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16.4歳の男児。痙直型両麻痺。しばしば割り座で座る。バニーホッピングと交互性パターンの四つ這いを併用して移動する。PCW (postural control walker)を用いた歩行練習を実施している。
この児に対する遊びの指導内容で最も適切なのはどれか。
解答:3
解説
・4歳の男児(痙直型両麻痺)
・しばしば割り座。
・バニーホッピングと交互性パターンの四つ這いを併用して移動する。
・PCW (postural control walker)を用いた歩行練習中。
→本症例は、痙直型両麻痺である。両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺の歩行(クラウチング歩行)は、股・膝とも屈曲位で伸びきらない歩行である。さらに、股関節は内転・内旋となるため内股での歩行が特徴的である。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。また、両麻痺は両下肢の麻痺に、軽~中等度の両上肢、体幹の麻痺を伴うことが多い。具体的には、①バルーン上の座位練習、②膝立ち位保持練習、③両足底接地しながらの立位練習、④四つ這い位保持練習などを行う。
1.×:本症例は、「バニーホッピングと交互性パターンの四つ這いを併用しての移動」が獲得済みであるため不適切である。また、図は左右非対称な姿勢であり、股関節も内転・内旋している。さらに、脊柱側弯症や股関節脱臼などの二次障害が誘発される可能性がある。
2.×:本症例は、すでに割り座が獲得済みであるためさらに難易度が高い遊び課題を提供するべきである。また、割り座は股関節内転・内旋を助長するため、痙直型両麻痺児に推奨するべき肢位ではない。
3.〇:正しい。抗重力位・膝関節屈曲位の適切な姿勢で、膝立ち位保持練習できている。
4.×:足底を床につかず、下肢の伸筋優位(股関節内転・内旋位、足関節内反尖足・はさみ足)の不良姿勢となっている。また、頭部の左回旋に伴い、非対称性緊張性頸反射(ATNR)の影響を受けており、体幹・下肢の筋緊張は亢進を助長している。
5.×:本症例は、PCW (postural control walker)で歩行練習をすでに行っており、肘の支持がなくても座位がとれるほど体幹は安定しているため、不適切である。図は、胸部の位置にテーブルを設置することで、肘の支持で上肢機能改善をはかるのに適している。
バニーホッピングとは、上下肢の交互運動は少なく、両下肢を屈曲位のまま前進する移動方法のこと。いわゆる両手が床についている「うさぎ跳び」である。(バニーホッピングのイメージとしては、うさぎ跳びのように飛び跳ねるものではなく、交互性の少ないほふく前進である。)
17.70歳の男性。3年前に右手の振戦によってParkinson病を発症し、在宅で治療を行っている。ADLは自立していたが、1か月前に風邪をひいてから歩く速さが遅くなり、歩行の際に一歩目が思うように前に出ず、歩き出してからも前方に転びそうになることが多いという。
在宅での理学療法における歩行指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.両下肢に弾性包帯を装着する。
2.足関節に重鍾バンドを装着する。
3.一歩目を小さく前に出すよう指導する。
4.床にはしご状の目印を付けてまたがせる。
5.かけ声などをかけてもらいながら歩くよう指導する。
解答:4,5
解説
70歳の男性(3年前:Parkinson病)
・在宅で治療中。
・ADL自立。
・1か月前:歩行速度低下、歩行の際に一歩目が思うように前に出ず(すくみ足)、歩き出してからも前方に転びそうになる(突進現象)。
→本人のニーズを聞くことも大切であるが、できるだけ在宅で安全に生活が継続できるように適切な環境調整をアドバイスできるようにしておく。パーキンソン病のすくみ足の誘発因子と対応方法は、【誘発因子】①狭路、②障害物、③精神的緊張など。【対応方法】①視覚(障害物を跨ぐ、床に目印をつける)、②聴覚(メトロノームなどのリズムや歩行に合わせてのかけ声)③逆説的運動(階段昇降)など。
1~2.× 両下肢に弾性包帯を装着する/足関節に重鍾バンドを装着するのは、小脳性の運動失調性歩行障害に適応される方法である。
3.× 一歩目を小さくではなく、大きく前に出すよう指導する。もしくは、いったん足を後ろ引いたり、横移動してから踏み出す。
4.〇 正しい。床にはしご状の目印を付けてまたがせる。
5.〇 正しい。かけ声などをかけてもらいながら歩くよう指導する。
18.36歳の男性。手にバスケットボールが当たって受傷した。来院時の手指の写真とエックス線単純写真とを下図に示す。
この病態として正しいのはどれか。
1.槌指
2.ばね指
3.ボクサー骨折
4.ムチランス変形
5.Bennett骨折
解答:1
解説
写真A:①DIP関節軽度屈曲位、②DIP関節周囲の腫脹、③爪元周囲の皮下出血を認める。
エックス線写真B:末節骨底部の裂離骨折
1.〇 正しい。槌指は、DIP関節の過屈曲で起こる。伸筋腱の断裂・末節骨背側の骨折・末節骨背側の骨折と掌側亜脱臼の3ステージに分かれる。治療として、保存的にDIP伸展保持用のスプリントを装着するか、脱臼骨折が大きい場合は、Kirschner鋼線(キルシュナー鋼線)による固定術が必要となる。
2.× ばね指(手掌のMP関節周囲の屈曲腱に生じる腱鞘炎)は、指の付け根で屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こり、腱の動きがスムーズでなくなる。更年期の女性や手の使いすぎに多い。糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生する。
3.× ボクサー骨折は、手の拳による強打の衝撃で、中手骨骨折が起こる。第4・5中手骨の頸部に発生しやすい。
4.× ムチランス変形は、指の末端が短縮した状態である。吸息に骨吸収が進行し、高度な関節破壊をきたす特殊な変形で、関節リウマチに起こる。
5.× Bennett骨折(ベネット骨折)は、母指CM関節脱臼骨折である。尺側基部に三角形の小骨片を残して遠位骨片に転位する。
19.65歳の男性。身長165cm。図のように歩行補助具として杖の長さを調整する際、指標とすべき杖先の位置を示す。
aの距離と肘の角度bの組合せで正しいのはどれか。
1.20cm:100度
2.15cm:100度
3.15cm:150度
4.5cm:150度
5.5cm:180度
解答:3
解説
肘関節30°屈曲し、15cm×15cm外前方に出した場所が正しい。よって、答えは、選択肢3.15cm:150度である。ちなみに、握り手の高さは、ほぼ大転子と同じ高さとなる。
20. 71歳の男性。うっ血性心不全。2週前から顔面と下肢とに浮腫がみられるようになり、安静にしていても呼吸困難があるため入院となった。入院2日後、離床練習開始となった。
医療面接における質問で重要性が低いのはどれか。
1.「咳や痰はないですか」
2.「仰向けで寝られますか」
3.「喉が渴きやすいですか」
4.「息切れは少なくなりましたか」
5.「手足のむくみは少なくなりましたか」
解答:3
解説
【絶対的禁忌】
①過去1週間以内における心不全の自覚症状(呼吸困難、易疲労性など)の増悪
②不安定狭心症または閾値の低い[平地ゆっくり歩行(2METs)]負荷で誘発される心筋虚血
③手術適応のある重症弁膜症、特に大動脈弁狭窄症
④重症の左室流出路狭窄(閉塞性肥大型心筋症)
⑤未治療の運動誘発性重症不整脈(心室細動、持続性心室頻拍)
⑥活動性の心筋炎
⑦急性全身性疾患または発熱
⑧運動療法が禁忌となるその他の疾患(中等度以上の大動脈瘤、重症高血圧、血栓性静脈炎、2週間以内の塞栓症、重篤な他臓器障害など)
※参考資料:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012改訂版)
1.〇 「咳や痰はないですか」:うっ血性心不全(左心不全)は、心臓のポンプ機能低下により、肺や下半身に体液が貯留してしまい、肺水腫などを引き起こす疾患で、肺水腫になると湿性咳嗽・呼吸困難を生じ、夜間発作性呼吸困難や起座呼吸などの特徴的な症状を伴う。そのため、質問の重要度が高い。
2.〇 「仰向けで寝られますか」:仰臥位は、気道が狭窄するため、呼吸がしにくくなる。さらに、心臓への静脈還流量は増加するため、心不全症状は悪化するため、質問の重要度は高い。
3.× 「喉が渴きやすいですか」:「喉が渴きやすさ」は糖尿病患者に多く聞かれる高血糖症状である。ただし、心不全等に対して、利尿薬を使用している場合、口渇感が生じることもあるため、選択肢の中では重要度は低いものの注意が必要である。
4.〇 「息切れは少なくなりましたか」:呼吸困難感を聞く質問である。重要度は高い。
5.〇 「手足のむくみは少なくなりましたか」:入院2週前から顔面と下肢とに浮腫がみられていたため、現在の浮腫の程度を聞く質問の重要度は高い。血液のうっ滞の解消に伴い、むくみは少なくなっていく。