第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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6 68歳の男性。体操中に頸部を急激に後方へ反らした際に受傷し、骨傷のない頸髄損傷と診断された。独歩は可能だが、上肢に強い運動障害を認める。
 損傷型として最も考えられるのはどれか。
 ただし、図の斜線部は頸髄横断面における損傷部位を示す。

 

解答

解説

本症例のポイント

・68歳の男性
・体操中に頸部を急激に後方へ反らした際に受傷。
・骨傷のない頸髄損傷。
・独歩は可能だが、上肢に強い運動障害を認める。
→中心性頸髄損傷が疑われる。

中心性頚髄損傷とは、転倒などの頸椎の過伸展により発生する。したがって高齢者に多い。中心性とは脊髄の中心が主に受傷される。そのため、下肢よりも上肢の障害が優位となる。四肢麻痺、手指の巧緻性低下などの運動障害、強いしびれなどの感覚障害、膀胱直腸障害を呈する。

1.× Brown-Sequard 症候群(ブラウン・セカール症候群:脊髄半側症候群)である。ちなみに、損傷髄節よりも下位の反対側に温痛覚障害が生じ、同側に触覚の低下・痙性麻痺・深部感覚障害が生じる。
2.× 前部性頸髄損傷である。ちなみに、障害レベル以下の温痛覚脱失、痙性麻痺、障害レベルの弛緩性麻痺を呈する。
3.× 脊髄後索の損傷である。主な症状は、解離性知覚脱失(触覚と深部覚の脱失で温痛覚は残存)である。
4.〇 正しい。中心性頸髄損傷が疑われる。中心性頚髄損傷とは、転倒などの頸椎の過伸展により発生する。したがって高齢者に多い。中心性とは脊髄の中心が主に受傷される。そのため、下肢よりも上肢の障害が優位となる。四肢麻痺、手指の巧緻性低下などの運動障害、強いしびれなどの感覚障害、膀胱直腸障害を呈する。また、宙吊り型の温痛覚障害も呈する。
5.× 損傷した頸髄のレベル以下の運動麻痺と感覚障害(すべての伝達路障害)が出現することになる。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【PT/OT/共通】解剖・横断図についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

7 37歳の男性。事故による両前腕切断。現在仮義手で能動フックを使用しているが、ズボンや上着のジッパーの開閉、食事やトイレの後始末に不便を感じている。
 手継手を下図に示す。
 この患者に適しているのはどれか。

 

解答

解説

本症例のポイント

・37歳の男性(両前腕切断)
・現在仮義手で能動フックを使用。
・ズボンや上着のジッパーの開閉、食事やトイレの後始末に不便を感じている。
→手関節掌屈が不十分で不便を感じている。

1〜2.× ①、②は、面摩擦式手継手である。手先具をねじ込むことで固定するが、回旋させることが可能である。①と②は、ソケットの中に入る形が異なるのみで、継手部分が変わらない。
3.〇 正しい。③(屈曲用手継手)は、この患者に適している。屈曲用手継手は、掌屈0°、25°、50°などに調節可能となる。手先具を屈曲位で固定することが可能であるため、これを使えば掌屈が可能となる。
4.× ④は、軸摩擦式手継手である。手先具をねじ込むことで固定するが、回旋させることが可能である。
5.× ⑤は、迅速交換式手継手である。手先具の交換を迅速に行うことができる。摩擦抵抗で回内・外が他動的に可能である。

手継手の種類

①摩擦式手継手(面摩擦式、軸摩擦式):摩擦抵抗で回内・外が他動的に可能になる迅速交換式(クイックチェンジ)手継手である。押し込むことで装着、ロックを外すことで取り外しが可能となる。

②屈曲用手継手:掌屈0°、25°、50°などに調節可能となる。つまり、手先具の挿し込み口の角度を変えることができるため、掌屈が可能となる。

 

 

 

 

 

8 78歳の女性。関節リウマチ。SteinbrockerのステージⅣ、クラス3。右手の写真を下図に示す。中指は写真のような変形をきたしている。数年前、PIP関節の腫れと痛みがあったという。
 この変形の発生機序はどれか。

1.掌側板の緩み
2.手内筋の緊張亢進
3.側索の背側転移
4.中央索の断裂
5.終止腱の断裂

解答

解説

本症例のポイント

・78歳の女性(関節リウマチ)
・SteinbrockerのステージⅣ、クラス3。
ステージⅣ(関節が破壊され、動かなくなってしまった状態)
クラス3(身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態)
・中指:ボタン穴変形。
・数年前:PIP関節の腫れと痛み。

ボタン穴変形(ホール変形)は、MP関節過伸展、PIP関節屈曲、DIP過伸展、中央索の伸長・断裂が起こる。

1.× 掌側板の緩みにより槌指で起こる。槌指では掌側板の損傷が起き、緩みが出ることがある。ちなみに掌側板は、MP・PIP・DIP関節の掌側にある軟骨である。また、槌指変形(マレット指)とは、DIP関節が曲がったまま伸ばせなくなった状態である。手指にも足趾にも見られる。
2.× 手内筋の緊張亢進によりスワンネック変形で起こる。手内筋の緊張亢進によりMP屈曲、PIP過伸展、DIP屈曲位となる。ちなみに、他の要因としては、選択肢3.側索の背側転移やPIP関節の屈筋腱が断裂するなどでも起こる。
3.× 側索の背側転移によりスワンネック変形で起こる。手内筋の拘縮、中手指節(MP)関節掌屈脱臼などにより側索の背側転移が生じることによって、MP屈曲、PIP過伸展、DIP屈曲位となるスワンネック変形が生じる。
4.〇 正しい。中央索の断裂によりボタン穴変形が起こる。なぜなら、側索が掌側へ移動するため。ちなみに、ボタン穴変形は、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。したがって、手の母指には起こらない。
5.× 終止腱(側索の停止部)の断裂により槌指が起こる。槌指変形(マレット指)とは、DIP関節が曲がったまま伸ばせなくなった状態である。手指にも足趾にも見られる。

Steinbrockerの病気分類

Steinbrockerのステージ分類とは、関節リウマチ患者の関節破壊の程度を病期に合わせて分類する方法である。一方、クラス分類とは、関節リウマチの機能障害度をクラス別に分類する方法である。ステージ(クラス)ⅠからⅣの4段階に分類し、進行度を評価する。

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

類似問題はこちら↓

【OT専門のみ】関節リウマチについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

9 把持能力が低下した関節リウマチ患者の自助具として適切なのはどれか。2つ選べ。

解答1・2

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

関節保護の原則とは?

関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1〜2.〇 正しい。ボタンエイド/クリップ付きスプーンは、把持能力が低下した関節リウマチ患者に適応である。手指の巧緻性の低下を補い、手・手関節の負担を軽減する。
3.× 長柄ブラシである。肩・肘関節などの可動域制限による、リーチ制限に対応した自助具である。
4.× ソックスエイドである。股関節などの可動域制限による、リーチ制限に対応した自助具である。
5.× 吸盤付きブラシである。吸盤でブラシを固定することによって、ブラシを持たなくても洗体できる。片麻痺患者に適応となる。

 

 

 

 

 

 

10 53歳の女性。Parkinson病。Hoehn&Yahr の重症度分類Stage Ⅲ。薬物コントロールができ次第退院の予定である。
 作業療法で適切でないのはどれか。

解答

解説

本症例のポイント

・53歳の女性(Parkinson病)
・Hoehn&Yahrの重症度分類StageⅢ
StageⅢ(歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる)
・薬物コントロールができ次第、退院の予定。

1.〇 正しい。治療用粘土で広く伸ばす動作は、両肩関節外転により、胸郭や上肢の可動域拡大につながる。
2.× マスの色塗りは、小脳性失調による大字症へのアプローチである。一方、Parkinson病では、小字症がみられ、マスを塗ることはこれを助長する可能性が考えられる。
3〜4.〇 正しい。ペグボードのペグ/輪入れのリーチ動作は、肩関節屈曲により、胸郭や上肢の可動域拡大につながる。また、リーチ動作により姿勢反射障害や無動・固縮への進行予防にもつながる。
5.〇 正しい。階段昇降訓練は、下肢筋力や移動能力の維持につながる。Parkinson病には、矛盾性運動(逆説的運動)という特徴がある。矛盾性運動(逆説的運動)とは、すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができることをいう。リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えてもらうと、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。

Parkinson病の4大症状

静止時振戦
寡動(無動)
筋強剛(固縮)
姿勢反射障害

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