第60回(R7) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題91~95】

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91 くも膜下出血の早期診断で優先度の高い検査はどれか。

1.腰椎穿刺
2.頭部CT検査
3.頭部X線検査
4.脳血管造影検査
5.脳血流シンチグラフィ

解答

解説

くも膜下出血とは?

くも膜下出血とは、くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液が存在している)に存在する血管が切れて起こる出血である。約85%が、破裂脳動脈瘤が原因である。くも膜下出血ではくも膜下腔に血液が流入し、CTでは高吸収域として抽出される。合併症には、①再出血、②脳血管攣縮、③正常圧水頭症などがある。①再出血:発症後24時間以内が多く、死亡率も高い。②脳血管攣縮:72時間後〜2週間後(ピークは8〜10日)が多く、脳血管攣縮による梗塞の好発部位は、「前交通動脈」である。③正常圧水頭症:数週〜数ヶ月後に認知症状、尿失禁、歩行障害などの症状が出現する。

1.× 腰椎穿刺より優先度が高いのものが他にある。なぜなら、診断に時間がかかること、くも膜下出血が疑われ、CTで異常が見られなかった場合に追加診断として用いられるため。ちなみに、腰椎穿刺とは、診断・検査のために脳脊髄液を採取するために、脊柱管に針を挿入する医療処置である。腰椎穿刺の主な理由は、脳や脊髄を含む中枢神経系の病気の診断に役立てることである。これらの状態の例には、髄膜炎およびくも膜下出血などがある。

2.〇 正しい。頭部CT検査は、くも膜下出血の早期診断で優先度の高い。頭部CT検査とは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位(急性)は高吸収域(白)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。

3.× 頭部X線検査より優先度が高いものが他にある。なぜなら、脳内の出血や微小な病変の検出には感度が低いため。したがって、頭部X線検査では出血の存在を見逃す可能性が高い。

4.× 脳血管造影検査は用いられない。なぜなら、侵襲的であり、初期の迅速な診断には頭部CT検査が優先さるため。ちなみに、脳血管造影とは、脳内および脳周辺の血管を画像にして、動静脈奇形動脈瘤などの異常の検出する検査である。手首、肘、鼠径部の動脈から細いカテーテルを血管の中に入れて、脳の血管に造影剤を注入し、エックス線を使用して撮影する。

5.× 脳血流シンチグラフィは用いられない。なぜなら、脳血流シンチグラフィは、脳血流の評価に用いられるものであるため。したがって、脳血流のわずかな変化を見つけるための検査。 脳梗塞、てんかん、認知症などの病気の診断が行える。ちなみに、シンチグラフィとは、体内に投与した放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化したものである。

 

 

 

 

 

92 脳血管障害のうち、日本で2021年以降に発症数が最も多いのはどれか。

1.脳梗塞
2.脳出血
3.くも膜下出血
4.脳静脈血栓症
5.慢性硬膜下血腫

解答

解説

MEMO

全国のCT検査による脳血管疾患の疾患別割合は、脳梗塞 58.2 %、脳出血 30.4 %、くも膜下出血 8.8 %、その他 2.6 %とされている(※引用:「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書 」厚生労働省様)。

1.〇 正しい。脳梗塞(58.2 %)は、脳血管障害のうち、日本で2021年以降に発症数が最も多い。
・脳梗塞とは、何らかの原因で脳の動脈が閉塞し、血液がいかなくなって脳が壊死してしまう病気である。

2.× 脳出血は、2位(30.4 %)である。
・脳内出血とは、脳の血管が破れて、脳の実質内に血液が流出する状態である。糖尿病、高脂血症や高血圧などにより動脈硬化が進むと、脳を栄養する深い細かい血管がもろくなり、破れやすくなると考えられている。

3.× くも膜下出血は、3位(8.8 %)である。
・くも膜下出血とは、くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液が存在している)に存在する血管が切れて起こる出血である。

4~5.× 脳静脈血栓症/慢性硬膜下血腫は、その他(2.6 %)に該当する。
・脳静脈血栓症とは、脳の静脈や静脈洞に血栓が詰まって起こる脳血管障害である。
・慢性硬膜下血腫とは、軽度の外傷により軽微な出血が起こり、経時的に血腫が増大し、やがて症状が現れる。症状として、認知障害、頭痛、尿失禁、歩行障害、片麻痺などである。CT画像から、急性硬膜下血腫に特徴的な①三日月状の高吸収域、②左側脳室体部の圧排変形、③midlineの偏位がみられる。

 

 

 

 

 

93 Duchenne型筋ジストロフィーで正しいのはどれか。

1.遺伝性疾患である。
2.女性に多く発症する。
3.主に成人後に発症する。
4.感染が発症の契機となる。
5.平均寿命は約60歳である。

解答

解説

Duchenne型筋ジストロフィーとは?

Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

1.〇 正しい。遺伝性疾患である。X連鎖劣性遺伝で、通常、男児のみ発症する。

2.× 「女性」ではなく男性に多く発症する。X連鎖劣性遺伝で、通常、男児のみ発症する。

3.× 主に「成人後」ではなく3歳頃に発症する。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

4.× 感染が発症の契機となるのは、Guillain-Barré症候群である。ちなみに、Duchenne型筋ジストロフィーは遺伝子の変異である。

5.× 平均寿命は「約60歳」ではなく約20歳である。10歳前後に歩行不能となりやすい。ただし、最近では包括的な治療やケアにより30歳を超える寿命になっている(※参考:「筋ジストロフィー患者の寿命はどのくらいですか?」ユビー病気のQ&A様HP)。

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

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94 尿毒症で正しいのはどれか。

1.腎不全の初期にみられる。
2.代謝性アシドーシスを示す。
3.低カリウム血症を生じやすい。
4.透析患者の死亡原因で最も多い。
5.血清クレアチニン濃度は低下する。

解答

解説

尿毒症とは?

尿毒症とは、腎臓の働きが極度に低下して起こる全身の変化をいい、急性あるいは慢性の腎臓障害が進行した状態(正常の10分の1程度まで著しく低下している末期腎不全の状態)である。多様な症状を呈し、放置すると数日で死に至る。尿毒症の主な治療方法として、血液透析、連続携行式腹膜透析(CAPD)、腎移植などの腎代替療法が挙げられる。

1.× 腎不全の「初期」ではなく末期の状態である(※上記、尿毒症の説明を参照)。

2.〇 正しい。代謝性アシドーシスを示す。人間の体は、弱アルカリ性である。体は酸性の物質を多く作っているが、肺は呼吸により炭酸ガスとして排泄し、腎臓は尿を酸性にすることにより排泄している。したがって、腎臓の働きが低下すると、体は酸性に傾く。
・代謝性アシドーシスとは、HCO3−が減少(腎不全・下痢など)することで酸性に傾くことである。代償的に換気を増大させる(呼吸性アルカローシスにする)ことで、重炭酸イオン緩衝系をアルカリ性側に傾けようとする。

3.× 「低カリウム血症」ではなく高カリウム血症を生じやすい。カリウムとは、ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持しているほか、酸・塩基平衡の維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きをしている。高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることである。通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。原因としては、①カリウム摂取の増加、②腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤、③急性腎障害または慢性腎臓病などで起こりえる。症状として、悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが現れる。

4.× 透析患者の死亡原因で最も多いのは、心不全である。日本透析学会の発表によると、透析患者の死亡原因の第1位は「心不全」、第2位は「感染症」、第3位は「脳血管障害」である。
腎機能が低下すると尿量の低下や塩分の過剰摂取が体内の水分量を増加させるため、透析での除水量が不十分な場合には過剰な水分が心臓への負担を増加させ、それによって心不全を招きやすくなる。

5.× 血清クレアチニン濃度は、「低下」ではなく高値となる。ほかにも、BUN・尿酸が高値となる。血清クレアチニンとは、腎臓の機能の低下とともに値は高くなる。血清クレアチニンは、筋量に影響を受け、筋肉に含まれているタンパク質の老廃物である。本来は、尿素窒素と同様に腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄されるが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まる。

慢性腎不全の合併症

①尿濃縮力障害
②高窒素血症
③水・電解質異常(体液過剰、高カリウム血症)
④代謝性アシドーシス
⑤腎性貧血
⑥二次性副甲状腺機能亢進症

 

 

 

 

 

95 周術期の肺塞栓症で誤っているのはどれか。

1.呼吸困難を生じる。
2.突然死のリスクが高い。
3.歩行開始時に発症しやすい。
4.予防のため安静臥床とする。
5.下肢の静脈血栓が原因となることが多い。

解答

解説

用語の説明

周術期は、入院・手術・回復といった患者の術中だけでなく、前後の期間を含めた一連の期間をいう。周術期リハビリテーションは、術後早期離床や呼吸器ケアを行うことで呼吸器合併症を予防し、迅速に全身状態を回復させることを目的として行われる。

肺塞栓症とは、肺動脈に血栓が詰まる病気のこと。この血栓が9割以上は脚の静脈内にできる。この血栓を「深部静脈血栓症」といい、それが血液の流れに乗って右心房、右心室を経由して肺動脈まで運ばれてきて、肺塞栓症の原因となる。肺塞栓症と深部静脈血栓症は、極めて関係が深い病気で、二つを合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼ばれる。深部静脈血栓症患者の約50%は潜在性の肺塞栓症を有し、肺塞栓症患者の30%以上は証明可能な深部静脈血栓症患者を有すると報告されている。

1.〇 正しい。呼吸困難を生じる。なぜなら、肺の血流が急激に遮断されるため。したがって、急激な低酸素状態となり、呼吸困難や息切れが生じる。

2.〇 正しい。突然死のリスクが高い。なぜなら、肺の血流が急激に遮断(急激な低酸素状態)されるため。したがって、心臓への負荷が急激に増加し、循環不全に陥り、突然死に至るリスクが高くなる。

3.〇 正しい。歩行開始時に発症しやすい。なぜなら、術後早期の歩行開始時には、足の筋肉の収縮によって既存の深部静脈血栓が剥がれやすくなるため。したがって、血栓が肺に飛んで塞栓を引き起こす。

4.× 予防のため、安静臥床とする必要はない。むしろ、安静臥床(長期臥床)により、血流停滞を招き、深部静脈血栓症および肺塞栓症のリスクを高めるため。したがって、早期の安静状態からの段階的な早期離床・歩行が推奨される。
【深部静脈血栓症の予防方法】手術を行った後や脊髄損傷の急性期、長期臥床などにより、静脈血がうっ滞することによって深部静脈血栓症が起こりやすい。未治療の運動療法は肺塞栓症を生じる可能性もある。その予防法についは以下のものがあげられる。
①下肢挙上し、重力による静脈還流を促す。
②弾性ストッキングや弾性包帯の利用
下肢の運動(足部の運動、膝の等尺性運動)

5.〇 正しい。下肢の静脈血栓が原因となることが多い。なぜなら、肺塞栓症のほとんどは、下肢の深部静脈に形成された血栓が剥がれ、肺に移動して塞栓を引き起こすため。

深部静脈血栓症とは?

深部静脈血栓症とは、深部静脈に血の塊(血栓)ができることである。血栓が足の静脈から心臓や肺に向かって流され、肺の血管に詰まった場合、肺塞栓症を引き起こす。

 

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