第58回(R5)理学療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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6.Aから照射される極超短波の強度はBの何%か。
 ただし、cos30°=0.866とする。なお、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第2位を四捨五入すること。

1.10.8%
2.21.7%
3.43.3%
4.86.6%
5.173.2%

解答

解説

MEMO

ランバート(Lambert)の法則:熱源を患部に照射する場合、照射角度θが垂直(cos0°)であれば最大の照射量になるが患部に平行(cos90°)に照射するとその照射量は0になる。θ:0度の場合100%、θ:30度の場合86.66%、θ:45度の場合70%、θ:60度の場合50%(本問題)である。

逆二乗の法則:物体が受ける照射強度は、放射源(熱源)と物体との距離の自乗に反比例する。すなわち、熱源と物体との距離が2倍になれば、単位面積当たりの照射強度は1/4になり、3倍になれば1/9になる。

Bの強度を100(%)としたとき

①ランバートの法則により、86%となる。

②逆二乗の法則により、86× 1/4となるため、

=21.5

したがって、選択肢2.21.7%が正しい。

sin cos tanとは?

三角比で使われるsin(サイン)・cos(コサイン)・tan(タンジェント)とは、三角比である。 直角三角形の直角とそれ以外の角度が1つわかると、三角形の辺の長さの比が決まる。 このときの三角形の辺の2つの辺の比のことを三角比と言う。

 

 

 

 

 

7.両眼を強く閉眼するよう指示したところ、左側の兎眼が認められた。
 同じ脳神経の障害で生じる症状はどれか。


1.右方視したときの様子
2.普通に開眼したときの様子
3.歯をむき出しにしたときの様子
4.「アー」と発声したときの軟口蓋と咽頭後壁の様子
5.舌をまっすぐ出したときの様子

解答

解説

兎眼とは?

目が閉じにくくなる(兎眼)は、脳腫瘍や脳血管障害によるベル麻痺で起こる。兎眼は、顔面神経の麻痺で起こる。その支配下にある眼輪筋が麻痺し、目を閉じることができなくなると、常に目を開いた状態になる。この状態を兎眼(とがん)という。

1.× 右方視したとき、図の左目が右方視(内側眼球運動)できていない。これは内側直筋の障害で、内側直筋の支配神経である動眼神経障害が考えられる。
2.× 普通に開眼したとき、図の左目は瞳孔反射ができていない。対光反射は、【求心性神経】視神経、【遠心性神経】動眼神経である。瞳孔反射の一つであり、光の強さにより瞳孔の直径を変化させ、網膜に届く光の量を調節する反射である。瞳孔の収縮の有無を観察する。
3.〇 正しい。歯をむき出しにしたとき、図の左の口角が挙上できていない。口角挙上筋は顔面神経支配である。顔面神経は、表情筋の運動、涙腺や口蓋腺などの分泌作用制御の副交感神経、および味覚を司る感覚神経を含む混合神経である。したがって、顔面神経の障害により、顔面表情筋の障害、角膜反射低下、聴覚過敏、味覚低下(舌前2/3)、涙分泌低下、唾液分泌低下などが起こる。
4.× 「アー」と発声したとき、図はカーテン徴候陽性となっている。これは迷走神経麻痺(迷走神経障害)が考えられる。
5.× 舌をまっすぐ出したとき、図ではまっすぐ出せていない。舌の運動は、舌下神経(Ⅻ)が支配する。

(※画像引用:やお歯科クリニック様HPより)

カーテン徴候とは?
カーテン徴候とは、一側の迷走神経麻痺がある場合には口蓋垂が健側に傾くこと。咽頭後壁も健側に牽引される。
 
 
眼球運動の筋と支配神経

【眼球運動:筋】
外側:外直筋
内側:内直筋
外上方:外直筋+上直筋
内上方:内直筋+下斜筋
外下方:外直筋+下直筋
内下方:内直筋+上斜筋

【支配神経】
①動眼神経:内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋
②滑車神経:上斜筋
③外転神経:外側直筋

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【PT/共通】反射と脳神経について問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

8.53歳の女性。自転車走行中に転倒受傷し、鎖骨骨幹部骨折に対して観血的整復固定術が施行された。術後のエックス線写真を下に示す。
 術後翌日の患側の理学療法で正しいのはどれか。

1.手指運動を行う。
2.患部に超音波療法を行う。
3.肩関節挙上の等張性運動を行う。
4.全身の安静のためベッド上で行う。
5.他動で肩関節の可動域練習を行う。

解答

解説

(※図引用:「鎖骨骨折の観血術のプロトコル」赤心堂病院様HPより)

1.〇 正しい。手指運動を行う。手指運動を行うことで、関節拘縮の予防や血行の循環を促すことができる。
2.× あえて、術後翌日から患部に超音波療法を行う優先度は低い。なぜなら、手術当日や翌日は炎症症状がみられるため。痛みや腫れが最小限となるように寒冷療法が推奨される。ちなみに、超音波療法の禁忌として、①眼への照射(眼に超音波を照射すると組織の空洞化を起こす)、②成長時の骨端、③心臓、生殖器官、内分泌器官、④良性または悪性腫瘍、麻痺部、⑤ペースメーカーの入っている部位(ペースメーカーを損傷する可能性)、⑥脊髄疾患(多発性硬化症、脊髄灰白質炎、脊髄空洞症)があげられる。また、悪性腫瘍の場合は腫瘍の助長を促す温熱療法は、緩和ケアなどを除いて禁忌である。
3.× あえて、術後翌日から肩関節挙上の等張性運動/他動で肩関節の可動域練習を行う優先度は低い。なぜなら、術後翌日は三角巾で固定されることが多く、肩の運動には術後の様子で医師の判断が必要であるため。ちなみに、等張性運動とは、①求心性等張性運動、②遠心性等張性運動がある。①求心性等張性運動とは、筋の張力は変化せずに筋の短縮が起こる状態である。②遠心性等張性運動とは、筋の張力は変化せずに筋が収縮しながら筋長は伸びる状態である。関節固定後に行えるのは、等尺性運動である。等尺性運動とは、関節を動かさない筋肉の収縮で、筋の長さは一定である特徴を持つ。ギプス固定している間の筋の廃用予防のための筋力トレーニングとして重要である。
4.× 全身の安静のためベッド上で行う必要はない。なぜなら、術後翌日から歩行可能であるため。離床を促し、廃用症候群の予防に努める。廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

 

 

 

 

9.55歳の女性。趣味でジョギングを行っている。変形性膝関節症に対して手術療法が行われた。術後のエックス線写真を下に示す。
 術後の理学療法で正しいのはどれか。

1.金属を抜いてからスポーツ復帰する。
2.骨癒合が得られるまで完全免荷とする。
3.術後から外側が高い楔状足底挿板を使用する。
4.術後早期から大腿四頭筋の筋力増強運動を行う。
5.術後2週の安静後に患側膝関節の可動域練習を開始する。

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の女性。
・趣味:ジョギング。
・変形性膝関節症に対して手術療法が行われた。
→変形性膝関節症に対して手術療法は、主に①関節鏡手術、②高位脛骨骨切り術、③人工膝関節全置換術などが選択される。本症例の場合、エックス線写真から②高位脛骨骨切り術が選択されたことがわかる。骨切り術は、比較的若い、40〜60代の仕事やスポーツなど活動量が多い患者に適応となる。骨切り術は、膝変形を、骨を切って矯正する。脛骨を斜めに切り、変形の程度に合わせて脛骨に角度をつけ、人工骨を間に挟み、金属のプレートで固定する。メリットとして、自分の骨を温存できるため、膝の曲げ伸ばしは手術前と同じようにでき、動きや運動に制限がないことがあげられる。ちなみに、デメリットとして、①術後に切った骨の部分が治癒するまで時間がかかる、②骨切り部の痛みが取れるまで時間がかかる、③固定した金属プレートを1年後に抜去する必要があることなどが挙げられる。

1.× 金属を抜いてからスポーツ復帰する必要はない。なぜなら、高位脛骨骨切り術のスポーツ復帰の基準として、①炎症症状の鎮静、②筋力の回復、③可動域の回復が該当すればスポーツ復帰可能であるため。ちなみに、ジョギングの復帰は、体重に対して大腿四頭筋の筋肉量60%以上行えることが目安とされている。ちなみに、競技スポーツとなれば、体重に対して大腿四頭筋の筋肉量が100%以上必要となる。
2.× 骨癒合が得られるまで完全免荷とする必要はない。なぜなら、免荷・荷重に関してはプロトコルで決まっていることが多いため。目安として、術後21日までは1/2荷重で、術後22日以降は全荷重をとることが多い。ただし、荷重量が変わる日は医師に確認を取ることが多い。
3.× 術後から外側が高い楔状足底挿板を使用する必要はない。なぜなら、楔状足底挿板(装具療法)は、変形性膝関節症に対する保存療法の1つであるため。保存療法では、装具療法のほかにも、日常生活指導、薬物療法、運動療法などがあげられる。ちなみに、外側楔状足底挿板(がいそくくさびじょうそくていそうばん)とは、外側が楔状に高くなっている靴の中敷のことで、下肢の荷重軸を外側へ移動させる。
4.〇 正しい。術後早期から大腿四頭筋の筋力増強運動を行う。主に、大腿四頭筋セッティングを行い、筋力の維持・向上を図っていく。
5.× 患側膝関節の可動域練習を開始するのは、「術後2週」ではなく術後1週である。なぜなら、1週間程度で鎮静に進むことが多いため。一般的に、術後1週経過後は、CPM(Continuous Passive Motion:持続的他動運動装置)を使用して膝関節の屈伸運動を行う(1~2週間で90度、2~3週間で120度を目標)。ただし、施設や病院、患者の状態によって異なるため、しっかり主治医に連携することが大切である。

(図引用:「高位脛骨骨切り術のプロトコル」岩手医科大学付属病院HPより)

 

 

 

 

 

10.60歳の女性。図のような状態で右中指の使いづらさを訴え受診した。自動関節可動域角度は、DIP屈曲45°、伸展30°、PIP屈曲90°、伸展-45°、MP屈曲80°、伸展0°であった。
 この指の変形はどれか。


1.Z変形
2.鉤爪変形
3.ボタン穴変形
4.Krukenberg変形
5.スワンネック変形

解答

解説

本症例のポイント

主訴:右中指の使いづらさ

【自動関節可動域角度(参考角度)】
DIP関節:屈曲45°(80°)、伸展30°(0°)
PIP関節:屈曲90°(100°)、伸展-45°(0°)
MP関節:屈曲80°(90°)、伸展(45°)
→著明な低下がみられるものとして、①DIP関節の屈曲伸展、②PIP関節の伸展、③MP関節の伸展角度である。以上のことから、伸筋腱中央索の断裂が疑われる。

1.× Z変形(ダックネック変形、あひるのくび変形)は、MP関節屈曲、母指IP関節が過伸展する。関節リウマチに特徴的である。
2.× 鉤爪変形(鷲手)とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。
3.〇 正しい。ボタン穴変形がもっとも疑われる。ボタン穴変形(ホール変形)は、MP関節過伸展、PIP関節屈曲DIP過伸展中央索の伸長・断裂が起こる。原因として、伸筋腱中央索の中節骨基部への付着部の断裂で引き起こされる腱断裂や脱臼、骨折、変形性関節症、関節リウマチで起こりえる。
4.× Krukenberg変形(クルケンベルグ変形)は、尺骨偏位変形である。
5.× スワンネック変形は、MP関節屈曲、PIP関節過伸展DIP関節屈曲となる。主な原因として、手内筋の緊張亢進である。他の要因としては、側索の背側転移やPIP関節の屈筋腱が断裂するなどでも起こる。

 

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