第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

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31 運動療法を受ける患者の自己効力感が低下する可能性が高いのはどれか。

1.運動療法時に医療者が励ます。
2.運動後の疲労は問題ないことを説明する。
3.既に退院した患者の成功した治療例を伝える。
4.類似した事柄に対して過去に成功体験がある。
5.達成が困難な高い目標の運動課題を初めに設定する。

解答

解説

自己効力感とは?

自己効力感(セルフエフィカシー)とは、自分が行動しようと思っていること、変えようと思っている生活習慣などに対し、うまく達成できるという自信や確信のこと、自己効力感の理論はライフスタイル改善のプログラムに活用される。自己効力感を高める要因として、①成功体験、②代理的体験、③言語的説得、④生理的・情緒的状態(情緒的高揚)が挙げられる。

①成功体験:例えば禁煙できた日をカレンダーに一日ずつ×を書いていき、「1週間禁煙できた」と自信をつけること。
②代理的体験:同じような状況にある他者が目標を達成している様子から「自分にもできそうだ」と思うこと。
③言語的説得:自分自身や周囲の人からの言語的な賞賛や励ましのこと。
④生理的・情緒的状態(情緒的高揚):行動の変化を促すような情報に触れ気づきを得ることで行動変容への関心をもつこと。例えば、タバコを吸わなくなってから「イライラしにくくなったきがするな」と気づきをえることで、行動がさらに変わっていくことである。

1.〇 運動療法時に医療者が「励ます」ことは、患者の自己効力感を高める。なぜなら、自己効力感を高める要因の③言語的説得に該当するため。
2.〇 「運動後の疲労」は問題ないことを説明することは、患者の自己効力感を高める。なぜなら、自己効力感を高める要因の④生理的・情緒的状態(情緒的高揚)に該当するため。
3.〇 既に退院した患者の「成功した治療例」を伝えることは、患者の自己効力感を高める。なぜなら、自己効力感を高める要因の②代理的体験に該当するため。
4.〇 類似した事柄に対して「過去に成功体験がある」ことは、患者の自己効力感を高める。なぜなら、自己効力感を高める要因の①成功体験に該当するため。
5.× 「達成が困難な高い目標の運動課題を初めに設定することは、運動療法を受ける患者の自己効力感が低下する可能性が高い。なぜなら、失敗の可能性が高く、モチベーションの維持も難しいため。したがって、初めのうちは達成可能な運動課題にすることが多い。

 

 

 

 

 

32 内側型変形性膝関節症における歩行の特徴で正しいのはどれか。

1.歩隔は狭くなる。
2.両脚支持期は短くなる。
3.骨盤の回旋は大きくなる。
4.股関節伸展角度は増加する。
5.床反力前後成分は小さくなる。

解答

解説

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。

変形性膝関節症の歩行の特徴として、①立脚期に外方動揺(外側スラスト)が起こりやすい。これは変形による骨自体の安定性低下や膝関節の支持組織(筋や靭帯)の機能障害による影響が強く、周囲関節の機能異常や不良姿勢によって増強することもある。したがって、健常者と比較すると歩行速度が低下しやすい。

1.× 歩隔は、「狭く」ではなく広くなる。なぜなら、変形性膝関節症は、バランス能力の低下を伴いやすいため。外側スラストや変形による骨自体の安定性低下や膝関節の支持組織(筋や靭帯)の機能障害などが要因として考えられる。歩隔とは、歩く時の両足間の横の幅のことである。ちなみに、歩幅とは、一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの距離を示す。
2.× 両脚支持期は、「短く」ではなく長くなる。なぜなら、変形性膝関節症は、痛みが生じ歩行速度の低下を伴いやすいため。ちなみに、両脚支持期とは、両脚での支持期間で、1歩行周期に2回あり、20~25%(70歩/分)を占めている。
3.× 骨盤の回旋は、「大きく」ではなく小さくなる。なぜなら、変形性膝関節症は、歩行速度の低下つまり足を大きく振り出せず、歩幅の減少にも伴いやすいため。
4.× 股関節伸展角度は、「増加」ではなく減少する。なぜなら、変形性膝関節症は、歩行速度の低下つまり足を大きく動かせず、歩幅の減少にも伴いやすいため。
5.〇 正しい。床反力前後成分は小さくなるのは、内側型変形性膝関節症における歩行の特徴である。なぜなら、変形性膝関節症は、歩行速度の低下を伴いやすいため。歩行時には、①足が地面に接地し体重を支える際(踵接地)と、②足が地面から離れる際(踵離地)に2つの主要な峰がある。踵接地時、前進速度を減速するため、前後分力は踵接地で後向きに働く。

高齢者の歩行の特徴

高齢者は若者よりもバランス障害や柔軟性の低下により、歩隔が拡大し、歩行速度が低下する。また股・膝・足関節の動きが小さくなり、二重支持期が延長する。さらに、ほかにも歩幅の減少、歩行率の低下、遊脚相/立脚相比は立脚期が延長し遊脚期が短縮する。重心の上下動は減少し骨盤回旋や頭部の上下動も減少する。

 

 

 

 

33 Brunnstrom法ステージⅣの判定基準で正しいのはどれか。

1.座位で肩関節90度外転が可能
2.肘関節伸展位で肩関節90度屈曲し前腕の回内外が可能
3.手指で対向つまみが可能
4.座位で下腿部の内外旋が可能
5.座位で踵接地での足関節背屈が可能

解答

解説
1.× 座位で肩関節90度外転が可能なのは、上肢ステージⅤの判定基準である。
2.× 肘関節伸展位で肩関節90度屈曲し前腕の回内外が可能なのは、上肢ステージⅤの判定基準である。
3.× 手指で対向つまみが可能なのは、手指ステージⅤの判定基準である。
4.× 座位で下腿部の内外旋が可能なのは、下肢ステージⅥの判定基準である。
5.〇 正しい。座位で踵接地での足関節背屈が可能なのは、下肢ステージⅣの判定基準である。

 

 

 

 

 

34 脳卒中片麻痺患者の足関節を底屈位から背屈位に他動的に動かし、最終域に若干の抵抗感を感じた。
 MAS〈modified Ashworth scale〉における筋緊張のレベルはどれか。

1.0
2.1
3.1+
4.2
5.3

解答

解説

modified Ashworth scaleの判定基準

0:筋緊張の亢進がない。
1:軽度の筋緊張亢進があり、ひっかかりや可動域の終末わずかな抵抗がある。
1+:軽度の筋緊張亢進があり、ひっかかりと引き続く抵抗感が残りの可動域(1/2以内)にある。
2:さらに亢進した筋緊張が可動域ほぼ全域にあるが、他動運動は可能。
3:顕著な筋緊張亢進があり、他動運動は困難。
4:他動運動では動かない。

1.× 0は、筋緊張の亢進がない状態である。
2.〇 正しい。1が、本症例のMASにおける筋緊張のレベルである。1は、軽度の筋緊張亢進があり、ひっかかりや可動域の終末わずかな抵抗がある。
3.× 1+は、軽度の筋緊張亢進があり、ひっかかりと引き続く抵抗感が残りの可動域(1/2以内)にある。
4.× 2は、さらに亢進した筋緊張が可動域ほぼ全域にあるが、他動運動は可能。
5.× 3は、顕著な筋緊張亢進があり、他動運動は困難

 

 

 

 

 

35 正常歩行の立脚相で筋活動が最大となるのが最も遅いのはどれか。

1.大殿筋
2.大腿四頭筋
3.大腿二頭筋
4.前脛骨筋
5.下腿三頭筋

解答

解説

(図引用:Eberhart,H. D. et al.:「Human Limbs and their Substitutes」Mc Graw Hill Book Co. Inc 1954より)

1.× 大殿筋は、踵接地で最も筋活動が最大となる。大殿筋は、①遊脚後期と②立脚中期に筋活動がみられる。それぞれ役割は異なり、①遊脚後期の筋活動は、前方へ振り出された下肢の減速に寄与する。②立脚中期までの筋活動は、過度の体幹屈曲を防ぐこと、股関節を伸展させることである。
2.× 大腿四頭筋は、踵接地で最も筋活動が最大となる。大腿四頭筋は、主に、①立脚初期と②立脚後期から遊脚初期にかけ活動する。①立脚初期は、衝撃吸収(膝折れ防止)のために、②立脚後期から遊脚初期は股関節屈曲の補助として働く。
3.× 大腿二頭筋(ハムストリングス)は、遊脚相から立脚初期にかけて筋活動が最大となる。大腿二頭筋(ハムストリングス)は、主な役割として、振り出した下肢の制御に寄与する。
4.× 前脛骨筋は、踵接地で最も筋活動が最大となる。前脛骨筋は、歩行周期の立脚期において常に筋活動がみられるのも特徴の一つである。踵接地の期活動の主な役割として、踵接地により生じる足関節の底屈を減速させ、遊脚相で足関節を背屈させクリアランスを確保する。ちなみに、前脛骨筋のほかにも、歩行周期の立脚期において常に筋活動がみられるのは、脊柱起立筋があげられる。主な役割は、歩行時には抗重力姿勢を維持する。
5.〇 正しい。下腿三頭筋が、正常歩行の立脚相で筋活動が最大となるのが最も遅い。なぜなら、下腿三頭筋の役割の一つに、重心線を踵から足先へ移動さ立脚終期に蹴り出して遊脚相に移行するため。ほかにも、下腿三頭筋は、遊脚相で筋活動がないのが特徴である。

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