第57回(R4) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題61~65】

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61 骨格筋の収縮について誤っているのはどれか。

1.筋小胞体はCa2+を貯蔵している。
2.活動電位は筋収縮に先行して発生する。
3.神経筋接合部にはニコチン受容体が分布する。
4.支配神経に単一の刺激を加えると強縮が起こる。
5.単収縮が連続して起こると階段現象がみられる。

解答

解説

筋収縮の機序

①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

1.〇 正しい。筋小胞体はCa2+を貯蔵している。筋収縮の機序として、筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。その後、ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こり、アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。
2.〇 正しい。活動電位は筋収縮に先行して発生する。活動電位が先行し、筋細胞に加わり閾値を超えることで筋収縮が発生する。
3.〇 正しい。神経筋接合部にはニコチン受容体が分布する。神経筋接合部には、アセチルコリン受容体が分布する。ニコチン受容体は、アセチルコリン受容体の1種である。ニコチン性アセチルコリン受容体(ニコチン受容体)に作用してアセチルコリンと同様の効果をしめす。ちなみに、神経筋接合部における抗アセチルコリン受容体抗体によって引き起こされる神経筋疾患が重症筋無力症である。また、アドレナリン受容体は、主に血管や心筋の神経接合部に存在している。
4.× 支配神経に単一の刺激を加えると「強縮」ではなく、「単収縮」が起こる。単収縮が加重し融合すると収縮力の大きな強縮となる。
5.〇 正しい。単収縮が連続して起こると階段現象がみられる。階段現象とは、筋に対し同じ強さの刺激を一定頻度以上で与えると、単収縮が連続して重なり合うように起こり、筋収縮が階段状に強くなる現象のことである。

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62 シナプス前膜の脱分極に続いて軸索終末に流入するのはどれか。

1.カルシウムイオン
2.ガンマアミノ酪酸
3.グルタミン酸
4.ナトリウムイオン
5.リン酸イオン

解答

解説

筋収縮の機序

 興奮とは活動電位を発生することである。ニューロンが発生する活動電位すなわちインパルスは、軸索を伝わって終板に達し、筋肉は収縮する。収縮がおこるのは、T管に生じた電気的変化によって電位依存型カルシウムチャンネルが開き、カルシウムイオンが筋小胞体から放出されるためである。

①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

1.〇 正しい。カルシウムイオンは、シナプス前膜の脱分極に続いて軸索終末に流入する。
2.× ガンマアミノ酪酸(GABA)の作用が増強すると他の神経の活動を抑制するため、不安が軽減するといわれている。
3.× グルタミン酸は、非必須アミノ酸の1つで、体内ではアラニン、アスパラギン酸、セリンをつくる際に必要なアミノ酸である。また、グルタミン酸はグルタチオンやガンマアミノ酪酸(GABA)の原料となる。脳内ではアンモニアと結合し、グルタミンとしてアンモニアを無毒化する。
4.× ナトリウムイオンは、活動電位発生時の急速な脱分極に寄与する。
5.× リン酸イオン(リン)は、リンは骨や歯の正常な発達に不可欠な成分である。生体内のリン酸濃度は、副甲状腺ホルモンなどの働きにより、腎臓からの再吸収や、骨への沈着と骨から血液中への溶出を制御することで一定に保たれている。

活動電位一覧

Na+:活動電位発生時の急速な脱分極。
Ca2+:脱分極の維持(プラトー)に関わる。
K+:再分極の際に関わる。

 

 

 

 

63 TypeⅡと比べてTypeⅠの筋線維の特徴で正しいのはどれか。

1.易疲労性がある。
2.解糖系酵素活性が低い。
3.収縮速度が速い。
4.ミオグロビンが少ない。
5.ミトコンドリアが少ない。

解答

解説

骨格筋の筋線維のタイプ

タイプⅡB(速筋)は、最も収縮能が高く、収縮速度も速いが疲労速度も速い。
タイプⅡAは、収縮能は中等レベルであり、収縮速度・疲労速度は速い。(人には少ない)
タイプⅠ(遅筋)は、収縮能は低く収縮速度も遅いが、疲労速度が遅い。

1.3~5.× 易疲労性がある/収縮速度が速い/ミオグロビンが少ない/ミトコンドリアが少ないのは、タイプⅡB(速筋)の特徴である。ミオグロビンは、赤色筋肉(持久力に関わる筋肉)に存在し、酸素が不足した場合に対応できるように酸素を蓄える働きをする。ミトコンドリアは、細胞に必要なエネルギー産生、細胞呼吸を行う。
2.〇 正しい。解糖系酵素活性が低いのは、タイプⅠ(遅筋)の特徴である。解糖系とは、酸素を使わずに糖を乳酸に分解してエネルギーを生成させる無酸素系のことである。

 

 

 

 

 

64 心音または心電図波形と心周期における現象との組合せで正しいのはどれか。

1.心音のⅠ音:僧帽弁の閉鎖
2.心音のⅡ音:大動脈弁の開放
3.心電図のP波:His束の伝導
4.心電図のQRS波:洞房結節の伝導
5.心電図のT波:心室筋の脱分極

解答

解説

心周期とは?

心周期とは、心臓の収縮と弛緩からなる、心臓ポンプの1回の心拍動のことである。心周期は5つに分けられる。

①心房収縮期(心房が収縮し、左右の房室弁が開くことで、心房内の血液が心室に送られる)
②等容性収縮期(心室の収縮が始まる段階。心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる。血液に動きはない。)
③駆出期(さらに心室が収縮し、心室内圧が動脈内圧を上まわる。動脈弁が開き、心室内の血液は動脈へと流れる。)
④等容性拡張期(心室筋が弛緩して拡張が始まる段階。血液が動脈へと流れ出た後、心室圧は低下する。心室圧が動脈圧を下回ると、すべての弁が閉じる。心房には血液が流れ込み始める。)
⑤充満期(心房と心室がさらに拡張し、心室内圧が低下して房室弁が開き、心房の血液が心室に流れ込む。)

1.〇 正しい。心音のⅠ音は、僧帽弁の閉鎖である。心室収縮時に起きる音で、おもに僧帽弁閉鎖音、大動脈弁開放音となる。
2.× 心音のⅡ音は、大動脈弁の開放ではなく「閉鎖」である。心室拡張の始まりに起きる音で、おもに大動脈弁閉鎖音(ⅡA)と肺動脈弁閉鎖音(ⅡP)となる。
3.× 心電図のP波は、His束の伝導ではなく「心房の興奮(脱分極)」を意味する。
4.× 心電図のQRS波は、洞房結節の伝導ではなく「ヒス束、プルキンエ線維、心室筋の興奮」を意味する。
5.× 心電図のT波は、心室筋の脱分極ではなく「心室の脱分極からの回復時に生じる波形(再分極)」を意味する。心室の電気的回復などと呼ばれる。

心音について

正常心音は、Ⅰ〜Ⅳ音に分類されるが、健康成人ではⅠ音とⅡ音しか確認できないことが多い。

Ⅰ音(心室収縮時に起きる音:おもに僧帽弁閉鎖音、大動脈弁開放音)
Ⅱ音(心室拡張の始まりに起きる音:おもに大動脈弁閉鎖音(ⅡA)と肺動脈弁閉鎖音(ⅡP))
Ⅲ音(心室拡張期の終わり:心室筋の伸展による音)
Ⅳ音(心房収縮音:Ⅰ音の直前)

(図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

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65 抗体を産生するのはどれか。

1.赤血球
2.好中球
3.好酸球
4.リンパ球
5.血小板

解答

解説

抗体とは?

抗体とは、液性免疫の中心となる存在で、病気の原因となる細菌やウィルスなどが体内に侵入したとき、異物として攻撃したり体外に排除する役割を担うタンパク質のことである。 免疫メカニズムに関与するリンパ球であるB細胞から産生・放出され、免疫グロブリンとも呼ばれる。

1.× 赤血球の主な機能は、酸素運搬である。また、他に炭酸脱水酵素を含みpH調節に関与する機能を持つ。
2.× 好中球は、サイトカインを産生する。サイトカインとは、主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質である。他にも、マクロファージが産生する。
3.× 好酸球は、寄生虫に対する免疫反応や、Ⅰ型アレルギーに関与する。
4.〇 正しい。リンパ球(特にB細胞)が抗体を産生する。リンパ球は、脊椎動物の免疫系における白血球のサブタイプの一つである。リンパ球には①ナチュラルキラー細胞、②T細胞、③B細胞がある。B細胞は体液性免疫を担当し、B細胞から活性化して形質細胞となり抗体を産生する。
5.× 血小板は、血液凝固に作用する。

 

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