第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題96~100】

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96 統合失調症で正しいのはどれか。

1.急性発症は予後が悪い。
2.若年発症は予後が悪い。
3.女性は男性より予後が悪い。
4.男性の発症率は女性の約2倍である。
5.発症から治療開始までの期間と予後は無関係である。

解答

解説

”統合失調症の予後予測因子について”

統合失調症は、1000人に数人というほどの発症率である。発症のピークは、男性は15~24歳。女性は25~34歳である。男女比は1:1、女性は男性に比して初発年齢が遅いこと、予後が良いこと、閉経期にもう一つの発症ピークがあることなどから女性ホルモンが病態に抑制的に作用している。治療は、抗精神病薬による薬物治療が主となり補助的にリハビリテーションなども行う。統合失調症の予後予測因子は、早期治療と治療の継続性である。発病早期に薬物治療を導入すると、予後がより良い。

予後良好な因子:病前機能が良好であること(例,優秀な学生,しっかりした職業歴)、発病が遅いか突然であること、統合失調症以外の気分障害の家族歴があること、認知障害がごく軽微であること、陰性症状がほとんどないこと、精神病未治療期間がより短いことなどがあげられる。

予後不良な因子:発症年齢が低いこと、病前機能が不良であること、統合失調症の家族歴があること、陰性症状が多くみられること、精神病未治療期間がより長いことなどがあげられる。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

1.× 急性発症(緊張病型)は予後が「良い」。なぜなら、急性発症(緊張病型)の特徴として、陽性症状が多く、薬が効きやすいため。ちなみに、緊張型は20歳前後で発症し、緊張性興奮と緊張性昏迷を繰り返すが、症状がほぼ消退する間欠期があり、慢性の経過はとらない。一方、発症・経過が緩徐な統合失調症(解体型)は予後が悪い。
2.〇 正しい。若年発症(解体型)は予後が悪い。なぜなら、若年発症(解体型)の特徴として、陰性症状が主で、思考障害が著しく、薬が効きにくいため。ちなみに、解体型(破瓜型)は、思春期に発症し、徐々に発症・進行していく。
3.× 逆である。「男性」は「女性」より予後が悪い。なぜなら、破瓜型は女性より男性のほうが多いため。「発症時期や経過には性差を認めます。一般的に男性の方が女性より発症が早く、発症年齢のピークは男性で10~25歳、女性では25歳~35歳といわれています。また女性の発症年齢は二峰性であり、中年以降にも発症のピークがある(※引用:「統合失調症」さっぽろ麻生メンタルクリニック様HPより)」
4.× 男性の発症率は、女性の「約2倍」ではなく同数である。発症の男女比はほとんどないが、経過や予後は女性の方が良い。
5.× 発症から治療開始までの期間と予後は、「無関係」ではなく関係する。発症から治療開始までの期間が短ければ予後は良い。予後良好な因子として、病前機能が良好であること(例,優秀な学生,しっかりした職業歴)、発病が遅いか突然であること、統合失調症以外の気分障害の家族歴があること、認知障害がごく軽微であること、陰性症状がほとんどないこと、精神病未治療期間がより短いことなどがあげられる。

 

 

 

 

 

97 全般性不安障害で正しいのはどれか。

1.慢性化はまれである。
2.男性と比較して女性に多い。
3.自律神経系の過活動はみられない。
4.症状の消長に環境要因は影響しない。
5.他の精神疾患と併存することはない。

解答

解説

全般性不安障害とは?

全般性不安障害とは、日常生活において漠然とした不安を慢性的に感じてしまう病気である。特定の状況に苦手意識を感じる社交不安障害とは異なり、不安を感じる事象が非常に幅広い(漠然とした将来の不安など)ことが特徴である。導入時の作業療法は、軽い運動などで身体的な緊張の軽減を図ることである。治療法として認知行動療法(セルフコントロール)、薬物療法があげられる。

全般性不安障害の症状は、①身体症状と②精神症状である。
①身体症状は、頭痛、頭重、頭の圧迫感や緊張感、しびれ感、そわそわ感、もうろうとする感じ、めまい感、頭がゆれる感じ、自分の身体ではないような感じ、身体の悪寒や熱感、手足の冷えや熱感、全身に脈拍を感じる、便秘や頻尿などである。
②精神症状は、些細なことで不安になる、注意散漫な感じ、記憶力が悪くなる感じ、根気がなく疲れやすい、イライラして怒りっぽい、小さなことが気になる、悲観的になり、人に会うのが煩わしい、寝つきが悪く、途中で目が覚めやすいなどである。

1.× 慢性化は「まれである」と言い切れない。むしろ、全般性不安障害の診断基準の一つに「多くの出来事や活動(例えば仕事や学校など)について制御が困難と感じる過度な不安や心配が少なくとも6か月以上持続している。」とあるため、慢性化に陥りやすいといえる。
2.〇 正しい。男性と比較して女性に多い。女性は男性の2倍程度発症しやすいと報告されている。これは、生理的要因など男性よりもストレスを感じることが多いためと言われている。ちなみに、発症の中央値は30歳である。発症年齢の範囲は広く、中年以降の発症も多い。思春期以前の発症は稀である。生涯を通して慢性的・波動的に経過し、完全寛解率は低い。
3.× 自律神経系の過活動は「みられる」。全般性不安障害の診断基準のカテゴリーに「以下の6つの症状のうち3つ以上を伴っている(子どもの場合は1つ以上)」とあり、①落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり、②疲労しやすいこと、③集中困難、または心が空白になること、④易怒性、⑤筋肉の緊張、⑥睡眠障害があげられる。
4.× 症状の消長に環境要因は「影響する」。なぜなら、全般性不安障害とは、日常生活において漠然とした不安を慢性的に感じてしまう病気であるため。外的要因(ストレスの多い環境や生活の変化など)によって悪化することがある。ちなみに、消長とは、勢いが衰えたり盛んになったりすることである。つまり、症状の変動(波)は環境因子に影響するか問われている。
5.× 他の精神疾患と「併存することもある」。全般性不安障害の合併症として、社交不安障害(社会不安障害)、広場恐怖症、パニック障害、強迫性障害などの他の不安障害、大うつ病性障害、気分変調症などの気分障害を発症することが多い。また、アルコール依存など物質依存の合併が多い傾向にあり、強い不安や緊張の逃避先となりやすいため、アルコール(薬物)乱用となりやすい。

全般性不安障害チェック(DSM-5の診断基準)

・多くの出来事や活動(例えば仕事や学校など)について制御が困難と感じる過度な不安や心配が少なくとも6か月以上持続している。
・以下の6つの症状のうち3つ以上を伴っている(子どもの場合は1つ以上)
①落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
②疲労しやすいこと
③集中困難、または心が空白になること
④易怒性
⑤筋肉の緊張
⑥睡眠障害
・その不安、心配、または身体症状が臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている(「仕事ができない」など)
・その障害は、物質(カフェイン、アルコール、医薬品など)、または他の医学的疾患(甲状腺機能亢進症など)の生理学的作用によるものではない
・その障害は他の精神疾患(うつ病、そううつ病、統合失調症など)では説明できない

(※参考:「全般性不安障害(全般不安症)」十三メンタルクリニック様より)。

 

 

 

 

98 ミオクロニー発作で正しいのはどれか。

1.意識消失を伴うことが多い。
2.高齢で発症することが多い。
3.数分間持続する。
4.光刺激で誘発される。
5.片側性である。

解答

解説

てんかん発作とは?

てんかん発作は、大脳皮質における神経細胞の異常な興奮によって痙攣などの症状が出現する。発作型を大きく大別すると①部分発作(脳の一部分が過剰興奮して始まる)と、②全般発作(両側大脳半球が同時に過剰放電する)に分けられる。作業療法の場面では、意識消失・けいえん・無目的な行動(自動症)に注意する。

1.× 意識消失を「伴わない」。全般発作は、特発性全般発作(①強直間代発作、②欠神発作、③ミオクロニー発作)と続発性全般発作(①点頭てんかん、②レノックス症候群)などがみられる。そのうち、①強直間代発作、②欠神発作は意識消失をきたすが、③ミオクロニー発作は意識消失を伴わない。ミオクロニー脱力発作ともいい、突然全身あるいは一部の筋の収縮が起こるもので、意識障害は伴わないのが特徴である。
2.× 「高齢」ではなく青年で発症することが多い。好発年齢70~80%の方が12歳~18歳に発症し、やや女性に多いと報告されている。
3.× 「数分」ではなく数秒間(短時間)持続する。ミオクロニー発作とは、きわめて短時間に一つの筋、あるいはいくつかの筋群に攣縮が生じるものをいう。
4.〇 正しい。光刺激で誘発される。ほかにも、誘発因子として睡眠不足、早朝覚醒、過度の精神的ストレス、アルコール多飲などがあげられる。
5.× 「片側性」ではなく両側性である。ミオクロニー発作の症状として、両手が急にびくっと動く発作である。両側同時に、また左右対称性に起こり、箸や茶わん、スマホなどを投げ出してしまう場合もある。

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99 ノンレム睡眠で正しいのはどれか。

1.夢を見る。
2.陰茎が勃起する。
3.急速眼球運動がみられる。
4.心拍数が不規則に変化する。
5.成人の睡眠の大半を占める。

解答

解説

ノンレム睡眠とは?

睡眠は、深いノンレム睡眠から始まり、睡眠欲求が低下する朝方に向けて、徐々に浅いノンレム睡眠が増えていく。その間に約90分周期でレム睡眠が繰り返し出現し、睡眠後半に向けて徐々に一回ごとのレム睡眠時間が増加する。レム睡眠+ノンレム睡眠で約90分周期を繰り返す。

ノンレム睡眠とは、脳の睡眠といわれ、①新陳代謝を促進する成長ホルモンの分泌が増加、②エネルギー代謝の抑制、③体温の低下があげられる。

1.3.4.× 夢を見る/急速眼球運動がみられる/心拍数が不規則に変化するのは、レム睡眠の特徴である。レム睡眠とは、脳が活発に働いており、記憶の整理や定着が行われ、夢を見る浅い眠りである。目がぴくぴく活発に動く、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)があることからREM(レム)睡眠と呼ばれる。
2.× 必ずしも、陰茎が勃起するとはいえない。むしろ、勃起するのは性的な夢を見た場合(レム睡眠)に起こりやすい。また、勃起の条件は複雑であるため、高齢者はその機能を失っている場合もある。例えば、勃起の条件には、①陰茎に十分な血液が流れ込み、②陰茎に出入りする神経が適切に機能、③男性ホルモンのテストステロンの量が十分であることなどがあげられる。
5.〇 正しい。成人の睡眠の大半(約75%)を占める。ちなみに、残り約25%がレム睡眠である。レム睡眠とノンレム睡眠は。約90分の周期で規則正しく繰り返され、一晩に5、6回繰り返される。 睡眠が進むほどレム睡眠の割合が多くなり、脳を覚醒させる準備に入る。

 

 

 

 

 

100 入眠困難を訴えるうつ病患者に対する睡眠衛生指導で最も適切なのはどれか。

1.「夕方1時間以上の昼寝をしましょう」
2.「できるだけ一定時刻に起床しましょう」
3.「就床直前にアルコール飲料を飲みましょう」
4.「眠くなくても一定の時刻に就床しましょう」
5.「入眠できなくても寝床から出ないようにしましょう」

解答

解説

MEMO

うつ病とは、抑うつ感、希望や元気を失ったり、興味を失ったり、生産性が低下したり、睡眠障害、食欲の低下、身体症状などが2週間以上続いている状態である。原因は多岐にわたり、生物学的、環境的、社会的要因が関係していることが知られている。

1.× 「夕方1時間以上の昼寝をしましょう」は、一般的な睡眠指導では行わない。短時間(30分以内)の昼寝で、午後からの覚醒度の向上や夜間睡眠の質の向上が期待できる報告もある。
2.〇 正しい。「できるだけ一定時刻に起床しましょう」と指導する。なぜなら、一定の起床時間を維持すると、体内時計が調整されるため。したがって、規則的な生活リズムを獲得でき、睡眠の質が向上 、自然な眠気、覚醒感が生まれる。
3.× 「就床直前にアルコール飲料を飲みましょう」とうつ病患者に勧めない。なぜなら、アルコールは脳に作用して気分を変化させるため、抗うつ薬が効いているかどうかなど、治療の効果が判断できなくなるため。また、抗うつ薬の治療効果が低下したり、副作用が強く現われることもある。したがって、うつ病の治療を受けている場合は、飲酒を控える必要がある。
4.× 「眠くなくても一定の時刻に就床しましょう」は、一般的な睡眠指導では行わない。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」によると、「眠たくないのに無理に眠ろうとすると、かえって緊張を高め、眠りへの移行を妨げます。自分にあった方法で心身ともにリラックスして、眠たくなってから寝床に就くようにすることが重要です。特に、不眠を経験し「今晩は眠れるだろうか」という心配を持ち始めると、このことによって緊張が助長され、さらに目がさえて眠れなくなってしまいます。つまり、不眠のことを心配することで不眠が悪化するのです」と記載されている。
5.× 「入眠できなくても寝床から出ないようにしましょう」は、一般的な睡眠指導では行わない。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」によると、「必要以上に長く寝床で過ごしていると、さらに眠りが浅くなり、夜中に何度も目覚めるようになります。対処としては、積極的に遅寝・早起きにして、寝床で過ごす時間を適正化することが大事です」と記載されている。

(※引用:「健康づくりのための睡眠指針2014」厚生労働省様HPより)

 

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