第57回(R4) 理学療法士国家試験 解説【午後問題1~5】

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1 プラットホームが後方へ動いたときの姿勢の変化と筋活動を図に示す。
 外乱に対して最も早く筋活動が観察された筋①に相当するのはどれか。

1.脊柱起立筋
2.前脛骨筋
3.ハムストリングス
4.腓腹筋
5.腹直筋

解答

解説

外乱による立位時姿勢制御反応について

以下の2つの方法で転倒防御に立位バランスをとる。

足関節戦略:足関節の運動でバランスをとること。
①前方に重心が移動したとき → 脊柱起立筋・ハムストリングス・腓腹筋。
②後方に重心が移動したとき → 腹直筋・大腿四頭筋・前脛骨筋。

股関節戦略:足関節戦略の小さな動きでバランスを保ち、それでもバランスをとれなくなった際に股関節伸展・屈曲でバランスをとること。
①前方へ重心が移動したとき → 腹直筋、大腿四頭筋。
②後方へ重心が移動したとき → 脊柱起立筋、ハムストリングス。

※上記の戦略だけでは姿勢を保てない場合に、平衡反応の一つであるステップ反応が起こる。

プラットホームが後方へ動いたとき、慣性の法則により重心の位置は前方に移動する。外乱による立位時姿勢制御反応について、まずは足関節戦略が起こり、それでもバランスを保つ必要がある場合、股関節戦略が起こる。足関節戦略において、前方に重心が移動したとき、脊柱起立筋・ハムストリングス・腓腹筋が収縮する。したがって、外乱に対して最も早く筋活動(筋①)は、足関節戦略とその名の通り足関節に関与する筋肉である選択肢4.腓腹筋である。その後、足関節から近位へと波及する。つまり、筋②は選択肢3.ハムストリングス、筋③は選択肢1.脊柱起立筋となる。

1.× 脊柱起立筋は、筋③である。
2.5.× 前脛骨筋/腹直筋は、後方に重心が移動したときに働く。
3.× ハムストリングスは、筋②である。
4.〇 正しい。腓腹筋は、筋①である。

運動の法則

【第1:慣性の法則】
止まっている物体は力を加えない限り止まり続け、動いている物体は力を加えない限り動きを続ける法則である。物体はその時点での状態を保とうとする性質があるということ。

【第2:運動方程式】
運動の力(Force)を導き出す式。《力とは、物体の質量(Mass)に、それを動かす勢い(加速度:Acceleration)を乗じたもの》であることを裏付ける式。よってF = m×a、即ち「F=ma」と記述される。

【第3:作用反作用の法則】
「作用」とは物体に力を加えること。力を加えられた物体は、その作用とは反対向きかつ同じ値の力=「反作用」を生み出すという法則。

 

 

 

 

 

2 図に示す姿勢が出現する時期として正しい順序はどれか。

1.A→B→C
2.A→C→B
3.B→C→A
4.C→A→B
5.C→B→A

解答

解説

A:非対称性緊張性頚反射(ATNR)
背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から、生後4~6ヵ月まで。

B:保護伸展反応(パラシュート反応)
防御的に四肢を伸展して頭部を保護したり、支持して姿勢を安定させようと働く反応。抱き上げた子どもの体を支えて下方に落下させる、もしくは座位で前方・側方・後方に倒すと、両手を伸ばし、手を開いて体を支える。下方:6ヵ月、前方:6~7ヵ月、側方:7~8ヵ月、後方:9~10ヵ月で発現し、生涯継続する。

C:Landau(ランドウ)反射
乳児の腹部を検者の手掌で支えて水平にすると、頭を上げ体幹をまっすぐにし,さらに下肢を伸展する。3つの頭部の立ち直り反応すべての効果が合わさった反応。
第1相:頸部、体幹軽度屈曲、四肢軽度屈曲。
第2相:頸部水平、体幹軽度屈曲、四肢軽度屈曲。
第3相:頸部伸展挙上、体幹伸展、四肢伸展傾向。
第1相:0~6週、第2相:7週~3、4 ヵ月、第3相:6 ヵ月から1~2歳で統合される。

したがって、図に示す姿勢が出現する時期として正しい順序は、選択肢2.A(生後)→C(下方:6か月)→B(第2相:7週~3、4 ヵ月)である。

 

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3 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)で正しいのはどれか。

1.肩外旋
2.肩屈曲
3.肩水平屈曲
4.手尺屈
5.肘屈曲

解答

解説

1.× 肩外旋の【基本軸】肘を通る前額面への垂直線、【移動軸】尺骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、①上腕を体幹に接して、肘関節を前方90°に屈曲した肢位で行う、②前腕は中間位とする。設問の図は、前腕回内位である。
2.× 肩屈曲の【基本軸】肩峰通る床への垂直線、【移動軸】上腕骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、①前腕は中間位とする。②体幹が動かないように固定する、③脊柱が前後屈しないように注意する。設問の図は、前腕回外位である。
3.〇 正しい。肩水平屈曲の【基本軸】肩峰通る床への矢状面への垂直線、【移動軸】上腕骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、肩関節を90°外転位とする。
4.× 手尺屈の【基本軸】前腕の中央線、【移動軸】第三中手骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、前腕を回内位で行う。設問の図は、前腕回外位となっている。
5.× 肘屈曲の【基本軸】上腕骨、【移動軸】橈骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、前腕は回外位とする。設問の図は、前腕中間位となっている。

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4 Danielsらの徒手筋力テストによる手指筋のテストで正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.浅指屈筋
2.短母指屈筋
3.虫様筋
4.背側骨間筋
5.母指内転筋

解答2・5(複数の選択肢を正解として採点する)
理由:複数の正解があるため。

解説

1.× 浅指屈筋の作用は、近位指節間(PIP)関節の屈曲である。設問の図は、深指屈筋の作用である遠位指節間(DIP)関節の屈曲を行っている。
2.〇 正しい。短母指屈筋の検査である。
3.× 虫様筋と骨間筋の作用は、指の中手指節(MCP)関節屈曲である。設問の図は、指伸筋・示指伸筋・小指伸筋の作用である指の中手指節(MCP)関節の伸展を行っている。
4.× 背側骨間筋の作用は、指外転である。設問の図は掌側骨間筋の作用である指内転を行っている。
5.〇 正しい。母指内転筋の検査である。

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5 Down症候群の乳幼児期に特徴的な座位姿勢はどれか。

解答

解説

ダウン症候群とは?

 ダウン症候群(Down症候群)とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体異常疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

 乳児期の特徴としては、全身の筋緊張が低く、発達の遅れを伴う。理学療法では、バランスボールなどダウン症児の興味関心を抱きやすい環境で筋緊張を高められる運動(主に体幹筋群)を提供する。スカーフ徴候陽性や、シャフリング移動がみられる。スカーフ徴候の正常(陰性)の場合、腕を首に巻きつけるようにすると抵抗するが、陽性の場合は抵抗がみられない。シャフリング移動とは、お座り姿勢のまま移動する(いざり)ことである。脚の動かし方、手の使い方のバリエーションが少なかったり、下半身の筋肉の張りが弱く、筋肉量も少ないために行うことがある。Down症候群の子供では、立位歩行の獲得が遅れるため、シャフリング移動がみられる。正常発達の乳児期前半では、背臥位にて手で足をつかむ動作を行うようになるが、ダウン症乳児の場合、全身の筋緊張が低下しているため、背臥位では股関節外転・外旋した「蛙様肢位(蛙状肢位)」となり、足の持ち上げが難しくなる。読み方は、そのまま「カエルヨウ肢位、カエルジョウ肢位、カエル肢位」などと読む。

1.× 健常児の座位である。腹筋が十分機能している両手の支持なしで体幹回旋が行える。
2.〇 正しい。Down症候群の乳幼児期(出生直後から1歳半くらいまでの発達期)に特徴的な座位姿勢である。Down症候群の乳児期の特徴としては、全身の筋緊張が低く、発達の遅れを伴う。そのため、健常者の座位は、ハムストリングスが伸張されるため膝関節を屈曲位に保ちたいが、Down症候群の乳児期の場合は膝関節伸展位で体幹屈曲するのも容易である。また、腹筋の筋緊張も低いため、腰椎の前弯が生じやすく、両手で床を支持することが多い。したがって、理学療法では、腹筋群の収縮を促すようアプローチすることが多い。
3.× 痙直型脳性麻痺児の座位に多くみられる。股関節が屈曲・内転・内旋しやすく、尖足になりやすい。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。
4.× 健常児にもよくみられる両手を脚の前につく姿勢である。Down症候群の乳幼児期に特徴的な座位姿勢とはいえない。
5.× 痙直型脳性麻痺児の座位に多くみられる割り座である。ちなみに、割り座は、股関節内転・内旋を助長するため、痙直型両麻痺児に推奨するべき肢位ではない。また割り座からバニーホッピングすることもある。バニーホッピングとは、割り座の姿勢から殿部を少し持ち上げて上肢に体重をあずけ、移動を繰り返すことである。

 

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