第59回(R6)作業療法士国家試験 解説【午前問題1~5】

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※解答の引用:第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について(厚生労働省HPより)

 

1 60歳の男性。作業中に転倒し、左手をついて受傷した。
 単純エックス線写真を下に示す。
 診断はどれか。

1.Barton骨折
2.Bennett骨折
3.Boxer‘s骨折
4.Colles骨折
5.Roland骨折

解答

解説


1.× Barton骨折(バートン骨折)は、遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。
2.× Bennett骨折(ベネット骨折)は、母指の中手手根関節部の脱臼骨折である。第一中手骨基部の関節内骨折で、第一中手骨の脱臼を伴いやすい。母指先端にボールが当たったり喧嘩やボクシングで母指の先端に力が加わった際に起こりやすい。
3.× Boxer‘s骨折(ボクサー骨折)は、手の拳による強打の衝撃で、中手骨骨折が起こる。第4・5中手骨の頸部に発生しやすい。中手骨の骨折は日常で良く発生し、骨折しても腫れや変形が目立ちにくいという特徴がある。
4.〇 正しい。Colles骨折が疑われる。Colles骨折(コーレス骨折)は、Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する橈骨遠位端骨折のことである。
5.× Roland骨折(ローランド骨折)とは、中手骨基部のY字型またはT字型の関節内で生じる複合骨折のことである。2ヵ所の骨折によって中手骨が3つに分かれるという複雑なものである。基本的な3片の骨折の際は「観血的整復固定術(ORIF)」による整復が施されることが多い。

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

 

 

 

 

 

2 健常成人の嚥下内視鏡検査の画像を下に示す。
 正しいのはどれか。

1.気管支が観察できる。
2.発声中の画像である。
3.食道は背側に位置する。
4.嚥下反射中の画像である。
5.食道の蠕動が観察できる。

解答

解説

嚥下内視鏡検査とは?

経鼻内視鏡(鼻腔ファイバースコープ)で嚥下を観察する検査である。経鼻内視鏡は非常に細径であり、通常は局所麻酔を用いずに挿入できる。

【検査できる項目】
①唾液や喀痰の貯留の有無
②食物を飲み込んだ後の咽頭内への食物の残留の有無
③気管への流入
④嚥下に影響を与えることのある声帯の動きなど。

【利点】
①痰や食物残査などによる口腔内の汚染状況は造影検査よりもわかりやすい。
②実際の食物を用いて検査できる。
③持ち運びが容易(場所を選ばず検査できる)。

【欠点】
ホワイトアウト(嚥下内視鏡検査において、嚥下反射時に咽頭腔の収縮により視野が確保できず、白色画面になることである。正常の嚥下時には、咽頭収縮により一時的に視野が白く、観察不能となる。これは、嚥下内視鏡検査の欠点であるが、ホワイトアウトの有無で咽頭の筋肉がしっかり収縮しているかどうか評価することができる。)

(※参考:「嚥下内視鏡検査(VE)について」明石医療センター様HPより)

(※図引用:「歌の発声」より)

(※図引用:「illustAC様」)

1.× 気管支が観察「できない」。なぜなら、内視鏡の先端を口蓋垂あたりにセットし、飲み込みの状態を観察・評価するため。観察できるのは気管である。気管支とは、気管が左右の肺に枝分かれた後をいう。
2.× 発声中の画像「ではない」。なぜなら、声門が開いている状態であるため。発声時、声門が閉じる。
3.〇 正しい。食道は背側に位置する。食道は気管より背側にあり、普段は閉じている。飲み込みの反射が起きると、喉頭蓋が後方に倒れて喉頭を覆い、同時に食道の入り口が開いて食べ物が食道へと流れていく。
4.× 嚥下反射中の画像「ではない」。なぜなら、嚥下内視鏡検査の欠点でもあるホワイトアウトが起こるため。ホワイトアウトとは、嚥下内視鏡検査において、嚥下反射時に咽頭腔の収縮により視野が確保できず、白色画面になることである。正常の嚥下時には、咽頭収縮により一時的に視野が白く、観察不能となる。これは、嚥下内視鏡検査の欠点であるが、ホワイトアウトの有無で咽頭の筋肉がしっかり収縮しているかどうか評価することができる。
5.× 食道の蠕動が観察「できない」。なぜなら、咽頭内への食物の残留の有無のみで、食道以降の運動は観察できないため。ちなみに、蠕動運動とは、管腔臓器において中枢側(口側)が収縮し末梢側(肛門側)が弛緩することで、末梢側(肛門側)に尿や消化管内容物を押し出していく運動のことである。

嚥下造影検査とは?

嚥下造影検査は、造影剤(または、造影剤を含む食物)を下させてレントゲン透視によりその状態を観察、評価する検査である。通常は2方向から動画で記録する。

【検査の目的と適応】
摂食嚥下障害の疑われる患者に行い、検査することによって摂食嚥下に関する何らかの情報が得られ、それを治療方針に生かすことができる場合に適応とされる。このため、VFを行うに当たっては、検査の目的を明確にし、得られた情報をどのように生かすかを検査前に十分検討することが重要である。検査の目的は以下の 2 つである。
①症状と病態の関係を明らかにする。
②食物・体位・摂食方法などの調節により治療に反映させる。

(※参考:「嚥下造影の検査法(詳細版) 日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会 2014 年度版」日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会より)

 

 

 

 

3 Danielsらの徒手筋力テストの段階5及び4の検査で正しいのはどれか。
 ただし、矢印は検査者の加える力の方向を示す。

1.肩甲骨内転と下方回施
2.肘屈曲(上腕筋)
3.前腕回内
4.手関節伸展
5.指の中手指節関節伸展

解答

解説
1.〇 正しい。肩甲骨内転と下方回施の段階5及び4の検査である。腹臥位にて患者は手を腰に置き、腰から離れるように持ち上げる。抵抗は上腕遠位で外・下方向に加える。
2.× 肘屈曲(上腕筋)の段階5及び4の検査において、前腕回内位で行う。設問の図は、前腕中間位となっているため、肘屈曲(腕橈骨筋)の段階5及び4の検査となっている。ちなみに、前腕回外位で肘屈曲(上腕二頭筋)の検査となる。
3.× 前腕回内の段階5及び4の検査において、抵抗方向は回内に抵抗するように回外方向に加える。設問の図は、前腕回外の検査となっている。
4.× 手関節伸展の段階5及び4の検査において、手指屈曲位で行う。設問の図は手指伸展位となっている。
5.× 指の中手指節関節伸展の段階5及び4の検査において、指の中手指節関節(MCP関節)と指節間関節(IP関節)は力を抜いた屈曲位で検査する。また、抵抗の位置は、MCP関節のすぐ遠位で屈曲する方向へと抵抗を加える。設問の図は指の中手指節(MCP)関節屈曲の検査となっている。

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【OT/共通】MMTについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

4 1歳1か月の女児。遠城寺式乳幼児分析的発達検査の結果を下に示す。
 考えられる運動発達年齢はどれか。

1.4~5か月
2.5~6か月
3.6~7か月
4.7~8か月
5.8~9か月

解答

解説

遠城寺式乳幼児分析的発達検査表の発達月数の求め方

①発達月数の少ない検査項目から評価を行う。
②合格(〇)の数、不合格(×)の数より発達月数を求める。
③不合格(×)が3つ続いた時点で、それ以上の月齢検査を無効とする。
④低い月齢で不合格(×)があっても、より高い月数の合格(◌)があれば、だるま落としのように発達月齢は1つ上がる。

(図引用:「第54回OT午後2問目」当HPより)見方:「首がすわる」が0:3~0:4(年:月)の間である。つまり、3~4カ月は獲得されている。そこで不合格(×)が2つ続き、次の項目、「腹ばいで体をまわす」は、合格(〇)である。そのため、だるま落としのように、「横向きに寝かせると寝返りをする。」「寝返りをする。」を外し、3~4カ月の1つ上の0:4~0:5(年:月)の間になる。そのあと、3回不合格(×)が続いているため検査終了である。つまり、4~5カ月が移動運動の発達月数として求められる。

 

本問題では、4~5か月「横向きに寝かせると寝返りをする」は獲得されている。そこで不合格(×)が2つ続き、次の項目、「ひとりで座って遊ぶ」は、合格(〇)である。そのため、だるま落としのように、「寝返りをする」「横ばいで体をまわす」を外し、4~5か月の1つ上の0:5~0:6(年:月)の間になる。そのあと、3回不合格(×)が続いているため検査終了である。つまり、選択肢2.5~6か月が移動運動の発達月数として求められる。

 

 

 

 

 

5 55歳の男性。右利き。交通事故により右上腕切断(断端長22cm、90%残存)となった。既往歴として左片麻痺があった。MMTで肩甲骨外転は右5・左3。肩関節可動域は、屈曲が右160度・左140度・内旋が右45度・左50度であった。義手適合判定を行ったところ、肘90度屈曲位で手先具が完全には開かなかった。
 最も考えられる原因はどれか。

1.ケーブルが短すぎる。
2.左側の肩甲帯の筋力が低下している。
3.前腕支持部のトリミングが不良である。
4.ソケットがオープンショルダー式である。
5.右側の肩関節の内旋可動域に制限がある。

解答

解説

MEMO

・55歳の男性(右利き、既往歴:左片麻痺
・右上腕切断(断端長22cm、90%残存)
・MMT:肩甲骨外転は右5・左3
・肩関節可動域:屈曲が右160度・左140度・内旋が右45度・左50度。
・義手適合判定:肘90度屈曲位で手先具が完全には開かなかった
→本症例は、左片麻痺で左肩甲骨外転MMT3である。最も考えられる原因を選択しよう。
【一般的な屈曲位で手先具が完全に開閉することができない原因】
①ケーブルシステムの不良(走行不良、またはハウジングが長すぎる場合が多い)。
②ハーネスの調整不良。
力源となる肩甲帯の問題

1.× ケーブルが短すぎる場合、肘90°屈曲位にした時点で手先具が開くことが多い。ケーブルハウジングが長過ぎる場合、肘90度屈曲位で手先具が完全には開かない。ちなみに、ケーブルは、手先具に力を伝達する働きを持つ。
2.〇 正しい。左側の肩甲帯の筋力が低下している。なぜなら、本症例は、左片麻痺で左肩甲骨外転MMT3であるため。
3.× 前腕支持部のトリミングが不良である場合は、肘継手を最大屈曲させて135°以上確保できないことが多い。
4.× ソケットがオープンショルダー式であっても、手先具の開閉への影響は少ない。オープンショルダーソケットは、自己懸垂性のある全面接触式のソケットで、標準断端の上腕義手で用いられる。肩関節外転しやすいように、肩関節外側がオープンとなっている。
5.× 右側の肩関節の内旋可動域に制限があっても、手先具の開閉への影響は少ない。なぜなら、肩甲帯の動きが優先されるため。

 

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