第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

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11 55歳の女性。末梢神経障害。短母指外転筋、母指対立筋、虫様筋(第1・第2)がMMT1〜2であった。
 この患者に用いるスプリントとして適しているのはどれか。

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の女性。
・末梢神経障害。
・短母指外転筋、母指対立筋、虫様筋(第1・第2):MMT1〜2
正中神経低位麻痺

ちなみに、長母指屈筋や浅指屈筋、示指と中指の深指屈筋の麻痺も見られれば高位麻痺といえる。

1.× ナックルベンダーである。尺骨神経麻痺高位型(鷲手)に適応である。MP関節屈曲の補助機能を持つ。
2.× 長対立装具である。正中神経麻痺高位型や頸髄損傷(C6レベル残存)に適応がある。 
3.× トーマス型スプリントである。橈骨神経麻痺高位型(下垂手)に適応がある。手背屈位にし、把持動作を獲得させる。
4.〇 正しい。短対立装具がこの患者に用いるスプリントである。なぜなら、正中神経麻痺低位型に適応があるため。母指を対立位に保持し、第1・第2中手骨の間を一定に保つ。
5.× コックアップ型装具である。橈骨神経麻痺高位型(下垂手)に適応がある。手関節背屈位に保持する。

 

 

 

 

 

 

 

12 55歳の女性。筋萎縮性側索硬化症。発症後5年経過し、在宅療養中。現在、座位時間は1日4〜5時間。錐体路徴候を認め、室内では車椅子での移動はかろうじて可能だが、患者の話す声はようやく聞き取れる程度である。夫と息子は、自宅で自営業を営んでいるため、仕事の忙しい時間帯の家事はヘルパーを頼んでいる。
 この患者の日常生活の支援で適切でないのはどれか。

1.コミュニケーション障害に備えて透明文字盤の導入を検討する。
2.下肢の痙縮を利用して、ツイスターで移動動作の介助を楽にする。
3.ベッド柵に鏡を取り付けて、入ってくる人が見えるようにする。
4.環境制御装置の導入を検討する。
5.介護者に連絡するための緊急連絡手段を検討する。

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の女性(筋萎縮性側索硬化症)。
・発症後5年経過し、在宅療養中。
・現在:室内では車椅子での移動はかろうじて可能だが、患者の話す声はようやく聞き取れる程度である。
・夫と息子は、自宅で自営業を営んでいるため、仕事の忙しい時間帯の家事はヘルパーを頼んでいる。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。コミュニケーション障害に備えて透明文字盤の導入を検討する。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は進行性疾患であるため。また、全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段(透明文字盤)が利用される。
2.× 下肢の痙縮を利用して、ツイスターで移動動作の介助を楽にする必要はない。ツイスターは、①股関節の回旋コントロール、②下肢の回旋変形を矯正する目的に用いる。特に、立位歩行時に下肢が内旋する場合に用いるものである。本症例の場合、発症5年経過しており、車椅子での移動がなんとか可能なレベルである。したがって、ツイスターの適応ではなく、歩行での移動手段は危険が伴うため難しいと考えられる。
3.〇 正しい。ベッド柵にを取り付けて、入ってくる人が見えるようにする。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は、眼球運動は残存するため。頭部の運動は難しい状態であると考えられるが、鏡を効果的に設置すれば眼球運動により多方向の視認も可能である。
4.〇 正しい。環境制御装置の導入を検討する。筋萎縮性側索硬化症は、眼球運動は残存するため視線入力装置を介しての環境制御装置の操作が可能である。環境制御装置とは、わずかな随意機能でセンサーやスイッチを作動させ、家電やパソコンなど複数の装置を制御できるようになっているものである。
5.〇 正しい。介護者に連絡するための緊急連絡手段を検討する。ナースコール同様、緊急時にすぐに人を呼べるシステムは整備するべきである。また本症例の場合、夫と息子は、自宅で自営業を営んでおり、早急な対応が困難と予想される。

ツイスター(※写真引用:厚生労働省様HP)

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【OT/共通】筋萎縮性側索硬化症についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

13 体幹の筋緊張が低い脳性麻痺の乳児の抱き方で適切でないのはどれか。

解答

解説

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。

1〜3.5.〇 正しい。本症例は、体幹の筋緊張が低いことが特徴である。体幹が伸展した場合でも対応できる。
4.× 児の体幹の支えがないため、体幹が伸展した場合、対応できず後方に転落する危険性が高い。したがって、体幹の筋緊張が低い脳性麻痺の乳児の抱き方で適切でない。

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【PT/OT/共通】脳性麻痺についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

次の文により14、15の問いに答えよ。
 21歳の男性。大学入学後、クラスの中で強い緊張を感じ、身体のふるえや手掌の発汗が止まらなくなった。その後、自宅に引きこもるようになったため家族に伴われて精神科外来を受診した。

14 この疾患の特徴はどれか。

1.思春期に好発する。
2.回避傾向がみられる。
3.強迫行為が主症状である。
4.患者の大多数が男性である。
5.見知らぬ人と同席できない。

解答

解説

本症例のポイント

21歳の男性。
・大学入学後、クラスの中で強い緊張を感じ、身体のふるえ手掌の発汗が止まらなくなった。
・その後、自宅に引きこもるようになった。
→本症例は、回避性パーソナリティ障害が疑われる。回避性パーソナリティ障害とは、①社会的状況で恥をかくことや、②相手から拒絶される可能性を常に意識している特徴を持つパーソナリティ障害である。対人関係においても不安や恐怖が強いため、仕事や恋愛などにも支障をきたし、場合によっては引きこもりになってしまうこともある。パーソナリティが形成されていることが前提となるため、一般的には18歳以上で診断が下されることが多い。

1.× 「思春期」ではなく成人早期(18~40歳頃)に好発する。なぜなら、パーソナリティが形成されていることが前提となるため。
2.〇 正しい。回避傾向がみられる。回避傾向とは、予期不安(また発作が起こるのではないかという不安)により、助けが求められない状況や容易に逃げられない場所を恐れ(広場恐怖)、そのような場所を回避するようになることである。対人関係においても不安や恐怖が強いため、仕事や恋愛などにも支障をきたし、場合によっては引きこもりになってしまうこともある。
3.× 強迫行為が主症状であるのは、強迫性障害の特徴である。迫行為とは、不合理な観念(手を洗っても汚いままなど)を解消するために繰り返し行ってしまう行為のことをいう。自分でもおかしいとわかっていながら、その行為を繰り返し、それが日常生活に障害をもたらしていることを強迫性障害という。
4.× 患者の大多数が男性であるという報告はない。2001~2002年に行われた「全米におけるアルコールおよび関連疾患に関する全国疫学調査」によると、回避性パーソナリティ障害の有病率は約2.4%と推測されている。 男女比は同程度と考えられている。
5.× 見知らぬ人と同席できないのは、対人恐怖症社交(社会ともいう)不安障害の特徴である。回避性パーソナリティ障害は、拒絶、批判、または屈辱を受けるリスクのある社会的状況や交流を回避することを特徴とする。

 

 

 

 

 

 

次の文により14、15の問いに答えよ。
 21歳の男性。大学入学後、クラスの中で強い緊張を感じ、身体のふるえや手掌の発汗が止まらなくなった。その後、自宅に引きこもるようになったため家族に伴われて精神科外来を受診した。

15 外来作業療法に通うことになった。
 この患者の作業療法で適切でないのはどれか。

1.個室を使用する。
2.SSTを取り入れる。
3.生活リズムを整える。
4.自己評価の特徴を話し合う。
5.リラクセーションの練習をする。

解答

解説

本症例のポイント

・21歳の男性。
・大学入学後、クラスの中で強い緊張を感じ、身体のふるえや手掌の発汗が止まらなくなった。
・その後、自宅に引きこもるようになった。
→本症例は、回避性パーソナリティ障害が疑われる。回避性パーソナリティ障害とは、①社会的状況で恥をかくことや、②相手から拒絶される可能性を常に意識している特徴を持つパーソナリティ障害である。対人関係においても不安や恐怖が強いため、仕事や恋愛などにも支障をきたし、場合によっては引きこもりになってしまうこともある。パーソナリティが形成されていることが前提となるため、一般的には18歳以上で診断が下されることが多い。

1.× 個室を使用する優先度が低い。なぜなら、より症状の悪化が懸念されるため。回避性パーソナリティ障害は、拒絶、批判、または屈辱を受けるリスクのある社会的状況や交流を回避することを特徴とする。
2.〇 正しい。SSTを取り入れる。SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練) とは、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つである。ストレス-脆弱-処理機能モデルに基づき、患者が環境と好ましい関係を持てるようにすることを目的としている。
3.〇 正しい。生活リズムを整える。なぜなら、本症例は自宅に引きこもりがちとなっているため。
4.〇 正しい。自己評価の特徴を話し合う。なぜなら、本症例は自宅に引きこもりがちとなり、外出できない状況が続くと、2次的にうつ状態となり過度に自己評価を低くする可能性があるため。
5.〇 正しい。リラクセーションの練習をする。なぜなら、リラクセーションで緊張感の軽減ができるため。

 

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