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6 52歳の男性。右利き。脳梗塞による右片麻痺。発症後14日目に回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。意識は清明で、認知機能に問題はない。Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅴ。疼痛や浮腫はない。機能回復を目的とした作業療法を図に示す。
現時点でこの患者の右上肢に行う訓練で最も適切なのはどれか。
1.ペグ差し
2.立位での輪投げ
3.両手でボールを受ける
4.輪を背中で持ち替え
5.肘伸展位での窓拭き
解答4
解説
・52歳の男性(右利き、脳梗塞による右片麻痺)。
・発症後14日目:意識清明、認知機能問題なし。
・Brs:上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅴ。
・疼痛や浮腫はない。
→本症例の状態を考慮し、優先順位を考えながら、最も適切なものを選択できるようにしよう。
・上肢Ⅲ:座位で肩・肘の同時屈曲、同時伸展
・手指Ⅲ:全指同時握り、釣形握り(握りだけ)伸展は反射だけで、随意的な手指伸展不能
・下肢Ⅴ:立位で股伸展位、またはそれに近い肢位、免荷した状態で膝屈曲分離運動。立位、膝伸展位で、足を少し前に踏み出して足関節背屈分離運動
ステージⅢ(共同運動が顕著で痙縮が強く、分離運動ができない状態)の作業療法では、①屈筋群の緊張を抑制、②伸筋の誘発・促通、③随意的伸展を可能にすることである。
1.× ペグ差し練習より優先されるものが他にある(難易度が高すぎる)。なぜなら、本症例のBrs:手指Ⅲであるため。ペグを把持するのは、協調性のある分離運動が必要であるため、手指BrsステージⅣよりもⅤ寄りに対象となる。
2.× 立位での輪投げ練習より優先されるものが他にある(難易度が高すぎる)。なぜなら、本症例のBrs:上肢Ⅲ・手指Ⅲであるため。輪投げは、輪を握る・腕を持ち上げる・狙って投げる(つまり肘関節や手指の伸展・離す動作)ため、上肢・手指BrsステージⅣよりもⅤ寄りに対象となる。
3.× 両手でボールを受ける練習より優先されるものが他にある(難易度が高すぎる)。なぜなら、本症例のBrs:上肢Ⅲ・手指Ⅲであるため。両手でボールを受ける練習は、空間を移動し続けるボールをキャッチする必要があるため、協調性のある分離運動が必要である。大きめのボールや風船のようなゆっくりした動きのするボールに変更し難易度を落としたとしても、上肢・手指BrsステージⅣよりもⅤ寄りに対象となる。
4.〇 正しい。輪を背中で持ち替えを実施する。なぜなら、本症例のBrs上肢Ⅲ・手指Ⅲであるが、座位で安全面に考慮し、上肢Ⅳの動作(腰を後方に手をつく)、手指Ⅳの動作(半随意的な手指伸展)を練習できているため。
5.× 肘伸展位での窓拭き練習より優先されるものが他にある(難易度が高すぎる)。なぜなら、本症例のBrs:上肢Ⅲであるため。肘伸展位での肩関節90度以上の挙上(窓ふき)は、上肢BrsⅤ以上に対象となる。
7 19歳の男性。身長170cm、体重60kg。頚髄損傷(第6頚髄節まで機能残存)。車椅子は全幅70cm、全長120cm。車椅子とベッド間の移乗は前・後方移動で自立し、ADLは自助具や環境整備で自立の見込みを得た。住宅改修図を下に示す。
正しいのはどれか。
1.①屋外スロープの勾配を1/6にした。
2.②居間と台所の開口部の幅を80cmにした。
3.③車椅子が回転するポーチの幅を140cmにした。
4.④歩行者とすれ違うための廊下幅を120cmにした。
5.⑤床面から浴槽の縁までの高さを80cmにした。
解答3
解説
・19歳の男性(身長170cm、体重60kg)。
・頚髄損傷(第6頚髄節まで機能残存)。
・車椅子:全幅70cm、全長120cm。
・車椅子とベッド間の移乗:前・後方移動で自立。
・ADL:自助具や環境整備で自立の見込み。
→第6頚髄節残存レベル(Zancolliの分類ではC6BⅠ~Ⅱ)は、肩・肘関節屈曲筋を用いて車いすを駆動でき実用的な車椅子駆動のほか、前方アプローチでの移乗動作が可能になる。C6機能残存レベルは、【主な動作筋】大胸筋、撓側手根屈筋、【運動機能】肩関節内転、手関節背屈、【移動】車椅子駆動(実用レベル)、【自立度】中等度介助(寝返り、上肢装具などを使って書字可能、更衣は一部介助)である。C6機能残存レベルのプッシュアップは、肩関節外旋位・肘関節伸展位・手指屈曲位にて骨性ロックを使用し、不完全なレベルであることが多い。
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)
1.× ①屋外スロープの勾配は、「1/6」ではなく1/12以下(屋外は1/15)にするべきである。屋外スロープの勾配が1/6(高さ1に対し水平距離6)という設定は、19歳の男性でもきつすぎる。
2.× ②居間と台所の開口部の幅を「80cm」ではなく90cmにすべきである。ちなみに、車椅子の全幅は、70cm以下にJIS規定(今回、かなりギリギリの大きさの車椅子)されており、走行の振れ幅や操作時の両肘の張り出しを考慮すると、通行幅は最低でも90cm(建築物移動等円滑化誘導基準)は必要であるため。ただし、建築物移動等円滑化基準においても、居室などの出入口の幅は【80cm】と定められている(※下参照)。さらに、補足であるが、第6頚髄節残存レベルにおいて、適度な摩擦が得られればノブ付きハンドリムは不要である。車いす用グローブの利用などにて適度な摩擦が得られれば肩関節の動きを利用して駆動することが可能である。ハンドリムのノブは握りの弱さを補うためのものである。ノブ付きハンドリムが必要な症例の場合は、さらに開口部の幅を広げたほうが、日常生活にストレスがかかりにくい。
3.〇 正しい。③車椅子が回転するポーチの幅を140cmにした。なぜなら、90°の回転には幅135cm必要となるため(※下図参照)。ちなみに、180°の回転には幅140cm必要となる。
4.× ④歩行者とすれ違うための廊下幅は、「120cm」ではなく150cmにすべきである。幅120cmは、「通路を車いす使用者が通行しやすい寸法」である。歩行者が横向きで止まる必要がある。
5.× ⑤床面から浴槽の縁までの高さを「80cm」ではなく40cmにするべきである。なぜなら、80cmだと高すぎて、またぐのは困難(危険)であるため。
数値:【建築物移動等円滑化基準】(建築物移動等円滑化誘導基準)
玄関出入口の幅:【80cm】(120cm)
居室などの出入口:【80cm】(90cm)
廊下幅:【120cm】(180cm)※車椅子同士のすれちがいには180cm
スロープ幅:【120cm】(150cm)
スロープ勾配:【1/12以下】(1/12以下、屋外は1/15)
通路の幅:【120cm】(180cm)
出入口の幅:【80cm】(90cm)
かごの奥行:【135cm】(135cm)
かごの幅(一定の建物の場合):【140cm】(160cm)
乗降ロビー:【150cm】(180cm)
(※参考:「バリアフリー法」国土交通省HPより)
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)
(※図引用:「車いすの回転寸法」山形県HPより)
(画像引用:松永製作所様HP〜ノブ付きハンドリム〜)
8 8歳の女児。脳性麻痺痙直型両麻痺である。ボール遊び時の姿勢設定を図に示す。
この児の適切な姿勢設定はどれか。
解答5
解説
両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺の歩行(クラウチング歩行)は、股・膝とも屈曲位で伸びきらない歩行である。さらに、股関節は内転・内旋となるため内股での歩行が特徴的である。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。
両麻痺は両下肢の麻痺に、軽~中等度の両上肢、体幹の麻痺を伴うことが多い。亢進した筋緊張を抑制し、①病的反射の抑制、②適切な反射の促通、③運動パターンの学習を行う。具体的には、①バルーン上の座位練習、②膝立ち位保持練習、③両足底接地しながらの立位練習、④四つ這い位保持練習などを行う。
1.× 床にうつ伏せで上肢を台にあるボールに手を伸ばす姿勢は、股関節伸展・内転位、膝関節伸展位、足関節底屈位を助長しているため不適切である。
2.× 割り座でボールを持つ姿勢は、骨盤の後傾かつ股関節内転・内旋を助長するため不適切である。
3.× 両手の手掌で目の前のボックスについた膝立ちは、股関節内転・内旋位となっているため不適切である。ただし、骨盤や股関節を中間位とした膝立ち位保持練習は亢進した筋緊張を抑制に期待できる。
4.× 椅子に座って机上でボールを操作する姿勢は、股関節伸展・内転位、膝関節伸展位、足関節底屈位を助長しているため不適切である。
5.〇 正しい。座位で前屈しながらボールを扱う姿勢が適切な姿勢設定といえる。両足底接地もしていることから、亢進した筋緊張を抑制し、①病的反射の抑制、②適切な反射の促通、③運動パターンの学習が期待できる。
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9 78歳の男性。病室からリハビリテーション室まで歩いて来室した。到着後に息苦しく動悸がすると訴えたため、直ちに心電図検査が施行された。心電図を下に示す。
心電図の所見で正しいのはどれか。
1.心室細動
2.心室頻拍
3.心房細動
4.心室性期外収縮
5.完全房室ブロック
解答3
解説
今回設問で提示された心電図は、第Ⅰ誘導、第Ⅱ誘導、第Ⅲ誘導、aVR誘導、aVL誘導、aVF誘導である。
第Ⅰ誘導:左室の側壁を見ている。つまり、主に右室側から心臓を見る誘導である。
第Ⅱ誘導:心臓を心尖部から見ている。 つまり、右室と左室前壁側から心臓を見る誘導である。
第Ⅲ誘導:右室側面と左室下壁を見ている。つまり、心室中隔と左室前壁から心臓を見る誘導である。
aVR誘導:右肩から心臓を見る誘導である。逆転した波形が見られる。
aVL誘導:左肩から心臓を見る誘導である。
aVF誘導:心臓を、ほぼ真下から見ている。
第Ⅱ誘導が四肢誘導で、波形が最も明瞭に描かれ、一般的によく見る心電図の波形となる。
①P波が明確に確認できない
②RR間隔が不整である(絶対性不整脈)
③基線が細かく揺れている(f波の出現)
1.× 心室細動とは、脈のかたちが一定ではなく不規則で、心室がけいれんを起こし1分間の脈拍数が300など数えられないくらい速くなった状態である。心室頻拍は血圧が保たれ、すぐには意識を失わないこともあるが、心室細動になると、発症から5~10秒で意識がなくなって失神し、その状態が続くとそのまま亡くなることが多い。心室頻拍の場合も、ほうっておくと心室細動に移行して、意識がなくなって突然死を起こすことがある。除細動の適応である。また、基礎心疾患を伴う場合は、植え込み型除細動器(ICD)の適応となる。
2.× 心室頻拍とは、P波はなく、幅広く変形したQRSのRR間隔が等しく出現している状態で、心室性期外収縮3連発以上のものをいう。P波は見えない例が多く、心臓ポンプ作用が低下し、心拍出量が減少する。器質的心疾患(陳旧性心筋梗塞や拡張型心筋症など)を有する患者に生じることが多い。
3.× 心房細動が該当する。心房細動とは、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。
4.× 心室性期外収縮とは、本来の洞結節からの興奮より早く、心室で興奮が開始していることをいう。つまり、P波が認められず、幅広い変形したQRS波がみられる。
5.× 完全房室ブロックとは、心房興奮が心室にまったく伝わらなくなった状態である。重度となれば、眼前暗黒感、失神、呼吸困難がみられる。高度徐脈となるためペースメーカー植込みが必要になる。
房室ブロックは、心房から心室への伝導障害をいう。第1度〜第3度に分類される。
・1度房室ブロック:心房から心室への伝導時間が延長するが、P波とQRS波の数や形は変わらない。
・2度房室ブロック
①ウェンケンバッハ型(モビッツⅠ型):PR間隔が徐々に延長してQRSが脱落する。
②モビッツⅡ型:心房から心室への伝導が突然途絶える。P波の後のQRSが突然脱落する。
・3度房室ブロック:心房からの刺激が途絶え、P波とQRSが無関係に生じるようになる。
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10 71歳の男性。令和6年8月19日(月)に病院で認知症の検査を受けた。結果を下に示す。
疑われる認知症の重症度はどれか。
1.認知症なし
2.軽度認知症
3.中等度認知症
4.重度認知症
5.最重度認知症
解答2
解説
・改訂長谷川式簡易知能評価スケールとは、認知機能をみる質問紙法による簡易精神機能検査である。
・9項目の質問に答え、30点満点で20点以下を認知症の疑いとする。参考数値として、認知症でない人の平均は24点前後、軽度認知症の平均は19点前後、中等度認知症の平均は15点前後、重度認知症の平均は10点前後とされている。
本症例の場合は、合計18点である。
【詳細】①年齢1点(2年の誤差は正答とする)、②日時の見当識4点(完答)、③場所の見当識2点(自発的)、④3つの言葉の記名3点(完答)、⑤計算1点(2回目ミス)、⑥数字の逆唱1点(2回目ミス)、⑦3つの言葉の遅延再生3点(1つ目は自発的2点、2つ目はヒント有〇1点、3つ目はヒント有×0点)、⑧5つの物品記名2点(5つのうち2つ答えられている)、⑨言葉の流暢性2点(7つは2点)
1.× 認知症なしの場合、20点以上(平均は24点前後)であることが多い。
2.〇 正しい。軽度認知症が疑われる認知症の重症度である。19点前後が軽度認知症に該当する。
3.× 中等度認知症の場合は、15点前後が該当する。
4.× 重度認知症の場合は、10点前後が該当する。
5.× 最重度認知症の場合は、10点未満が該当する。
2012年の日本の65歳以上の高齢者における、認知症有病率推定値は15%で、認知症有病者数は約462万人と推計されている。軽度認知障害(MCI)の有病率は、13%と推定され、約400万人の軽度認知症の方がいると推計されている。ちなみに、軽度認知障害(MCI)とは、認知症と正常な状態の中間と定義され、時間経過とともにアルツハイマー型認知症を発症すると言われている。軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー型認知症の違いは、日常生活を独立して行えるかどうかとされているが、その境界線は曖昧である。
【軽度認知障害〈MCI〉の診断基準】(Winblad B ら、2004)
1.認知症または正常のいずれでもないこと
2.客観的な認知障害があり、同時に客観的な認知機能の経時的低下、または、主観的な低下の自己報告あるいは情報提供者による報告があること
3.日常生活能力は維持されており、かつ、複雑な手段的機能は正常か、障害があっても最小であること
(※引用:「認知症と軽度認知機能障害と軽度認知機能障害について」厚生労働省様HPより)