第58回(R5)作業療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 理学療法士及び作業療法士法で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.作業療法士は業務独占資格である。
2.作業療法士が1日で治療できる患者数を規定している。
3.作業療法は社会的適応能力の回復を図るために行われる。
4.退職した後も業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
5.作業療法士免許証を紛失した場合は都道府県知事から再交付される。

解答3・4

解説
1.× 作業療法士は、「業務独占資格」ではなく名称独占資格である。名称独占資格とは、無資格者は該当の名称を用いて当該業務に就くことができないが、無資格者であってもその名称を用いなければ当該業務に就くことができる資格のことである。一方、業務独占資格とは、国家資格を持たないものが、その名称を用いて当該業務に従事することはできない資格のことである。例えば、医師、看護師、助産師などに規定されている。
2.× 作業療法士が、1日で治療できる患者数を「規定している」のではく規定していない。理学療法士及び作業療法士法とは、理学療法士、作業療法士の資質を向上し、もって医療及び公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする日本の法律である。
3.〇 正しい。作業療法は社会的適応能力の回復を図るために行われる。(定義)第二条 この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。2 この法律で「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう(※引用:「理学療法士及び作業療法士法」厚生労働省HPより)。
4.〇 正しい。退職した後も業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。(秘密を守る義務)第十六条 理学療法士又は作業療法士は、正当な理由がある場合を除き、その業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはならない。理学療法士又は作業療法士でなくなつた後においても、同様とする(※引用:「理学療法士及び作業療法士法」厚生労働省HPより)。
5.× 作業療法士免許証を紛失した場合は、「都道府県知事」ではなく厚生労働大臣から再交付される。再交付に限らず、基本的に国家資格は厚生労働大臣が交付している。

 

 

 

 

 

27 原始反射のうち正常児の7~8か月でみられるのはどれか。

1.探索反射
2.Galant反射
3.手掌把握反射
4.足底把握反射
5.非対称性緊張性頚反射

解答

解説
1.× 探索反射は、児の口唇や頬を指で触れると刺激側に顔を向けて口で指を捕らえようとするもので、哺乳時に視覚的に乳首を探すことができない出生時から存在し、離乳食に移行し始める生後4~6ヵ月で消失する原始反射である。これによって母乳の摂取が可能となる。
2.× Galant反射(側彎反射、背反射)は、脊柱の外側に沿って上から下へこすると刺激側の背筋が収縮して側屈する。胎児期後期から生後2ヵ月までみられる。
3.× 手掌把握反射は、手掌に指先を押し付けると握りしめる反射である。この反射が1~2か月頃に消失すると、自由に物をつかんだり離したりできるようになる。
4.〇 正しい。足底把握反射は、原始反射のうち正常児の7~8か月でみられる。足底把握反射(足趾把握反射)は、の【刺激と反応】新生児の母趾球を検者の母指で圧迫すると、全趾が屈曲する。【出現と消失時期】3か月ごろから弱くなり、9か月ごろには消失する。(12か月とするものもある)
5.× 非対称性緊張性頚反射(ATNR)は、背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後4~6か月には消失する

 

 

 

 

 

28 対象者に直接、満足度を問うことができるのはどれか。2つ選べ。

1.AMPS
2.COPM
3.OSAⅡ
4.MTDLP
5.NPI興味チェックリスト

解答2・4

解説
1.× AMPS(Assessment of Motor and Process Skills:運動技能とプロセス技能の評価)は、観察に基づく評価法である。ADLとIADLに関わる16の運動技能と20の遂行技能を観察し、たとえば地域で自立生活を送るのが可能かどうかを評価する。
2.〇 正しい。COPMは、対象者に直接、満足度を問うことができる。COPM(Canadian Occupational Performance Measure:カナダ作業遂行測定)は、①患者が現時点で改善したいと考える活動と、②それらの重要度、③遂行度(でき栄え)、④満足度をそれぞれ10点満点で患者が主観的に評価する。
3.× OSAⅡ(Occupational Self AssessmentⅡ:作業に関する自己評価)は、人間作業モデルの作業に関する自己評価を行うための方法である。質問紙により、患者が現在の自分自身の作業機能状態を評価し、改善したい項目の優先度を記す。これに基づいて、患者が作業療法士と協働して作業機能を高めていくものである。
4.〇 正しい。MTDLPは、対象者に直接、満足度を問うことができる。MTDLP(Management Tool for Daily Life Performance:生活行為向上マネジメント)は、患者が本来もっている能力を引き出し、患者にとって意味のある在宅生活(生活行為)でその能力を生かせるように支援するためのツールである。各チェックシート(①生活行為聞き取りシート、②生活行為向上マネジメントシート、③生活行為申し送り表)」に基づき計画を立てる。①生活行為聞き取りシートには、生活更衣目標の①実行度と②満足度を聞き取る。「生活行為聞き取りシート」まず対象者がどのような生活行為を向上したいかを把握することから始まる。対象者がしたい・望む生活行為を聞き取り生活行為の目標を明らかにする。対象者のやってみようという気持ちを高めるため自己評価を行う(介入の前後で実行度と満足度を確認し取り組み成果を可視化する)。
5.× NPI興味チェックリストは、80項目の活動(手工芸・スポーツ・レクリエーションなど)についての興味関心を、「強い」「普通」「ない」のいずれかにチェックを入れてもらい、興味・関心の傾向を知るための評価である。

 

 

 

 

 

29 知覚検査とその方法の組み合わせで正しいのはどれか。

1.触覚:毛筆で四肢の長軸方向に対して直角に触れる。
2.温度覚:40℃の温水と0℃の冷水の入った試験管を当てる。
3.振動覚:音叉を筋腹の膨隆部に当てる。
4.受動運動覚:Semmes-Weinstein Monofilamentを当てる。
5.2点識別覚:ノギスを用いて刺激する。

解答

解説
1.× 触覚の検査は、毛筆で四肢の長軸方向に対して「直角」ではなく平行に触れる。ちなみに、体幹部では肋骨に平行刺激を加える。筆のほかにも、脱脂綿、ティッシュなどを用いる。
2.× 温度覚の検査は、「40℃」ではなく50℃の温水と0℃の冷水の入った試験管を当てる。これらを感じない場合には、0℃と60℃で検査を行い、感じることができれば鈍麻、感じることができなければ脱失と判定する。
3.× 振動覚の検査は、音叉を「筋腹の膨隆部」ではなく骨突出部に当てる。具体的な部位として、皮下に骨が容易に触知できる鎖骨・胸骨・外果などの骨の突出部に音叉を振動させて当てる。
4.× Semmes-Weinstein Monofilamentを当てるのは、「受動運動覚」ではなく静的触覚である。Semmes-Weinstein Monofilamentは、最も細い「#1」から最も太い「#20」までの計20本のフィラメントのことである。ノックしないで4~5秒間でゆっくりと当てて離す部位を指摘させる。ちなみに、受動運動覚は、他動的に四肢の関節を動かして、その動きや方向が分かるかどうかの感覚である。
5.〇 正しい。2点識別覚の検査は、ノギスを用いて刺激する。二点識別覚は、ディスク・クリミネーター(2点識別計)やスピアマン式触覚計(ノギスでも可)を利用する。ちなみに、2点識別覚は、複合感覚に分類される。複合感覚(皮質覚)とは、複数の与えられた感覚情報が大脳皮質で統合されることにより、物の性質・形態などを認識することである。

感覚の分類

①表在感覚:皮触覚・痛覚・温度覚。
②深部感覚:関節覚(位置覚、運動覚)・振動覚・及び深部痛覚。
③複合感覚:立体覚、皮膚書字感覚、二点識別覚、部位覚、重量覚など。

 

 

 

 

 

30 上肢・手指のBrunnstrom法ステージとテスト動作の組合せで正しいのはどれか。

1.上肢Ⅳ:手を背中の後ろへ回す。
2.上肢Ⅴ:上肢を肘伸展位で前方水平位に上げる。
3.上肢Ⅵ:肘伸展位・肩関節90°屈曲位で前腕回内・回外する。
4.手指Ⅲ:横つまみをする。
5.手指Ⅴ:全可動域にわたり指を伸展する。

解答

解説

1.〇 正しい。上肢Ⅳは、手を背中の後ろへ回す。他にも、肘を伸展させて上肢を前方水平へ挙上。肘90°屈曲位での前腕回内・回外が該当する。
2.× 上肢を肘伸展位で前方水平位に上げるのは、「上肢Ⅴ」ではなく上肢Ⅵである。ちなみに、上肢Ⅴは、肘を伸展させて上肢を横水平へ挙上、また前方頭上へ挙上、肘伸展位での前腕回内・回外が該当する。
3.× 肘伸展位・肩関節90°屈曲位で前腕回内・回外するのは、「上肢Ⅵ」ではなく上肢Ⅵである。ちなみに、上肢Ⅵは、各関節の分離運動が該当する。
4.× 横つまみをするのは、「手指Ⅲ」ではなく手指Ⅳである。ちなみに、手指Ⅲは、全指同時握り、鈎形握り(握りだけ)、伸展は反射だけで、随意的な手指伸展不能が該当する。
5.× 全可動域にわたり指を伸展するのは、「手指Ⅴ」ではなく手指Ⅵである。ちなみに、手指Ⅴは、対向つまみ、筒握り、球握り、随意的な手指伸展(範囲は一定せず)が該当する。

 

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