第58回(R5)理学療法士国家試験 解説【午後問題21~25】

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21.介護保険制度で第2号被保険者がサービス利用可能となるのはどれか。

1.多発性硬化症
2.統合失調症
3.腱板損傷
4.白内障
5.末期癌

解答

解説

介護保険制度の概要

第1号被保険者は、65歳以上の者である。

第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の医療保険加入者である。介護保険でサービスを利用できるのは、「特定疾病(16種)」が原因の場合である。

1.× 多発性硬化症とは、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)
2.× 統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)。
3.× 腱板損傷は、腱板損傷と腱板断裂というのは特に明確に使い分けている用語ではない。腱板断裂とは、肩のインナーマッスルである棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の腱が損傷・断裂していることをいう。肩峰や上腕骨頭とのインピンジメント(衝突)で損傷されやすい棘上筋腱の損傷がほとんどである。画像所見やインピンジメントの誘発テストによって診断される。また、断裂と断裂部に関節液の貯留を認めるため、超音波(エコー)やMRI検査で診断することが多い。MRIは時間がかかることや体内に磁性体がある場合は行うことができない。また画像をスライスでしか確認できないため連続性を追いにくいといった特徴がある。
4.× 白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気である。主な原因は加齢である。他にも、糖尿病や妊娠初期の風疹ウイルス感染などにより生じる。
5.〇 正しい。末期癌は、介護保険制度で第2号被保険者がサービス利用可能である。厚生労働省での特定疾病の定義として①心身の病的加齢現象と医学的な関係があると考えられる疾病、②加齢とともに生じる心身の変化が原因で、要介護状態を引き起こすような心身の障害をもたらすと認められる疾病に該当するものとしている。つまり、加齢と関係があって、要介護状態の原因となる病気のことである。

特定疾病(16種)

がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
関節リウマチ
筋萎縮性側索硬化症
後縦靭帯骨化症
骨折を伴う骨粗しょう症
初老期における認知症
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
早老症
多系統萎縮症
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
脳血管疾患
閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患
両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

 

 

 

 

 

22.個人情報の保護に関する法律〈個人情報保護法〉で個人情報として扱わないのはどれか。

1.血液型
2.氏名
3.生年月日
4.電話番号
5.メールアドレス

解答

解説

個人情報保護法とは?

個人情報保護法とは、個人情報の保護に関する法律の略称である。個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした個人情報の取扱いに関連する日本の法律である。定義(第2条)には、「この法律において『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」とされている。

個人情報保護に関するコンプライアンスプログラムの要求事項では、センシティブ情報の具体的項目に関して、以下の5項目を挙げている。①思想及び信条に関する事項、②政治的権利の行使に関する事項、③労働者の団体交渉に関する事項、④医療、性に関する事項、⑤犯罪の経歴、人種、民族、社会的身分、門地並びに出生地及び本籍地など社会的差別の原因となる事項である。

1.× 血液型は、個人情報として扱わない。なぜなら、血液型から個人を特定することは難しいため。他にも、趣味/年齢/出生地なども、個人情報の保護に関する法律で個人情報として扱われない。ただし、インターネットの普及により、これら情報からも個人を特定されやすくなってきているため、法律に関わらず、情報の扱いは慎重に行う。
2~5.〇 氏名/生年月日/電話番号/メールアドレスは、個人情報として扱う。なぜなら、これらから個人を特定することが容易であるため。

 

 

 

 

 

23.歩行周期中で単脚支持となるのはどれか。2つ選べ。

1.初期接地
2.荷重応答期
3.立脚中期
4.立脚終期
5.前遊脚期

解答3・4

解説


1.× 初期接地は、両脚支持である。初期接地(Initial Contact)とは、観測肢の接地の瞬間である。
2.× 荷重応答期は、両脚支持である。荷重応答期(Lording Response)とは、観測肢の初期接地から対側爪先離地までである。
3.〇 正しい。立脚中期は、単脚支持である。立脚中期(Mid Stance)とは、対側爪先離地から対側下腿下垂位までである。
4.〇 正しい。立脚終期は、単脚支持である。 立脚終期(Terminal Stance)とは、対側下腿下垂位から対側初期接地までである。
5.× 前遊脚期は、両脚支持である。前遊脚期(Pre Swing)とは、対側初期接地から観測肢爪先離地までである。

歩行周期

【立脚期】

 1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
 2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
 3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
   立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
   立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
 4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
 5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで

【遊脚期】

 6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
 7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
 8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで

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24.頭痛を感じる痛覚受容器が存在しないのはどれか。

1.硬膜
2.脳動脈
3.脳軟膜
4.頭蓋骨膜
5.大脳皮質

解答

解説

頭痛の発生機序

痛みは、①侵害受容性疼痛、②神経因性疼痛、③心因性疼痛の三つに分けられる。
①侵害受容性疼痛は、侵害刺激、すなわち組織を傷害する刺激あるいは組織を傷害する可能性をもった刺激による痛みである。侵害刺激が加わると局所に分布する細い神経線維の自由終末が反応する。この終末部は刺激の観点から侵害受容器、もたらされる感覚の観点から痛覚受容器と呼ばれる。
②神経因性疼痛は、神経系に病変があって生じる痛みで、三叉神経痛、後頭神経痛などが含まれる。
③心因性疾痛は、侵害刺激や神経系の病変がないのに現われる痛みである。頭痛もこれら3種類の痛みに分けられる。

(※引用:「頭痛の発生機序」著:横田 敏勝より)

1.〇 硬膜は、頭痛を感じる痛覚受容器が存在している。硬膜には痛覚受容器が存在し、外傷、炎症、腫瘍などによって硬膜が刺激されると頭痛を引き起こす。また、硬膜が原因となる頭痛の一つに、硬膜頭痛がある。硬膜とは、脳脊髄を包んでいる硬い膜である。 硬膜の下の構造はくも膜、軟膜、脳/脊髄実質が存在している。また、硬膜は環椎とつながっているため、目の使いすぎなどにより、 首の後ろの筋肉(小後頭直筋)が固くなり、硬膜を引っ張り脳周囲の圧力が変わり頭痛につながる。
2.〇 脳動脈は、頭痛を感じる痛覚受容器が存在している。脳頭蓋部の諸構造の中で、脳蓋の外にある皮膚、筋肉、血管などのすべてに痛覚受容器が分布している。皮膚が刺激されたときの痛みは局所に感じられるが、血管の刺激による痛みは広い部位に現われる(※参考:「頭痛の発生機序」著:横田 敏勝より)。
3.〇 脳軟膜は、頭痛を感じる痛覚受容器が存在していないと断定することはできない。脳は脳軟膜、くも膜、脳硬膜からなる髄膜に覆われているが、髄膜の大部分と脳室の内面を裏打ちする上衣および脳室内にあって脳脊髄液を産生する脈絡組織は痛みを感じない(※引用:「頭痛の発生機序」著:横田 敏勝より)。髄膜の大部分は痛みを感じないが、言い換えるとわずかな部分には痛覚受容器が存在しているといえる。
4.〇 頭蓋骨膜は、頭痛を感じる痛覚受容器が存在している。頭蓋の骨組織は痛みを感じないが、骨膜に発痛刺激が加わると、刺激された局所に痛みを感じる。頭蓋骨膜とは、表面から「皮膚→骨膜→頭蓋骨」と構成する頭蓋骨の外側を覆う膜のことである。
5.× 大脳皮質は、頭痛を感じる痛覚受容器が存在しない。脳頭蓋内の諸構造の中で最も大きな容積を占める脳実質は切っても、焼いても痛くない。痛みを感じるのは、大きな静脈洞とそれに流入する脳表の静脈、脳硬膜動脈、脳底部の主幹動脈である(※引用:「頭痛の発生機序」著:横田 敏勝より)。ちなみに、大脳皮質とは、大脳の表層を覆うシワシワの部分で、前頭葉、頭頂葉、側頭葉などと呼ばれる部位の総称である。全身から送られてくる外界の情報を処理して思考・判断を行い、随意運動の指令を送り出している。

 

 

 

 

 

25.一次予防で正しいのはどれか。

1.高血圧に対する薬物療法
2.糖尿病に対する運動療法
3.内視鏡検査による胃がん検診
4.骨折経験のある高齢者に対する再発予防
5.健康な高齢者に対する転倒予防の講演会開催

解答

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

・一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
・二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
・三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。
(※健康日本21において)

1~2.× 高血圧に対する薬物療法/糖尿病に対する運動療法は、三次予防である。ただし、早期治療の場合は二次予防となる。いずれにせよ一次予防ではない。
3.× 内視鏡検査による胃がん検診は、二次予防である。
4.× 骨折経験のある高齢者に対する再発予防は、三次予防である。
5.〇 正しい。健康な高齢者に対する転倒予防の講演会開催は、一次予防である。

 

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