第56回(R3) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題91~95】

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91 特発性肺線維症について正しいのはどれか。

1.特発性間質性肺炎の中で予後が最もよい。
2.胸部で捻髪音を聴取することが多い。
3.湿性咳嗽が主症状である。
4.閉塞性換気障害を示す。
5.急性増悪は稀である。

解答

解説

特発性肺線維症とは?

特発性肺線維症は、肺胞の損傷により間質が分厚く硬くなる病態である。原因不明とされているが、危険因子として喫煙が挙げられる。50歳以上の男性での発症頻度が高い。特発性間質性肺炎のうち最も頻度が高く、緩徐に進行する予後不良の疾患である。繰り返す肺胞上皮の損傷とそれに伴う修復の異常により、間質の線維化、肺胞構造の再構築が起こる。乾性咳嗽と徐々に増悪する労作性呼吸困難が主症状である。また、ばち指がみられることもある。肺癌や気胸の合併がみられる。特徴的な所見の確認に加え、詳細な病歴聴取や診察、各種検査による他疾患の除外が重要である。

1.× 特発性間質性肺炎の中で特発性肺線維症の予後は悪い。一般的に咳や息切れなどの初期症状が現れてからの生存年数は、3〜5年(診断時から生存中央値:約3年)といわれている。5年生存率は20~40%である。また、急性増悪した際の平均生存期間は、2ヶ月程度とされている。問質性肺炎は一般に予後は良好であることが多い。
2.〇 正しい。胸部で捻髪音を聴取することが多い。特に両側下肺野を中心に、吸気終末期に捻髪音が聴取できる。捻髪音は、息を吸った時に硬くなった肺胞に一気に空気が流れ込むことで、「パチパチ」「バリバリ」といった断続性の高音が聴取される。間質領域の病変では捻髪音に加えて水泡音が聴取されることもある。
3.× 「湿性咳嗽」ではなく乾性咳嗽である。なぜなら、間質性肺炎では気道内の分泌物が少ないため。痰のからんだような湿性咳嗽は稀である。
4.× 「閉塞性換気障害」ではなく拘束性換気障害である。拘束性換気障害は、肺結核・肺線維症などがあげられる。
5.× 両側肺野への新たな浸潤影、すりガラス様陰影の出現とともに風邪症状の後に急激に呼吸困難感が出現するといった特発性肺線維症の急性増悪を起こすこともある。これは原因不明であり、その場合の生命予後は不良である。急性増悪の発症率は5~10%/年とされている。

主な疾患

混合性換気障害:肺気腫など
拘束性換気障害:肺結核、肺線維症など
閉塞性換気障害:気管支喘息、気管支拡張症など

(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)

 

 

 

 

 

 

92 狭心症について正しいのはどれか。

1.強い胸痛が30分以上継続する。
2.心エコーでは発作時にも異常は認めない。
3.不安定狭心症は心筋梗塞には移行しない。
4.負荷心電図におけるST上昇が特徴的である。
5.薬物療法としてニトログリセリンが用いられる。

解答

解説

狭心症とは?

 狭心症は心臓への酸素供給量が減少することで、一時的な胸痛や圧迫されたような不快感を感じる疾患である。狭心症は酸素需要量が増大する運動時に発症しやすく、安静にすると回復する傾向がある。診断には血液検査や画像所見、自覚症状に基づいて下される。

1.× 強い胸痛が30分以上続くことは稀である。典型的な狭心症は運動によって引き起こされ、安静にすることで数分以内に回復することが多い。強い胸痛が30分以上続く場合、急性心筋梗塞解離性大動脈瘤などを疑う。
2.× 心エコーを発作時に当てると虚血所見(局所の壁運動低下・消失の出現がある場合)をとらえることができる。無症状時は異常をとらえることができないため、検査時にはあえて運動負荷を与えるなどして症状を再現することもある。
3.× 不安定狭心症は、心筋梗塞に移行するリスクが高い。不安定狭心症とは、安定性狭心症と比べて発作の回数が増えたり安静時にも胸痛がみられる重症・増悪型の狭心症である。冠動脈内において動脈硬化に起因する不安定プラークの破綻などにより血栓が形成され、それによって急激に冠動脈内が狭窄し、心筋虚血に至った状態である。また、心臓の栄養血管である冠動脈の高度な狭窄を反映していることが多い。つまり、心筋梗塞の前兆で突然死に至る可能性があり、早急な対処が必要である。
4.× 負荷心電図におけるST低下が特徴的である。冠動脈が狭窄している場合にはST低下(労作性狭窄症)、冠動脈が完全に閉塞する心筋梗塞ではST上昇するのが一般的である。
5.〇 正しい。薬物療法としてニトログリセリンが用いられる。ニトログリセリンは血管を拡張させる作用があり、効果発現までの時間が非常に短いことが特徴である(1分半〜3分程度)。

 

 

 

 

 

93 移植片対宿主病〈graf tversus host disease:GVHD〉について正しいのはどれか。

1.腸管に好発する。
2.予後良好である。
3.自己遊離皮弁術後に生じる。
4.好中球による免疫反応である。
5.血液型が一致すれば発症は防止できる。

解答

解説

移植片対宿主病とは?

移植片対宿主病とは、造血幹細胞の移植の際に、ドナー側の造血幹細胞中に含まれるリンパ球が引き起こす合併症である。ドナー由来のリンパ球が移植を受けた患者の正常細胞を異物として認識して攻撃してしまう現象を移植片対宿主病(GVHD)と呼ぶ。移植片対宿主病(GVHD)の際に反応する好発部位は、①皮膚(発赤、腫脹)、②消化管(下痢、下血)、③肝臓(黄疸)、④その他:口腔内(口内炎など)、眼(痛み、まぶしさなど)である。移植から6〜30日頃に起こるものを急性GVHD、移植から3ヶ月以上経ってから発症するものを慢性GVHDと呼ぶ。

(※図引用:「造血細胞移植ガイドラインGVHD P22」)

1.〇 正しい。腸管(消化管)に好発する。腸管に好発し、皮膚や肝臓も攻撃を受ける。腸・皮膚・肝臓への攻撃が典型例として挙げられる。下痢や皮膚の発疹、黄疸などの症状が現れる。
2.× 慢性GVHDの予後は悪いことが多い。なぜなら、一次療法である副腎皮質ステロイドの治療効果が薄い場合、標準的な二次療法は確立されていないため。急性経過で終わるタイプもあるが、慢性化して数週ないし数か月の治療を要する例も多く、治療期間が数年以上に及ぶこともある。また、汎血球現象や多臓器不全を来し予後不良に至ることもある。ちなみに、急性GVHDの予後も悪くなることがある(※上図参照)。軽症例は自然治癒であるため、発見・治療が遅れ、重症化に陥りやすい。
3.× 自己遊離皮弁術後に生じることはない。なぜなら、自己遊離皮弁術は、自分自身の移植組織を血管ごと切り取って欠損部の血管とつなぎ合わせるため。したがって、造血幹細胞の不適合は生じない。遊離皮弁術とは、けがが大きく、皮膚や筋肉・脂肪・骨などが大きく欠損してその欠損した組織を戻すことができない場合に、それらの組織を補うように自分の体の他の部位から持ってくる手術となる。
4.× 「好中球」ではなく、リンパ球による免疫反応である。移植片対宿主病(GVHD)は、ドナーの造血幹細胞に含まれるリンパ球が患者の組織を非自己と認識して攻撃する疾患である。
5.× 血液型が一致しても発症は防止できない。同種移植とは、血縁者あるいは非血縁者で、HLA(ヒト白血球抗原または組織適合抗原)と呼ばれる白血球の血液型が一致、あるいは類似している健常人、またはHLAの条件が合ったさい帯血から造血幹細胞の提供を受けて移植のことである。つまり、血液型(赤血球の型)ではなく、白血球の型が同じである必要がある。

(※図引用:「造血細胞移植ガイドラインGVHD P4」)

発症のメカニズム

発症メカニズム
①ドナーから提供された移植細胞(骨髄、末梢血幹細胞、さい帯血)には白血球が含まれていて、さらにその白血球の中にはTリンパ球(ウイルスなどの病原体を排除する役目を担う)が含まれている。
②移植細胞が生着した後は、患者の骨髄から新しくドナーのTリンパ球が作られていく(これらのTリンパ球が急性GVHDの主役)。

 

 

 

 

 

 

94 人工透析患者の死亡原因として最も多いのはどれか。

1.肺炎
2.心不全
3.脳出血
4.悪性腫瘍
5.慢性肝炎

解答

解説

 日本透析学会の発表によると、透析患者の死亡原因の第1位は「心不全」、第2位は「感染症」、第3位は「脳血管障害」である。
腎機能が低下すると尿量の低下や塩分の過剰摂取が体内の水分量を増加させるため、透析での除水量が不十分な場合には過剰な水分が心臓への負担を増加させ、それによって心不全を招きやすくなる。また、腎性貧血によって心臓の働きを障害することも心不全を生じる要因となる。したがって、選択肢2.心不全が最も多い。腎不全による高血圧症、骨ミネラル代謝異常などが動脈硬化を促進し、心血管系疾患を招く。

1.× 肺炎は、第2位である。感染症での死亡原因には、肺炎のほか、シャント感染、尿路感染も含まれる。
3.× 脳出血は、第3位である。透析患者は、出血傾向があり、健常者と比較して5~10倍、脳出血が起こしやすい。
4.× 悪性腫瘍は、第4位である。慢性透析患者に合併しやすい腎嚢胞には、腎細胞癌が発生することもあり、また膀胱癌、消化器系の癌、腎細胞癌なども起こりやすい。
5.× 慢性肝炎の原因の70%はC型肝炎、ついで20%がB型肝炎である。

 

 

 

 

 

 

95 理学療法士法及び作業療法士法で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.昭和45年に制定された。
2.免許は都道府県知事から交付される。
3.免許証返納後に守秘義務は解除される。
4.免許の取り消し理由に大麻中毒がある。
5.理学療法士、作業療法士は名称独占である。

解答4・5

解説
1.× 制定されたのは、「昭和45年」ではなく昭和40年である。理学療法士法及び作業療法士法は、資格を定めるとともに、業務の適正運用や医療の向上を目指している。
2.× 免許の交付は、「都道府県知事」ではなく厚生労働大臣である。基本的に国家資格は厚生労働大臣が交付している。
3.× 免許証返納後も守秘義務は解除されない
4.〇 正しい。免許の取り消し理由に大麻中毒がある。他にも、①罰金以上の刑に処せられた者、②前号に該当する者を除くほか、理学療法士又は作業療法士の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者、③心身の障害により理学療法士又は作業療法士の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるものとされている。
5.〇 正しい。理学療法士、作業療法士は名称独占である。名称独占資格とは、資格がなくてもその業務に従事する事はできるが、資格取得者のみ特定の資格名称(肩書き)を名乗ることができ、資格を所有していない者が法律に定める特定の名称を名乗ることができない資格のことをいう。つまり、理学療法士の仕事は、資格を無くても行うことができるが、「私は理学療法士です」と名乗ることはできないということである。一方、業務独占とは、国家資格を持たないものが、その名称を用いて当該業務に従事することはできないこと。(例:医者など)

欠格事由

①罰金以上の刑に処せられた者
②作業療法士(理学療法士)の業務に関し犯罪もしくは不正の行為があった者
③心身に障害があって業務を適正に行うことができない者
④麻薬、大麻又はあへんの中毒者

 

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