第56回(R3) 理学療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

 

46 糖尿病患者の運動療法を中止すべき状態はどれか。

1.発汗
2.冷汗
3.体温37.0℃
4.Borg指数13
5.脈拍数110/分

解答

解説
 1型糖尿病および2型糖尿病においても、運動療法によるエネルギー消費は有効な治療法である。しかし、運動中に低血糖になる可能性があるため、低血糖症状などの把握をしておく必要がある。

低血糖症状

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

1.× 発汗/体温37.0℃でも、糖尿病患者の運動療法を中止すべき状態ではない。ちなみに、リハビリの中止基準として、安静時体温が38℃ 以上で運動を中止した方が良い。
2.〇 正しい。冷汗は、低血糖でよくみられる症状である。血糖値を測定したり、ブドウ糖などを摂取する。他にも、低血糖症状がみられた場合は運動を中止する。
4.× Borg指数は、運動中の自覚症状をもとにした指標である。0〜20に分けられ、0が最も軽く、20がもっともきつい運動となる。有酸素運動を行うためにはBorg指数11(やや楽である)〜13(ややきつい)の運動が推奨される。
5.× 脈拍数110/分でも、糖尿病患者の運動療法を中止すべき状態ではない。ちなみに、アンダーソン・土肥の基準では、 脈拍数が120拍 /分を越えた場合、次の場合は運動を一時中止し、回復を待って再開する。運動を中止する基準は、140/分を超えた場合である。

2型糖尿病の理学療法

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 
発汗と冷汗の違い
発汗:体温調節のために起こる。多くは発汗と同時に体熱感や皮膚色の紅潮などが見られる。
 
冷汗:ショックなどの際の生体防御反応や代償機転として、交感神経が作用して起こる。そのため、末梢血管は収縮するため、皮膚は冷たく蒼白となる。
 

 

 

 

 

 

 

47 緩和ケア病棟におけるがん患者の理学療法で正しいのはどれか。

1.QOLより機能回復を優先する。
2.疼痛に対して温熱療法は禁忌である。
3.リンパ浮腫に対して理学療法は行わない。
4.チームアプローチよりも個人的な関わりを重視する。
5.骨髄抑制の状態に合わせて理学療法の内容を変更する。

解答

解説

緩和ケアにおける理学療法の目的

緩和ケアにおける理学療法は,回復を目的としたトレーニングとは異なる。回復が望めない中にあってその苦痛の緩和に努め,残された機能を最大限に生かし,安全な生活を支えることが必要である。また,残された機能を生かし支えることは,ひいては患者や家族の実際的ニーズや希望を支えることにもなる。さらに,その過程においてさまざまな患者の訴えに心を傾け,患者に寄り添うことは,理学療法士が提供できる大切な心のケアと考える。

①疼痛・苦痛の緩和:リハにおいてもまず取り組む課題である。(安楽死位、リラクゼーション、物理療法、補装具の検討、電動ベッドなどの検討)
②ADL 能力維持・援助:特に排泄動作に関する要望が多い。(移動能力維持、環境設定、ADL訓練、介助法の指導)
③精神面の援助:死を受け入れていくうえでも「どのように生きるか」が重要である。
④家族への援助:家族から要望があれば介助方法や援助方法(マッサージの方法など)を伝達する。
⑤廃用性変化の予防・全身機能維持:リハが日常生活にリズムをつくる。
※(参考:「緩和ケアにおけるコメディカルの役割と人材の育成」著:下稲葉 主一(栄光病院リハビリテーション科))

1.× 逆である。機能回復よりQOLを優先する。なぜなら、緩和ケア病棟では、その人らしく過ごすことができるようなケアを求められるため。
2.× 疼痛に対して温熱療法を行う。一般的にはがん患者(悪性腫瘍)には、温熱療法は禁忌とされているが、痛みやその他苦痛な症状を緩和する観点、患者のニーズに対応するという観点から行うことが多い。
3.× リンパ浮腫に対して理学療法(患肢の挙上、弾性包帯・弾性ストッキングによる圧迫、マッサージ、関節可動域訓練など)を行う。
4.× 緩和ケア病棟においても、チームアプローチ・個人的な関わりを両方大事にする。なぜなら、チームアプローチ(様々の職種が参加すること)により、解決しなければならない多様な問題に対して、多角的な視点を持って対応していく必要があるため。
5.〇 正しい。骨髄抑制の状態に合わせて理学療法の内容を変更する。骨髄抑制とは、抗がん剤や放射線治療に伴う副作用のひとつである。血液所見に注意を払い、その状態に合わせて理学療法の内容を変更する必要がある。

 

 

 

 

 

 

48 法律とその規定内容の組合せで誤っているのはどれか。

1.医療法:インフォームドコンセント
2.介護保険法:義肢の支給
3.健康増進法:がん検診
4.高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律〈バリアフリー新法〉:車椅子使用者用の駐車場確保
5.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉:自立生活援助

解答

解説
1.〇 医療法とは、病院・診療所・助産院の開設・管理・整備の方法などを定める日本の法律である。インフォームドコンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味し、医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を決定し、同意のうえで医療を行うことを指す。インフォームドコンセントの根拠となる法律は「医療法第1条の4第2項医師、・・・・は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るように努めなければならない。」と示されていることにある。
2.× 誤っている。義肢の支給は、身体障害者福祉法に基づいて、補装具の交付や購入費や修理費費用の支給がなされる。ちなみに、介護保険法は、要介護者等について、介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定めることを目的とする法律である。
3.〇 健康増進法とは、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。 がん検診については、健康増進法第19条の2に基づく健康増進事業として市町村が実施している。 健康手帳の交付や、健康相談、健康教育、訪問指導、がん検診や肝炎ウイルス検診が行われている。
4.〇 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律〈バリアフリー新法〉とは、高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性にかんがみ、公共交通機関の旅客施設及び車両等、道路、路外駐車場、公園施設並びに建築物の構造及び設備を改善するための措置、一定の地区における旅客施設、建築物等及びこれらの間の経路を構成する道路、駅前広場、通路その他の施設の一体的な整備を推進するための措置その他の措置を講ずることにより、高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする法律である。
5.〇 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉は、障害のある人への支援を定めた法律である。さまざまな福祉サービスを、障害や難病のある人個々のニーズに応じて組み合わせ、利用できる仕組みを定めている。自立生活援助とは、平成30年4月1日施行となる改正障害者総合支援法の中で新たに創設された障害福祉サービスである。 障害者が安心して地域で生活することができるよう、グループホーム等の地域生活を支援する仕組みの見直しが求められている。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

 

 

 

 

 

 

49 訪問理学療法で正しいのはどれか。

1.環境的側面のみヘアプローチを行う。
2.歩行や移動に関する支援要望が多い。
3.対象者の多くは交通事故による外傷である。
4.ゴール設定の際には家族の要望を最優先する。
5.バイタルチェックは看護師が実施しなければならない。

解答

解説

訪問リハビリテーションとは?

訪問リハビリテーションは、医師の指示書に基づき、リハビリテーション専門職が、通院困難な在宅療養者の居宅を訪問して機能訓練や日常動作に関わる訓練を行い、患者の心身の機能の維持回復を図り日常生活の自立を目指すものである。

1.× 環境的側面のみヘアプローチだけではない。身体的側面や環境的側面、日常動作訓練など、様々な視点を考慮しアプローチを行う。
2.〇 正しい。訪問理学療法では、自宅内の歩行や移動に関する支援要望が多い。一方、訪問作業療法では、生活動作に関する要望が多い。
3.× 対象者は、介護保険により介護認定を受けた方、もしくは医療保険適応であり、医者により訪問理学療法が必要と診断された方(通院が困難な方)が対象である。訪問リハビリテーションが必要となった原因の傷病は、1位:脳卒中(39.1%)、2位:骨折(22.6%)、3位:廃用症候群(20.4%)である。(※データ引用:厚生労働省HP「訪問リハビリテーション」より)
4.× ゴール設定の際には、本人および家族の要望の両方を考慮し、一方的にならず設定する必要がある。
5.× バイタルチェックは、看護師が実施しなければならないという規定はない。訪問した際に理学療法士が行い、変化があった場合は看護師や医師などと共有する。

 

 

 

 

 

 

50 介護保険制度の対象となるのはどれか。

1.居室の増築
2.廊下幅の拡張
3.照明器具の変更
4.床面材料の変更
5.寝室スペースの増築

解答

解説

介護保険制度における住宅改修の種類

・手すりの取り付け
・段差の解消
・滑り止め防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
・引き戸等への扉の取り替え
・洋式便器等への取り替え
・これらに付帯して必要となる改修
(※支給限度額は20万円)

1~3.5.居室の増築/廊下幅の拡張/照明器具の変更/寝室スペースの増築は、介護保険制度の対象に含まれない。
4.〇 正しい。床面材料の変更は対象である。

 

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