第57回(R4) 作業療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

41 職場の作業に近い13種類の課題から構成される職業評価はどれか。

1.内田クレペリン精神検査
2.GATB
3.障害者用就職レディネス・チェックリスト
4.マイクロタワー法
5.MODAPTS

解答

解説
1.× 内田クレペリン精神検査は、性格検査・職業適性検査の一種である。被験者に一定時間計算させ続けることで、作業量・集中力・注意力などの作業能力と、性格傾向を知ることができる。
2.× GATB(General Aptitude Test Battery:厚生労働省編一般職業適性検査)は、多くの職業で必要とされる9つの能力=適性能(知的能力、言語能力、数理能力、書記的知覚、空間判断力、形態知覚、運動共応、指先の器用さ、手腕の器用さ)を評価することにより、望ましい職業選択を行うための情報を提供することを目的として作成されたものである。本問のように、職場の作業に近い課題は実施しないため不適当である。
3.× 障害者用就職レディネス・チェックリスト(ERCD:Employment Readiness Checklist for the Disabled)のチェックリストは、9領域44項目で構成されている。これらの項目は、どのような仕事の種類や内容であっても、人が就職して働く場合に、職場の物理的・心理的・社会的環境に適応して成果を上げていくのに必要となる心理的・行動的条件を、心要最小限度の範囲で網羅しているものとなっている。
4.〇 正しい。マイクロタワー法は、職場の作業に近い13種類の課題から構成される職業評価である。ワークサンプル法を用いて職業能力適性を測定する作業見本法の一つである。13の作業課題を小集団で実施する。職場における作業に類似したサンプルを実際に用い、対象者の職業能力、作業態度や意欲、心身の耐久力など、総合的な職業適性をみる。
5.× MODAPTS(モダプツ:modular arrangement of predetermined time standards)は、作業能力評価法である。作業動作時間測定法であるMTM(Methods Time Measurement)に改良を加えた簡便な作業能力評価法である。

 

 

 

 

 

42 統合失調症に対する作業療法で、ICFの構成要素の「活動」に分類されるのはどれか。

1.認知の機能
2.社会生活技能
3.思考機能の統合
4.社会からの隔離
5.生物学的なストレス脆弱性

解答

解説

国際生活機能分類(ICF)

国際生活機能分類(ICF)は、障害者のみならず、すべての人を対象として、障害を「生活機能」というプラス面からみるように視点を転換した分類法である。この「生活機能」は、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルに分類されたうえで、さらに「個人因子」「環境因子」の観点が加えられる。

1.3.× 認知の機能/思考機能の統合は、心身機能・身体構造に分類される。
2.〇 正しい。社会生活技能は、活動に分類される。活動とは、課題や行為の個人による遂行のことを指す。
4.× 社会からの隔離は、参加に分類される。参加とは、「生活へのかかわりあい」である。
5.× 生物学的なストレス脆弱性(脆弱性ストレスモデル、素因ストレスモデルとも)は、精神疾患の発症を説明する標準的な理論である。ストレス脆弱性モデルによれば、発症しやすい素質と、その人の限界値を超えるストレスが組み合わさった場合、人間は精神疾患を発症する。発症に果たす個人側の決定的な生物学的要因を指し示す概念であるため、個人因子に該当する。

 

 

 

 

43 てんかんについて正しいのはどれか。

1.不眠はてんかん発作を誘発しやすい。
2.重症度の評価に知能テストが有効である。
3.てんかん発作時には意識障害が必発である。
4.West症候群の発症のピークは3~5歳である。
5.特発性てんかんは明らかな脳器質性の原因が認められる。

解答

解説
1.〇 正しい。不眠はてんかん発作を誘発しやすい。他にも①驚いたとき、②不安なとき、③光のちらつきを目にしたとき、④ストレスが加わったとき、⑤疲れているとき、⑥お薬を飲み忘れたとき、⑦ゲームをしているときなどでもある。それらの誘因はそれぞれの患者によって異なる。
2.× 重症度の評価に知能テストは、有効であるとは一概にいえない。なぜなら、知能は正常であるてんかんもあるため。例えば、側頭葉てんかんや小児欠神てんかん、Jacksonてんかん、覚醒時大発作てんかんなどである。
3.× てんかん発作時に、意識障害が必発とは一概にいえない。なぜなら、単純部分発作は、意識障害を伴わないため。ちなみに、意識障害を伴うものは、複雑部分発作である。
4.× West症候群の発症のピークは、3~5歳ではなく「乳幼児(4~12か月)」ある。
5.× 明らかな脳器質性の原因が認められるのは、特発性てんかんではなく「症候性てんかん」である。症候性てんかんは、特発性てんかんに比べ予後が良いのではなく悪い。なぜなら、症候性てんかん(器質的な脳の病変に起因するてんかん発作)は、抗てんかん薬で発作を抑えられる割合は50%前後であるため。症候性の原因には、脳の先天奇形、脳腫瘍、脳血管障害、神経変性疾患などがあげられる。一方、特発性てんかん(明らかな脳の病変が認められず、生まれ持った脳の性質に起因するてんかん)は、ある年齢に達すると自然と発作がなくなるため予後は良好である。20歳以後の発症は、症候性が多く、特に高齢者の場合は、脳血管障害や変性疾患を基盤とするものが多い。

類似問題です↓
【OT専門のみ】てんかんについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

44 前頭側頭型認知症の初期症状はどれか。

1.失禁がある。
2.着替えができない。
3.物忘れが多くなる。
4.買い物から帰れない。
5.自分本位にふるまう。

解答

解説

前頭側頭型認知症(Pick病)とは?

 病理所見として、前頭葉と側頭葉が特異的に萎縮する特徴を持つ認知症である。脳血流量の低下や脳萎縮により人格変化、精神荒廃が生じ、植物状態におちいることがあり、2~8年で衰弱して死亡することが多い。発症年齢が50~60代と比較的若く、初発症状は人格障害・情緒障害などがみられるが、病期前半でも記憶障害・見当識障害はほとんどみられない。働き盛りの年代で発症することが多いことで、患者さんご本人が「自分は病気である」という自覚がないことが多い。その後、症状が進行するにつれ、性的逸脱行為(見知らぬ異性に道で抱きつくなどの抑制のきかない反社会的な行動)、滞続言語(何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える)、食行動の異常(毎日同じものを食べ続ける常同行動)などがみられる。治療は、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法はなく、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われている。

(参考:「前頭側頭型認知症」健康長寿ネット様HPより)

1〜2.4.× 失禁/着替えができない(着衣失行)/買い物から帰れない(徘徊)は、アルツハイマー型認知症に特徴的な症状で中等度(中期)にみられる症状である。
3.× 物忘れが多くなるのは、年齢相応であれば問題ないと判断することが多い。忘れ物が日常生活に支障をきたすようになった場合、軽度認知障害(MCI)と判断されアルツハイマー型認知症に進行すると言われている。
5.〇 正しい。自分本位にふるまうのは、前頭側頭型認知症の初期症状である。前頭側頭型認知症は、アルツハイマー型認知症に類似するが、早期には記憶よりも人格(見当識)注意力などが障害されるのが特徴である。

軽度認知障害〈MCI〉とは?

2012年の日本の65歳以上の高齢者における、認知症有病率推定値は15%で、認知症有病者数は約462万人と推計されている。軽度認知障害(MCI)の有病率は、13%と推定され、約400万人の軽度認知症の方がいると推計されている。ちなみに、軽度認知障害(MCI)とは、認知症と正常な状態の中間と定義され、時間経過とともにアルツハイマー型認知症を発症すると言われている。軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー型認知症の違いは、日常生活を独立して行えるかどうかとされているが、その境界線は曖昧である。

【軽度認知障害〈MCI〉の診断基準】(Winblad B ら、2004)
1.認知症または正常のいずれでもないこと
2.客観的な認知障害があり、同時に客観的な認知機能の経時的低下、または、主観的な低下の自己報告あるいは情報提供者による報告があること
3.日常生活能力は維持されており、かつ、複雑な手段的機能は正常か、障害があっても最小であること

(※引用:「認知症と軽度認知機能障害と軽度認知機能障害について」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

45 躁病相の初期評価時に得るべき情報として適切でないのはどれか。

1.問題行動に対する本人の捉え方
2.本人が社会で担ってきた役割
3.処方されている薬物
4.睡眠の状態
5.併存疾患

解答

解説

躁病の特徴

①異常に高揚した、開放的な、または怒りっぽい気分の持続
②過度の自尊心・誇大的思考
③睡眠欲求の減少
④多弁
⑤観念奔逸(考えが次から次へとほとばしり出ること)
⑥注意散漫
⑦目標指向性の異常亢進
⑧快楽的活動への没頭

1.× 問題行動に対する本人の捉え方は、躁病相の初期評価時に得るべき情報としては優先度が低い。なぜなら、作業療法の初期評価では、他職種から得た医療情報と本人または家族との面接を通して得た情報から病前の生活状況を把握することが大切になるため。躁病の特徴である⑦目標指向性の異常亢進、⑧快楽的活動への没頭などで日常生活に収集がつかない状況にも陥りかねず、思考に関しては問診するのは後のほうが良い。
2.〇 正しい。本人が社会で担ってきた役割は、躁病相の初期評価時に得るべき情報である。なぜなら、躁病の特徴である②過度の自尊心・誇大的思考などで現実と乖離することがあるため。
3.〇 正しい。処方されている薬物は、躁病相の初期評価時に得るべき情報である。なぜなら、双極性障害は、気分安定薬で再発の防止や頻度の減少が最も期待できる疾患であるため。気分安定薬は、抗躁薬ともよばれている。躁状態の改善に有効であるが、気分障害に関連した疾患の再発防止にも有効である。抗躁薬の炭酸リチウムは効果が現れる血中濃度と副作用が現れる濃度の幅が狭いため、血中濃度をこまめに測定して中毒症状を予防する必要がある。重度で運動失調、せん妄、意識障害がみられる。
4.〇 正しい。睡眠の状態は、躁病相の初期評価時に得るべき情報である。なぜなら、躁病の特徴の特徴として、③睡眠欲求の減少がみられるため。
5.〇 正しい。併存疾患は、躁病相の初期評価時に得るべき情報である。併存疾患(併存症)とは、別の病気を併存している状態のことをいう。双極性障害には、アスペルガー症候群や注意多動性障害(ADHD)、不安障害などみられる。

休息の確保と初期アセスメント

うつ病の治療は休息の確保から始まる。作業療法を開始する時期は、患者が休息を十分取れるようになり、心身の回復を自覚できるようになる頃である。作業療法の開始時に必要となる情報は、入院後の薬物療法の効果、睡眠状態、日中の過ごし方や疲労感、うつ病に対する理解度、薬物療法などの現在受けている治療に関する受け止め方、今後の希望と目標などである(香山, 2014)。これらの情報は主治医や看護師から得られるものもあるが、作業療法の担当者として直接面接を行い確認する。面接では質問紙や評価尺度を活用し、その後の作業療法に活かしていく(小林,2014)。定期評価の結果を対象者との経過の振り返りに利用し、医療チームに情報を提供する。
 作業療法の初期評価では他職種から得た医療情報と本人または家族との面接を通して得た情報から病前の生活状況を把握する。特に患者の家庭や職場での役割、キーパーソンの有無、経済状況や退院後の支援体制を把握する。また、患者がストレスを感じやすい状況と対処法についてあらかじめ聞き取り、認知と行動の特徴を可能な範囲で把握しておく。
 認知と行動の特徴は病期による影響を受け大きく変化する。また患者の語る生活状況(家族への思いや職場環境など)に関する認識もうつ病の影響を受けている。初期に得た情報はあくまでも急性期における情報であることに注意し随時見直しを行う。

(一部抜粋:「うつ病治療ガイドライン —精神科作業療法—」)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)