第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

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46 正しい日時や場所などの情報を繰り返し提示する認知症患者への介入法はどれか。

1. 作業回想法
2. ユマニチュード
3. ルーティン化療法
4. バリデーション療法
5. リアリティオリエンテーション

解答5

解説
1.× 作業回想法とは、アルバムや昔の遊び道具や生活用品などを使い(昔懐かしい駄菓子を食べる、童謡などのなじみの歌を聴くなど)して、その当時のエピソードを思い出して話してもらい、人生を振り返り思い出を語ることにより、気持ちを安定できたり、感情・意欲を高揚できたりする方法である。記憶障害(認知症)に用いられる。
2.× ユマニチュード(フランス語:人間らしさを取り戻す)とは、認知力の向上を目指すケア・コミュニケーション技法である。 主に認知能力が低下した高齢者や認知症患者に対して行い、 「見る」「話す」「触れる」の3つのケア方法に「立つ」というケア方法を加える。「患者の尊厳をそこなわないようになべきである」とするケアの技法である。
3.× ルーティン化療法は、前頭側頭型認知症の症状である常同行動(同じことにこだわり繰り返す)に対して行う技法である。よい習慣を毎日のスケジュールとしてルーティン化することで生活改善を行う。
4.× バリデーション療法(確認する、認めるという意味)は、認知症の高齢者と適切なコミュニケーションをとり症状改善や尊厳回復を目指す療法である。認知症患者のつくる虚構の世界を否定せずに、受容し、また、患者が好む感覚をみつけて、それを使うなどの様々な技法が含まれる。
5.〇 正しい。リアリティオリエンテーションは、正しい日時や場所などの情報を繰り返し提示する認知症患者への介入法である。「今がいつなのか?」「ここはどこなのか?」「周りの人が誰なのか?」がわからない見当識障害の症状があると、患者さんは強い不安を感じる。医療スタッフが日常会話の中で患者さんに正しい情報を繰り返し伝えることにより、現実見当識の維持が期待できる。これを「リアリティ・オリエンテーション法」いう。例)「〇〇さん、ちょっと外を見てください、今日はいいお天気ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

47 措置入院を規定する法律はどれか。

1. 障害者基本法
2. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律<精神保健福祉法>
3. 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律<障害者差別解消法>
4. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律<障害者総合支援法>
5. 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律<医療観察法>

解答2

解説

措置入院とは?

措置入院とは、自傷他害のおそれのある患者に対して、患者本人の同意が必ずしも必要せず、2名の精神保健指定医が入院の必要性を認めた場合に入院させることができる入院形態をいう。都道府県知事または政令指定都市の市長の命令による。

1.× 障害者基本法は、障害者施策について基本事項を定め、障害者の自立と参加を総合的かつ計画的に推進することを目的としている。
2.〇 正しい。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律<精神保健福祉法>は、措置入院を規定する法律である。精神障害者の入院について5つの入院形態(任意入院・医療保護入院・応急入院・措置入院・緊急措置入院)を定めている。
3.× 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律<障害者差別解消法>は、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的としている。
4.× 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律<障害者総合支援法>は、必要な支援により障害者・児の福祉の増進を図り、障害の有無に関わらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的としている。自立支援給付、地域生活、社会事業、費用負担について定めている。
5.× 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律<医療観察法>とは、重大な他害行為を行った精神障害者に医療を受けさせ、犯罪の再発を防ごうというものである。平成15年に制定され、平成17年施行した。「重大な他害行為」とは、①殺人、②放火、③強盗、④強姦、⑤強制わいせつ、⑥傷害の6つである。鑑定入院の後で、裁判官と精神保健審判員からなる合議体(裁判官と精神保健審判員からなる)が処罰の審判を下す。重大な他害行為を行った精神障害者に対して適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的としている。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

 

 

 

 

 

 

 

48 地域で生活している精神障害者の家族支援に関する内容として誤っているのはどれか。

1. 活用できる社会資源について情報提供をする。
2. 家族が地域社会から孤立しないように助言を行う。
3. 再発の兆候に気づいた時は主治医に相談するように伝える。
4. 家族自身のストレスが軽減するよう対処法について一緒に考える。
5. EE<Expressed Emotion>が高い場合は患者との接触を増やすよう勧める。

解答5

解説

1.〇 正しい。活用できる社会資源について情報提供をする。社会資源とは、生活するうえでおこるさまざまな問題の解決を担う福祉制度施設などのことである。 例えば、制度は①高額医療制度、②傷病手当、③生活保護などで、施設は、①居宅介護、②ショートステイ、③グループホームなどである。これらについて情報提供することは、患者本人を含む家族の支援につながる。
2.〇 正しい。家族が地域社会から孤立しないように助言を行う。なぜなら、患者自身と同様に精神障害者の家族も、ストレス(疾患への絶望感と周囲の偏見からくる孤立感、将来に対する著しい不安感)を抱えているため。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。絶望感や孤立感、不安感を傾聴し、できるだけ解消できるよう対処法について一緒に考えていく。
3.〇 正しい。再発の兆候に気づいた時は主治医に相談するように伝える。なぜなら、家族が再燃の兆候に早期に気づくことは多いため。症状の悪化を防いだり、必要なら入院などの処置をとったりすることができる。
4.〇 正しい。家族自身のストレスが軽減するよう対処法について一緒に考える。なぜなら、患者自身と同様に精神障害者の家族も、ストレス(疾患への絶望感と周囲の偏見からくる孤立感、将来に対する著しい不安感)を抱えている。絶望感や孤立感、不安感を傾聴し、できるだけ解消できるよう対処法について一緒に考えていく。
5.× EE<Expressed Emotion>が「高い」ではなく低い場合に、患者との接触を増やすよう勧める。EE< expressed emotion >とは、感情表出のことである。患者と接するときに家族に生じた主に否定的な感情を家族がありのままに表すことをいう。感情表出(EE)の強い(高い)家族のもとでは患者の症状は悪化しやすいとされるため、患者との接触を減らし、家族には家族心理教育では感情表出を抑えるような指導教育が行われる。家族には少しずつ、高EE的態度は良い結果を招かないことを認識してもらい、できる限り高EE的な態度を見せないことを意識させる。

EE< expressed emotion >とは?

EE< expressed emotion >とは、感情表出のことである。患者と接するときに家族に生じた主に否定的な感情を家族がありのままに表すことをいう。感情表出(EE)の強い(高い)家族のもとでは患者の症状は悪化しやすいとされるため、患者との接触を増やし、家族には家族心理教育では感情表出を抑えるような指導教育が行われる。

【3つのタイプ】

①批判的な感情表出:患者に対して不満や文句を言う。
②敵意のある感情表出:敵意的な感情をぶつける。
③情緒的に巻き込まれている感情表出:過保護や過干渉、少しのことで泣き崩れたり、冷静さを失うようなことも含まれる。

 

 

 

 

 

 

 

49 精神障害者の就労支援について正しいのはどれか。

1. 精神障害者は障害者雇用義務の対象ではない。
2. ジョブコーチは事業主への支援を行うことはできない。
3. 精神障害者は障害者職業能力開発校の支援対象ではない。
4. 障害者就業・生活支援センターでは職場実習を斡旋しない。
5. 就労継続支援B型事業所では最低賃金が保障されていない。

解答5

解説
1.× 精神障害者は、障害者雇用義務の対象である。ちなみに、平成30 (2018) 年4月1日以降、身体障害者と知的障害者だけであったが、精神障害者も含まれた。
2.× ジョブコーチは、事業主への支援を行う。ジョブコーチとは、障害者が事業所で働くため(就労支援)に、障害者と企業の双方を支援する役割をするもの。障害者が属する社会福祉法人の職員や事業所の社員などが行う。
3.× 精神障害者は、障害者職業能力開発校の支援対象である。障害者職業能力開発校は、「職業能力開発促進法」に基づき、障害者が就職に必要な知識、技能・技術を習得して職来的に自立し、生活の安定と地位向上を図ることを目的として、国が設置し各自治体が運営する施設である。基本的に障害者手帳を持っている人が対象である。※だだし、コースによっては、精神障害者保健福祉手帳を所持しており、心身の状態が安定していることが条件となったり、精神障害者手帳を持っていなくても医師の診断を受けていることが条件となっていることもある。
4.× 障害者就業・生活支援センターは、職場実習を斡旋(あっせん:交渉や商売などで、間にはいって、両方の者がうまくゆくように取りはからうこと)している。障害者就業・生活支援センターとは、国及び県から委託を受けた地域の社会福祉法人等が運営する障害者の就労支援機関である。 就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者に対し、就業と生活における一体的な相談支援を実施している。
5.〇 正しい。就労継続支援B型事業所では最低賃金が保障されていない。なぜなら、労働者ではなく「訓練生」の扱いとなるため。一般的な雇用形態とは異なる福祉的就労である。したがって、各種労務関係法規(労働基準法や最低賃金法など)は適用されない。

 

 

 

 

 

 

 

50 標準予防策<standard precautions>について正しいのはどれか。

1. 手洗いは7秒以内で行う。
2. 手袋着用前は手洗いの必要はない。
3. 感染症患者を隔離することが含まれる。
4. 患者同士の接触による感染予防が目的である。
5. すべての患者の排泄物は感染性があるとみなす。

解答5

解説

標準予防策とは?

標準予防策(standard precaution)とは、院内感染の防止策として推奨されている方法であり、感染の有無に関わらず入院患者すべてに適用される予防対策であり、患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして、対応、行動する方法である。

1.× 手洗いは、「7秒以内」ではなく、最低でも20~30秒かけて行う。(※WHO手指衛生ガイドラインより)
2.× 手袋着用前でも手洗いの必要がある。手洗いは、手袋の着脱前後に実施する。
3.× 感染症患者を隔離することは含まれない。なぜなら、「感染経路別予防策」の空気予防策に含まれるため。
4.× 患者同士の接触による感染予防が目的ではない。なぜなら、「感染経路別予防策」の接触予防策に含まれるため。
5.〇 正しい。すべての患者の排泄物は感染性があるとみなす。なぜなら、排泄物は湿性生体物質であるため。標準予防策は、「すべての湿性生体物質(汗を除く)は感染のおそれがある」とみなし、対応・行動する。

手指衛生の5つのタイミング

①患者に触れる前( 手指を介して伝播する病原微生物から患者を守るため)
②清潔/無菌操作の前( 患者の体内に微生物が侵入することを防ぐため)
③体液に曝露された可能性のある場合(患者の病原微生物から医療従事者を守るため)
④患者に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)
⑤患者周辺の環境や物品に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)
である。

(※WHO手指衛生ガイドラインより)

 

 

※問題の引用:第56回理学療法士国家試験、第56回作業療法士国家試験の問題および正答について(厚生労働省HPより)

2 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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