第56回(R3) 理学療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

 

41 脊髄完全損傷者の機能残存レベルと実用可能な能力の組合せで正しいのはどれか。

1.第3頚髄節:自発呼吸
2.第5頚髄節:プッシュアップ動作
3.第3胸髄節:自動車への移乗
4.第10胸髄節:両長下肢装具を用いての歩行
5.第12胸髄節:両短下肢装具を用いての歩行

解答

解説
1.× 第3頚髄節(C3)の機能残存とは、C4以下の神経が障害されていることを意味する。C1〜C3の損傷では、頭部の前屈回転は可能であるが、「呼吸筋の完全麻痺」となっており、よって人工呼吸器の使用が必要となる。自発呼吸が行えるのは、第4頚髄節(C4)の機能残存である。
2.× 第5頚髄節の機能残存レベルは、三角筋と上腕二頭筋が残存しており、肩関節運動、肘関節屈伸・回外が可能である。プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。ちなみに、肘の伸展によるプッシュアップ動作は、第7頚髄節(C7)の機能残存である。
3.〇 正しい。第3胸髄節の機能残存レベルでは、上肢が使用できるため、自動車への移乗は可能である
4.× 第10胸髄節の機能残存レベルでは、下肢の麻痺および臍より下部の感覚消失があり、歩行は困難である。両長下肢装具を用いての歩行は、第12胸髄節(T12)の機能残存から行えるが、実用的なレベルは第2腰髄節(L2)の機能残存である。
5.× 第12胸髄節の機能残存レベルでは、下肢の付け根(鼠径部)より下部の麻痺および感覚の消失があり、両短下肢装具を用いての歩行は困難である。長下肢装具とクラッチを使用し歩行を試みるレベルである。ちなみに、両短下肢装具を用いての歩行は、大腿四頭筋が働く第3腰髄節(L3)の機能残存からである。

 

 

 

 

 

 

42 膝関節前十字靭帯再建術後3日経過した時点で行う理学療法として適切でないのはどれか。

1.ゴムチューブを利用した膝伸展運動
2.膝装具装着下での自動介助運動
3.CPMを用いた関節可動域練習
4.ハーフスクワット
5.アイシング

解答

解説

膝関節前十字靭帯再建術後の理学療法

膝関節前十字靭帯再建術後の理学療法では、安全な範囲でできるだけ早くに膝関節の可動域を回復させ、大腿を中心とした下肢筋力の向上を目的に実施する必要がある。しかし、骨に開けた穴と再腱靭帯が癒合するのに6〜8週、移植後に弱くなった腱の回復に3〜4ヶ月を要する。したがってこの間は、再腱靭帯を十分に保護しながら理学療法を進めないと、再び関節が不安定になる危険性がある。

1.〇 ゴムチューブを利用した膝伸展運動は理学療法として適切である。しかし、再腱靭帯に負荷がかかる危険があるため、許可された範囲(膝屈曲可動域30~90°)・ゴムチューブの抵抗の位置(脛骨近位部)など注意しながら実施する。
2.〇 膝装具装着下での自動介助運動は理学療法として適切である。患側下肢の筋力低下・拘縮の予防を目的に、仰臥位でのSLRや腹臥位での股関節伸展運動、側臥位での股関節外転運動などを行う。ちなみに、膝装具は、腱の移植が定着するまで靭帯保護のために使用されることが多い。
3.〇 CPMを用いた関節可動域練習は理学療法として適切である。CPM(Continuous Passive Motion:持続的他動運動装置)は、膝関節などの可動域改善に対して回復訓練を促進させる機械である。関節可動域制限の予防のため実施する。
4.× ハーフスクワットは実施困難である。なぜなら、膝関節前十字靭帯再建術後3日経過した時点では、「部分荷重」が開始され間もないころであり、荷重を守りながら正しいフォームで行うハーフスクワットはリスクが高いと考えられる。
5.〇 アイシングは理学療法として適切である。術後の炎症軽減と疼痛軽減のため、術直後より、装具の中に氷嚢を入れ、膝前方や裏側をアイシングする。

 

 

 

 

 

 

43 発症初期から易転倒性がみられるのはどれか。

1.Charcot-Marie-Tooth病
2.筋萎縮性側索硬化症
3.進行性核上性麻痺
4.脊髄小脳変性症
5.Parkinson病

解答

解説
1.× Charcot-Marie-Tooth病(シャルコー・マリー・トゥース病)とは、遺伝子異常により、一般的に四肢、特に下肢遠位部の筋力低下と感覚障害を示す疾患である。まれに、四肢近位部優位の筋力低下・筋萎縮を示す例もある。筋肉が緩徐進行性で萎縮し、同部位の感覚が少し鈍くなる。歩行は、下腿の筋萎縮により鶏歩(下垂足)となる。
2.× 筋萎縮性側索硬化症は、重篤な筋肉の萎縮と低下をきたす神経変性疾患である。初期症状としては、手や指先のしびれ、感覚麻痺、歩行時の足のつっぱり感、足首の曲げにくさ、喋りにくさ、口から食べ物がこぼれる等が挙げられる。初期は、四肢の筋力低下は軽度であることからMMTでは異常がみられないことが多く、易転倒性もみられない。
3.〇 正しい。進行性核上性麻痺は、脳内に「タウたんぱく」と呼ばれるタンパク質が蓄積されることによって起こる。進行性核上性麻痺では、発症の初期から歩行障害がみられるため易転倒性がみられる。これは、姿勢反射障害による姿勢の不安定性や、前頭性認知症機能障害による危険に対する注意力・洞察力の低下が原因とされている。他にも、下方注視障害(下方を見ることが困難)があるため易転倒性となる。
4.× 脊髄小脳変性症は、小脳を中心とした神経の変性により生じる疾患を総称して呼ぶ。歩行時のふらつきや、手の震え、呂律が回らない等を症状とする神経疾患である。脊髄小脳変性症は急に症状が悪化するということはなく、とてもゆっくり進むため、初期から転倒することは稀である。
5.× Parkinson病において、歩行障害や姿勢保持反射所油外が生じるのは、Hoehn&Yahr の重症度分類のステージⅢからである。したがって、発症初期には日常生活での介助をほとんど必要とせず、易転倒性もみられない。ちなみに、他に特徴的な症状として、静止時振戦、無動、筋固縮などがある。進行が進むにつれ、転倒の危険性が高まる。

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

 

 

 

 

 

 

44 症候とその説明の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.Uhthoff徴候:体温の低下で神経症状が悪化する。
2.Lasègue徴候:腰椎椎間板ヘルニアで陽性になる。
3.Lhermitte徴候:頚部の前屈により背部中央に痛みが走る。
4.内側縦束症候群:後頭葉の障害で起こる。
5.Brown-Séquard症候群:脊髄の両側横断性障害で起こる。

解答2・3

解説

1.× Uhthoff徴候(ウートフ徴候)は、体温の上昇で神経症状が悪化する。多発性硬化症や視神経脊髄炎の患者において、長時間の入浴や炎天下の外出、あるいは感冒や運動など体温上昇が起こる状態で、視力低下や筋力低下、疲労感、しびれなどの症状が発現、または増悪することがあり、これをUhthoff徴候(ウートフ徴候)と呼ぶ。
2.〇 正しい。Lasègue徴候(ラセーグ徴候)とは、仰臥位の患者の下肢を伸展させたまま持ち上げた際に、大腿後面に疼痛が出現し、それ以上挙上できなくなる状態を指す。腰椎椎間板ヘルニアで陽性になる。
3.〇 正しい。Lhermitte徴候(レルミット徴候)は、頚部屈曲時に感電したような痛みや刺すような痛みが、背中から両脚、片方の腕、体の片側へ走ることをいう。多発性硬化症に特徴的な症状であるが、他にも頚髄症、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍なども出現する。
4.× 内側縦束症候群(MLF症候群)とは、脳梗塞などが原因で脳幹の内側縦束が障害され、眼球の内転障害と対側の外転時の眼振がおきる。外見上、目が内側によっていることであり、斜視の中で最も多いとされている。
5.× Brown-Séquard症候群(ブラウン・セカール症候群:脊髄半側症候群)は、脊髄の半側が障害されたときに、障害部位以下でおこる運動麻痺や感覚麻痺などの症状をいう。損傷髄節よりも下位の反対側に温痛覚障害が生じ、同側に触覚の低下・痙性麻痺・深部感覚障害が生じる。

 

 

 

 

 

 

45 呼吸障害に対する理学療法として、口すぼめ呼吸が有効なのはどれか。

1.COPD
2.肺線維症
3.間質性肺炎
4.筋萎縮性側索硬化症
5.Duchenne型筋ジストロフィー

解答

解説

(画像引用:yakugaku lab様)

 口すぼめ呼吸が有効であるのは、閉塞性換気障害である。呼気時に口をすぼめて抵抗を与えることにより気道内圧を高め、これにより末梢気道の閉塞を防いで肺胞中の空気を出しやすくする。慢性閉塞性肺疾患患者などに使用する呼吸方法である。したがって、選択肢1.COPD(慢性閉塞性肺疾患)が口すぼめ呼吸が有効である。口すぼめ呼吸は、鼻から行きを吸った後、口をすぼめて長く息を吐く呼吸法である。①気道の虚脱を抑える、②呼吸数の減少と一回換気量の増大、③動脈血ガス所見の改善、④換気血流の不均等分布の改善などの効果がある。

2.× 肺線維症は、肺胞の線維化により、十分な空気を取り込むことが難しい拘束性換気障害である。
3.× 間質性肺炎は、肺の間質を中心に炎症を来す拘束性換気障害である。
4.× 筋萎縮性側索硬化症の呼吸障害に対する理学療法では、徒手療法が推奨されている。拘束性換気障害である。
5.× Duchenne型筋ジストロフィーの呼吸障害に対する理学療法としては、症状、経過、換気と咳の評価としての肺活量、咳の最大流量(CPF)、最大強制吸気量(MIC)、酸素飽和度(SpO2)、呼気終末炭酸ガス分圧(PetCO2)、経皮炭酸ガス分圧(PtcCO2)、徒手や機械による咳介助呼吸疲労を最小限にして有効に換気できる姿勢保持、などが重要である。拘束性換気障害である。

 

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