第57回(R4) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題66~70】

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66 脂質の消化吸収について正しいのはどれか。

1.胆汁は胆嚢で生成される。
2.胆汁酸はコレステロールから生合成される。
3.トリプシンがトリグリセリドを分解する。
4.Oddi括約筋の弛緩により胆汁が空腸へ放出される。
5.ミセル内の脂質消化物は輸送蛋白により小腸上皮細胞内へ取り込まれる。

解答

解説

胆汁についてまとめ

肝臓で合成されるアルカリ性の物質で、胆嚢で濃縮されたうえ、貯蔵される。
胆汁中には消化酵素は存在しない。しかし、胆汁中に含まれる胆汁酸は乳化作用とミセル形成作用を有するため、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たす。
胆汁はビリルビン、胆汁酸、コレステロール、リン脂質からなり、消化酵素は含まれない。胆汁は消化酵素の働きを助ける作用がある。

1.× 胆汁は、胆嚢ではなく「肝細胞」で生成される。肝細胞で肝胆汁が産生され、胆嚢に貯蔵されて濃縮されて胆嚢胆汁となり、胆嚢から胆嚢管を経て総胆管に分泌される。ちなみに、胆細管は、肝細胞から肝胆汁が産生され、「毛細胆管(胆細管)→小葉間胆管→左右の肝管」への管である。
2.〇 正しい。胆汁酸はコレステロールから生合成される。胆汁はビリルビン、胆汁酸、コレステロール、リン脂質からなり、消化酵素は含まれない。胆汁は消化酵素の働きを助ける作用がある。
3.× トリプシンが、トリグリセリドではなく「タンパク質」を分解する。トリプシンは、タンパク質分解酵素である。膵液に含まれる消化酵素はトリプシン、キモトリプシン、ヌクレアーゼ、膵アミラーゼ、リパーゼである。トリプシンとキモトリプシンは蛋白を、ヌクレアーゼは核酸を、アミラーゼはデンプンと糖質を、リパーゼは脂質を分解する。
4.× Oddi括約筋(オッディ括約筋、胆膵管膨大部括約筋)の弛緩により胆汁が、空腸ではなく「十二指腸下行部」へ放出される。オッディ括約筋とは、十二指腸下行部に開口する総胆管及び膵管の出口に当たる、大十二指腸乳頭周囲に存在する括約筋である。
5.× ミセル内の脂質消化物は、輸送蛋白により小腸上皮細胞内ではなく「小腸粘膜」から吸収される。ちなみに、小腸上皮細胞は、水に溶けやすいグリセロールをそのまま小腸上皮細胞に吸収する働きを持つ。一方、ミセル内の脂質消化物(モノグリセリドと脂肪酸)は、腸内に分泌された胆汁酸の働きによりミセルという親水性の非常に小さい分子に取り込まれ小腸粘膜から吸収される。胆汁中には消化酵素は存在しないが、胆汁中に含まれる胆汁酸は乳化作用とミセル形成作用を有するため、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たす。

腸肝循環とは?

脂肪の消化、吸収という役目を果たした胆汁は、一部が便や尿として排泄されるが、90〜99%は小腸の下部で吸収され、門脈を通って肝臓に戻る。そして、再び胆汁として分泌され、胆嚢に蓄えられることになる。こうして胆汁がリサイクルされることを腸肝循環という。

参考にどうぞ↓

理学療法士国家試験 胆汁についての問題4選「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

67 排便機構で正しいのはどれか。

1.排便中枢は第5腰髄にある。
2.S状結腸に糞便が到達すると便意を感じる。
3.直腸壁からの求心路は陰部神経を経由する。
4.骨盤神経の刺激で内肛門括約筋抑制が起こる。
5.大腸内容物を肛門側に輸送するのは分節運動である。

解答

解説

1.× 排便中枢は、「第5腰髄」ではなく「第2~4仙髄」にある。
2.× 「S状結腸」ではなく「直腸壁(が伸張すると)」に糞便が到達すると便意を感じる。直腸に到達した内容物により、直腸内圧が30~40mmHg以上になると、直腸壁が伸張し、骨盤神経を介して興奮が仙髄の排便中枢、さらには大脳に伝わり便意が生じる。
3.× 直腸壁からの求心路は、「陰部神経」ではなく「骨盤神経」を経由する。排便反射の中枢は副交感神経の骨盤神経が求心路である。
4.〇 正しい。骨盤神経の刺激で内肛門括約筋抑制が起こる。便が直腸に入り、直腸内壁が便により伸展すると、その刺激が仙髄の排便中枢に伝達され、直腸の収縮、内・外肛門括約筋の弛緩が起こって排便が起こる(排便反射)。
5.× 大腸内容物を肛門側に輸送するのは、「分節運動」ではなく「蠕動運動」である。縦走筋と輪状筋(主に輪状筋)によって生じる。輪状筋は食塊の口側で収縮し、肛門側で弛緩して食塊を肛門側に押し出す。ちなみに、縦走筋の収縮は、振り子運動で内容物を混和する。また、分節運動とは、哺乳類の小腸などにみられる運動である。 一定の間隔で腸管が収縮してくびれ、多数の分節に分けたようになるのが特徴で、腸内容物と消化液とを混合する役をする。

 

 

 

 

68 月経について誤っているのはどれか。

1.分泌期は14日間である。
2.月経期は基礎体温が高温相になる。
3.月経期は子宮内膜の機能層が剥離する。
4.子宮内膜の増殖は卵胞ホルモンの作用による。
5.増殖期には子宮内膜の厚さは約5mmとなる。

解答

解説

(※画像引用:日本医師会様HPより)

1.〇 正しい。分泌期は14日間である。分泌期は、内膜から分泌物が出る時期である。
2.× 基礎体温が高温相になるのは、月経期ではなく「分泌期」である。排卵が起こると、その後、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が始まるので、低温期より0.3~0.5℃、基礎体温が上昇する高温期に入る。
3.〇 正しい。月経期は、子宮内膜の機能層が剥離する。排卵した後、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の作用によって子宮内膜はさらに厚みを増し、受精卵の受け入れ体制を整える。妊娠が成立しないと、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が低下し、機能層が壊死して子宮内膜が剥がれ落ちる。
4.〇 正しい。子宮内膜の増殖は、卵胞ホルモン(エストロゲン)の作用による。排卵した後、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の作用によって子宮内膜はさらに厚みを増し、受精卵の受け入れ体制を整える。
5.〇 正しい。増殖期には、子宮内膜の厚さは約5mmとなる。ちなみに、月経終了直後は約1mmとなる。

 

 

 

 

 

69 エネルギー代謝で誤っているのはどれか。

1.安静時代謝量は基礎代謝量より小さい。
2.基礎代謝量はホルモンの影響を受ける。
3.安静時代謝量は体重減少により低下する。
4.呼吸商は脂肪の燃焼が多くなると低下する。
5.代謝当量1単位は酸素3.5mL/kg/分の摂取量を基準としている。

解答

解説
1.× 安静時代謝量は基礎代謝量より、小さいのではなく「大きい」。安静時代謝量とは、快適な室温の部屋で、座って安静にしている状態で消費されるエネルギー量のことである。通常、基礎代謝量の約1.2倍(早朝空腹時では約1.1倍)とされている。ちなみに、基礎代謝とは、体温維持、心臓や呼吸など、人が生きていくために最低限必要なエネルギーのことである。基礎代謝量は、体重・体表面積・性と年齢などの要因に依存する。安静・空腹時のエネルギー消費量で、一般に女性より男性の方が高い。
2.〇 正しい。基礎代謝量は、ホルモンの影響を受ける。甲状腺機能が亢進すると物質代謝や基礎代謝量が増大するため、心拍数の増加、体温の上昇、発汗の増加などがみられるようになる。この状態がバセドウ病である。
3.〇 正しい。安静時代謝量は、体重減少により低下する。体重が重い時の方(筋肉量が増すため)が、安静にしていてもエネルギー量を多く使う。
4.〇 正しい。呼吸商は、脂肪の燃焼が多くなると低下する。呼吸商とは、単位時間あたりの二酸化炭素産生量と酸素消費量の比である。呼吸商は栄養素によって異なり、ブドウ糖が1.0、タンパク質は約0.8、脂質が0.7である。したがって、脂肪をよく燃焼している場合の呼吸商は0.8程度、脂肪を燃焼していない場合は1.0になる。 
5.〇 正しい。代謝当量1単位は、酸素3.5mL/kg/分の摂取量を基準としている。「METs」とは、安静座位での酸素消費量を1として、その何倍の酸素消費量に当たるかを示したもの(代謝当量)である。各個人の安静坐位時の酸素摂取量(3.5ml/kg/min)が1METsである。

 

 

 

 

70 右下肢の運動の様子を図に示す。
 関与する主な筋はどれか。

1.膝窩筋
2.大腿二頭筋
3.薄筋
4.半腱様筋
5.縫工筋

解答

解説

1.× 膝窩筋の作用は、膝関節屈曲・脛骨内旋である。
2.〇 正しい。大腿二頭筋の作用は、股関節伸展・外旋膝関節屈曲である。膝関節屈曲した状態では、下腿を外旋する作用を持つ。肢位によって筋線維の走行や筋線維長が変化し作用が変わる。ちなみに、大腿二頭筋の【起始】長頭:坐骨結節、短頭:大腿骨体の粗線の外側唇、外側大腿筋間中隔、【停止】腓骨頭の走行である。
3.× 薄筋の作用は、股関節内転、膝関節屈曲と内旋である。
4.× 半腱様筋の作用は、股関節伸展・内転・内旋、膝関節屈曲である。
5.× 縫工筋の作用は、股関節屈曲・外転・外旋、膝関節屈曲・内旋である。

 

参考にどうぞ↓

【暗記確認用】下肢の筋のランダム問題

 

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