第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 作業療法に関する歴史について正しいのはどれか。

1. 呉秀三は認知行動療法を実践した。
2. A. Meyer は感覚統合療法を提唱した。
3. 加藤普佐次郎は結核患者の作業療法に貢献した。
4. 高木憲次は肢体不自由児の療育を体系化させた。
5. W. Duntonは精神力動的作業療法理論を提唱した。

解答4

解説
1.× 呉秀三(くれしゅうぞう)は、「認知行動療法」ではなく、移導療法を実践した。隔離拘束が中心であった精神病患者の処遇を解放化に向け、作業を中心とした移導療法を行った。隔離・監置・拘束を一掃し、精神病患者の看護を一新した。人間の尊重・自由・就労を柱に、病者の観念思想を病的世界から現実的なものにむけることを目的として作業をもちいた。
2.× A. Meyer (アドルフ・マイヤー)は、「感覚統合療法」ではなく、精神分析の思想を精神生物学として発展させた。スイス生まれの精神科医で、患者の残存している健康な機能に働きかける作業療法の意義を提唱している。
3.× 加藤普佐次郎(かとう ふさじろう)は、「結核患者」ではなく、精神病患者の作業療法(作業治療)に貢献した。精神病患者に対して体を動かす作業だけでなく、精神的活動やレクリエーションも治療方法とし、作業療法(作業治療)を進めた。
4.〇 正しい。高木憲次(たかぎ のりつぐ)は、肢体不自由児の療育を体系化させた。整形外科医であり、肢体不自由児の父とよばれた。
5.× W. Dunton(ウィリアム・ダントン)は、「精神力動的作業療法理論」ではなく、精神科領域における作業療法を提唱した。アメリカの精神科医で、「アメリカ作業療法の父」とよばれる。ちなみに、精神力動的作業療法理論について、力動は、①個人の精神力動と②集団力動とがあり、精神力動的作業療法、集団作業療法や場の基礎となっている。精神力動的作業療法理論は、言語分析の補助に作業・作業活動をもちいる。治療援助における対象関係や治療機序の基礎理論である。

 

 

 

 

 

 

 

22 主な感染経路と感染症の組合せで正しいのはどれか。

1. 空気感染:流行性角結膜炎
2. 空気感染:風疹
3. 接触感染:結核
4. 飛沫感染:流行性耳下腺炎
5. 飛沫感染:疥癬

解答4

解説
1.× 流行性角結膜炎は、「空気感染」ではなく接触感染である。流行性角結膜炎(はやり目)とは、ウイルスによって引き起こされる急性の結膜炎、あるいは角膜炎のことである。角膜・結膜の充血、眼瞼の腫脹が主症状である。
2.× 風疹は、「空気感染」ではなく飛沫感染である。
3.× 結核は、「接触感染」ではなく空気感染である。
4.〇 正しい。流行性耳下腺炎は、飛沫感染である。流行性耳下腺炎とは、2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症である。通常1~2 週間で軽快する。
5.× 疥癬(かいせん)は、「飛沫感染」ではなく接触感染である。疥癬虫(ヒゼンダニ)による皮膚の角層内感染症で、強い痒み、丘疹が特徴である。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

 

 

23 介護予防とその説明の組合せで正しいのはどれか。

1. 一次予防:活動性を維持させる。
2. 二次予防:身体機能を改善させる。
3. 二次予防:要介護状態を改善させる。
4. 三次予防:生活習慣を改善させる。
5. 三次予防:要介護状態になるのを遅らせる。

解答1

解説
1.〇 正しい。活動性を維持させるのは、一次予防である。ちなみに、一次予防は、生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防することである。
2.× 身体機能を改善させるのは、「二次予防」ではなく一次予防である。ちなみに、二次予防は、健康診査等による早期発見・早期治療することである。
3.× 要介護状態を改善させるのは、「二次予防」ではなく三次予防である。ちなみに、三次予防は、疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ることである。
4.× 生活習慣を改善させる(活動性の維持・向上を目的、生活習慣病の予防)のは、「三次予防」ではなく一次予防である。
5.× 要介護状態になるのを遅らせるのは、「三次予防」ではなく二次予防である。

疾病予防の概念

介護予防とは、要支援・要介護状態になることをできる限り防ぎ、介護が必要になった場合でも状態がそれ以上悪化しないように改善を図ることである。疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。

(※参考:厚生労働省HP「健康日本21(第二次)」より)

 

 

 

 

 

 

 

24 作業分析の観察による評価について最も適切なのはどれか。

1. 観察者の主観により行う。
2. 観察者の経験に左右される。
3. 事前に認知機能評価を行う。
4. 職業関連活動は模擬動作で評価する。
5. 患者の病気に対する認識が評価できる。

解答2

解説
1.× 「観察者の主観」ではなく客観的な視点により行う。客観的データ(他覚所見)とは、診察所見・血液検査・検査所見などである。
2.〇 正しい。観察者の経験に左右される。なぜなら、観察力は経験や訓練によって深まるため。観察者自身の力量を自覚しておき、できるだけ客観的な視点を持つ。
3.× 事前に、認知機能評価を行う必要はない。認知機能評価は、長谷川式認知症スケールやMMSE(ミニメンタルステート検査)である。
4.× 職業関連活動は、あえて模擬動作で評価する必要はない。実際の動作職場環境に患者が適応できるかどうかなども評価し、患者の状態に応じた復帰プログラムを提案する。
5.× 患者の病気に対する認識は、「作業分析の観察による評価」ではなく、面接・質問紙などにより評価する。

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは?

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題指向型記録のことである。

S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)
O=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)

で、経過を記録する。

 

 

 

 

 

 

 

25 発症後2時間の脳梗塞病巣を確認するために最も適切なのはどれか。

1. CT像
2. MRI 水強調像
3. MRI 拡散強調像
4. MRI 脂肪抑制像
5. MRI 3 DT1 強調像

解答3

解説
1.× CT像は、急性の出血(急性期のくも膜下出血など)の検出に有効である。なぜなら、血液はヘモグロビンを含み、放射線を吸収するため。
2.× MRI 水強調像(きわめて強いT2強調像)は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。T2強調像では、水は白く高信号で描出され(脳室は白色)、多くの病巣が高信号で描出されるため、病変の抽出に有用とされている。また、慢性期の出血、線維化、石灰化は低信号で撮像される。
3.〇 正しい。MRI 拡散強調像(DWI画像)は、発症後1~3時間以内の超急性期の梗塞巣を確認できるとされる。水分子の拡散運動(自由運動度)を画像化したもの。拡散が低下した領域が高信号として描出される。なお、急性期の脳出血はCTで確認するのが一般的である。発症から4~5時間以内の脳梗塞に対しては、血栓溶解療法(t-PA療法)という治療が行われる。初期対応は予後に大きく関わるため迅速に対応する必要がある。
4.× MRI 脂肪抑制像とは、撮像範囲内の脂肪成分が低信号として描出される。脂肪抑制の目的は、水成分を含む腫瘍や浮腫などの描出能(びょうしゅつ)をあがることにより、診断の向上が見込まれる。一般的に、筋MRIや脊髄MRIでよく用いられる。
5.× MRI 3 DT1 強調像とは、MRI T1強調像の画像を3D表示したものである。T1強調像は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。T1強調像では、水は黒く低信号で描出され(脳室は黒色)、CTとよく似た画像を呈し、大脳皮質と白質などの解剖学的な構造が捉えやすいという特徴がある。

急性期における梗塞巣の確認のしやすさ

①拡散強調像(DWT):超急性期(発症後1~3時間)
②FLAIR像:発症後3~6時頃
③T2強調像:発症後3~6時頃
④T1強調像の順である。

 

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