第60回(R7) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題61~65】

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61 心筋で正しいのはどれか。

1.平滑筋である。
2.心筋線維は多核である。
3.ギャップ結合がみられる。
4.ATPは嫌気性呼吸で産生される。
5.収縮は運動神経のインパルスによって起こる。

解答

解説
1.× 「平滑筋」ではなく横紋筋である。心筋は、自動能を持つ横紋筋である。横紋筋とは、筋線維内に明確な横紋構造(アクチン・ミオシンの規則的配列)を持つ筋組織である。横紋筋には骨格筋と心筋の2種類がある。

2.× 心筋線維は、「多核」ではなく単核である。ちなみに、骨格筋は多核細胞である。単核の理由として、心筋は一生涯動き続ける必要があるため、エネルギー供給や代謝の効率を高める構造を持ち、細胞の修復や代謝を調整しやすい。また、発生過程で筋芽細胞が融合せずに単核のまま成熟することも理由の一つである。

3.〇 正しい。ギャップ結合がみられる。なぜなら、隣接する心筋細胞同士で電気的・代謝的な連絡を可能すること(ギャップ結合)により、一斉収縮を実現するため。ギャップ結合は心筋や平滑筋にも見られるが、心筋では特に重要な役割を果たす。

4.× ATPは、「嫌気性呼吸」ではなく好気性代謝で産生される。なぜなら、心筋細胞のミトコンドリアは細胞体積の約30~40%を占め、酸素を利用した好気性代謝によるATP産生が主体であるため。持続的な収縮に必要なエネルギーを供給するため、この仕組みが重要である。

5.× 収縮は、「運動神経」ではなく洞房結節のインパルスによって起こる。心筋は自動能を持ち、洞房結節(ペースメーカー)からの自発的な電気信号によって収縮する。しかし、心拍数や収縮力は自律神経(交感神経・副交感神経)の調節を受けるため、完全に独立しているわけではない。

(※図引用:「筋の分類(骨格筋、心筋、平滑筋)」もりもと塾HPより)

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62 筋紡錘の求心性線維はどれか。2つ選べ。

1.Ⅰa
2.Ⅰb
3.Ⅱ
4.Ⅲ
5.Ⅳ

解答1・3

解説


1.〇 正しい。Ⅰaは、筋紡錘の求心性線維である(一次終末:中央にある)。
Ⅰa群線維は、筋紡錘の伸展を感知する。錐内線維である核袋線維と核鎖線維の中央に結合する。核袋線維への結合が多い。

2.× Ⅰbは、ゴルジ腱器官から脊髄に情報を伝達する神経線維である(腱紡錘)。

3.〇 正しい。は、筋紡錘の求心性線維である(二次終末:端にある)。
Ⅱ群線維は、求心線維であり、静的感受性(絶対長の変化)を調節している。錐内線維である核袋線維と核鎖線維の端に結合する。核鎖線維への結合が多い。

4.× Ⅲは、Aδ線維で、温冷感覚・鋭い痛みに関与する

5.× Ⅳは、C線維で、鈍い、遅い温冷・痛覚の求心路である。

 

 

 

 

 

63 体温で正しいのはどれか。

1.体内の熱は呼気から放散される。
2.熱産生は骨格筋に次いで心臓が大きい。
3.激しい運動でも直腸温は40℃を超えない。
4.腹腔には体温の変化を検出する受容器がない。
5.体温が1℃上昇すると基礎代謝は約1%増える。

解答

解説

熱伝導形態

熱には3つの熱伝導形態があり、①熱伝導、②対流熱、③熱放射である。
①熱伝導は、物質を介して熱が伝わることをいう。(簡単にいうと、直接触れることによる熱の移動)
②対流熱は、液体や気体の流れに乗って熱が移動することをいう。
③熱放射は、温度差がある物体の間で、熱が移動することをいう。
④エネルギー変換熱は、電磁波や超音波など体内で吸収されて熱エネルギーに変換することをいう。

1.〇 正しい。体内の熱は、呼気から放散される。熱放散とは、体内の熱を体外に逃がすことで体温を調節する機能である。激しい運動時など、呼吸数が増加すると呼気による熱放散も増え、体温の上昇を抑える効果がある。

2.× 熱産生は、骨格筋に次いで「心臓」ではなく肝臓が大きい。なぜなら、骨格筋は体積が大きく、安静時でも広範囲に分布しているため。また、肝臓の熱産生が多い理由として、肝臓には、代謝機能があり、 その際に多くのエネルギーが使われるため。

3.× 激しい運動の場合、直腸温は40℃を「超える」。なぜなら、激しい運動により大量の熱が産生され、放散が追いつかないと体温が急上昇し、場合によっては40℃以上になることがあるため。例えば、重度の熱中症患者にみられる。ちなみに、実際、核心温度を常時測定するのは不可能であるが、最も核心温度に近い、直腸温は安静時でも37℃を超える。

4.× 腹腔には、体温の変化を検出する受容器が「ある」。
【体温の変化を検出する受容器】
①末梢温度受容器(皮膚、粘膜など)
②中枢神経内温度受容器(視床下部、脳幹、脊髄)
③中枢神経外体深部温度受容器(腹腔内壁、大血管など)
(※引用:「生体の部位による体温調節反応における役割りの違いについて」著:入來正躬様HPより)

5.× 体温が1℃上昇すると基礎代謝は、「約1%」ではなく約13%(約1.3倍)増える。なぜなら、血管が拡張し循環を増大することで、その分、組織に負担がかかる(組織内の物質の交換が活発になる)ため。ちなみに、組織温度が1℃上昇すると神経伝導速度は、「約2.0m/sec」増加する。

 

 

 

 

 

64 嫌気性解糖で正しいのはどれか。

1.TCA回路が利用される。
2.ミトコンドリア内で行われる。
3.供給エネルギーの持続時間は約15秒である。
4.グルコースはピルビン酸から乳酸に変換される。
5.グルコース1分子から4分子のATPが得られる。

解答

解説

嫌気的代謝(解糖系)とは?

解糖系とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。このグルコースから乳酸への変換経路は、酸素の関与なしに起こりうるので、嫌気的代謝(解糖)と呼ばれる。

【クエン酸回路とは?】
クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)とは、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→【クエン酸回路】(オキサロ酢酸)+クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→サクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸となる。

1.× TCA回路が利用されるのは、「好気性条件下にて、ミトコンドリア内で行われる代謝経路」の特徴である。嫌気性解糖では、グルコースからピルビン酸が生成され、その後酸素が不足していると乳酸に還元されるプロセスである。

2.× ミトコンドリア内で行われるのは、クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)である(※上参照)。

3.× 供給エネルギーの持続時間は、「約15秒」ではなく30秒~2分程度である。短時間のエネルギー供給(約10~15秒)は、主にATPシステムが担い、その後、嫌気性解糖はより長い時間(通常30秒~2分程度)の激しい運動時のエネルギー供給に関与するため。例えば、短時間高強度運動(短距離走など)の最初の数秒は、ATP系が主導し、その後に嫌気性解糖がエネルギーを補う。

4.〇 正しい。グルコースはピルビン酸から乳酸に変換される。嫌気的代謝(解糖系)は、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。

5.× グルコース1分子から、「4分子」ではなく2分子のATPが得られる。※グルコース1分子からは4分子のATPが生成される。しかし、反応開始時に2分子を消費するため、正味で得られるATPは2分子となる。ちなみに、クエン酸回路と比べると効率は悪いが、酸素を使用せず行えるのが特徴である。

(※図引用:「呼吸で生じる ATP の数とエネルギー変換の効率」著:園池公毅様より)

 

 

 

 

 

65 副交感神経の作用で分泌が促進されるのはどれか。2つ選べ。

1.汗腺
2.涙腺
3.舌下腺
4.レニン
5.ノルアドレナリン

解答2・3

解説
1.× 汗腺は、交感神経優位で分泌促進される。

2.〇 正しい。涙腺は、副交感神経優位で分泌が促進される。二重神経支配で交感神経優位の場合、涙出ない。

3.〇 正しい。舌下腺は、副交感神経優位で分泌が促進される。唾液腺分泌は、交感神経優位でネバネバした唾液(粘液性)、副交感神経優位でサラサラ唾液(漿液性)が増加する。どちらの神経も分泌を促す。唾液腺は耳下腺・舌下腺・顎下腺の3つであり、いずれも副交感神経と交感神経の二重支配を受けている。

4.× レニンとは、腎臓から分泌されるホルモンである。レニンは、腎血流量の減少により作動し、血圧上昇させる働きがある。レニンの分泌は交感神経の刺激やその他のホルモン因子(プロスタグランジンやアンジオテンシンⅡ、心房性ナトリウム利尿ペプチド)によって制御される。

5.× ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。

”二重神経支配一覧”

・血管(交:収縮、副:弛緩)
・涙腺(交:涙出ない、副:涙する)
・瞳孔(交:拡大、副:縮小)
・唾液腺(交:濃い、副:薄い)
・肺、気管(交:拡張、副:縮小)
・心臓(交:増加、副:減少)
・肝臓(交:分解、副:合成)
・膵臓(交:分泌減少、副:分泌増加)
・胃(交:消化抑制、副:消化促進)
・大腸~直腸(交:蠕動抑制、副:蠕動促進)
・膀胱(交:蓄尿、副:放尿)

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