第60回(R7) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題71~75】

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71 体幹の伸展運動を図に示す。
 伸展を制動する靭帯はどれか。


1.棘上靭帯
2.棘間靭帯
3.前縦靭帯
4.後縦靭帯
5.横突間靭帯

解答

解説
1.× 棘上靭帯とは、第7頚椎から仙骨までの棘突起先端間を結ぶ強い線維索である。浅い線維は3~4椎をとびこえる。 第7頚椎より上方では、項靱帯に連なる。したがって、脊柱の前屈を制限する。

2.× 棘間靭帯とは、隣り合う上下の棘突起を結ぶ薄い膜性の靱帯である。棘突起と共に左右の固有背筋を隔てる中隔を形成する。したがって、脊柱の前屈を制限する。

3.〇 正しい。前縦靭帯は、体幹伸展(脊柱前弯)を制動する靭帯である。特に、靭帯において制動も制御も惑わされる必要はない(下に装具学の継手の定義は載せておく)
・前縦靱帯とは、脊椎椎体の前縁を上下に連結する靭帯である。

4.× 後縦靭帯とは、脊椎椎体の後縁を上下に連結する靭帯である。したがって、脊柱の前屈を制限する。

5.× 横突間靭帯とは、脊椎の横突起同士を上下につなぐ靭帯である。したがって、主に脊柱の側屈を制限する。

継手の種類

①固定とは、どの方向にも動かない。
②遊動とは、どの方向にも抵抗なしで動く。
③制限とは、ある角度から動かない。
④制動とは、ある方向にブレーキを受けながら動く。
⑤補助とは、一度たるんだものが元に戻るときに、動きと同方向の力を発生する。

 

 

 

 

 

72 努力性呼気時に働く筋で誤っているのはどれか。

1.腹直筋
2.肋下筋
3.外肋間筋
4.内腹斜筋
5.内肋間筋後部

解答

解説

呼吸運動について

①安静吸気:横隔膜・外肋間筋
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気:呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気:内肋間筋腹横筋腹直筋が関与。

1.〇 腹直筋は、努力性呼気時に働く。腹直筋の【起始】恥骨結合と恥骨結節との間、【停止】第5~第7肋軟骨、剣状突起の前面、【作用】胸郭の前部を引き下げまたは骨盤の前部を引き上げ、また脊柱を前方に曲げる。

2.〇 肋下筋は、努力性呼気時に働く。肋下筋は、内肋間筋に連続して存在し、内肋間筋の後方に存在する。ちなみに、内肋間筋は努力呼気に働く。外肋間筋と反対に肋骨を引き下げて胸郭を狭める(呼息)。

3.× 外肋間筋は、安静吸気時(強制吸気時)に働く。外肋間筋の【起始】上位肋骨下縁、【停止】下位肋骨上縁、【作用】肋骨を引き上げて胸郭を広げる(吸息)である。

4.〇 内腹斜筋は、努力性呼気時に働く。内腹斜筋の【起始】白線・恥骨稜・腸骨稜、【停止】腰腱膜、【作用】上体を同側に回す。腹圧を高め、腹式呼吸のとき呼息を行う。

5.〇 内肋間筋(後部は、努力性呼気時に働く。内肋間筋の【起始】下位肋骨上縁、【停止】上位肋骨の下縁および内面、【作用】外肋間筋と反対に肋骨を引き下げて胸郭を狭める(呼息)である。

※内肋間筋全体でみると、努力呼気に働くが、内肋間筋の前部線維だけ単独でみた場合、胸郭を横へ広げるように作用するため、吸気に働く(ただ、ここまで国家試験で問われることは教科書レベルではなく、選択肢として出てくることはあっても、正解となることはないかと・・・)。

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73 上肢の筋と運動の組合せで正しいのはどれか。

1.烏口腕筋:肩伸展
2.上腕二頭筋:前腕回外
3.上腕筋:肘伸展
4.腕橈骨筋:肘伸展
5.長橈側手根伸筋:前腕回内

解答

解説
1.× 烏口腕筋:肩伸展
・烏口腕筋の【起始】烏口突起、【停止】上腕骨の内側面の中部、【作用】肩関節屈曲、内転、【支配神経】筋皮神経である。

2.〇 正しい。上腕二頭筋:前腕回外
・上腕二頭筋の【起始】長頭:肩甲骨の関節上結節、短頭:肩甲骨の烏口突起、【停止】橈骨粗面、腱の一部は薄い上腕二頭筋腱膜となって前腕筋膜の上内側に放散、【作用】肘関節屈曲、回外(長頭:肩関節外転、短頭:肩関節内転)、【神経】筋皮神経である。

3.× 上腕筋:肘伸展
・上腕筋の【起始】上腕骨の内側および外側前面の下半、内・外側の筋間中隔、肘関節包前面(広い)、【停止】鈎状突起と尺骨粗面(肘関節包)、【作用】肘関節屈曲、【支配神経】筋皮神経(外側は橈骨神経)である。

4.× 腕橈骨筋:肘伸展
・腕橈骨筋の【起始】上腕骨外側縁の下部、外側上腕筋間中隔、【停止】橈骨遠位下端、茎状突起、【作用】肘関節屈曲、回内位での回外、回外位での回内、【神経】橈骨神経である。

5.× 長橈側手根伸筋:前腕回内
・長橈側手根伸筋の【起始】上腕骨外側縁、外側上顆および外側上腕筋間中隔、【停止】第2中手骨底の背面橈側、【作用】手関節の背屈、橈屈、【神経】橈骨神経である。

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【暗記確認用】すべての筋のランダム問題

 

 

 

 

 

74 運動学習で正しいのはどれか。

1.運動学習の過程には小脳が関与する。
2.運動学習の初期段階で手続き記憶が得られる。
3.覚醒レベルとパフォーマンス向上は比例関係である。
4.課題に習熟するとフィードバック制御で運動が行われる。
5.練習量と達成度の関係を示す学習曲線は逆U字型である。

解答

解説

運動学習とは?

運動学習とは、訓練や練習を通して獲得される運動行動の変化で、状況に適した協調性が改善していく過程である。感覚運動学習とも呼ぶ。運動学習をする際には、①口頭指示(文字のみ)→②模倣→③介助(誘導)の順で難易度が下がっていく。

1.〇 正しい。運動学習の過程には小脳が関与する。小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)、熟練した運動の学習を行っている。小脳は手続き記憶に関与する。手続き記憶とは、スポーツ技能の習得などの記憶である。特徴として、言語的表現が困難な記憶である。

2.× 運動学習の「初期段階(認知相)」ではなく最終相(自動相)で、手続き記憶が得られる。なぜなら、初期段階(認知相)は、認知的な努力が大きく、動作の意識的な制御が中心となるため(各相の特徴は下参照)。

3.× 覚醒レベルとパフォーマンス向上は、「比例関係」ではなく逆U字型である。これは、Yerkes-Dodsonの法則(ヤーキーズ・ドットソンの法則)という。覚醒レベルとパフォーマンスの関係は、最適な覚醒レベル(中程度)が最も良いパフォーマンスを生み、過度または不足するとパフォーマンスが低下する。

4.× 課題に習熟すると、「フィードバック制御」ではなくフィードフォワード制御で運動が行われる。なぜなら、運動の習熟が進むと、事前に予測したフィードフォワード制御が主となり、よりスムーズな動作が実現できるため。したがって、熟練者は、自身の内的予測モデルに基づいて自動的に動作を実行し、細かな調整はほとんど必要ない。
・フィードバック制御とは、結果を受けて調節する振り返り型の制御である。
・フィードフォワード制御とは、目標を先に決めて外部要因を評価しつつ、達成に向けて修正を加える制御である。

5.× 練習量と達成度の関係を示す学習曲線は、「逆U字型」ではなく様々な型である。代表的な型として、学習初期に勾配が急で後期にゆるやかになる負の加速度曲線、学習の初期に勾配がゆるやかで後期に急になる正の加速度曲線、学習の初期および後期に勾配がゆるやかで、中期には急なS字型曲線などがあげられる。

運動技能学習

①初期相(認知相)
何を行うかを理解し、技能獲得のための戦略を立てる時期。

②中間相(連合相)
個々の運動が滑らかな協調運動へと融合して系列動作へと移行する。初期の理解の誤りが見出され、修正され余剰の運動は省かれる。

③最終相(自動相)
運動は空間的・時間的に統合され、無駄がなく、速く滑らかになる。手続きは自動化され、運動に対する注意は減少していく。運動技能は完成に近づくが、さらに高度な技能を身につけたい場合には過剰学習によって下位技能を身につけなければならない。

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75 免疫反応で最初に産生されるのはどれか。

1.IgA
2.IgD
3.IgE
4.IgG
5.IgM

解答

解説
1.× IgAとは、体内では2番目に多い免疫グロブリンで、鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在している。IgAは、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止する働きがある。

2.× IgDとは、扁桃腺および上気道にある抗体を産生する形質細胞から放出され、呼吸器系の免疫に作用していると考えられている。 IgAやIgGと比較しても微量しか存在していない免疫グロブリンである。

3.× IgEとは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。生後6か月以降の乳幼児では、しばしばアトピー性アレルギー疾患の進行に伴って血清中のIgE抗体が上昇する。

4.× IgGとは、分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。母体からのIgGが消失するうえに自分で産生する能力が低いため出生後3~6か月ころに最も減少するが、その後に児自身でIgGを産生する能力が伸びていく。

5.〇 正しい。IgMは、免疫反応で最初に産生される。IgMは、B細胞が初めて抗原に出会った際に即座に分泌され、その後、クラススイッチを経てIgGなどに変換される。
・クラススイッチとは、B細胞が作る抗体(免疫グロブリン)の種類を、病原体などの刺激に応じて変える仕組みのことである。抗体が病原体と結合する部分はそのままで、働きや性質を変えることで、より効果的に免疫反応を行う。
・IgMとは、新生児由来であり、児に感染が起きたときに産生される免疫グロブリンである。しかし、感染防御力は低い。出生直後の新生児の血中IgMが高値の場合は、胎内または分娩時の感染が示唆される。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

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