第57回(R4) 作業療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

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36 全般性注意障害のある左片麻痺患者に対する動作指導について正しいのはどれか。

1.複数の方法を指導する。
2.一連の動作を一度に指導する。
3.外乱が少ない環境から開始する。
4.動作の誤りは口頭指示のみで修正する。
5.動作の誤りは何度も繰り返し修正する。

解答

解説

MEMO

全般性注意障害は、外傷性脳損傷後にみられやすい。全般性注意障害は、5つの注意性が全般的に障害されている状態である。
①持続性:注意を一定時間の状態に保つことが困難になる。
②選択性:多数の刺激の中から必要な情報や物事に注意を向けられない。
③転換(導)性:必要に応じて注意の方向性を切り替えることが困難になる。
④配分性(多方向性):2つ以上の課題を同時に遂行したり、順序立てて行ったりすることが困難になる。
⑤容量性(感度):ある情報に関する注意の閾値が適度に保つことが困難である。

1.× 複数の方法を指導することは、配分性(多方向性)注意障害の観点から難しい。よって、「複数」よりも「単一」の方法を指導することが望ましい。
2.× 一連の動作を一度に指導することは、容量性(感度)注意障害の観点から難しい。多くの情報を一度に覚えられない。よって、一動作ずつ「区切って」指導するのが良い。
3.〇 正しい。外乱が少ない環境から開始する。全般性注意障害がある場合、作業時には余計な妨害刺激(外乱)が入らないように配慮する。
4.× 動作の誤りは口頭指示のみで修正することは、容量性(感度)注意障害の観点から難しい。多くの情報を一度に覚えられない。よって、動作の誤りは「口頭指示のみ」だけではなく、「誘導や模倣」で修正することも大切である。
5.× 動作の誤りは何度も繰り返し修正することは、持続性注意障害の観点から難しい。なぜなら、注意を一定の状態に維持することができず誤りを繰り返すことが多くため。

 

 

 

 

 

37 廃用症候群における症状と治療の組合せで正しいのはどれか。

1.筋萎縮:装具固定
2.骨萎縮:機能的電気刺激
3.下腿浮腫:安静保持
4.起立性低血圧:塩分制限
5.深部静脈血栓症:抗凝固療法

解答

解説

廃用症候群とは?

 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

1~2.× 筋萎縮/骨萎縮に対し、装具固定/機能的電気刺激は優先度が低い。筋萎縮/骨萎縮は、低栄養・廃用の原因で起こることが多い。装具固定は、運動を制限するときに使用する。FES(機能的電気刺激療法)は、筋の活動を促すため、末梢神経を刺激し麻痺筋の収縮を補助するのに有効である。
3.× 下腿浮腫に対し、安静保持より「積極的な下肢運動」が有効である。下腿浮腫は、廃用により下腿の筋肉ポンプ作用が低下し、さらに皮膚緊張度も低下するため起こる。この下腿浮腫を廃用性浮腫ともいう。
4.× 起立性低血圧は、塩分制限より「積極的な離床」が有効である。なぜなら、廃用による起立性低血圧の原因として、①循環血液量低下、②血管運動調節機能障害、③心筋機能の低下などの原因があげられるため。
5.〇 正しい。深部静脈血栓症に対し抗凝固療法は有効である。深部静脈血栓症は、深部静脈系に血栓を生じ静脈閉塞を起こすものであり、下肢に発生することが多い。他にも、深部静脈血栓の予防法として、弾性ストッキング下肢の運動が効果的である。なぜなら、静脈還流を促すことが期待できるため。

 

 

 

 

38 手背の熱傷に対する急性期のスプリントの関節角度で正しいのはどれか。

1.手関節屈曲30度
2.MP関節屈曲50度
3.PIP関節屈曲60度
4.DIP関節屈曲30度
5.母指橈側外転60度

解答

解説

手背の熱傷に対する良肢位

・手背の熱傷:手関節10~30度伸展位、MP関節70~80度屈曲位、PIP・DIP関節0度伸展位、母指対立位とする。

・手掌の熱傷:手関節20~40度伸展位、MP関節0度、PIP・DIP関節0度、母指外転・伸展位とする。

1.× 手関節は、「屈曲」ではなく「伸展」(10~)30度である。ただし、本症例は急性期であるため、10度程度が望ましいといえる。
2.〇 正しい。MP関節屈曲50度で急性期のスプリントの関節角度を調整する。理想は、MP関節70~80度屈曲位であるが、本症例は急性期であるためまずはMP関節屈曲50度から始めるのが望ましい。
3~4.× PIP関節屈曲60度/DIP関節屈曲30度ではなく、PIP・DIP関節伸展0度が望ましい。
5.× 母指は、橈側外転60度ではなく「対立位かやや外転位」が望ましい。

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39 中央値の説明として正しいのはどれか。

1.データの最大値から最小値を引いた値
2.全データの中で最もデータの数が多い値
3.データの総和をデータの個数で割った値
4.データの値を小さい順に並べ変えたとき、真ん中に位置する値
5.各データから平均値を引いたものを2乗した総和をデータの個数で割った値

解答

解説

中央値とは?

中央値とは、有限個のデータを小さい順に並べたとき中央に位置する値のことである。つまり、データの数値を小さい順に並べた時にちょうどまんなかの値である。

1.× データの最大値から最小値を引いた値のことを「範囲」という。これが大きいほどデータが散らばっていることになる。
2.× 全データの中で最もデータの数が多い値のことを「最頻値」という。
3.× データの総和をデータの個数で割った値のことを「平均」という。
4.〇 正しい。データの値を小さい順に並べ変えたとき、真ん中に位置する値のことを「中央値」という。
5.× 各データから平均値を引いたものを2乗した総和をデータの個数で割った値のことを「全二乗値の平均値」という。ちなみに、各データに対して「(全データから計算した)平均値との差」のことを「偏差」という。

 

 

 

 

40 認知症のBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の評価尺度はどれか。

1.ADAS
2.CDR
3.MMSE
4.NPI
5.PSMS

解答

解説
1.× ADAS(Alzheimer’s Disease Assessment Scale)は、記憶を中心とする認知機能検査である。主な目的は、アルツハイマー病に対するコリン作動性薬物による認知機能の評価である。評価項目は、11課題(①単語再生、②口語言語能力、③言語の聴覚的理解、④自発話における喚語困難、⑤口頭命令に従う、⑥手指および物品呼称、⑦構成行為、⑧観念運動、⑨見当識、⑩単語再認、⑪テスト教示の再生能力)から構成されている。0~70点の範囲で、得点は失点であるため、高得点になるにつれて、障害の程度が増す。認知症の重症度を判定するというよりは、継続的に複数回実施し、得点変化によって認知機能の変化を評価する検査である。
2.× CDR(Clinical Dementia Rating:認知症の重症度評価法)は、認知症の重症度を総合的に評価する場合に用いられる。記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況及び趣味、介護状況の6項目について、患者の診察や周囲の人からの情報で評価する。それらを総合して、健康(SDR0)、認知症の疑い(SDR0.5)、軽度認知症(SDR1)、中等度認知症(SDR2)、高度認知症(SDR3)のいずれかに評価する。
3.× MMSE(Mini Mental State Examination)は、認知障害の簡便な評価方法である。見当識、記銘力、注意と計算、 想起、言語、組み立ての各項目がある。30点満点のうち、26点以下で軽度認知隊害の疑い、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。
4.〇 正しい。NPI(neuropsychiatric inventory) は、援助者からの聞き取りにより、「認知症の行動・心理症状(BPSD)」を評価する方法である。 「認知症の行動・心理症状(BPSD)」に関連する12項日につき、頻度を0~4の5段階で、重症度を1~3の3段階で評価し、点数が高いほど重症となる。
5.× PSMS(Physical Self-Maintenance Scale)は、ADLの評価尺度である。家族・介護者からの情報に基づき評価する。

 

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