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次の文により6、7の問いに答えよ。
28歳の男性。2週前にGuillain-Barré症候群と診断された。γグロブリン大量静注療法を実施され、症状の進行は停止した。本日実施した右上肢の運動神経伝導検査の結果を表に示す。
6 最も障害されていると考えられる運動はどれか。
1.母指対立
2.示指MP関節伸展
3.中指DIP関節伸展
4.環指PIP関節屈曲
5.小指外転
解答5
解説
運動神経伝導検査とは、末梢神経を電気刺激した際に、神経やその支配筋から発生する活動電位を記録したものである。主として末梢神経の機能評価に用いられる。神経に問題があれば、機能する神経線維の数の減少に伴い、①振幅が低下し、②持続時間は短縮する。
1.× 母指対立(筋)は、正中神経支配である。
2.× 示指MP関節伸展(総指伸筋、示指伸筋)は、橈骨神経支配である。
3.× 中指DIP関節伸展(総指伸筋)は、橈骨神経支配である。ちなみに、DIP関節伸展には背・掌側骨間筋も関与し、これらは尺骨神経支配である。総指伸筋が一部、代償的に作用するため、中指DIP関節伸展が選択肢の中で最も障害すると断定できない。
4.× 環指PIP関節屈曲(浅指屈筋)は、正中神経支配である。
5.〇 正しい。小指外転は、最も障害されていると考えられる運動である。なぜなら、小指外転(小指外転筋、短小指屈筋、小指対立筋など)は、尺骨神経支配であるため。本問題では、運動神経検査により、右上肢の神経の伝達速度が遅くなっているか調べている。尺骨神経に振幅(mV)の低下を認める。したがって、尺骨神経領域の運動が障害されていると考える。
Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。
(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)
次の文により6、7の問いに答えよ。
28歳の男性。2週前にGuillain-Barré症候群と診断された。γグロブリン大量静注療法を実施され、症状の進行は停止した。本日実施した右上肢の運動神経伝導検査の結果を表に示す。
7 現時点で最も導入を検討すべき装具はどれか。
1.長対立装具
2.ナックルベンダー
3.IP関節伸展補助装具
4.母指Z変形用スプリント
5.コックアップ・スプリント
解答2
解説
1.× 長対立装具は、正中神経高位麻痺に使用する。母指対立不能、母指・示指の屈曲障害を生じた際に用い、母指を対立位に保持する。
2.〇 正しい。ナックルベンダーは、現時点で最も導入を検討すべき装具である。なぜなら、ナックルベンダー(MP関節屈曲装具)は、尺骨神経麻痺に適応となるため。MP関節を屈曲位(背屈位)に矯正する。ちなみに、尺骨神経障害により鷲手変形(小指、環指のDIP関節の屈曲、PIP関節の屈曲、MP関節の過進展)をきたす
3.× IP関節伸展補助装具は、ボタン穴変形の予防・矯正に用いられる。ピアノ線とゴムバンドを工夫して作られているものが主流である。
4.× 母指Z変形用スプリントは、その名の通り母指Z変形(リウマチ)に用いられる。母指Z変形とは、親指のIP関節が伸展し、MP関節が屈曲する変形である。
5.× コックアップ・スプリントは、手関節の背屈困難な橈骨神経麻痺で使用する装具である。
8 47歳の女性。多発性硬化症。30歳で発症し、寛解と増悪を繰り返した後、完全寛解していた。1週前に視力低下と小脳症状が出現し、入院となった。視神経と右小脳半球に脱髄を認める。過回内テストで図のような動きが観察された。
この患者にみられる所見はどれか。
1.振戦
2.運動分解
3.測定異常
4.協働収縮異常
5.反復拮抗運動不能
解答3
解説
多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。
(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)
過回内試験は、協調運動障害(測定過大)の検査である。両上肢水平挙上位で手掌を上向きにさせ、次に検者の合図で両手掌を下向きにする。患側で過度の回内・内旋が生じれば陽性となる。運動開始の遅れも観察すれば、時間測定障害を評価できる。
1.× 振戦はみられていない。振戦とは、手、頭、声帯、体幹、脚などの体の一部に起こる、不随意でリズミカルなふるえのこと。 振戦は、筋肉の収縮と弛緩が繰り返されたときに起こる。ちなみに、パーキンソン病には安静時振戦が特徴である。
2.× 運動分解はみられていない。運動分解とは、運動軸道が円滑でなく、何段階かに分かれたり、運動軸道から行きつ戻りつする状態を指す。指耳試験などで評価する。
3.〇 正しい。測定異常がこの患者にみられる所見である。測定障害とは、目標物の距離を正確にとらえられない状態である。過回内試験は、協調運動障害(測定過大)の検査である。
4.× 協働収縮異常はみられていない。協働収縮不能(異常)とは、複雑な動きを段階的かつ協調的に働かせることができない症状のことを指す。例えば、「後ろへ反り返る」という指示があった場合、同時に膝を曲げてバランスをとるという動作が障害され、後方へ転倒しそうになる。また、背臥位で腕を組んだまま起き上がることができない。
5.× 反復拮抗運動不能はみられていない。反復拮抗運動障害とは、拮抗筋の動きの切り替えがスムーズにできないことを指す。小脳性運動失調において、リズムが不規則で遅くなる。前腕の回内外運動を反復させることで検査する。
①測定障害:目標物の距離を正確にとらえられない。
②反復拮抗運動障害:拮抗筋の動きの切り替えがスムーズにできない。
③運動分解:運動軌道が円滑ではない。
④協働収縮不能:複雑な動きを段階的かつ協調的に働かせることができない症状のことを指す。例えば、「後ろへ反り返る」という指示があった場合、同時に膝を曲げてバランスをとるという動作が障害され、後方へ転倒しそうになる。また、背臥位で腕を組んだまま起き上がることができない。
⑤企図振戦:随意運動しようとすると粗大な振戦が出現する。
⑥時間測定異常:動作が遅れる。
類似問題です↓
【PT】多発性硬化症についての問題「まとめ・解説」
9 図に示すストレッチングで伸張される筋はどれか。
1.大殿筋
2.大腿直筋
3.大腿二頭筋長頭
4.膝窩筋
5.腓腹筋
解答2
解説
1.× 大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面である。したがって、膝関節屈曲位にて股関節屈曲することで伸張する。
2.〇 正しい。大腿直筋は図に示すストレッチング(股関節伸展位で膝関節屈曲)で伸張される。大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面である。
3.× 大腿二頭筋長頭の【起始】長頭:坐骨結節、短頭:大腿骨体の粗線の外側唇、外側大腿筋間中隔、【停止】腓骨頭である。したがって、膝関節伸展位にて股関節屈曲(SLR)することで伸張する。
4.× 膝窩筋の【起始】大腿骨外側上顆の外側面、【停止】脛骨後面上内側部(ヒラメ筋線より上)である。したがって、膝関節伸展位にて脛骨外旋することで伸張する。ただし、膝窩筋をターゲットにアプローチすることは少ない。
5.× 腓腹筋の【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部である。したがって、膝関節伸展位にて足関節背屈することで伸張する。
参考にどうぞ↓
10 標準型車椅子の適合判定基準で正しいのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:採点対象外)
1.① 7 cm
2.② 5 cm
3.③ 2.5 cm
4.④ 7.5 cm
5.⑤ 3.5 cm
解答1・3・5(正式解答なし)
対応:採点対象から除外する。
理由:設問の状況設定が不十分であり、正解が得られないため。
解説
1.〇 正しい。① 7 cmは標準型車椅子の適合判定基準である。「バックサポート高=腋窩高-50~100mm」である。
2.× ② 5 cmではなく、「アームサポート高=座位肘頭高+10~20mm」である。
3.〇 正しい。③ 2.5 cmは標準型車椅子の適合判定基準である。「シート幅(座幅)=殿幅+20mm(~30mm)」である。
4.× ④ 7.5 cmではなく、「フットサポート高=50mm」である。
5.〇 正しい。⑤ 3.5 cmは標準型車椅子の適合判定基準である。「シート奥行き(座長)=座底長-25~50mm」である。ちなみに、座底長とはおしりの後~ひざ裏である。
車椅子の標準寸法
・シート幅(座幅)=座位臀幅+(0~30)mm
・前座高=下腿長+60~80mm
・後座高=前座高-20~40mm
・フットサポート高=座位下腿長-クッション厚mm
・アームサポート高=座位膝頭高+(10~20)+クッション厚mm
・バックサポート高=座位腋下高+(70~100)+クッション厚mm
・シート奥行き(座長)=座底長-(50~70)mm
・バックサポート角度=90~95°
・グリップ高=介助者の臍~股関節の高さ
(※参考:「身体寸法と車いす寸法の合わせ方」財団法人テクノエイド協会様HPより)