第60回(R7) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題76~80】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

76 過形成で正しいのはどれか。

1.細胞数は一定である。
2.急性刺激により生じる。
3.細胞の容積は増大する。
4.刺激がなくなれば停止する。
5.臓器のサイズは一定である。

解答

解説

MEMO

・退行性病変とは、量的、質的に異常物質の過剰な沈着が細胞内や間質に認められる生体内の組織の局所的な死のこと。大きな分類として、①萎縮、②変性、③壊死、④アポトーシスがあげられる。

・進行性病変とは、傷害された組織を何らかの新生組織で補修し、あるいはこれを代償しようとする機序を再生・修復するもののこと。大きな分類として、①肥大(細胞数変化なし、細胞自体大きくなる)、②過形成(細胞数も細胞自体も大きくなる)、③化生(ほかの細胞へ変化)があげられる。

1.× 細胞数は、「一定」ではなく増加する。細胞数が一定で、細胞自体が大きくなるものは、「肥大」に該当する。肥大とは、細胞や組織・臓器の大きさが増して容量が増大する事である。病的肥大には、高血圧症や弁膜症に伴う心肥大、前立腺肥 大に伴う膀胱壁の筋肥大などがある。

2.× 急性刺激により生じるのは、「炎症性の病変」である。一般的に、過形成は、持続的または反復的な刺激によって引き起こされるものである。

3.× 細胞の容積は、「増大」ではなく変化しない。細胞の容積(細胞自体)が増大するものは、「肥大」に該当する。

4.〇 正しい。刺激がなくなれば停止する。なぜなら、過形成は刺激に依存した現象であり、刺激が取り除かれると細胞増殖が停止し、場合によっては逆転することもあるため。
・過形成とは、外来の刺激に対する正常細胞の応答として細胞増殖が起こることによって、組織の体積が増加することである。外部からの刺激は生理的なものも異常なものも含む。

5.× 臓器のサイズは、「一定」ではなく大きくなる。過形成は、細胞数が増加すると、通常は臓器や組織全体のサイズも大きくなる。

 

 

 

 

 

77 リンパ浮腫への対応で正しいのはどれか。

1.利尿薬で治療する。
2.水分摂取を制限する。
3.患肢の体毛を剃毛する。
4.患肢の皮膚を保湿する。
5.患肢を低い位置に保つ。

解答

解説

リンパ浮腫とは?

リンパ浮腫とは、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下に、リンパ管内に回収されなかった、リンパ液がたまってむくんだ状態のことをいう。つまり、リンパ浮腫以外の浮腫を惹起する疾患や、癌の転移・再発が除外される必要がある。ちなみに、リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。

1.× 利尿薬で治療する優先度は低い。なぜなら、リンパ浮腫は、リンパ管の閉塞や障害によって起こるもので、下肢または腕にだけ蛋白と水分が貯まっている状態であるため。したがって、全身の水分が多い状態ではなく、全身の水分を尿として強制的に出してしまう利尿剤では、脱水を引き起こる可能性がある。リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。

2.× 水分摂取を制限する必要はない。なぜなら、リンパ浮腫は、リンパ管の閉塞や障害によって起こるものであるため。したがって、水分制限によって改善は期待できない。むしろ十分な水分摂取により、体全体の代謝維持に寄与できる。

3.× 患肢の体毛を剃毛する優先度は低い。なぜなら、剃毛により、小さな傷を負いやすく、皮膚トラブルのもととなりやすいため。やむを得ない場合は、カミソリは使用しないで、負担の少ない電気シェーバーを使用するように伝える。

4.〇 正しい。患肢の皮膚を保湿する。なぜなら、皮膚の乾燥やひび割れは、感染症(例:蜂窩織炎)のリスクを高めるため。保湿による皮膚のバリア機能の維持が重要である。皮膚の負担を軽減するため、日焼けを避けるよう日常生活指導を行うこともある。

5.× 患肢を「低い」ではなく高い位置に保つ。なぜなら、低い位置の保持は、重力によってリンパ液がさらに滞留しやすくなるため。

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
【低アルブミン血症の原因】①栄養摂取の不足(低栄養状態)、②肝臓における蛋白質合成能の低下、③腎臓から尿への蛋白質の大量喪失(ネフローゼ症候群)など。

 

 

 

 

 

78 アポトーシスで正しいのはどれか。

1.核が融解する。
2.細胞の大きさは膨化する。
3.細胞死は散在性に認められる。
4.受動的に生じる細胞死である。
5.細胞内容物は細胞外へ放出される。

解答

解説

細胞死とは?

・ネクローシスとは、外部からの高度な傷害により細胞が破壊されて自己融解する病的・受動的な死のことである。壊死ともいい、局所の組織の不可逆的な障害による細胞死をさし、アポトーシスと完全に区別される。

アポトーシスとは、発生段階などで生理的に生じる自発的な死がある。つまり、プログラムされた細胞死である。生体内のマクロファージに食べられる(apoptosis:アポプトーシス)。多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた細胞死のこと。

1.× 核が融解するのは、ネクローシス(壊死)である。一方、アポトーシスの細胞内での変化は、まず核で起こることが多く、DNAの断片化という独特の分子病態像を示す。①細胞膜構造の変化→②核が凝縮する→③DNAの断片化→④「アポトーシス小胞」と呼ぶ構造となる。

2.× 細胞の大きさは膨化するのは、ネクローシス(壊死)である。一方、アポトーシスは、萎縮する。

3.〇 正しい。細胞死は散在性に認められる。なぜなら、アポトーシスとは、発生段階などで生理的に生じる自発的な死があるため。一方、ネクローシス(壊死)は、連続性に認められる。

4.× 受動的に生じる細胞死であるのは、ネクローシス(壊死)である。一方、アポトーシスは、発生段階などで生理的に生じる自発的な死がある。

5.× 細胞内容物は細胞外へ放出されるのは、ネクローシス(壊死)である。一方、アポトーシスは、マクロファージなどによって速やかに貪食される。

 

 

 

 

 

79 無意識のなかに抑え込まれた欲動が精神症状として現れると想定し、その葛藤を明らかにすることによって症状の改善を目指すのはどれか。

1.支持的精神療法
2.精神分析療法
3.認知行動療法
4.森田療法
5.来談者中心療法

解答

解説
1.× 支持的精神療法とは、患者の自我の弱い部分をサポートすることで、患者が症状に耐えて生活できる適応能力を身につけさせる方法である。患者の洞察を求める。

2.〇 正しい。精神分析療法は、無意識のなかに抑え込まれた欲動が精神症状として現れると想定し、その葛藤を明らかにすることによって症状の改善を目指す。
・精神分析療法とは、フロイトによる精神分析学を基にした精神療法で、患者の心に浮かんだ自由連想を用いて患者の無意識下にある問題の原因を分析するものである。神経症性障害患者に効果があるといわれている。

3.× 認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。

4.× 森田療法とは、目的・行動本意の作業を繰り返すことにより、症状にとらわれず、症状を「あるがまま」に受け入れながら生活できるようにする方法である。

5.× 来談者中心療法とは、治療者が来談者(クライアント)を権威で従属させることなく、来談者自らが洞察を得られるように導くよう話を聞く手法である。ロジャーズによって考案された。適応は、神経症性障害である。

 

 

 

 

 

80 数字の順唱によって評価できる記憶で最も適切なのはどれか。

1.遠隔記憶
2.近時記憶
3.作動記憶〈ワーキングメモリー〉
4.即時記憶
5.手続き記憶

解答

解説

MEMO

即時記憶とは、短期記憶のひとつで、1分程度の記憶のことである。臨床場面では、数字の順唱や逆唱などで評価される。

長期記憶には、①近似記憶、②遠隔記憶に分類される。
①近時記憶とは、3分~数日の記憶のことである。
②遠隔記憶とは、週~年の記憶のことである。

1.× 遠隔記憶とは、週~年単位の長期記憶のことである。遠隔記憶とは、年余にわたる記憶で、個人の生活史や歴史的事件に関する記憶のことである。

2.× 近時記憶とは、24時間以内のエピソードに関する記憶のことである。前夜の食事内容を尋ねることや単語の遅延再生により評価される。

3.× 作動記憶〈ワーキングメモリー、作業記憶〉とは、環境から新しく入ってくる短期記憶を保持する過程と、保持された短期記憶の情報と、長期記憶から取り出される情報とを適合して処理する過程の両方に関与している。物事を実行したり考えたりする際に、一時的に情報を蓄えておく記憶のシステムである。いわゆる短期記憶と異なるのは、情報を保持している間に他の情報処理を行うことである。

4.〇 正しい。即時記憶は、数字の順唱によって評価できる記憶である。即時記憶とは、入力された情報が数秒~数分間(文献によっては1分程度)、干渉が入らずに常に意識に上げておく機能である。臨床場面では、数字の順唱や逆唱などで評価される。

5.× 手続き記憶とは、身体が覚えている記憶のことである。自転車の乗り方や楽器の演奏の仕方がその例である。

ワーキングメモリーと即時記憶の違い

作動記憶(ワーキングメモリー)とは、一時的に情報を保持しながら計算や推論などの作業を行う能力のことである。一方、即時記憶とは、聞いたり見たりした情報をそのまま一時的に保つ能力で、作業を伴わない単純な短期記憶のことである。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)