第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題91~95】

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91 脳卒中患者の身体機能評価に用いられる評価尺度はどれか。2つ選べ。

1.GMFCS
2.MMPI
3.NIHSS
4.SIAS
5.UPDRS

解答3・4

解説
1.× GMFCS(gross motor function classification system:粗大運動能力分類システム)は、判別的な目的で使われる尺度である。子どもの座位能力、および移動能力を中心とした粗大運動能力をもとにして、6歳以降の年齢で最終的に到達するという以下5段階の機能レベルに重症度を分類している。レベルⅠ:制限なしに歩く。レベルⅡ:歩行補助具なしに歩く。レベルⅢ:歩行補助具を使って歩く。レベルⅣ:自力移動が制限。レベルⅤ:電動車いすや環境制御装置を使っても自動移動が非常に制限されている。
2.× MMPI(Minnesota Multiple Personality Inventory:ミネソタ多面人格目録)は、質問紙法による人格検査である。550の質問に対して「あてはまる」「あてはまらない」「どちらでもない」を選択する3件法が用いられている。
3.〇 正しい。NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)は、脳卒中患者の身体機能評価に用いられる評価尺度である。NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)とは、脳卒中神経学的重症度の評価スケールとして世界的に利用されている。ベッドサイドでできる簡便な評価法の1つである。検査項目は、意識水準、意識障害(質問・従命)、最良の注視、視野、顔面麻痺、上肢の運動左右、下肢の運動左右、運動失調、感覚、最良の言語、構音障害、消去現象と注意障害を0点から2~4で評価する。0点が正常で、点数が高いほど重症である。
4.〇 正しい。SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、脳卒中患者の身体機能評価に用いられる評価尺度である。SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、脳卒中の機能障害を定量化するための評価である。運動機能だけでなく感覚障害、高次脳機能障害まで幅広く評価する事ができる。項目は、9種の機能障害に分類される22項目からなる。各項目とも3あるいは5点満点で評価される。
5.× UPDRS(Unified Parkin-son’s Disease Rating Scale:パーキンソン病統一スケール)は、1987年にパーキンソン病の方の病態把握のための評価尺度としてFahnらにより開発された。評価項目はⅣ部に分けられ、Ⅰ部:認知・情動状態(知的機能)、Ⅱ部:ADL(歩行)、Ⅲ部:運動機能(姿勢)、Ⅳ部:薬剤の副作用の項目(ジスキネジア)を評価する。全42項目を0~4の5段階で行い、評価尺度は順序尺度である。

代表的な質問紙法による心理検査

MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory )
YG性格検査
MPI(モーズレイ人格目録)
EPPS(Edwards Personal Preference Schedule )
SDS(Self-rating Depression Scale)
HRSD(Hamilton Rating Scale for Depression)
エゴグラム(TEG)

 

 

 

 

 

92 手根管症候群でみられる症候はどれか。

1.下垂手
2.骨間筋の萎縮
3.小指のしびれ
4.母指球筋の萎縮
5.Guyon管のTinel徴候陽性

解答

解説

手根管症候群とは?

手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

1.3.× 下垂手/小指のしびれは、橈骨神経麻痺にて起こりやすい。橈骨神経麻痺とは、母指背側の感覚障害と上腕三頭筋・腕橈骨筋・長、短橈側手根伸筋、総指伸筋などの伸筋群の麻痺(下垂手)を認める。感覚領域は、親指から中指の背側、手背の橈側(親指側)、前腕の背側、上腕の背側と外側である。
2.5.× 骨間筋の萎縮/Guyon管のTinel徴候陽性は、尺骨神経麻痺にて起こりやすい。尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。Guyon管を通るものとして、①尺骨神経、②尺骨動脈である。
4.〇 正しい。母指球筋の萎縮は、手根管症候群でみられる症候である。なぜなら、手根管症候群は、正中神経の圧迫によって障害(正中神経麻痺)をきたすため。正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

 

 

 

 

93 ケトアシドーシスによってKussmaul呼吸が起こる理由で正しいのはどれか。

1.O2を取り込むため。
2.H+が減少したため。
3.CO2を排出するため。
4.HCO₃⁻が増加したため。
5.pHの上昇を基準値に戻すため。

解答

解説

用語説明

ケトアシドーシスとは、脂肪分解亢進によるケトン体(酸性)の蓄積からアシドーシスが生じ、脱水・意識障害(重症になると昏睡)をきたす。糖尿病では、高度のインスリン作用不足という病態が原因である。

Kussmaul呼吸(クスマウル呼吸)とは、異常に深大な呼吸が連続し、規則正しく続く状態。 運動時にも同様の呼吸がみられる。 糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全に伴う尿毒症、昏睡時など代謝性アシドーシスに認められる。

1.× O2を取り込むために起こる呼吸(低酸素血症の場合)は、頻呼吸・過呼吸である。
2.× H+が減少したために起こる呼吸(呼吸性アルカローシスの場合:過換気症候群)は、頻呼吸・過呼吸として起こる。頻呼吸とは、1分間に25回以上行われる状況である。 一方、過呼吸とは、呼吸回数に変化はないが、呼吸の深さが増加することをいう。通常、呼吸回数も多くなる。
3.〇 正しい。CO2を排出するため、ケトアシドーシス(代謝性アシドーシス)によってKussmaul呼吸が起こる。代謝性アシドーシスとは、HCO3⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。重炭酸イオンを含んだ膵液や胆汁の喪失、腎臓での再吸収障害、体内の酸性物質(ケトン体、CO2が過剰になり、その中和のための消費増大によって起こる。代償として、CO2を排出する呼吸代償(Kussmaul呼吸)が起こる。
4.× HCO₃⁻が「増加」ではなく低下したため、ケトアシドーシスによってKussmaul呼吸が起こる理由である。その結果、CO2を排出するよう働く。ちなみに、HCO₃⁻が増加した場合は、代謝性アルカローシスである。嘔吐や原発性アルドステロン症などで生じる。
5.× pHの「上昇」ではなく下降を基準値に戻すため、ケトアシドーシスによってKussmaul呼吸が起こる理由である。その結果、CO2を排出するよう働く。

酸塩基平衡とは?

【酸塩基平衡】
血液(体液)のpH:7.40 ± 0.05
→pH7.30:酸性に傾いている状態
→pH7.50:アルカリ性に傾いている状態
アシドーシス(酸性):pHが低下している状態。
アルカローシス(アルカリ性):pHが上昇している状態。

(※図引用:「異常呼吸」日本臨床検査医学会様HPより)

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【PT/OT/共通】酸塩基平衡についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

94 急性心筋梗塞が疑われる場合に最も優先度が低い検査はどれか。

1.心電図
2.心エコー
3.冠動脈CT
4.冠動脈造影
5.心筋シンチグラフィー

解答

解説

急性心筋梗塞とは?

急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。ちなみに、労作性狭心症とは、心臓に栄養を送る血管である冠動脈の一部が動脈硬化によって75%以上狭窄し、血流の流れが悪くなってしまう状態である。症状として、胸痛発作の頻度(数回/周以下)、持続時間(数分以内)、強度などが一定であることや、一定以上の運動や動作によって発作が出現する。その4大危険因子は、「①喫煙、②脂質異常症、③糖尿病、④高血圧」である。そのほかにも、加齢・肥満・家族歴・メタボリックシンドロームなどがある。

1.〇 心電図を用いる。なぜなら、心電図のST上昇は、急性心筋梗塞の典型的な検査所見であるため。心筋梗塞の時間経過とともにみられる特徴として、①T波の増高、②ST上昇異常、③Q波、④陰性T波の順番でみられるようになる。
2.〇 心エコーを用いる。心エコーとは、心臓超音波検査ともいい、超音波を当てて心臓の大きさ、動き、弁の状態、血液の流れなどを観察し、ポンプが正常に働いているかどうかを判断する検査である。心筋梗塞や心臓肥大、弁膜症、先天性疾患などが発見できる。
3.〇 冠動脈CTを用いる。冠動脈CTとは、静脈から造影剤(薬剤)を注射することで冠動脈の狭窄などの形態や、石灰化の有無、カテーテル検査で留置されたステントの評価ができる検査である。冠動脈が動脈硬化などの疾患で細くなることで、心臓に十分な血流が送られなくなることにより狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の有無を調べるのに有用である。
4.〇 冠動脈造影を用いる。冠動脈造影とは、狭心症や心筋梗塞を確定するために行われる検査である。足の付け根や手首からカテーテルという細くやわらかい管を挿入し、冠動脈の中にX線に反応する造影剤を入れ、X線撮影する。
5.× 心筋シンチグラフィーは、急性心筋梗塞が疑われる場合に最も優先度が低い検査である。なぜなら、心筋梗塞を起こした部位が壊死していないか確認する検査であるため。つまり、心筋梗塞を起こした後の心臓の機能などを測定する検査である。心筋シンチグラフィとは、心臓核医学検査ともいい、放射性同位元素を注射し、心筋に取り込まれた放射性同位元素から放出される放射線を撮影することにより、心筋の血流心筋のダメージの程度を評価する検査である。負荷心筋血流シンチグラフィでは、心臓の状態や動きを調べ、狭心症や心筋梗塞、心筋症などの病気の有無やその程度を診断する。また、心臓の心筋に栄養を運ぶ血流の流れ(状態)を見るのに有用な検査である。

 

 

 

 

 

95 Lewy小体型認知症の早期にみられる症状はどれか。

1.幻視
2.考想伝播
3.失語
4.人格変化
5.脱抑制

解答

解説

Lewy小体型認知症とは?

Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。

1.〇 正しい。幻視がLewy小体型認知症の早期にみられる症状である。発症初期から幻視(実際には存在しないものが見えること)を伴うことが多い。リアルでとても生々しい幻視が見える。例えば、実際にはいないのに「部屋の隅に子供や動物がいる」などと訴える。
2.× 考想伝播(考えが他人に知られる)は、統合失調症にみられる症状である。統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)。
3.× 失語は、認知症の末期(特にAlzheimer型認知症)に生じる。認知症の末期になると、記憶障害・見当識障害だけでなく、失認・失語・失行といったさまざまな認知機能の低下がみられる。Alzheimer型認知症とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。
4~5.× 人格変化/脱抑制は、前頭側頭型認知症(Pick病)の症状である。前頭側頭型認知症(Pick病)の病理所見として、前頭葉と側頭葉が特異的に萎縮する特徴を持つ認知症である。脳血流量の低下や脳萎縮により人格変化、精神荒廃が生じ、植物状態におちいることがあり、2~8年で衰弱して死亡することが多い。発症年齢が50~60代と比較的若く、初発症状は人格障害・情緒障害などがみられるが、病期前半でも記憶障害・見当識障害はほとんどみられない。働き盛りの年代で発症することが多いことで、患者さんご本人が「自分は病気である」という自覚がないことが多い。その後、症状が進行するにつれ、性的逸脱行為(見知らぬ異性に道で抱きつくなどの抑制のきかない反社会的な行動)、滞続言語(何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える)、食行動の異常(毎日同じものを食べ続ける常同行動)などがみられる。治療は、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法はなく、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われている。(参考:「前頭側頭型認知症」健康長寿ネット様HPより)

 

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