第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題81~85】

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81 技法としてホームワーク〈宿題〉を用いるのはどれか。

1.支持的精神療法
2.精神分析療法
3.内観療法
4.認知行動療法
5.森田療法

解答

解説
1.× 支持的精神療法とは、患者の自我の弱い部分をサポートすることで、患者が症状に耐えて生活できる適応能力を身につけさせる方法である。患者の洞察を求める。
2.× 精神分析療法(精神分析)とは、自由連想法により無意識のうちに抑圧されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせる手法である。フロイトにより開発されたもので、成人の神経症性障害に適応となる。精神療法の代表的なものである。
3.× 内観療法とは、吉本伊信の内観法(修養法の一種)を基にした精神療法で、「してもらったこと」、「して返したこと」、「迷惑をかけたこと」の3点に絞って具体的な事実を想起する。両親に勧めるものとして適切とはいえない。内観療法は、アルコールや薬物依存・適応障害の治療法として効果があるといわれている。
4.〇 正しい。認知行動療法は、技法としてホームワーク〈宿題〉を用いる。認知行動療法とは、自然に頭に浮かんだ考えを記録して、個人の信念や思考様式をもとに思考のプロセス(認知プロセス)を把握し、より合理的な考え方や行動ができるように導く方法である。「認知療法・認知行動療法では、ホームワーク(宿題)といって、面接で話し合ったことを実生活で検証しつつ認知の修正を図ることが必須の課題となる。つまり、観念的な議論ではなく、あくまでも現実に目を向けた検証を基本とする点に特徴があり、日常生活が治療の場となる」(※引用:「うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル」厚生労働省様HPより)。
5.× 森田療法とは、目的・行動本意の作業を繰り返すことにより、症状にとらわれず、症状を「あるがまま」に受け入れながら生活できるようにする方法である。

 

 

 

 

 

82 ADLで正しいのはどれか。

1.環境要因によって影響を受ける。
2.IADLが概念の基礎となっている。
3.生活機能より包括的な概念である。
4.2000年代初頭に世界保健機関によって定義された。
5.評価スケールとしてFugl-Meyer Assessment scaleが用いられる。

解答

解説

手段的日常生活動作(IADL)とは?

手段的日常生活動作(IADL)とは、日常生活上の、より高度で複雑な動作のこと(買い物、洗濯、掃除、金銭管理、服薬管理など)である。
ADLは、①BADL(基本的日常生活動作)と、②IADL(手段的日常生活動作)に大別される。
①BADL:食事、排泄、入浴、整容など基本的な欲求を満たす身の回りの動作。
②IADL:買い物、洗濯、電話、服薬管理などの道具を用いる複雑な動作。

1.〇 正しい。環境要因によって影響を受ける。なぜなら、手すりや階段昇降機の設置の有無などでも、階段昇降が自立できるかどうか決まる要因となるため。したがって、身体的側面や環境的側面など、様々な視点を考慮しアプローチを行う。
2.× IADLが概念の基礎となっているとはいえない。なぜなら、ADLもIADLも概念とはいえないため。ちなみに、概念とは、人が認知した事象に対して、抽象化・普遍化し、思考の基礎となる基本的な形態となるように、思考作用によって意味づけられたものである。
3.× 生活機能「より」ではなく「のほうが」包括的な概念である。生活機能とは、ICFでいうと、人が生きる上での生活すべてを指し、心身機能・構造、活動、参加を指す。ADLは活動に該当するため、生活機能「のほうが」包括的な概念である。
4.× 2000年代初頭に世界保健機関によって定義されたのは、「ICFに関して」である。ちなみに、日常生活動作(activities of daily living;ADL)の概念は、1940年代にニューヨークのDeaver、Brownによって誕生し、その後、Rusk、Lawtonによって発展した。
5.× 評価スケールとして、「Fugl-Meyer Assessment scale」ではなくBarthel IndexFIMなどが用いられる。ちなみに、FMA< Fugl-Meyer assessment >は、片麻痺患者の身体機能の回復についての評価である。上肢・手指・下肢の運動機能やバランス、感覚などを226点満点で評価する。

ICFとは?

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。

(図引用:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

83 改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査〈JDDST-R〉で「母指と示指によるつまみ動作」の通過率75%が含まれる時期はどれか。

1.3~4か月
2.6~7か月
3.9~10か月
4.12~13か月
5.15~16か月

解答

解説

90%の通過率とは、検査表の▢の枠の右端に相当する月齢で示される。

1.× 3~4か月は、おもちゃを引っ張ると抵抗したり、ガラガラを握ることの獲得時期である。
2.× 6~7か月は、2つの積み木をとったり、熊手型につかむことの獲得時期である。
3.× 9~10か月は、両手の積み木を打ち合わせたり、親指を使ってつかむことの獲得時期である。親指と人差し指の指先でつまむことの獲得開始時期である。
4.〇 正しい。12~13か月が、改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査〈JDDST-R〉で「母指と示指によるつまみ動作」の通過率75%が含まれる時期である。
5.× 15~16か月は、すでに獲得済みである。2つの積み木で搭を作ることが通過率75%の時期である。

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84 脳卒中回復期の嚥下障害に対する最も適切な栄養管理はどれか。

1.水分にとろみは使用しない。
2.胃瘻造設後には経口摂取は行わない。
3.経鼻胃管による経管栄養は誤嚥の危険はない。
4.点滴管理は栄養摂取量を考慮する必要はない。
5.経鼻胃管による経管栄養は長期的栄養管理には適さない。

解答

解説

誤嚥しやすい食べ物

①サラサラした液体、②口腔内でバラバラになりまとまりにくい物、③水分が少なく,パサパサした物、④口腔内や咽頭に貼り付きやすい物、⑤粘りの強い物、⑥すべりのよすぎる物、⑦硬い物などである。

1.× 水分にとろみは「使用する」。なぜなら、とろみをつけることで誤嚥防止できるため。水分のようにサラサラした液体は咽頭部を急速に流れ誤嚥しやすい。固形は液体より誤嚥が少ない理由として、①食塊が均一、②凝集性が高い、③付着性が低い、④適度な粘性、⑤咽頭通過時に変形しやすいことがあげられる。
2.× 胃瘻造設後には経口摂取は「行える」。経鼻胃管栄養は、鼻から喉にかけてカテーテルが胃まで入っているため、食べ物を食べる練習は難しい。しかし、胃ろうだと直接胃につないでいるため、誤嚥に気を付けながら経口摂取と併用する食事方法も可能である。むしろ、口から物を食べる練習ができるため、脳への刺激、活性化にも繋がる。重要なのは、患者の安全と栄養状態を維持することである。
3.× 経鼻胃管による経管栄養は、誤嚥の危険は「ある」。なぜなら、嘔吐など内容物が逆流すると誤嚥の危険もあるため。ちなみに、経鼻胃管挿入とは、鼻からプラスチック製のチューブ(くだ)を挿入し、胃まで通すことである。
4.× 点滴管理は栄養摂取量を考慮する必要は「ある」。なぜなら、カロリーだけでなく栄養状態にも配慮が必要であるため。適切な栄養摂取は、全身状態の管理につながる。ちなみに、栄養摂取量とは、栄養素摂取量ともいい、その字のごとく、栄養素の摂取量を指す。
5.〇 正しい。経鼻胃管による経管栄養は長期的栄養管理には適さない。なぜなら、長期的な使用は鼻や咽頭への刺激、感染リスクの増加などデメリットが顕著化しやすいため。日本静脈経腸栄養学会編集による「静脈経腸栄養ガイドライン 第3版」によると、経管栄養を施行する期間として、経鼻経管栄養(経鼻胃管)の場合は、4週間未満を推奨される。長期的な栄養管理には、胃瘻を推奨されることが多い。

 

 

 

 

 

85 出生時に出現していないのはどれか。

1.Moro反射
2.Galant反射
3.Babinski反射
4.緊張性迷路反射
5.対称性緊張性頸反射

解答

解説

原始反射とは?

原始反射は知覚や姿勢に入力された刺激が大脳の指令を受けずに脊髄や脳幹レベルで処理されることで、無意識下で筋肉が動く現象である。随意運動が発達すると徐々に原始反射は消失する。これは、新生児期の反射中枢は脊髄レベルであり、月齢とともに、脳幹部、中脳、大脳皮質と反射中枢は高次に達するため。

1.× Moro反射とは、原始反射の一つであり、頭を落下すると、手指を開き上肢を広げ、その後、上肢屈曲位に戻る反射のこと。4~6か月前後に消失する。
2.× Galant反射とは、脊柱近位を尖った物でこすることで体幹が刺激側に側屈する反射である。これは出生時からみられ、生後1~2か月頃に消失する。
3.× Babinski反射とは、錐体路障害で陽性となる。方法は、足底外側部を踵の方からつま先に向けてゆっくり弧を描きながらこする。陽性の場合、母趾の背屈とそのほかの趾の開扇現象がみられる。出生後すぐから反応が見られ、生後1〜2年程度で自然に消失する。
4.× 緊張性迷路反射とは、背臥位では伸展緊張が促通され、腹臥位では屈曲緊張が促通される反射である。胎児期後期から、5~6ヵ月までにみられ、脳幹レベルの姿勢反射である。
5.〇 正しい。対称性緊張性頸反射は、出生時に出現していない。腹臥位(水平抱き)で頭部を伸展させると、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、上肢は伸展、下肢は屈曲し、頭部を屈曲させると逆に上肢は屈曲、下肢は伸展する。4~6ヵ月に出現、8~12ヵ月までみられる。

 

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