第56回(R3) 理学療法士国家試験 解説【午前問題1~5】

 

※解答の引用:第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について(厚生労働省HPより)

 

1 75歳の女性。誤嚥性肺炎。喀痰培養でMRSAを検出した。マスク、手袋、ガウンを装着し病棟個室で肺理学療法を開始した。
 感染予防策について正しいのはどれか。

1.N95マスクを装着する。
2.個室のドアは開放してはならない。
3.ガウンは退室時病室内で脱いで廃棄する。
4.退室時手袋を装着したままドアノブに触れて開ける。
5.手袋を装着していれば手指消毒は不要である。

解答

解説

M R S A(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)とは?

 黄色ブドウ球菌は非常にありふれた常在菌で、健常者でも髪の毛や鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく付着している。本症例は、「誤嚥性肺炎」の症例であるが、M R S Aの場合は感染経路が「接触感染(直接患者に接触する)」と「間接感染(介護用品や環境表面に触れることで感染)」の2つであり、「標準予防策」で対応する。標準予防策(standard precaution)は、全患者・医療従事者に対して実施される感染予防策である。手洗い、個人防護用具の使用などに基づく医療器具や周辺環境における感染対策である。感染の有無に関わらず入院患者すべてに適用される予防対策であり、患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして、対応、行動する方法である。

1.× N95マスクを使用するのは、「空気感染」を予防するときである。ちなみに、感染経路が空気感染なのは、「麻疹・水痘・結核」である。
2.× 個室のドアは開放してはならないのは、「空気感染」を予防するときである。空気感染策時のみ、個室で固有の換気システムを必要とする。本症例の場合、「接触感染」を防ぐため原則として個室収容または集団隔離が必要である。
3.〇 正しい。ガウンは退室時病室内で脱いで廃棄する。なぜなら、ガウンには菌が付着している可能性があるため。
4.× 退室時手袋を装着したままドアノブに触れて開ける必要はない。むしろ、間接感染の可能性があるため、退室時は手袋を部屋内で破棄し、手指消毒後の手でドアノブを開ける必要がある。
5.× 手袋の装着の有無にかかわらず、手指消毒は必要である。なぜなら、手袋には低い確率でごく小さな穴(ピンホール)が開いているため。

 

 

 

 

 

 

2 心電図を下図に示す。
 心室性期外収縮はどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答

解説

不整脈の大別(5つ)

①洞性不整脈
②房室ブロック
③脚ブロック
④期外収縮
⑤細動・粗動

 期外収縮は、①上室性(心房性と結節性)期外収縮と、②心室性期外収縮に分けられる。上室性か心室性を見分けるヒントはQRSを見れば分かり、QRSが幅広く変形しているなら心室性の期外収縮である。

1.× ①は、Ⅱ型洞不全症候群である。洞結節からの興奮が突然途絶えてしまう状態である。①洞調律は整であるが、P波の消失に引き続くQRS波の脱落が起こっている。
2.〇 正しい。②は、心室性期外収縮である。心室性期外収縮とは、本来の洞結節からの興奮より早く、心室で興奮が開始していることをいう。つまり、P波が認められず、幅広い変形したQRS波がみられる。
3.× ③は、心房細動である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。また、心房細動は、心原性脳塞栓症の原因として最も多い不整脈である。
4.× ④は、心室頻拍である。なぜなら、P波はなく幅広く変形したQPSのRR間隔が等しく出現しているため。
5.× ⑤は、75bpmであり正常洞調律である。

 

 

 

 

 

 

3 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)の基本軸と移動軸で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.肩内転
2.肩甲帯伸展
3.前腕回内
4.足部外転
5.膝伸展

解答2・3

解説

1.× 肩内転の基本軸の【基本軸】肩峰を通る床への垂直線、【移動軸】上腕骨である。ちなみに、立位または坐位で測定できる。設問の基本軸が、両肩峰を結んでいるため不適切である。
2.〇 正しい。肩甲帯伸展の【基本軸】両側の肩峰を結ぶ線、【移動軸】頭頂と肩峰を結ぶ線である。
3.〇 正しい。前腕回内の【基本軸】上腕骨、【移動軸】手指を伸展した手掌面である。ちなみに、【測定部位及び注意点】肩の回旋が入らないように肘を90°に屈曲するである。
4.× 足部外転の【基本軸】第1,2中足骨の間の中央線、【移動軸】基本軸と同様である。ちなみに、【測定部位及び注意点】足底で足の外縁または内縁で行うこともあるである。設問の基本軸・移動軸が、2,3中足骨を軸としているため不適切ある。
5.× 膝伸展は【基本軸】大腿骨、【移動軸】腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)である。設問では、基本軸・移動軸が腓骨となっているため不適切である。

さらに詳しく勉強したい方はこちら↓

【暗記確認用】ROMのランダム問題

 

 

 

 

 

 

4 Danielsらの徒手筋力テストによる左股関節の検査方法を図に示す。
 正しいのはどれか。2つ選べ。(不適切問題:解なし)

1.内転の段階3
2.伸展の段階4
3.外転の段階5
4.伸展の段階5
5.内旋の段階5

解答 なし(採点対象から除外する。)
理由:選択肢において正解を得ることが困難なため。

解説
1.〇 正しい。内転の段階3の方法では、検査側の下肢が重力に抗して持ち上がれば3と判断する。
2.× この股関節伸展測定は、股関節屈曲拘縮のある場合に使用される変法である。検査者の抵抗を加える手の位置は、大腿の近位部ではなく、遠位部が正しい。また、検査者の上前腸骨棘が検査台から離れすぎている。
3.△ 微妙・・・。外転の段階5の方法では、検査者の抵抗を位置は下腿の遠位部で正しい。ただ、下にした非検査肢位の股・膝関節が軽度屈曲位でないため、不適切である。
4.× 検査者は、右足の踵部を支える必要はないため不適切である。検査の対象となる左下肢の踵部を両手で支える必要がある。
5.〇 正しい。内旋の段階5の方法では、検査者の抵抗を位置は下腿の遠位部である。ちなみに、「新・徒手筋力検査法第10版」では、検査肢位は股関節内外旋中間位である。

 

 

 

 

 

 

5 正中神経麻痺による猿手変形に対する上肢装具はどれか。

解答

解説

1.× 手関節固定装具(コックアップスプリント)である。適応疾患は、関節炎・疼痛回避・橈骨神経麻痺の下垂手に用いる。
2.× MP関節屈曲補助装具(ナックルベンダー)である。適応疾患は、MP関節伸展拘縮・尺骨神経麻痺に用いる。
3.× 手関節手指固定装具(オッペンハイマー型)である。適応疾患は、関節リウマチや痙性麻痺手、橈骨神経麻痺の下垂手の際に用いる。オッペンハイマー型の特徴としては、MP関節の伸展補助機能がある。
4.× MP関節伸展補助装具(逆ナックルベンダー)である。適応疾患は、MP関節屈曲拘縮に用いる。またMP関節PIP関節の屈曲拘縮の矯正に用いる。
5.〇 正しい。短対立装具のRancho型装具(ランチョ型装具)である。正中神経麻痺低位型に用いられる。

 

4 COMMENTS

匿名

2の問題の③は心室細動と書いてありますが、心房細動ではないでしょうか?

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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春からpt

こちらのサイトのお陰で無事に理学療法士になることが出来ました!
こちらがなければ落ちていたも同然です!
本当に助けられました。
ありがとうございます。
これからも応援しています。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
更新の励みになります!!

試験合格おめでとうございます!
受かったのも「春からPT」さんの才能と日頃の努力で、合格に向け当サイトをうまく活用できた結果だと思います。
今後のご活躍を応援しております。

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