第58回(R5)作業療法士国家試験 解説【午後問題21~25】

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21 洗顔ができない単関節の障害における関節運動と可動域制限の組合せで正しいのはどれか。
 ただし、自助具は使用しないものとする。

1.肩関節屈曲:40°
2.肩関節内旋:60°
3.肘関節屈曲:50°
4.前腕回外:60°
5.手関節背屈:10°

解答

解説

整容動作

整容動作には、洗顔・整髪・歯磨き・化粧など種々の動作が含まれます。いずれの動作も、手が頭部や顔面にどの程度近づくかが重要です。日常の諸動作と上肢の関節可動域の関連性を調査した研究によると、頭部・顔面へのリーチには、肩関節の最大屈曲角が140〜70°で内旋30°以上、肘関節屈曲が110°以上を必要とすると報告されています(※引用:「整容動作」著者:中川正己)。

1.× 肩関節屈曲:40°の場合でも洗顔が可能である。なぜなら、肩関節屈曲制限は、肘関節屈曲により代償可能であるため。一方、頭部へのリーチは肩関節の屈曲角度が70°以上求められることが多い。
2.× 肩関節内旋:60°の場合でも洗顔が可能である。なぜなら、一般的な洗顔動作でも肩関節内旋角度は30°以上あれば可能であるため。
3.〇 正しい。肘関節屈曲:50°の場合、洗顔ができない。
4~5.× 前腕回外:60°/手関節背屈:10°の場合でも洗顔が可能である。なぜなら、洗顔動作において、前腕回外/手関節背屈は求められないため。

 

 

 

 

 

22 FAIの項目で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.階段昇降
2.銀行貯金の出し入れ
3.交通手段の利用
4.請求書の支払い
5.庭仕事

解答3・5

解説

1~2.4.× 階段昇降/銀行貯金の出し入れ/請求書の支払いは、FAIの項目ではない
3.〇 正しい。交通手段の利用/庭仕事は、FAIの項目である。FAI(Frenchay Activities Index)は、手段的ADLに該当する15項目の活動内容(①食事の用意、②食事の後片付け、③洗濯、④掃除や整頓、⑤力仕事、⑥買い物、⑦外出、⑧屋外歩行、⑨趣味、⑩交通手段の利用、⑪旅行、⑫庭仕事、⑬家や車の手入れ、⑭読書、⑮仕事)における活動性の評価方法である。

 

 

 

 

 

23 顔面と上下肢に感覚脱失を呈する脳卒中片麻痺の患者に対する生活指導で最も適切なのはどれか。

1.両手での車椅子駆動を勧める。
2.屋内ではスリッパ使用を勧める。
3.電髭剃りは電動カミソリを勧める。
4.麻痺手使用を控えるよう勧める。
5.湯呑を麻痺側で把持するよう勧める。

解答

解説
1.× 「両手」ではなく片手片足での車椅子駆動を勧める。なぜなら、上肢の感覚脱失により、ハンドリムの操作を感覚に頼って握ることができなかったり、車いす操作でケガしても気が付かなく危険を伴うため。
2.× 屋内ではスリッパ使用を「勧める」のではなく勧めない。なぜなら、スリッパ使用はつまづきの原因となり転倒の危険性があるため。
3.〇 正しい。髭剃りは電動カミソリを勧める。なぜなら、顔面に感覚脱失により、通常のカミソリの使用は危険性が高く、切り傷皮膚の損傷を招く可能性があるため。したがって、通常のカミソリより電動カミソリのほうが、安全性が高い。
4.× 麻痺手使用を「控える」のではなく使用するよう勧める。なぜなら、できるだけ麻痺側を使うような作業を日常生活に取り入れることで、関節拘縮廃用性萎縮を防止することができるため。
5.× 湯呑(読み:ゆのみ)は、「麻痺側」ではなく非麻痺側で把持するよう勧める。なぜなら、上肢の感覚脱失により、湯呑をうまく持つことができず、こぼしてしまった際にやけどの危険があるため。

 

 

 

 

24 障害と就労支援の機器との組合せで正しいのはどれか。

1.記憶障害:録音再生機
2.視覚障害:磁気誘導ループ
3.四肢麻痺:筆談支援機器
4.聴覚障害:音声メールソフト
5.両上肢切断:活字文章読み上げ装置

解答

解説
1.〇 正しい。記憶障害は、録音再生機を使用する。情報は、文字、カメラ、録音機などを使用しない限り、本質的に形に残りにくい。健常者でさえ、メモ帳や日記に記録を残す。記憶障害や認知症があっても可能なうちは、メモや日記に記録を残すよう薦める。録音再生機を使用することで、重要な情報を録音し、必要に応じて繰り返し聞くことができる。
2.× 磁気誘導ループ(ヒアリングループ)は、「視覚障害」ではなく、聴覚障害に適応となる。磁気誘導ループ(ヒアリングループ)とは、スピーカーに音を出すかわりに、ループ状の電線に音の電流を流し、磁界として音の信号を空中に出すものである。
3.× 筆談支援機器は、「四肢麻痺」ではなく、聴覚障害や発声障害(言語障害)に適応となる。筆談支援機器とは、マグネットペンで書いた後、表示面を簡単に消すことができ、何度も繰り返し使用できるものである。
4~5.× 音声メールソフト/活字文章読み上げ装置は、「聴覚障害/両上肢切断」ではなく、聴覚障害に適応となる。音声メールソフト/活字文章読み上げ装置とは、メールの内容を音声で音読してもらえるソフトである。

 

 

 

 

 

25 筋電義手で正しいのはどれか。

1.6歳児以上が適応である。
2.前腕義手はハーネスを用いる。
3.感覚フィードバック機能がある。
4.五指駆動型の筋電ハンドはない。
5.1つの電極でも開閉制御はできる。

解答

解説

※(写真引用:「筋電義手」Ottobock様HPより)

1.× 6歳児以上といった年齢制限はない。小児の筋電義手ものもあり、筋電義手の操作練習は、筋電の検出ができれば、何歳からでも始められる。生後10∼15か月を目安に、筋電義手を作成し装着することが多い。
2.× 前腕義手はハーネスを「用いる」のではなく用いない。なぜなら、自己懸垂性があるため。
3.× 感覚フィードバック機能は、「ある」のではなくない。R5年時点では、感覚フィードバック付きの義手は研究や試作段階である。現在の臨床では、視覚でとらえ把持する必要がある。
4.× 五指駆動型の筋電ハンドは、「ない」のではなくある。電気通信大学大学院情報理工学研究科によって、5 指独立駆動型のサイボーグ義手(五指駆動型の筋電ハンド)の開発と実用化に成功し、病院等でのフィールドテストをパスし、厚生労働省の補装具等完成用部品として認められた。
5.〇 正しい。1つの電極でも開閉制御はできる。筋電義手は、筋電信号を検出するための電極を用いて動作する。1つの電極でも開閉制御が可能であり、例えば、前腕の筋肉が収縮することで義手が閉じ、リラックスすることで義手が開くように制御できる。ただし、従来型の筋電義手は、一般的に2つの筋電位センサーから得る電位の大きさで筋電義手の動きを制御する。具体的には、手首を反るように前腕に力を入れて、筋電位があるしきい値以上になると義手が開き、さらに大きい力を加えて別のしきい値を超えると手首の回転動作に切り替わる、といった制御である。

筋電義手とは?

筋電義手とは、小型バッテリーを前腕支持部外装にはめ込み、筋電装置によって手先具の開閉を行う装具である。

【特徴・適応】
①前腕断端長が10cm以上。
②近接関節の可動減制限がない。
③訓練を理解する知的能力があること。など・・・。

【利点】
①把持力がある。
②見栄えがよい。など・・・。

【欠点】
①金額が高い。
②公的給付制度が不十分。
③重い。
④視覚による操作確認が必要。
⑤訓練できる施設が少ない。など・・・。

 

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