第57回(R4) 作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 関節リウマチの手指にみられる変形のうち、足指にもみられるのはどれか。

1.Z変形
2.マレット指
3.ボタン穴変形
4.オペラグラス変形
5.スワンネック変形

解答

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.× Z変形(ダックネック変形、あひるのくび変形)は、MP関節屈曲、IP関節が過伸展する。
2.〇 正しい。マレット指は、手指・足指にみられる。槌指変形(マレット指)とは、DIP関節が曲がったまま伸ばせなくなった状態である。
3.× ボタン穴変形(ホール変形)は、MP関節過伸展、PIP関節屈曲、DIP過伸展、中央索の伸長・断裂が起こる。
4.× オペラグラス変形(ムチランス変形)は、中手骨や指節骨の吸収により指が短縮する変形をいう。
5.× スワンネック変形は、MP関節屈曲、PIP関節過伸展、DIP関節屈曲する変形をいう。

 

 

 

 

 

32 Perthes病で正しいのはどれか。

1.男児に多い。
2.好発年齢は2~3歳である。
3.両側性が約50%に認められる。
4.大腿骨遠位骨端部の阻血性壊死をきたす。
5.発症初期のエックス線像の変化は顕著である。

解答

解説

Perthes病とは?

Perthes病は、小児期における血行障害による大腿骨頭、頚部の阻血性壊死が起こる原因不明の疾患である。骨頭・頚部の変形が生じる。初期症状は、跛行と股関節周囲の疼痛や大腿部にみられる関連痛で、股関節の関節可動域制限も生じる。治療は大腿骨頭壊死の修復が主な目標であり、治療後は歩容の異常がなく、通常の日常生活を送れるようになることが多い。

1.〇 正しい。男児に多い。男女比は4:1である。
2.× 好発年齢は、2~3歳ではなく「6~7歳」である。元気のいい小柄な男児(6~7歳)に多く見られる。
3.× 両側性は、約50%ではなく「約10%」に認められる。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。
4.× 阻血性壊死をきたすのは、大腿骨遠位骨端部ではなく「大腿骨頭、頚部」である。Perthes病は、小児期における血行障害による大腿骨頭頚部の阻血性壊死が原因で骨頭・頚部の変形が生じる骨端症である。
5.× 発症初期のエックス線像の変化は、顕著ではなく「分かりにくい」。進行すると大腿骨頭骨端部の色が白く潰れていくため顕著となる。

 

 

 

 

33 視覚失認について正しいのはどれか。

1.相貌失認は表情の認知は可能である。
2.純粋失読は指でなぞると読むことができる。
3.同時失認は個々の物体や人間の認識ができない。
4.色彩失認は同じ色のものを選ぶことが困難である。
5.視覚性物体失認は優位半球前頭葉の障害により生じる。

解答

解説

視覚失認(物体失認)は

視覚失認(物体失認)は、左後頭葉の視覚前野から側頭葉の側頭連合野にかけての障害で生じる。視覚で認識した物体がなんであるか分からない状態である。

1.× 相貌失認は、表情の認知も困難である。相貌失認は、右後頭葉の視覚前野から側頭葉の側頭連合野にかけての障害で生じることが多い。表情を含め、顔を見ただけではその人が誰であるかわからないが、服装・声・髪形などの特徴を手掛かりにすれば誰なのか判断できる状態である。
2.〇 正しい。純粋失読は指でなぞると読むことができる。純粋失読(視覚性失読)は、優位半球(左)の後頭葉が障害されると起こる。失書を伴わない失読である。文字を指でなぞらえると読むことができ、自発書字・書取りも可能である。たいして、頭頂葉性失読は書字と読字がともに障害されている状態をいう。
3.× 同時失認は、個々の物体や人間の認識ができる。情景画の細部はわかるが全体としてどのような場面かわからない情景画の細部はわかるが全体としてどのような場面かわからない状態である。
4.× 色彩失認は、同じ色のものを選ぶことは可能である。色彩失認は、色知覚の非言語的課題では正常な成績をあげることができ、色彩失認の患者の色覚は保たれているが、見せられた色の名を言えず、検者が言った色を指示することも出来ない状態である。すなわち色覚が保たれているのに、特有の色を持つ物品の形は思い出せるが、その色が思い出せない。後頭葉の損傷で起こる。
5.× 視覚性物体失認は、優位半球前頭葉ではなく「劣位半球の頭頂~後頭葉」の障害により生じる。物体失認とは、物体は見えるがそれが何か理解できないという症状である。

 

 

 

 

 

34 皮膚筋炎について正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.胸腺腫を合併する。
3.赤沈は亢進しない。
4.嚥下障害はきたさない。
5.近位筋優位の筋力低下をきたす。

解答

解説

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

1.× 男性ではなく「女性」に多い。40~60歳の女性に多い(男女比1:2~3)。
2.× 胸腺腫ではなく「悪性腫瘍・間質性肺炎」を合併することが多い。ちなみに、胸腺腫とは、胸腺の上皮から発生する腫瘍で、30歳以上に発生することが多く、男女同程度の発症頻度である。人口10万人あたり0.5%前後の発症頻度と、比較的稀な疾患である。
3.× 赤沈は亢進する。またCRPの上昇もみられる。赤血球沈降速度(赤沈)は、炎症反応の指標として、CRPと共に用いられる。赤沈が亢進する病態としては、炎症性疾患・悪性腫瘍・貧血・心筋梗塞・肝硬変・膠原病などが挙げられる。
4.× 嚥下障害をきたす。症状として、筋症状があげられ、筋萎縮、筋圧痛、嚥下障害、構音障害、呼吸困難を伴う。
5.〇 正しい。近位筋優位の筋力低下をきたす。下肢を初発とする筋力低下があり、近位筋が対称性に侵される。

 

 

 

 

35 治療法と対象の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.Frenkel体操:脊髄性失調
2.Codman体操:腰痛症
3.漸増抵抗運動:痙縮
4.Williams体操:下肢閉塞性動脈硬化症
5.ミラーセラピー:幻肢痛

解答1・5

解説
1.〇 正しい。Frenkel体操は、脊髄性失調に有効である。Frenkel体操は、視覚で代償して運動制御を促通する運動療法であり、脊髄病性運動失調などに対して行われる。
2.× Codman体操(コッドマン体操)は、肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。ちなみに、腰痛症は、Williams体操などが用いられる。
3.× 漸増抵抗運動(DeLorme法)は、筋力増強訓練に用いる。DeLormeの漸増抵抗運動 (PRE) は、①10RMの1/2負荷運動を10回、②10RMの3/4負荷を10回、③10RMを10回、これを3セット繰り返すことである。ちなみに、痙縮はTENS(経皮的電気刺激法)や寒冷療法などが用いられる。
4.× Williams体操は、腰痛症に対して腰部の負担を軽減するために用いられる。方法として、腹筋強化・大殿筋強化・ハムストリングス強化・背筋群のストレッチングを行う。閉塞性動脈硬化症とは、血液の通り道が狭窄、閉塞することにより、組織や臓器全体に血液が行き渡らなくなって(虚血)障害を起こす病気である。Buerger-AIIen(バージャー・アレン)体操が用いられる。下肢の挙上と下垂を繰り返して反射性充血を促し、側副血行路の形成を促進する体操である。
5.〇 正しい。ミラーセラピーは、幻肢痛に有効である。他にも、脳卒中患者の麻痺改善や複合性局所性疼痛症候群、腕神経叢引き抜き損傷患者の疼痛軽減効果などが報告されている。ちなみに、ミラーセラピー(mirror therapy)とは、鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である。矢状面で両肢間に鏡を設置し、鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする。切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで、患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う。

 

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