第58回(R5)理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26.救急措置で正しいのはどれか。

1.傷病者を発見した場合は一目散に駆け寄る。
2.傷病者の体をゆすって反応の有無を確認する。
3.応援者への最初の依頼はAEDの手配である。
4.気道異物を探してから胸骨圧迫を開始する。
5.胸骨圧迫は100~120回/分を目安に行う。

解答

解説

一次救命処置とは?

 一次救命処置とは、呼吸が止まり、心臓も動いていないと見られる人の救命へのチャンスを維持するため、特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置であり、胸骨圧迫と人工呼吸からなる心肺蘇生法(CPR)、そしてAEDの使用を主な内容とする。

成人に対する一次救命処置では、胸骨圧迫を30回したのち、人工呼吸を2回行い(30対2)、これを繰り返す。成人であれば胸骨が少なくとも5~6cm沈むように圧迫し、1分間に100~120回のテンポで行う。絶え間なく圧迫することが重要である。

1.× 傷病者を発見した場合は、一目散に駆け寄る必要はない。なぜなら、一次救命処置の手順として、救助者の安全確認と感染防御が最優先となるため。救助者が怪我したり、二次災害に巻き込まれてはならない。ちなみに、一目散とは、わきめもふらずに一所懸命に駆けるさまのことをいう。
2.× 反応の有無を確認する場合は、「傷病者の体をゆする」のではなく、肩を軽く叩いて呼びかけを行う。普通の呼吸が確認できたら、回復体位(横向き)にして救急車を待つ。
3.× 応援者への最初の依頼は、「AEDの手配」ではなく119番通報である。誰も協力者がいないときは、心肺蘇生を始める前に、自ら119番通報をし、近くにAEDがあれば取りに行く。119番通報時、通信指令員から口頭指導を受けられるため、携帯電話の通話はスピーカーにすると良い。ちなみに、AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。
4.× 気道異物を探してから胸骨圧迫を開始する必要はない。胸骨圧迫を開始基準として、呼吸の有無が一般的である。気道異物により呼吸・意識を有した状態であれば、腹部突き上げ法や背部叩打法を実施する。一方、気道異物により呼吸・意識がない状態であれば、気道確保・呼吸の確認→人工呼吸2回を実施後、胸骨圧迫(心肺蘇生法)を開始する。
5.〇 正しい。胸骨圧迫は100~120回/分を目安に行う。この回数は年齢に変動しない。胸骨圧迫とは、心停止した傷病者の心臓付近を圧迫することにより脳や心臓に血液の循環を促す心肺蘇生を目的とした一次救命処置である。成人と幼児で適する力の入れ具合や胸骨の沈み具合が異なる。成人では胸骨が、5cmほど沈むように胸骨圧迫をする。一方で、幼児では年齢に応じた体格の差があるため、成人のような絶対値を当てはめることができない。そのため、幼児においては個別の体格を判断したうえで、胸の厚さの1/3程度が沈む強さで胸骨圧迫を行うことが推奨されている。

一次救命処置の手順

①安全確認と感染防御
②意識状態の確認
③協力者を集める
④気道確保・呼吸の確認
⑤人工呼吸2回
⑥胸骨圧迫式心マッサージ
⑦AEDによる除細動

※安全確認と感染防御が最優先だが、設問の選択肢にないので、次の段階で優先される選択肢を選ぶ。

 

 

 

 

 

27.Danielsらの徒手筋力テストの検査肢位において、膝関節の伸展と屈曲が同じになる段階はどれか。

1.段階1
2.段階2
3.段階3
4.段階4
5.段階5

解答

解説

【膝関節の伸展の肢位】
段階0:背臥位
段階1:背臥位
段階2:側臥位(テストする下肢を上側にして、股関節中間位、膝関節90°屈曲位に保つ。下側の下肢は安定のため屈曲位を取る。検査者は片方の腕でテストする下肢の大腿を抱きかかえる。患者は可能な可動域全体にわたって膝関節伸展する。)
段階3:坐位
段階4:坐位
段階5:坐位

【膝関節の屈曲の肢位】
段階0:腹臥位
段階1:腹臥位
段階2:側臥位(テストする下肢を上側にして、下側の下肢は安定のため屈曲位を取る。検査者は一方の腕で大腿と膝を抱え込み、もう一方の手で下腿遠位を支える。患者は可能な可動域全体にわたって膝関節屈曲する。)
段階3:腹臥位
段階4:腹臥位
段階5:腹臥位

したがって、選択肢2.段階2が、膝関節の伸展と屈曲の検査肢位が同じになる。

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28.GCSの評定で正しいのはどれか。

1.E2は痛み刺激で眼を開ける。
2.E3は自発的に眼を開けている。
3.V4は日時や場所を言うことができる。
4.M4は痛み刺激に対して手を払いのける。
5.M5は指示に従って手を動かせる。

解答

解説

MEMO

グラスゴー・コーマ・スケール(GCS:Glasgow Coma Scale)は、意識レベルを評価するスケールである。開眼機能(E)、言語機能(V)、運動機能(M)の3つの要素を用いて3~15点で評価し、点数が低いほど意識レベルの状態が悪いことを示す。ちなみに、他にも意識レベルを評価するスケールで、JCS(Japan coma Scale)があげられる。

1.〇 正しい。E2は、痛み刺激で眼を開ける
2.× E3は、「自発的に眼を開けている」のではなく、呼びかけにより開眼している。ちなみに、自発的に眼を開けているのは、E4である。
3.× V4は、「日時や場所を言うことができる」のではなく、混乱した会話である。ちなみに、日時や場所を言うことができる(見当識あり)は、V5である。
4.× M4は、「痛み刺激に対して手を払いのける」のではなく、逃避反応として運動がみられる。ちなみに、痛み刺激に対して手を払いのけるのは、M5である。
5.× M5は、「指示に従って手を動かせる」のではなく、痛み刺激に対して手を払いのける。ちなみに、指示に従って手を動かせるのは、M6である。

 

 

 

 

29.脊髄損傷者(完全麻痺)が両側の短下肢装具と杖によって安全に屋外歩行が可能となる最も上位の機能残存レベルはどれか。

1.Th6
2.Th10
3.L2
4.L4
5.S1

解答

解説

Sharrard(シェラード)の分類

第Ⅰ群(胸髄レベル):車椅子を使用している。下肢を自分で動かすことはできない。
第Ⅱ群(L1〜2レベル):車椅子と杖歩行を併用している。股関節屈曲・内転、膝関節伸展が可能。
第Ⅲ群(L3〜4レベル):長下肢装具(L3)または短下肢装具(L4)による杖歩行可能。股関節外転、足関節背屈が可能。
第Ⅳ群(L5レベル):短下肢装具による自立歩行可能。装具なしでも歩行可能。股関節伸展、足関節底屈が可能。
第Ⅴ群(S1〜2レベル):ほとんど装具が不要で自立歩行可能。足関節の安定性が低い。
第Ⅵ群(S3レベル):ほとんど運動麻痺はなく、健常児とほぼ同様の歩行。

1〜2.× Th6/Th10は、Sharrard(シェラード)の分類の第Ⅰ群(胸髄レベル)である。下肢を自分で動かすことはできないため、車椅子を使用する必要がある。
3.× L2は、Sharrard(シェラード)の分類の第Ⅱ群である。股関節屈曲・内転、膝関節伸展が可能となるため、車椅子と杖歩行を併用している。
4.〇 正しい。L4は、両側の短下肢装具と杖によって安全に屋外歩行が可能となる。L4(L3〜4レベル)は、Sharrard(シェラード)の分類の第Ⅲ群である。股関節外転、足関節背屈が可能となるため、長下肢装具(L3)または短下肢装具(L4)による杖歩行可能となる。
5.× S1は、Sharrard(シェラード)の分類の第Ⅴ群である。足関節の安定性が低いが、ほとんど装具が不要で自立歩行可能である。

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30.健常成人の血圧で正しいのはどれか。

1.Korotkoff音が聞こえなくなった時点での圧を収縮期血圧とする。
2.触診法では聴診法に比べて収縮期血圧が高く測定される。
3.平均血圧は拡張期血圧に脈圧の1/3を加えて求める。
4.足関節上腕血圧比の基準値は0.75~0.9である。
5.収縮期血圧は朝よりタ方の方が低くなる。

解答

解説

1.× Korotkoff 音が「聞こえなくなった時点」ではなく、聞こえた時点(第1点)での圧を収縮期血圧とする。ちなみに、Korotkoff 音(コロトコフ音)とは、血液が心臓の拍動に合わせて断続的に流れ始めたときに発生する血管音である。
2.× 触診法では聴診法に比べて収縮期血圧が、「高く」ではなく低く測定される。10mmHg程度の誤差が出ることが多い。その理由として、触診法は、動脈の収縮期と拡張期の境目である脈波(拍動)を手で感じて血圧を測定するため、①拍動がはっきり確認できるまでの誤差、②収縮期血圧ちょうどに心拍しないことなどが考えられる。聴診法は、コロトコフ音を聴取よって血圧を測定する方法である。一方、触診法は、Korotkow音が弱くて聴診法での測定が困難な場合に代用する。方法として、橈骨動脈の拍動を触れながら、徐々に加圧していき、脈が触れなくなったところから、さらに20〜30mmHgほど圧を上げる。圧を徐々に下げて、再び橈骨動脈の拍動が触れるようになった時の圧を最高血圧の目安とする。中点として、触診法では最低血圧の測定はできない。
3.〇 正しい。平均血圧は拡張期血圧に脈圧の1/3を加えて求める。平均血圧とは、収縮期血圧、拡張期血圧を1つの数値で表したものである。平均血圧(mmHg)の計算方法は、(収縮期血圧 - 拡張期血圧)/3 + 拡張期血圧である。ちなみに、脈圧とは、収縮期血圧と拡張期血圧の差である。
4.× 足関節上腕血圧比の基準値は、「0.75~0.9」ではなく1~1.29である。足関節上腕血圧比(ABI)(Ankle-Brachial-Index)とは、四肢すべての動脈閉塞および開口部の最高の圧力を判別するための方法である。足関節上腕血圧比は両腕と両足首の血圧を測定し比率を計算する検査であり、下肢にできやすい閉塞性動脈硬化症の評価検査となる。足関節上腕血圧比=足首最高血圧/上腕最高血圧で求められ、これが、0.9未満で閉塞性動脈硬化症が疑われる。正常:1~1.29、境界線:0.91~0.99、軽度:0.71~0.90、中程度:0.41~0.7、重度:0.4以下となる。
5.× 朝よりタ方の方が低くなるのは、「収縮期血圧」に限らず、拡張期血圧も含め血圧全体が起こる。つまり、血圧は朝よりタ方の方が低くなる。朝は身体が活動モードに切り替わる時間帯であり、交感神経が優位に働くため、朝は血圧が上昇しやすくなる。また、夜には副交感神経が優位に働き、身体がリラックスモードに切り替わるため、血圧が下がりやすくなる。日内変動の中で睡眠時が最も血圧が低い傾向にある。

 

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