第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題86~90】

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86 頭部MRIで正しいのはどれか。

1.T2強調画像で髄液は低信号に描出される。
2.頭部CTに比べて脳幹部の病巣を観察しにくい。
3.T2強調画像で脳梗塞による信号変化はみられない。
4.拡散強調画像は急性期の脳梗塞の診断に有用である。
5.頭部CTに比べて急性期の脳出血の診断に有用である。

解答

解説

MEMO

T1強調像は、高信号(白)は脂肪(亜急性期の出血)・低信号(黒)は水(慢性期の出血)となる。脳回の萎縮、側室の拡大といった解剖構造を診るのに適している。T2強調像は、高信号(白)は水・脂肪(ほとんどの病変)・低信号(黒)は空気(慢性期の出血、線維化、石灰化)となる。T2強調像は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。

1.× T2強調画像で髄液は、「低信号(黒)」ではなく高信号(白)に描出される。T2強調像では、水は白く高信号で描出されるため。
2.× 頭部CTに比べて脳幹部の病巣を観察し「やすい」。なぜなら、MRIはさまざまなモード(T1、2強調像、FLAIR像など)で詳細な観察が行えるため。一方、頭部CTとは、エックス線を使用した撮影であるため、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。
3.× T2強調画像で脳梗塞による信号変化は「みられる」。T2強調像は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。
4.〇 正しい。拡散強調画像は急性期の脳梗塞の診断に有用である。拡散強調像(DWI画像)とは、水分子の拡散運動(自由運動度)を画像化したもので、拡散が低下した領域が高信号として描出される。ちなみに、超急性期の血栓溶解療法(t-PA療法)や血栓回収療法(血管内治療)では、DWIで検出される前の病巣が治療のターゲットとなる。なお、急性期の脳出血はCTで確認するのが一般的である。
5.× 「頭部CTに比べて」ではなく、頭部CTのほうが急性期の脳出血の診断に有用である。なぜなら、早期治療が求められる急性期において、頭部CTの撮影時間は約10~20秒程度で、入室してから約3分程度で検査は終了できるメリットがあるため。一方、頭部MRI検査時間は20~30分程度である。

急性期における梗塞巣の確認のしやすさ

①拡散強調像(DWT):超急性期(発症後1~3時間)
②FLAIR像:発症後3~6時頃
③T2強調像:発症後3~6時頃
④T1強調像の順である。

MRI検査とは?

核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

【MRI検査の禁忌】
①体内の電子電機部品(ペースメーカ、移植蝸牛刺激装置(人工内耳)、植込み型除細動器、神経刺激器、植込み型プログラマブル注入ポンプ):MRI対応型もあるためしっかり確認する。
②素材の確認できない脳動脈クリップ:MRI対応型もあるためしっかり確認する。
③目や脳など特定の重要臓器に迷入した鉄片などの強磁性体の破片
④眼部のインプラントや材料で強磁性金属を使用しているもの
⑤磁場によって活性化するもの(磁力で装着する義眼、磁石部分が脱着不能な義歯など)
⑥目のメークアップ用品、カラーコンタクト
⑦入れ墨
⑧補聴器
⑨いくつかの管腔内デバイス
⑩ニトログリセリン真皮浸透絆創膏

 

 

 

 

 

87 AEDで正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.使用には医師の指示が必要である。
2.心臓ペースメーカーの植込み患者に使用できる。
3.衣服の上から使用できる。
4.電気的除細動時は四肢を押さえる。
5.電気的除細動は自動的に行われる。

解答2・5
対応:複数の選択肢を正解として採点する。

解説

AEDとは?

自動体外式除細動器とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。AEDの除細動の適応は、①心室細動(VF)、②無脈性心室頻拍(VT)である。

1.× 使用には医師の指示が「必要ではない」。一方、除細動器(DC)については医師のみが使用できる。
2.〇 正しい。心臓ペースメーカーの植込み患者に使用できる。ペースメーカーが装着されている場合は、除細動パッドをペースメーカーの真上に貼り付けないようにする。なぜなら、ペースメーカーのペーシングは心電図の解析を不正確にする恐れがあるため。また、電気ショックの放電により、ペースメーカーが損傷することがある(※参考:「AEDに関するよくあるご質問」AsahiKASEI様HPより)。
3.× 衣服の上から使用「できない」。胸部が濡れている場合は、電極パッドを貼る前に拭き取る。なぜなら、皮膚が汗や水で濡れているとパットが密着しないため。胸毛が濃い場合には、電極パッドが体表に密着しないため「きちんと貼って下さい」等のエラーメッセージが流れる。この場合は電極パッドを強く押し付けて密着させるか、貼った電極パッドをはがして貼り付ける部分の体毛を除去し、予備の新しい電極パッドを貼り直す(※参考:「AED使用上の注意」小松市消防本部様HPより)。
4.× 電気的除細動時は四肢を押さえる必要はない。なぜなら、電気ショックが救助者まで感電してしまうため。
5.△ 電気的除細動は自動的に行われる。どの範囲までを「自動的」と判断するか不明であるが、一般的なAEDは電気ショックボタン(電気的除細動のボタン)を押す必要がある。電気ショックボタンを押せば、電気的除細動は「自動的」に行われる。近年、オートショックAEDという自動的に除細動ショックが実施されるものもある。オートショックAEDで操作を減らすことで救助者の心理的負担の軽減をサポートし、救命率の向上を目指している(※参考:「オートショックAED学習ページ」AEDライフ様HPより)。

 

 

 

 

88 背臥位における褥瘡の好発部位はどれか。2つ選べ。

1.踵部
2.膝窩部
3.仙骨部
4.内果部
5.大転子部

解答1・3

解説

褥瘡とは?

褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚の潰瘍あるいは皮下組織の損傷のことである。背臥位では、後頭骨肩甲骨肘頭仙骨踵部などの骨の突出している場所に好発する。側臥位の好発部位は、耳介部、肩外側、骨盤の腸骨部、大転子部、膝外側、足関節外果である。予防法としては、最も負担がかかりやすい骨突出部を除圧し、面で支持することで一点に圧をかけることなく、圧の分散に努める。褥瘡予防マットやクッションなどを活用する。また、清潔を心がけ、体位変換を行う。

1.3.〇 正しい。踵部/仙骨部は、背臥位における褥瘡の好発部位である。
2.× 膝窩部は、どの姿勢からも褥瘡ができにくい。なぜなら、骨突出部位とはいえず圧がかかりにくいため。
4.× 内果部は、背臥位に褥瘡ができやすいとは言えない。むしろ内果部より外果部のほうが、圧のかかりやすい側臥位に褥瘡ができやすい。
5.× 大転子部は、側臥位に好発する。ちなみに、側臥位の好発部位は、耳介部、肩外側、骨盤の腸骨部、大転子部、膝外側、足関節外果である。

褥瘡の予防

①一般に2時間ごとに体位変換を行うことが基本とされる。
②30°側臥位では体圧を分散させ身体を支えることができる。
③ベッドのキャッチアップは30°まで。
④予防にマッサージは効果的。ただし、骨突出部・突起部や発赤があるところには(摩擦を加えてしまうため)行わない。
⑤円座は接触部分が逆に圧迫されてしまい褥瘡の誘因となる。

 

 

 

 

 

89 外傷性脊髄損傷で正しいのはどれか。

1.男性より女性に多い。
2.頸髄損傷が胸腰髄損傷より多い。
3.交通事故による受傷が最も多い。
4.発症者の年齢は20歳代が最も多い。
5.頸髄損傷では完全麻痺者の比率が高い。

解答

解説

外傷性脊髄損傷とは?

脊椎損傷とは、脊椎(背骨)に過大な外力が加わって、骨折や脱臼を生じる外傷である。外傷性脊髄損傷の原因は、圧倒的に交通事故によるものが多く、原因の40%を超える。若年者ではバイクによる事故が多く、中高年者では自動車事故が多い。次いで、高所からの転落・転倒・スポーツによるものとなっているが、スノーボードによる事故も増えている。データとして、推定年間発生率は100万人あたり49人、頚髄損傷は88.1%、発症年齢中央値70.0歳、男女比3:1、原因は転倒が38,6%、交通事故が20.1%と報告されている(※参考データ:日本脊髄障害医学会による脊髄損傷全国発生調査の結果)。

1.× 逆である。「女性」より「男性」に多い。男女比は3:1であり、男性の方が多い。
2.〇 正しい。頸髄損傷(約7~9割)が胸腰髄損傷より多い。頚髄損傷は88.1%とされている(※参考データ:日本脊髄障害医学会による脊髄損傷全国発生調査の結果)。外傷性脊髄損傷の損傷レベルは頚髄が75%、胸腰仙椎が25%(仙台医療センターの調査)。
3.× 「交通事故(20.1%)」ではなく転倒(38,6%)による受傷が最も多い(※参考データ:日本脊髄障害医学会による脊髄損傷全国発生調査の結果)。ただし、年齢別にみると、若年者ではバイクによる事故が多く、中高年者では自動車事故が多い。次いで、高所からの転落・転倒・スポーツによるものとなっているが、スノーボードによる事故も増えている。
4.× 発症者の年齢は、「20歳代」ではなく高齢(70歳代)が最も多い。16~20歳代 (小さなピーク)と、50~60歳代(大きなピーク)の二峰性をしていたが、近年は、徐々に70歳代をピークとする一峰性へと変化しつつある。
5.× 頸髄損傷では、「完全麻痺者」ではなく不完全麻痺者の比率が高い。なぜなら、転倒(38,6%)が原因であることが多く、完全麻痺は転落、交通事故など、強い外傷が加わらないと完全損傷にはなりにくいため。

 

 

 

 

 

90 骨粗鬆症で正しいのはどれか。

1.女性より男性に多い。
2.遺伝的要因は影響しない。
3.続発性より原発性が多い。
4.骨折は大腿骨近位部が最も多い。
5.日本の患者数は約100万人である。

解答

解説

骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。

1.× 逆である。「男性」より「女性」に多い。閉経後の女性が、約8割を占める。
2.× 遺伝的要因は「影響する」。なぜなら、骨量は複数の環境因子と遺伝的素因によって規定されるため。
3.〇 正しい。続発性より原発性が多い。原発性は約9割を占める。原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。
4.× 骨折は、「大腿骨近位部」ではなく圧迫骨折が最も多い。なぜなら、大腿骨近位部は骨粗鬆症を背景とするが、転倒などの外力が加わることで生じるため。一方、圧迫骨折とは「いつのまにか骨折」ともいい、比較的弱い反復的な力で、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。
5.× 日本の患者数は、「約100万人」ではなく約1500万人である。加齢とともに患者数が増える傾向で、80歳代の女性の2人に1人というデータもある。

骨粗鬆症について

①原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。

②続発性骨粗鬆症とは、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。

 

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