低下
  4. 握力の低下
  5. 身体活動量の低下

3項目以上該当で「フレイル」

1~2項目該当で「プレフレイル」

 

2 COMMENTS

「クエン酸回路とは」の所で「ビルビン酸」とありますが、「ピルビン酸」の間違いでしょうか

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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