第59回(R6)作業療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 鼻腔からの喀痰吸引で正しいのはどれか。

1.吸気圧は16~20kPaとする。
2.カテーテルは30cm以上挿入する。
3.一回の吸引は30秒以上持続して行う。
4.口腔からの吸引に比べ嘔吐反射が出現しやすい。
5.経鼻胃管が留置されている患者には実施できない。

解答

解説


1.〇 正しい。吸気圧は16~20kPa(150mmHg)とする。なぜなら、気道粘膜の損傷や低酸素状態肺胞の虚脱などを防ぐためである。ちなみに、逆にカフ圧が低いと、刺激による咳反射などでカフから分泌物が垂れ込み、誤嚥しやすい。
2.× カテーテルは、「30cm以上」ではなく15~20cm挿入する。気管分岐部に当たらない位置まで挿入する。
3.× 一回の吸引は、「30秒以上持続」ではなく10秒以内で行う。挿入開始から終了までを20秒以内で行う。なぜなら、吸引中は無呼吸となるため。
4.× 口腔からの吸引に比べ嘔吐反射が出現しやすいとはいえない。両者とも嘔吐反射には気を付ける必要がある。なぜなら、喉頭蓋谷梨状窩(最も多い)への刺激が嘔吐反射を誘発するため。
5.× 経鼻胃管が留置されている患者にも実施「できる」。なぜなら、反対側の鼻孔からカテーテルを侵入させ喀痰吸引を試みることができるため。ちなみに、経鼻胃管挿入とは、鼻からプラスチック製のチューブ(くだ)を挿入し、胃まで通すことである。

口腔内・鼻腔内吸引の注意事項

「気管吸引とは、人工気道を含む気道からカテーテルを用いて機械的に分泌物を除去するための準備、手技の実施、 実施後の観察、アセスメントと感染管理を含む一連の流れのこと」と定義されている。(※引用:気管吸引ガイドライン2013)

【目的】口腔内・鼻腔内吸引は気道内の貯留物や異物を取り除くこと。

①人工呼吸器関連肺炎などの感染リスクを回避する。(ディスポーザブル手袋を着用、管吸引前には口腔及びカフ上部の吸引を行う)
②吸引中は無呼吸となるため必ずモニター等でSpO2の確認しながら、カフ圧は-20kPa(150mmHg)以内に保ち、1回の吸引時間は10秒以内とする。
③カテーテル挿入時は陰圧をかけず、自発呼吸がある場合は、患者さんの吸気に合わせて吸引を行う。
④終了後は気道内の分泌物がきちんと吸引できたか、呼吸音等で確認する。

(※参考:「吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コツ」ナース専科様HPより)

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【PT/OT】口腔内・鼻腔内吸引についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

27 呼吸機能で正しいのはどれか。

1.横隔膜の支配髄節は第3頸髄節である。
2.安静時の吸気は斜角筋の収縮が作用する。
3.安静時の呼気は腹直筋の弛緩が作用する。
4.副交感神経が優位になると分泌物が増加する。
5.呼吸補助筋の麻痺により閉塞性換気障害が生じる。

解答

解説

横隔膜とは?

横隔膜とは、胸郭と腹郭を分ける筋膜性の膜であり、縦郭の境界をなしている。他にも、横隔膜の役割は、呼吸に関与する。
横隔膜の【起始】胸郭下口の全周で、腰椎部、肋骨部、胸骨部の3部からなる。①腰椎部は、内側脚:第1~4腰椎体、外側脚:内側弓状靭帯と外側弓状靭帯、②肋骨部は、第7~12肋軟骨(肋骨弓部)の内面、③胸骨部は、剣状突起。一部は腹横筋腱膜の内面、【停止】腱中心、【作用】その収縮によって円蓋を下げ、胸腔を広げる(吸息)、【支配神経】横隔神経と副横隔神経(30~40%で欠如)である。

1.× 横隔膜の支配髄節は、「第3頸髄節」ではなく第4頸髄節である。支配神経は、横隔神経と副横隔神経:C3~C5,(C6)である。C4が主で、C3、C5が補助枝となる。副横隔神経は、30~40%で欠如している。
2.× 安静時の吸気は、「斜角筋」ではなく横隔膜・外肋間筋の収縮が作用する。ちなみに、斜角筋の収縮は、努力吸気に寄与する。
3.× 安静時の呼気は、腹直筋の弛緩が作用「しない」。なぜなら、安静呼気において、呼気筋は関与しないため。
4.〇 正しい。副交感神経が優位になると分泌物が増加する。副交感神経が優位になると、気管(特に気管支以下の細い部分)は細く、気道分泌物は多くなる傾向がある。したがって、呼吸器症状(咳や息苦しさ)は深夜から明け方に悪くなりやすい。
5.× 呼吸補助筋の麻痺により「閉塞性換気障害」ではなく拘束性換気障害が生じる。拘束性換気障害とは、肺胞壁が肥厚して肺の弾力がなくなることで、肺の容積が小さくなり充分に拡張しない病態である。主に、肺結核、肺線維症などがあげられる。ちなみに、閉塞性換気障害とは、気道が狭くなり、息を吐き出しにくくなる障害のことである。主に、気管支喘息、気管支拡張症などが該当する。

呼吸運動について

①安静吸気:横隔膜・外肋間筋。
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気:呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気:内肋間筋・腹横筋・腹直筋が関与。

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28 厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類ステージ7の生活指導で正しいのはどれか。

1.片手で洗髪動作を行う。
2.自走式車椅子で移動する。
3.ソックスエイドを用いる。
4.上着はかぶりシャツを用いる。
5.スイッチを使ってパソコン操作をする。

解答

解説

(図引用:「息切れを増強させる4つの動作のイラスト(慢性呼吸器疾患)」看護roo!看護師イラスト集)

1.× 片手で洗髪動作を行うのは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する生活指導である。血中酸素飽和度が低下しないように行う日常生活動作である。
2.× 自走式車椅子で移動するのは、厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類ステージ5~6の生活指導である。なぜなら、ステージ7となると「自走」するほどの上肢筋力が見込めないため。
3.× ソックスエイドを用いるのは、人工股関節置換術(後方アプローチ)に対する生活指導である。人工骨頭置換術の後方アプローチの患側脱臼肢位は、股関節内転・内旋・過屈曲である。ソックスエイドは、股関節などの可動域制限による、リーチ制限に対応した自助具で、靴下を履くために使用する。
4.× 上着はかぶりシャツを用いるのは、厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類ステージ5の生活指導である。なぜなら、かぶりシャツの更衣動作は上肢機能を必要でステージ7では困難であるため。
5.〇 正しい。スイッチを使ってパソコン操作をする。なぜなら、ステージ7となると上肢機能の低下がみられるため。

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
(A:独歩で5m以上歩行ができる)
(B:一人では歩けないが、モノにつかまれば歩ける。)
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

 

 

 

 

 

29 高次脳機能障害の作業療法で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.記憶障害に対しては間隔伸張法を用いる。
2.遂行機能障害に対してはPQRST法を用いる。
3.注意障害に対しては刺激の多い環境を設定する。
4.社会的行動異常に対しては周囲の人々に症状の理解を促す。
5.半側空間無視に対してはAPT〈Attention Process Training〉を用いる。

解答1・4

解説
1.〇 正しい。記憶障害に対しては間隔伸張法を用いる。間隔伸張法とは、認知症などに適応となる記憶改善テクニックである。記憶したい事柄に対する質問をするまでの時間を次第に長くして、記憶を保持する期間をのばしていくことを目的とする手法である。例えば、認知症の人が覚えようとする情報に対して、治療者が質問する時間を1分後、5分後、10分後、30分後、1時間後と徐々に開けることにより、情報の長期的な記憶を促進する介入法である。
2.× 「遂行機能障害」ではなく記憶障害に対してはPQRST法を用いる。PQRST法とは、5段階を経て覚えていくそれぞれ頭文字をとっており、①Preview:提示された文章全体からキーワードを抜き出す 、 ②Question:そのキーワードが答えとなる質問をつくる、 ③Read:質問に答えるために熟読する 、①Self-Recitation:読み終えた情報を能動的に覚える 、 ⑤Test:文章の内容(記憶)をテストする。※Sは、「States (要約)」と示している場合がある。ちなみに、遂行機能とは、感覚情報や経験を活用して、日標設定・目標達成のための計画立案、実行、行動の修正を行う機能をいう。
3.× 注意障害に対しては刺激の「多い」ではなく少ない環境を設定する。なぜなら、刺激が多い環境は、注意の選択性や配分性だけでなく、注意の持続性に影響をきたすため。まずは、刺激の少ない環境で集中できるよう環境設定が必要である。
4.〇 正しい。社会的行動異常に対しては周囲の人々に症状の理解を促す。なぜなら、社会的行動障害は、自身のコントロールが効かないため。社会的行動障害とは、感情や行動に障害が残り、対人関係がうまくいかず、社会に適応していけない状態である。交通事故や脳出血などにより、性格の変化や意欲・発動性の低下、脱抑制・易怒性などがみられる。このような脳損傷によって生じる行動障害を社会的行動障害と呼ぶ。
5.× 「半側空間無視」ではなく注意障害に対してはAPT〈Attention Process Training〉を用いる。APT〈Attention Process Training〉とは、ソールバーグらによる注意の4つの注意機能(持続性・選択性・転換性・配分性)に対する訓練課題のことである。複数の机上訓練が、それぞれ難易度別に階層構成され、易しい課題から行うようになっている。例えば、持続性に対しては、乱数表から標的数字を線で消す。選択性に対しては、標的図形を抹消する。転換注意では15秒ごとに偶数あるいは奇数を線で消す。配分性では、トランプ課題:カードを1枚ずつ種類別に分類し、特定の数のみ裏返して並べる。

注意障害5つ

①持続性:注意を一定時間の状態に保つことが困難になる。
②選択性:多数の刺激の中から必要な情報や物事に注意を向けられない
③転換(導)性:必要に応じて注意の方向性を切り替えることが困難になる。
④配分性(多方向性):2つ以上の課題を同時に遂行したり、順序立てて行ったりすることが困難になる。
⑤容量性(感度):ある情報に関する注意の閾値が適度に保つことが困難である。
※:全般性注意障害ではこの5つが全般的に障害されている状態である。

 

 

 

 

 

30 FIMの食事で6点はどれか。2つ選べ。

1.介助皿を使用する。
2.食事動作は自立しているが減塩食である。
3.醤油をかけてもらう。
4.スプーンで動作自立している。
5.配膳前の調理の段階で刻んでもらう。

解答1・5

解説
1.5.〇 正しい。介助皿を使用する/配膳前の調理の段階で刻んでもらうのは6点(修正自立)である。6点の採点基準として、①時間が掛かる、②自助食器や自助具を使用、③部分的に非経管栄養に頼る、④食事形態(きざみ食や嚥下食など)で安全面の工夫が必要などである。
2.4.× 食事動作は自立しているが減塩食である/スプーンで動作自立しているのは7点(完全自立)である。減塩食やスプーンは、食事形態や自助具に該当しないため7点である。
3.× 醤油をかけてもらうのは5点(監視・準備)である。5点の採点基準として、①準備(配膳後に肉を切る、ふたを開けるなど)が必要、②食べこぼしや誤嚥しないように監視が必要、③万能カフなど自助具を装着してもらう必要がある。

FIMとは?

FIMとは、日常生活動作(ADL)を評価する尺度で、運動項目(13項目)と認知項目(5項目)の計18項目を7段階で採点する。【運動項目】セルフケア(食事、整容、清拭、更衣:上・下、トイレ動作)、移乗(ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗)、排泄コントロール(排尿管理、排便管理)、移動(歩行・車椅子、階段)、【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)で評価する。

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