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11 35歳の女性。橈骨遠位端骨折後に右上肢にCRPS(複合性局所疼痛症候群)を生じた。この患者にみられる所見に合致しないのはどれか。
1. 浮腫
2. 痛覚鈍麻
3. 発汗異常
4. アロディニア
5. 皮膚温の変化
解答:2
解説
・35歳の女性。
・橈骨遠位端骨折後に右上肢にCRPS(複合性局所疼痛症候群)。
→CRPS(複合性局所疼痛症候群)に特徴的とされる症状は様々である。具体的な症状として、灼熱痛、感覚過敏・感覚低下、皮膚の色の変化(発赤、チアノーゼなど)、発汗異常(過剰、過少)、皮膚温度の異常(温度の上昇、低下)、皮膚の浮腫み・萎縮・色素沈着、骨の萎縮、筋肉の萎縮など、相反する症状が含まれる。また、しびれ感、不快感として表現されることもある。慢性化すると関節拘縮をきたす。
1.3~5.〇 浮腫/発汗異常/アロディニア/皮膚温の変化は、CRPS(複合性局所疼痛症候群)に特徴的な症状である。ちなみに、選択肢4.アロディニア(英: allodynia:異痛症)とは、通常では疼痛をもたらさない微小刺激が、すべて疼痛としてとても痛く認識される感覚異常のことである。
2.× 痛覚「鈍麻」ではなく痛覚過敏が主症状である。
複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、軟部組織もしくは骨損傷後(Ⅰ型:反射性交感神経性ジストロフィー)または神経損傷後(Ⅱ型:カウザルギー)に発生して,当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する、慢性の神経障害性疼痛である。その他の症状として、自律神経性の変化(例:発汗、血管運動異常)、運動機能の変化(例:筋力低下、ジストニア)、萎縮性の変化(例:皮膚または骨萎縮、脱毛、関節拘縮)などがみられる。
12 嚥下障害がある患者の胸部エックス線写真を別に示す。予想される理学所見はどれか。
1.胸痛
2.乾性咳嗽
3.頸静脈怒張
4.右胸部打診で鼓音
5.右胸部聴診で水疱音
解答:5
解説
エックス線写真所見:右下肺野(肺野の異常陰影と右第2弓はシルエットサイン陽性であり、右下葉に病巣)に湿潤影が認められる。ちなみに、右下葉は誤嚥性肺炎の好発部位である。誤嚥性肺炎のときにみられる症候として、発熱、咳、喀痰、湿性ラ音聴取などがある。
1.× 胸痛は、誤嚥性肺炎ではみられにくい。胸膜炎や気胸、大葉性肺炎で認められる。胸膜炎(胸水がある)の場合、CP angleが鈍化しているなどエックス線写真でも特徴がみられる。
2.× 誤嚥性肺炎では、「乾性咳嗽」ではなく湿性咳嗽がみられる。ちなみに、乾性咳嗽は、気胸や咳喘息、間質性肺炎などでみられる。
3.× 頸静脈怒張は、誤嚥性肺炎ではみられにくい。緊張性気胸や心タンポナーデ、右心不全など、静脈灌流障害のあるときに認められる。ちなみに、心不全の症状の症状として、①左心不全:呼吸困難(起座呼吸)、尿量減少など、②右心不全:頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大などがあげられる。
4.× 右胸部打診で鼓音は、気胸やCOPDなど、含気量が多い場合に聴かれる。肺炎ではむしろ濁音を呈する。
5.〇 正しい。誤嚥性肺炎では、右胸部聴診で水疱音がみられることが多い。聴診所見の位置も、X線画像で炎症の強い右下肺野と一致する。また、気管支と気管の分岐角の関係で、気道異物は右主気管支から右下葉気管支に落ちやすい。したがって、誤嚥性肺炎は右下葉に多い。
13 56歳の男性。閉塞性動脈硬化症。半年前から左下腿から足部にかけて冷感と痛みが発現し、歩行距離も低下している。
検査法と結果の組合せで正しいのはどれか。
1. 立位体前屈:痛みの軽減
2. 足背動脈の触診:リズムの不整
3. 足関節上腕血圧比:1.2 以上
4. 両下肢の下垂試験:感覚異常の出現
5. トレッドミル歩行:間欠性跛行の出現
解答:5
解説
閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。
【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。
【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。
(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)
1.× 立位体前屈を行うと痛みが軽減されるのは、腰部脊柱管狭窄症の特徴である。
2.× 足背動脈の触診すると、「リズムの不整」ではなく拍動が消失(減弱)である。
3.× 閉塞性動脈硬化症において、足関節上腕血圧比(ABI)は下肢動脈狭窄や閉塞の程度を表す指標である。足関節上腕血圧比(ABI)は通常「1.0~1.2」程度を示し、0.9未満で下肢の閉塞性動脈硬化症を疑う。ちなみに、1.2 以上の場合は、足首の血圧が高めで、動脈に石灰化の疑いがある。
4.× 両下肢の下垂試験は、「下肢の感覚異常の出現」ではなく血流不全を確認する検査である。正常であれば、10秒ほどで赤みや感覚異常の出現が出るのに対し、閉塞性動脈硬化症の場合、1分以上の時間を要する場合が多い。
5.〇 トレッドミル歩行(歩行)をした場合、間欠性跛行が出現しやすい。間欠性跛行とは、歩行を続けると下肢の痛みと疲労感が強くなり、足を引きずるようになるが、休むと再び歩けるというものである。体幹前傾ではなく、休むと改善する。
14 39歳の男性。野球の試合中にジャンプしてボールをキャッチした着地時に、踵に疼痛と違和感とを訴えた。その直後から歩行困難となったために、応急処置の後に緊急搬送された。搬送先の病院で撮影された足部MRIを下図に示す。矢印は損傷部位を示す。
受傷直後の処置として適切なのはどれか。
1. 足底板による固定
2. 足関節周辺の保温
3. 足関節底屈位での固定
4. 強擦法による下腿部のマッサージ
5. 端座位による下腿下垂位での安静
解答:3
解説
・39歳の男性。
・ジャンプの着地時、踵に疼痛と違和感。
・直後:歩行困難となった。
・足部MRI:アキレス腱の連続性が絶たれている。
→本症例は「アキレス腱断裂」が疑われる。アキレス腱断裂は、踏み込み・ダッシュ・ジャンプなどの動作で下腿三頭筋が急激に収縮した時や、着地動作などで急に下腿三頭筋が伸ばされたりした時に発生する。スポーツなどによって、外傷を受けたときは、「RICE処置」が基本となる。また、その後の治療は、保存療法では足関節底屈位での4週間程度のギプス固定後、12週程度まで装具を使用し再受傷を避ける。手術療法では、腱縫合を行うが、術後はギプスや装具を併用する。スポーツ復帰は、6か月以降が目安となる。アキレス腱断裂の場合、Thompson sign(トンプソン サイン)は陽性となる。被検者の腓腹筋を検者がつまみ、足関節底屈するかどうかをみる検査である。
1.× 足底板は、足や膝に痛みがある場合や、歩きにくさがある場合に適応となる。主に扁平足、足底筋膜炎、外反母趾、アキレス腱炎、シンスプリント、靭帯損傷、変形性膝関節症、前十字靭帯損傷、内側側副靭帯損傷、半月板損傷などに用いる。アキレス腱断裂の応急処置としては適さない。
2.4.× 保温やマッサージは基本的に行わない。外傷を受けたときなどの緊急処置は、患部の出血や腫脹、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)が基本である。
3.〇 正しい。足関節底屈位での固定を行う。受傷直後は、アキレス腱にストレスがかからない状態で固定する。
5.× 下腿下垂位ではなく、できれば背臥位で挙上(Elevation)し安静とする。
・R(Rest):安静
・I(Ice):冷却
・C(Compression):固定
・E(Elevation):挙上
15 52歳の女性。7年前に右の乳癌に対して腋窩リンパ節郭清を伴う乳房部分切除術が行われ、術後に化学療法と放射線療法が行われた。5年前から右上肢リンパ浮腫が出現したため日常生活においては弾性スリーブを装着していた。リンパ浮腫が悪化してきたため受診し、リンパ浮腫重症度分類ステージⅡと診断された。
日常生活指導として適切なのはどれか。
1. むだ毛を処理する。
2. 皮膚の保湿をする。
3. 水分摂取を制限する。
4. 入浴は熱い温度で長湯をする。
5. 腕を締め付けるような服を着る。
解答:2
解説
弾性スリープとは、リンパ節を切除された方の腕を細い状態に保つという目的で利用する。
Stage 0(潜在性):リンパ循環不全はあるが、臨床的に症状のないもの
StageⅠ(可逆性):タンパク濃度の比較的高い(静脈などに比較して)浮腫液の早期の貯留で、患肢挙上で改善する圧窩性(押すとへこむ)浮腫。
StageⅡ(非可逆性):患肢挙上のみでは腫脹が改善しない、皮膚の硬い非圧窩性の浮腫。
StageⅢ(象皮病):象皮病で非圧窩性。皮膚の肥厚、脂肪の沈着、疣贅(いぼ)の増殖などの皮膚変化を認める。
リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。
1.× むだ毛を処理は避ける。なぜなら、化粧品かぶれや、かみそりによる皮膚損傷の可能性があるため。
2.〇 正しい。皮膚の保湿をする。スキンケアをおこなうことで、皮膚の荒れからの感染を予防できる。
3.× 水分摂取を制限する必要はない。なぜなら、水分が不足して血液粘性が高まりさらにリンパ流が滞るため。また、リンパ浮腫の病態はリンパ流の阻害から生じる浮腫である。
4.× 入浴は熱い温度で長湯をすることは避ける。なぜなら、リンパ浮腫を生じている上肢に負担がかかるため。過度な温熱は避ける。
5.× 腕を締め付けるような服を着るのは避ける。なぜなら、リンパの流れを妨げるため。服より弾性スリーブのようなものが適当である。