第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午前問題1~5】

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※問題の引用:第47回理学療法士国家試験、第47回作業療法士国家試験の問題および正答について(厚生労働省HP様より)

 

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。

 

1 図に示す自助具のうち第二のてこを利用しているのはどれか。

 

解答

解説

てこの種類

第1:作用点と力点の間に支点
【利点】比較的安定感がある。
例:シーソー、ハサミ(肘関節伸展)

第2:支点と力点の間に作用点
【利点】小さい力で大きな回転力を生む。
例:栓抜き、ボートのオール(足関節底屈)

第3:支点と作用点の間に力点
【利点】運動の速さに有利だが大きな力が必要。
例:ピンセット、トング(肘関節屈曲)

1.2.5.× 第1のてこである。荷重点(作用点)と力点の間に支点がある。
3.〇 第2のてこである。支点と力点の間に荷重点(作用点)がある。
4.× 第3のてこである。支点と荷重点(作用点)の間に力点がある。

 

 

 

 

 

 

2 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)で正しいのはどれか。

解答

解説
1.× 股屈曲は、「股関節伸展位」ではなく、背臥位で膝屈曲位にて測定する。ちなみに、【基本軸】体幹と平行な線、【移動軸】大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中央を結ぶ線)である。
2.× 体幹回旋の【基本軸】両側の上後腸骨棘を結ぶ線、【移動軸】両側の肩峰を結ぶ線である。【測定部位及び注意点】は、座位で骨盤を固定して測定する。設問の基本軸が背面となっている。
3.〇 正しい。肩水平屈曲の【基本軸】肩峰を通る矢状面への垂直線、【移動軸】上腕骨である。【測定部位及び注意点】肩関節を90°外転位とする。
4.× 前腕回内の【基本軸】上腕骨、【移動軸】手指を伸展した手掌面。【測定部位及び注意点】肩の回旋が入らないように肘関節90°屈曲位で行う。設問の移動軸が手背となっている。
5.× 小指外転(指の外転・内転)の【基本軸】第3中手骨延長線、【移動軸】第2,4,5指軸である。【測定部位及び注意点】中指の運動は橈側外転、尺側外転とする。設問の基本軸が第4中手骨延長線となっている。

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3 立位状態の患者に「後ろに反り返ってください」と指示したところ、図のような姿勢になり、これ以上に反り返ると転倒する危険があった。
 このときの評価で適切なのはどれか。

1.測定異常(Dysmetria)
2.運動分解(Decomposition of Movement)
3.協働収縮不能(Asynergia)
4.時間測定異常(Dyschronometria)
5.反拮抗運動不能(Dysdiadochokinesis)

解答

解説

協働収縮不能の検査

図は、協働収縮不能である。主に2種類の検査があり、1つ目は背臥位で行う方法。2つ目は設問のように立位で行う。患者を立たせておいて後ろに反り返らせる。正常では膝を曲げて、頭を上に向け、上半身を後ろにそらせるが、小脳障害では、膝を曲げず頭も上に向かない。したがって、そのまま後ろに倒れてしまう。

1.× 測定異常(Dysmetria)とは、目標物の距離を正確にとらえられないものをいう。深部覚障害がないにも関わらず運動が目的点を超える測定過大、目的点に達しない測定過小を併せたものである。指鼻指試験、踵膝試験などでみられる。
2.× 運動分解(Decomposition of Movement)とは、気道が円滑でなく、何段階に分かれたり、運動軌道から行きつ戻りつする状態をさす。指耳試験などで評価する。
3.〇 正しい。協働収縮不能(Asynergia)を評価している。協働収縮不能とは、複雑な動きを段階的かつ協調的に働かせることができない症状のことを指す。つまり、運動の順序や調和が障害されたり、消失した状態をいう。例えば、「後ろへ反り返る」という指示があった場合、同時に膝を曲げてバランスをとるという動作が障害され、後方へ転倒しそうになる。また、背臥位で腕を組んだまま起き上がることができない。
4.× 時間測定異常(Dyschronometria)とは、ある動作を開始しようとするとき、停止しようとするときに健常人よりも動作が遅れることをいう。患者に検者の手を両側同時に握るように命ずると、障害側では動作の開始が遅れ、完全に握りしめるまでの時間も遅れる。
5.× 反拮抗運動不能(Dysdiadochokinesis)とは、運動する筋とその拮抗筋を交互に迅速に、規則正しく、反復して運動させることが障害された状態を指す。ちなみに上肢や下肢の回内・回外運動試験でみられる。

小脳運動失調症

①測定障害:目標物の距離を正確にとらえられない。
②反復拮抗運動障害:拮抗筋の動きの切り替えがスムーズにできない。
③運動分解:運動軌道が円滑ではない。
④協働収縮不能:複雑な動きを段階的かつ協調的に働かせることができない症状のことを指す。例えば、「後ろへ反り返る」という指示があった場合、同時に膝を曲げてバランスをとるという動作が障害され、後方へ転倒しそうになる。また、背臥位で腕を組んだまま起き上がることができない。
⑤企図振戦:随意運動しようとすると粗大な振戦が出現する。
⑥時間測定異常:動作が遅れる。

 

 

 

 

 

4 WAIS-Ⅲで用いられる図版を下図に示す。
 この検査項目として正しいのはどれか。

1.行列推理
2.絵画完成
3.絵画配列
4.組合せ
5.符号

解答

解説

WAIS-Ⅲとは?

WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale:ウェクスラー成人知能検査)とは、成人用のウェクスラー知能検査WAISの改訂第3版のことである。質問やイラスト、積み木などの検査キットを用いて、「言語性IQ」「動作性IQ」に加え、「言語理解」「知覚統合」「作動記憶」「処理速度」の4つの指標が得られる。

IQとは、「同世代の集団において、どの程度の知的発達の水準にあるか」を表した数値である。平均値は100であり、点数が平均より高ければIQは100以上になり、点数が平均より低ければIQは100以下となる。79~70以上は「境界域」といい、69以下は「知的障害」と分類される。

1.〇 正しい。検査項目は行列推理に当てはまる。行列推理とは、一部分が空欄になっている図版を見て、選択肢から空欄に当てはまるものを選ぶ検査である。①動作性検査(絵画完成、符号、積木模様、行列推理、絵画配列、記号探し、組み合わせ)と②言語性検査(単語、類似、算数、数唱、知識、理解、語音整列)の14項目で構成される検査である。
2.× 絵画完成とは、カードに描かれたイラストの欠如した部分を探して説明させる検査である。動作性検査の項目に含まれる。
3.× 絵画配列とは、物語になるように呈示された絵画を並べ替える検査である。動作性検査の項目に含まれる。
4.× 組合せとは、提示されたピースを組み合わせて具体的な形を作る検査である。動作性検査の項目に含まれる。
5.× 符号とは、簡単な記号を書き写す検査である。動作性検査の項目に含まれる。

 

 

 

 

 

 

5 73歳の女性。脳出血による右片麻痺がある。Moberg のピックアップ検査の結果を示す。
 ただし、検査結果はそれぞれ回計測した所要時間の平均である。
 この結果から考えられる問題点はどれか。

1.関節拘縮
2.知覚障害
3.物体失認
4.視覚性失調
5.肢節運動失行

解答

解説

Mobergのピックアップ検査とは?

Moberg(読み方:モバーグ)のピックアップ検査は、物体識別を評価する。他にも、手指の知覚機能と運動機能の総合的な評価が可能でスクリーニング検査として使用されている。検査物品は、日常使用物品10個、容器、ストップウォッチで可能である。日常的に身近な物品10品目を10cm程度離れたトレーの中に出来るだけ速く移す。測定は開眼健側、開眼患側、閉眼健側、閉眼患側の順で行い、閉眼と開眼、健側と患側の時間差によって知覚運動機能の問題をみる。

評価基準:障害程度=「麻痺側(閉眼時−開眼時)」−「非麻痺側の(閉眼時−開眼時」
正常値(閉眼時−開眼時)は物品10個で5〜8秒
*開眼時は運動機能を、閉眼時は知覚機能を見ている。

【本症例の場合】
①右側:開眼時29秒、閉眼時実施困難
→閉眼時は知覚機能を評価しているため、知覚障害が疑われる。

1.× 関節拘縮とは断定できない。なぜなら、右側(麻痺側)開眼時で実施できているため。ちなみに、関節拘縮とは、関節の不動により、線維化することで 関節可動域減少が引き起こされ固定することである。運動機能(運動麻痺)はみられる。
2.〇 正しい。知覚障害は、検査結果から考えられる問題点である。なぜなら、右側開眼時で測定結果が得られているにも関わらず、閉眼では実施困難となっているため。主に、右側の深部感覚や位置覚などの知覚が障害されている可能性が考えられる。
3.× 物体失認とは断定できない。なぜなら、左右とも開眼時の検査で測定結果が得られているため。ちなみに、物体失認とは、日常生活に身近な物品であっても視覚による認識あるいは呼称ができない状態である。
4.× 視覚性失調とは断定できない。なぜなら、開眼時の検査で左右ともに測定結果が得られているため。ちなみに、視覚性失調(視覚性運動失調)とは、注視している対象をつかもうとしても、そこに手を持っていくことができない状態である。つまり、物体に触ることができず、開眼時にも実施困難となる。
5.× 肢節運動失行とは断定できない。なぜなら、本症例は右片麻痺を呈しているため。ちなみに、肢節運動失行とは、運動麻痺や運動失調がないにも関わらず目的動作運動がスムーズに行えない状態をいう。検査方法としては机に上に置いたペンなどをつかむ、ボタンをかける、スプーンを使うなどがあり、それらの動作ができるかどうか、あるいはスムーズに行えるかどうか観察する。

 

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