第55回(R2) 作業療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

 

6 30歳の男性。頸髄損傷完全麻痺(第6頸髄まで機能残存)。上腕三頭筋の筋力検査を行う場面を図に示す。
 代償運動が出現しないように作業療法士が最も抑制すべき運動はどれか。

1. 体幹屈曲
2. 肩関節屈曲
3. 肩関節外転
4. 肩関節外旋
5. 前腕回内

解答4

解説

代償動作とは?

代償動作とは、本来の動作や運動を行うのに必要な機能以外の機能で補って動作や運動を行うことです。ある運動を行うときに、動筋の筋力低下や麻痺からその作用を他の筋の運動によって補おうとする見せかけの運動をすること。筋力検査をする場合には注意する必要がある。

【肘関節伸展:代償動作】
①肩関節外旋(棘下筋、小円筋)を使用し、重力で肘関節伸展する。
②肩関節水平内転(大胸筋)を使用し、重力で肘関節伸展する。

1.× 体幹屈曲は、本症例(第6頸髄までの機能残存レベル)では機能しない
2.× 肩関節屈曲した場合、さらに前腕の重さで肘関節屈曲する。
3.× 肩関節外転は行えない。図の姿勢から、肩関節外転は行えず、肩関節水平外転としての動作が成立する。肩関節水平外転した場合は、遠心力により肘関節伸展が行える。
4.〇 正しい。肩関節外旋は、代償運動が出現しないように作業療法士が最も抑制すべき運動である。なぜなら、肩関節外旋(棘下筋、小円筋)を使用し、重力で肘関節伸展するため。また、棘下筋・小円筋の神経支配は C5~6レベルであるため、機能は残存する。
5.× 前腕回内した場合、肘関節は中間位のまま保持される。代償運動は生じない。

 

 

 

 

 

 

7 心電図をモニターしながら訓練を行った際の訓練前と訓練中の心電図を下図に示す。
 変化に関する所見で正しいのはどれか。

1. 二段脈
2. 心房粗動
3. 心室頻拍
4. ST の低下
5. 上室性頻拍

解答4

解説

1.× 二段脈は、洞調律や上室性調律と心室性期外収縮が交互に出現することである。原因として、狭心症や心筋梗塞、弁膜症、心筋症などの心疾患や心不全をはじめとして、ストレスや疲労、カフェイン・アルコールの摂取、加齢など様々なものがある。ジギタリス中毒に伴う。
2.× 心房粗動の特徴は、①規則正しいRR間隔、②幅の狭いQRS波、③P波の代わりに規則正しい心房粗動波(F波)が認められる。3.× 心室頻拍の特徴は、①脈拍数は上昇、②幅広いQRS波が規則正しく出現、③RR間隔は狭くなっている。
4.〇 正しい。STの低下は、主に心筋虚血によってみられる。心筋梗塞では、T波の増高が最も早くみられ、時間の経過と共に「ST上昇→異常Q波→陰性T波」が見られるようになる。
5.× 上室性頻拍の特徴は、①規則正しいRR間隔、②幅の狭いQRS波の連続を認める。心房や房室結節に起因する上室性不整脈である。

 

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8 78 歳の女性。右利き。脳梗塞による左片麻痺で入院中。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅴ、手指Ⅵ、下肢Ⅴ。歯がなく、きざみ食をスプーンで全量自力摂取しているが、次から次へと食べ物を口に運ぶ。改訂水飲みテスト<MWST>は5点、反復唾液嚥下テスト<RSST>は4回/30秒であった。
 この患者への対応で正しいのはどれか。

1. 摂食嚥下に問題の無い患者の対面に座らせる。
2. 食前に耳下腺マッサージを行う。
3. 主菜・副菜にとろみをつける。
4. 小さいスプーンを使用させる。
5. 患者の左空間に皿を置く。

解答4

解説

テストの説明

 反復唾液嚥下テスト〈RSST〉は、30秒間の空嚥下を実施してもらい、嚥下反射の随意的な能力を評価する。3回/30秒以上から嚥下の反復ができれば正常である。

 改訂水飲みテスト〈MWST〉とは、3mlの冷水を口腔内に入れて嚥下を行わせ、嚥下反射誘発の有無、むせ、呼吸の変化を評価する。嚥下あり、呼吸良好、むせない状態で、追加嚥下運動(空嚥下)が2回/30秒可能であれば、最高点数の5点である。

 本症例は、嚥下機能は良好である(MWSTとRSST の結果から)。しかし、歯がないにもかかわらず、次から次へと食べ物を口に運ぶ様子がある。この不適切な食し方が従前からの癖なのか脳梗塞発症後からなのかは定かではないが、いずれにせよ誤嚥のリスクがある。一連の摂食嚥下動作のうち、準備期以降には大きな問題はない。つまり先行期の問題が大きい。先行期は、食物を認識し口元まで運ぶ時期で、認知機能低下などによって、①嚥下能力に見合わない量を口にどんどん詰め込んでしまう、②適切なペース配分ができないなどの障害がみられる。先行期障害では、①食事のペースを声かけする、②環境調整で食物を皿に小分けにするなどの工夫が必要である。

1.× 摂食嚥下に問題の無い患者の対面に座らせる必要はない。なぜなら、本症例は、先行期に問題があると考えれるため。両者を対面させると、摂食嚥下に問題のない患者のペースに本間の患者がつられて嚥下運動を行ってしまうと考えられる。したがって、先行期の障害を助長するおそれがある。また、感染予防の観点(むせた時の咳による飛沫)からも対面に他の人を座らせるのは得策ではない。
2.× 食前に耳下腺マッサージを行う必要はない。なぜなら、耳下腺マッサージは、準備期の障害に適応であるため。唾液分泌を促進させる効果がある。
3.× 主菜・副菜にとろみをつける必要はない。なぜなら、本症例は、嚥下機能は良好であるため。
4.〇 正しい。小さいスプーンを使用させる。なぜなら、一度に口に運ぶ量を少なくすることで、本症例の「次から次へと食べ物を口に運ぶ」様子が見られても、口の中に入る量を減らせるため誤嚥のリスクが低くなるため。
5.× 患者の左空間に皿を置く必要はない。なぜなら、本症例は、左半側空間無視についての記載はないため。左半側空間無視がある場合は左側に意識を向けるように左側に皿を置くこともある。

嚥下の過程

①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む。
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。

 

 

 

 

 

 

9 54歳の女性。左母指ばね指の術後、経過は良好であったが、術後3か月ころから些細な動作で母指にビリビリするような疼痛が出現した。術後5か月目に自宅近くの病院を受診し、CRPS<複合性局所疼痛症候群>と診断され、投薬治療と外来作業療法が開始となった。開始時の左母指痛はNRS <numerical rating scale>で安静時1、動作時6。左上肢機能は総握りでは指尖手掌間距離が2〜3cm、肩・肘関節のROMに軽度制限を認め、手指のMMT は段階3、握力2kgで、日常生活では左手をほとんど使用していない状態であった。
 実施する作業療法で誤っているのはどれか。

1. 疼痛を誘発しない動作方法を検討する。
2. 疼痛の完全除去を目標とする。
3. 物品に触れる機会を増やす。
4. 自動運動から開始する。
5. 生活状況を聴取する。

解答2

解説

複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは?

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、軟部組織もしくは骨損傷後(Ⅰ型:反射性交感神経性ジストロフィー)または神経損傷後(Ⅱ型:カウザルギー)に発生して、当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する、慢性の神経障害性疼痛である。その他の症状として、自律神経性の変化(例:発汗、血管運動異常)、運動機能の変化(例:筋力低下、ジストニア)、萎縮性の変化(例:皮膚または骨萎縮、脱毛、関節拘縮)などがみられる。疼痛をコントロールしながら、左手(疼痛側)の使用機会を増やす介入が必要である。

1.〇 正しい。疼痛を誘発しない動作方法を検討する。疼痛をコントロールにつながる。
2.× 疼痛の完全除去は困難である。したがって、目標とすべきではない。疼痛の軽減は目標とされるべきである。
3.〇 正しい。物品に触れる機会を増やす。疼痛をコントロールしながら、左手(疼痛側)の使用機会を増やす介入が必要である。
4.〇 正しい。自動運動から開始する。なぜなら、他動運動は疼痛のコントロールが難しいため。痛みは主観であるため、疼痛が増強しない範囲での自動運動が可能である。
5.〇 正しい。生活状況を聴取する。そうすることで、生活での問題点を抽出し、多角的なアプローチを行うことができる。

 

 

 

 

 

 

10 70歳の女性。Parkinson病。Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢ。自宅で頻回に転倒し、日常生活に支障をきたすようになった。
 この患者に対する指導として適切なのはどれか。

1. 直線的な方向転換をする。
2. 歩行時に体幹を屈曲する。
3. 車椅子駆動の方法を指導する。
4. リズムをとりながら歩行する。
5. 足関節に重錘バンドを装着して歩行する。

解答4

解説
1.× 方向転換は、直線的ではなく、大きく曲がるように指導する。
2.× 歩行時に体幹を屈曲する必要はない。むしろ、体幹屈曲することで、前傾姿勢が強まり視界が狭まり、突進現象を助長する恐れがある。結果的に転倒のリスクが高まる。したがって、できるだけ前傾姿勢にならないよう歩行してもらう。
3.× 車椅子駆動の方法を指導する必要はない。なぜなら、現在はHoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢ(歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。)であるため。歩行能力の維持に努める。この段階で車椅子を使用するのは時期尚早である。
4.〇 正しい。リズムをとりながら歩行する。なぜなら、何らかの外部刺激(視覚やリズム)があると、すくみ足が改善され歩行のリズムが整うことが多いため。
5.× 足関節に重錘バンドを装着して歩行する必要はない。なぜなら、足関節に重錘バンドを装着する歩行練習は、運動失調に対して適応となるため。

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

 

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