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21 対応があり正規分布を示さない連続変数の2群間の差を検討するのはどれか。
1.Paired-t検定
2.一元配置分散分析
3.Kruskal-Wallis検定
4.Mann-WhitneyのU検定
5.Wilcoxon符号付順位検定
解答5
解説
1.× Paired-t検定(ペアード・ティーテスト、対応のあるt検定)は、パラメトリック検定であり、関連2群比較法である。治療前後の検査値の比較など2群間で変数同士が対応している場合の平均値の差を検定する。
2.× 一元配置分散分析(F検定)とは、3群間以上の平均値の差の検定である。1つの因子からなるデータを分析する方法で、因子に含まれる水準間の平均値の差を見ることができる。 例えば、ある学校の1組、2組、3組の算数のテストのデータがある場合、一元配置分散分析を用いて、1組、2組、3組の算数のテストの平均点に差があるかどうかを検定できる。ちなみに、一元配置分散分析とは、分析に1つの要因(独立変数)を用いた分散分析を指す。要因が2つの場合は「二元配置分散分析」、3つ以上の場合は「多元配置分散分析」といわれる。
3.× Kruskal-Wallis検定(クラスカル・ウォリス検定)は、ノンパラメトリック検定であり、対応のない3つ以上のグルーブを調べたい時に用いる。
4.× Mann-WhitneyのU検定(マン・ホイットニーのU検定)は、ノンパラメトリック検定であり、独立2群比較法である。2群をひとまとめにして順位をつけ、群別の順位の和を比較する検定である。2群間の比較で、正規性が確認されない場合に用いられる。
5.〇 正しい。Wilcoxon符号付順位検定が、対応があり正規分布を示さない連続変数の2群間の差を検討する。順序尺度のデータを対象に、2群をひとまとめにして順位をつけた順位の和を用いて、2群間に差があるかどうかを検定するものである。
検定とは、統計学的手法を用いて、帰無仮説が正しいか、正しくないかを判断することである。
「検定の方法」
①パラメトリック検定(母集団が正規分布をするという仮説のもとに行う)
例:パラメトリック検定には、①t検定(2群の平均値の差を検定する)、②分散分析(3群以上の平均値に差があるかどうかを検定する)などがある。
②ノンパラメトリック検定(母集団の分布にかかわらず用いることのできる)に大別される。
例:ノンパラメトリック検定には、①Mann-Whitney検定(2群の中央値の差を検定する)、②X2検定(割合の違いを求める)、③Wilcoxon符号付順位検定(一対の標本による中央値の差を検定する)などがある。
22 二次予防の組合せで正しいのはどれか。
1.健常成人:禁煙指導
2.脂質異常症患者:栄養指導
3.回復期の脳血管疾患患者:服薬指導
4.急性期の脳血管疾患患者:血圧管理
5.生活期の脳血管疾患患者:運動指導
解答2
解説
疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。
・一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
・二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
・三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。
(※健康日本21において)
1.× 健常成人に対し、禁煙指導を行うことは、一次予防となる。なぜなら、すでに疾患を持っていない健常成人に対して行われる予防措置といえるため。
2.〇 正しい。脂質異常症患者に対し、栄養指導を行うことは、二次予防となる。なぜなら、脂質異常症の患者に対する栄養指導は、病気の進行を遅らせるため。これにより、心血管疾患のリスクを軽減できる。ちなみに、脂質異常症とは、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド(TG)血症を指し、動脈硬化の原因となる。その治療で重要なのは、薬物療法のほか、食事指導による適正体重の維持や内臓脂肪の減量である。まず食事指導の基本は、総摂取エネルギーと栄養素配分を適正化することである。
3~5.× 回復期/急性期/生活期の脳血管疾患患者に対し、服薬指導/血圧管理/運動指導を行うことは、三次予防となる。なぜなら、すでに脳血管疾患を発症した後であるため。
23 筋収縮で正しいのはどれか。
1.神経筋接合部の伝達物質はノルアドレナリンである。
2.カルシウムイオンが筋小胞体内に取り込まれる。
3.神経支配比はそれぞれの筋で異なる。
4.エネルギー源はADPである。
5.A帯が短縮する。
解答3
解説
【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。
【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)
1.× 神経筋接合部の伝達物質は、「ノルアドレナリン」ではなくアセチルコリンである。アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。
2.× カルシウムイオンが筋小胞体内に「取り込まれる」のではなく放出される(筋収縮時)。カルシウムイオンが筋小胞体内に「取り込まれる」のは筋弛緩時である。筋肉が収縮するメカニズムは、活動電位が発生し、横行小管が脱分極し、筋小胞体からカルシウムイオンが放出されることによって起こる。カルシウムイオンの濃度が上昇すると、トロポニンCと結合し、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが相互作用して、骨格筋が収縮する。
3.〇 正しい。神経支配比はそれぞれの筋で異なる。1つの運動神経が支配する筋線維の数が少なく、神経支配比は小さい。運動単位当たりの筋線維数は、上腕二頭筋:750、虫様筋:110である。運動単位とは、1つの運動神経が支配する筋線維のことである。筋によって支配する線維の数は異なる。
①粗大運動を行う筋:神経支配比が大きく、運動単位は大きい。
②精巧な運動を行う筋:神経支配比が少なく、運動単位は小さい。
ちなみに、神経支配比とは、1つの運動神経が支配する筋線維の数のことをいう。
4.× エネルギー源は、「ADP」ではなくATPである。なぜなら、頭部首振り運動に、ATPエネルギーを利用する必要があるため。ADP(アデノシン二リン酸)とは、ATP分解酵素の働きによってATPが加水分解すると、ひとつのリン酸基がはずれたものをさす。その際にエネルギーを放出し、このエネルギーを使って筋の収縮が行われる。筋線維の中に蓄えられているATPの量はわずかなので、激しい運動では短時間で使い果たしてしまう。
5.× 「A帯」ではなくI帯が短縮する。A帯(暗帯)とは、ミオシンフィラメントがある部分で、アクチンフィラメントと重なり合っている。筋収縮のメカニズム(滑り説)では、アクチンフィラメントがミオシンフィラメント側に滑り込むことで収縮が生じる。この際に短縮するのはアクチンフィラメントのみの部分であるI帯(明帯)である。
①隣接する細胞が興奮すると、静止膜電位がプラスに向かい、Na+チャンネルが開き、大量のNaが細胞内に流入する。
②Na+が大量に流れ込むため、膜電位は急峻に上昇する。分極していた細胞内外が極性を失うので脱分極という。
③活動電位となった細胞内にはNa+に引き続きCa2+チャンネルが開いて、Ca2+が入ってくる。Ca2+は心筋収縮の引き金の役割とともに、プラスイオンの性質から活動電位の持続にも貢献する。
④活動電位から静止電位に戻るために、K+チャンネルが開いて、細胞内に多いK+が、細胞外に出ていく。結果的にプラスイオンを減らした細胞内は静止電位まで下がる。再び分極するので、再分極という。
苦手な人向けに、まとめました。参考にどうぞ。
【PT/共通】骨格筋、筋収縮、運動単位についての問題「まとめ・解説」
【PT/共通】筋収縮の機序についての問題「まとめ・解説」
24 課題と記憶の組合せで正しいのはどれか。
1.自転車に乗る:エピソード記憶
2.海外旅行の思い出を語る:展望記憶
3.紙や鉛筆を使わず暗算する:ワーキングメモリー
4.教師になったきっかけを説明する:意味記憶
5.建物の建築方法について説明する:手続き記憶
解答3
解説
1.× 自転車に乗ることは、「エピソード記憶」ではなく手続き記憶である。エピソード記憶とは、自分の生活史や思い出など、自分の過去の経験を伴う記憶のことである。「高校受験に失敗した」などである。
2.× 海外旅行の思い出を語ることは、「展望記憶」ではなくエピソード記憶である。展望記憶とは、未来についての記憶である。「今晩誰かと会う約束をしている」など、これからしようとすることに関する記憶である。
3.〇 正しい。紙や鉛筆を使わず暗算することは、ワーキングメモリーである。ワーキングメモリーとは、物事を思考・実行する際に必要な情報を一時的に(数秒から数分程度)保持しながら、それを意識的に操作することができる能力のことである。
4.× 教師になったきっかけを説明することは、「意味記憶」ではなくエピソード記憶である。きっかけとは、「物事を始めるはずみ(となるもの)。機会や動機や手がかり」のことをさす。意味記憶とは、言語・知識・社会的常識など時間的要素のない記憶を指す。例として「りんごは赤い」などである。
5.× 建物の建築方法について説明することは、「手続き記憶」ではなく意味記憶である。手続き記憶とは、スポーツ技能の習得などの記憶である。特徴として、言語的表現が困難な記憶である。
25 インフォームドコンセントの説明で正しいのはどれか。
1.終末期の患者は対象外である。
2.医療法により罰則が課せられる。
3.専門用語を用いて詳細に伝える。
4.患者が自己決定する機会を保障する。
5.患者は一度同意したら撤回できない。
解答4
解説
インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指す。診断結果の伝達には「癌の告知」という重要な問題も含まれる。
1.× 終末期の患者は、「対象外」ではなく対象内である。なぜなら、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指すため。
2.× 「医療法」ではなく民法により罰則が課せられる。インフォームド・コンセントを怠り、医療過誤が認められた場合は、損害賠償責任が成立することがある(※参考:「インフォームド・コンセントと法律」神戸大学大学院法学研究科より)。ちなみに、民法とは、私人間の権利や義務の関係性をまとめた基本的な法律で、私法の基本法であり、私法の一般法とも呼ばれる。市民生活における市民相互の関係、つまり財産関係(売買・賃貸借・不法行為など)と家族関係(夫婦・親子・相続など)を規律する法律である。また、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。
3.× あえて、専門用語を用いて詳細に伝える必要はない。むしろ、治療者はなるべく専門用語を使用せず、患者が自ら治療方針を選択できるよう分かりやすい言葉で説明する。なぜなら、インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味するため。患者自身が病状や治療について、十分理解できる用語を用いる。
4.〇 正しい。患者が自己決定する機会を保障する。そのため、説明用の文書を用意することもある。文章で内容を明示することで、患者側の理解も得やすく確認できるようになる。
5.× 患者は一度同意したら撤回「できない」ではなくできる。患者は一度同意しても、無条件でいつでも同意を撤回できる。これは、患者には医療や医療サービスを自由に選択する権利、自由にセカンドオピニオンを受けることができる権利を有している。