第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

 

41 コンピューターゲームを用いた統合失調症患者の認知リハビリテーションはどれか。

1. IPS<Individual Placement and Support>
2. MCT<Metacognitive Training>
3. NEAR<Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation>
4. SCIT<Social Cognition and Interaction Training>
5. SST<Social Skills Training>

解答3

解説
1.× IPS<Individual Placement and Support>は、患者への信頼と可能性を信じることをベースとして、症状の安定度や職業準備性よりも就労意欲を重視し、仕事の中で自分を高め(ストレングス)、最終目的を疾患からの回復(リカバリー)とするものである。つまり、精神障害者の就労を支援するものである。
2.× MCT<Metacognitive Training:メタ認知トレーニング>は、統合失調症の認知的な偏りを改善するトレーニングである。メタ認知とは、自分自身を客観的に評価し、考え方を修正・改善する能力をいう。
3.〇 正しい。NEAR<Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation:認知矯正療法>は、統合失調症患者を対象とし、記憶力・集中力・物事の段取りを考えて実行する能力などの認知機能障害の改善を図るためのリハビリテーションである。参加可能基準は、主に7つ挙げられ、①年齢は13歳~65歳、②知的レベルは境界以上、③取りレベルは小学4年生以上、④現時点で物質及びアルコール乱用者ではない、⑤何らかの中毒における解毒から1ヵ月以上経過している、⑥過去3年間に頭部外傷歴がない、⑦セッションの間座っていられる程度に精神症状が安定していることがあげられる。
4.× SCIT<Social Cognition and Interaction Training:社会認知と対人関係のトレーニング>は、統合失調症患者の社会認知の障害を治療ターゲットとする。対人関係改善のためのグループワークトレーニングである。
5.× SST<Social Skills Training:社会生活技能訓練>は、は、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つ(認知行動療法の一つ)である。精神科における強力な心理社会的介入方法である。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。

 

 

 

 

 

 

 

42 解離性けいれん発作について正しいのはどれか。

1. 誘因なく突然起こる。
2. 睡眠中には起こらない。
3. 発作持続時間は数分程度である。
4. 発作時に意識は完全に消失する。
5. 転倒による打撲傷が頻繁にみられる。

解答2

解説

解離性けいれん発作とは?

解離性けいれん発作(心因性偽発作、心因性非てんかん性発作、解離性発作、ヒステリー性発作とも)は、真性てんかん発作に似ているが、重篤な身体症状や外傷は伴わない点で区別される心因性(心理的な要因)のてんかんである。ただし、てんかん発作と合併することもあるため、重篤な身体症状や外傷をよく観察する必要がある。

1.× 誘因なく突然起こるのは、真性てんかん発作である。一方で、解離性けいれん発作の誘因は、本人の意識には上がらない心理的要因である。無意識の領域に抑圧されている。
2.〇 正しい。解離性けいれん発作は、睡眠中や他者のいないところでは起こらない。なぜなら、「誰かの気を引きたい」という無意識の願望が根底にあるため。
3.× 発作持続時間は数分程度であるのは、真性てんかん発作である。一方で、解離性けいれん発作は、一般的に数十分~数時間に及ぶ。
4.× 必ずしも、発作時に意識は完全に消失するとはいえない
5.× 転倒による打撲傷が頻繁にみられるのは、真性てんかん発作である。一方で、解離性けいれん発作は、失立失歩(立てなくなるのは立ちたくないから、歩けなくなるのは歩きたくない)場合は見られるが、転倒やけがをすることはまれである。

 

 

 

 

 

 

 

43 症状性精神障害を引き起こす疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1. Wernicke脳症:ビタミンB1投与
2. 肝性脳症:芳香族アミノ酸投与
3. 全身性エリテマトーデス:副腎皮質ステロイド投与
4. 尿毒性脳症:瀉血
5. ペラグラ:葉酸投与

解答1・3

解説

1.〇 正しい。Wernicke脳症は、ビタミンB1投与で治療する。Wernicke脳症は、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって起こる脳症のこと。アルコール多飲、栄養障害などにより起こる。症状として、意識障害・眼球運動障害・混迷・記憶障害・作話を来す。
2.× 肝性脳症は、芳香族アミノ酸投与ではなく、芳香族アミノ酸の脳内への移行を阻害する分岐鎖アミノ酸製剤を投与する。肝性脳症は、肝臓の機能低下による意識障害である。直接の原因については不明な点が多いが、高度の肝機能障害や門脈-大循環シャントにより腸管内で産生された毒性物質が、肝臓で解毒されることなく透過性の亢進した血液脳関門を通過して脳に到達することで生じる。
3.〇 正しい。全身性エリテマトーデスは、副腎皮質ステロイド投与で治療する。全身性エリテマトーデスは、自己免疫疾患であり、全身に多様な症状が出現する。精神・神経症状としては、CNSループスとよばれる中枢神経症状がみられ、うつ・せん妄・認知障害などの精神症状や脳血管障害、けいれんなどがみられる。
4.× 尿毒性脳症は、瀉血(しゃけつ:血液を抜くこと)ではなく、透析などで治療する。尿毒症性脳症とは、尿毒症(腎不全により、身体の中に老廃物が蓄積する状態)の影響が脳に出ていることである。症状として、集中力の低下や幻覚・錯覚・抑うつ状態・手足の震えが現れる。血液検査や脳波検査、画像検査(CT検査、MRI検査など)によって詳しく調べ、尿毒症性脳症の治療は透析(老廃物を身体の外に出すこと)と、可能であれば腎臓の機能を回復させることである。
5.× ペラグラは、葉酸投与ではなく、ナイアシン服用で治療する。ペラグラ脳症は、代謝内分泌疾患の一つで、ナイアシン欠乏症(栄養失調)である。ビタミンB3の欠乏で起こる。症状は、皮膚炎 、下痢 、認知症、うつ、けいれんなどを来す。

 

 

 

 

 

 

 

44 統合失調症について正しいのはどれか。

1. 症状寛解後は薬物治療を中止する。
2. 家族心理教育を行うことで再発率が低下する。
3. 精神病未治療期間の長短は予後と無関係である。
4. 服薬自己管理の練習は急性増悪期から開始する。
5. 障害者試行雇用<トライアル雇用>の対象にはならない。

解答2

解説

1.× 症状寛解後も、薬物治療を継続することが多い。なぜなら、統合失調症は、症状の再発・再燃することが多くそれらを防止するため。むしろ、生涯にわたり薬物療法を続ける場合がほとんどである。
2.〇 正しい。家族心理教育を行うことで再発率が低下する。家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
3.× 精神病未治療期間の長短は、予後と関係する。他の疾患と同様、早期発見早期治療が予後によい結果をもたらす。
4.× 服薬自己管理の練習は、急性増悪期からではなく、回復期~後期に開始する。急性増悪期は、症状の理解や服薬の必要性の理解など病識の獲得と治療方法への理解を中心に行われる。
5.× 障害者試行雇用<トライアル雇用>の対象である。障害者試行雇用<トライアル雇用>は、職業生活に相当の制限や困難を伴う者(身体障害・知的障害・精神障害)を対象として、原則3か月間試用雇用をすることで適性や能力を見極め、継続就労のきっかけをつくってもらう制度である。

 

 

 

 

 

 

 

45 作業療法における広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)への対応で適切なのはどれか。

1. 攻撃的な行動には大きな声で「ダメ」とだけ簡潔に言う。
2. 作業の適用時には内容をあらかじめ伝える。
3. こだわりに対しては行動変容を促す。
4. 作業は自由度の高いものを用いる。
5. 説明には言語的情報を多用する。

解答2

解説

広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)とは?

広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害、および限局・常同・反復的な行動パターンがあげられる。生後5年以内に明らかとなる一群の障害である。通常は精神遅滞を伴う。

1.× 攻撃的な行動に、大きな声で「ダメ」とだけ簡潔に言ったり、大きな声で叱責することは不適切である。なぜなら、本人をさらに精神的に不安定にさせるため。攻撃的な行動には、制止したうえで、可能ならそのような行動をとる理由を聞いてみる。
2.〇 正しい。作業の適用時には内容をあらかじめ伝える。なぜなら、作業の内容をあらかじめ伝えておくと、混乱が少なくなるため。
3.× こだわりに対して、行動変容を促す必要はない。なぜなら、こだわりを変える必要性に対し、本人は混乱パニック状態に陥る可能性が高いため。まずは、こだわりを許容し、本人と信頼関係を築いたあとに、行動を変えることを納得させたうえで徐々に受け入れさせるのがよい。
4.× 作業は、自由度の高いものではなく、ある程度やることが決まっているものを用いる。なぜなら作業の自由度が高いと、本人は何をしたらよいのか見当がつかないことが多いため。
5.× 説明には言語的情報ではなく、視覚的情報を多用する。聴覚(言葉で説明する)よりも視覚(絵やカード)に訴えた方が指示は伝わりやすい。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)