第55回(R2) 作業療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

 

11 51歳の男性。仕事中に3mの高さから転落し、外傷性脳損傷を生じ入院した。受傷2週後から作業療法を開始した。3か月が経過し運動麻痺はみられなかったが、日付がわからない、1日のスケジュールを理解できない、感情のコントロールが難しい、複雑な作業は混乱してしまうなどの状態が続いた。
 作業療法で適切なのはどれか。

1. 静かな環境で行う。
2. 新規課題を毎日与える。
3. 複数の作業療法士で担当する。
4. 不適切な言動には繰り返し注意する。
5. 集団でのレクリエーション活動を導入する。

解答1

解説

本症例の症状(見当識障害・遂行機能障害・記憶障害・社会行動障害・注意障害)から、前頭葉の障害を疑う。前頭葉が損傷されると①知能低下、②記憶・計算の障害、③ワーキングメモリーの低下、④見当識障害、⑤注意障害、⑥遂行機能障害、⑦人格変化、⑧感情障害などが症状としてみられる。

1.〇 正しい。静かな環境で行う。なぜなら、注意障害がみられるため。
2.× 新規課題を毎日与える必要はない。なぜなら、遂行機能障害により、毎日課題が変わると更に混乱しやすくなるため。
3.× 複数の作業療法士で担当する必要はない。なぜなら、記憶障害により、担当者が変わると覚えず負担となるため。
4.× 不適切な言動には繰り返し注意する必要はない。なぜなら、社会行動障害により、感情のコントロールが難しくなっているため。繰り返し注意を与えると易怒性・脱抑制を助長するおそれがある。
5.× 集団でのレクリエーション活動を導入する必要はない。なぜなら、社会行動障害により、対人技能が拙劣になっているため。

 

 

 

 

 

 

12 80歳の女性。重度の認知症患者。訪問作業療法を実施した際の足の写真を下図に示す。
 対処方法で正しいのはどれか。

1. 入浴を禁止する。
2. 摂食状況を確認する。
3. 足部装具を装着させる。
4. 足関節の可動域訓練は禁忌である。
5. 踵部にドーナツ型クッションを使用する。

解答2

解説
1.× 入浴を禁止する必要はない。なぜなら、褥瘡部位を清潔に保つ必要があるため。
2.〇 正しい。摂食状況を確認する。なぜなら、低栄養は褥瘡の原因の1つでもあるため。
3.× 足部装具を装着させる必要はない。なぜなら、足部装具の圧迫が血行を阻害し、更に褥瘡を増やす可能性があるため。
4.× 足関節の可動域訓練を行う。なぜなら、関節の可動域訓練により、血流を改善し組織の虚血を防ぐことができるため。また拘縮(可動域制限)を予防することで、様々な体位で臥床姿勢をとれるため圧の分散・介助量軽減に寄与する。
5.× 踵部へのドーナツ型クッションだけではなく、足部外側全体の圧迫を避ける必要がある。なぜなら、本症例の足部の写真を見ると褥瘡発生部位は、外果や第5中足骨粗面にも発生しているため。ドーナツ型クッション(円座)は、穴の部分では圧がされるが、周辺部には強い圧がかかる。したがって、様々な意見はあるものの褥瘡予防には使用しない方がよいとされている。足部の除圧には下限の広い面で支えるようにする。

褥瘡の予防

①一般に2時間ごとに体位変換を行うことが基本とされる。
②30°側臥位では体圧を分散させ身体を支えることができる。
③ベッドのキャッチアップは30°まで。
④予防にマッサージは効果的。ただし、骨突出部・突起部や発赤があるところには(摩擦を加えてしまうため)行わない。
⑤円座は接触部分が逆に圧迫されてしまい褥瘡の誘因となる。

 

 

 

 

 

 

13 66歳の男性。要介護1となり介護老人保健施設に入所した。入所1週後、作業療法士によるリハビリテーションを行うために機能訓練室に来室した際、動作の緩慢さと手指の振戦が観察された。妻は本人が中空に向かって「体操服姿の小学生がそこにいる」と言うのを心配していた。本人に尋ねると、見えた内容について具体的に語っていた。
 疾患として考えられるのはどれか。

1. Creutzfeldt-Jakob病
2. Alzheimer 型認知症
3. Lewy小体型認知症
4. 意味性認知症
5. 正常圧水頭症

解答3

解説

本症例の特徴
①パーキンソニズム(動作の緩慢さ・手指の振戦など)
②幻視(具体的に「体操服姿の小学生がそこにいる」と言う)

1.× Creutzfeldt-Jakob病(クロイツフェルト・ヤコブ病)は、異常なプリオン蛋白が脳に蓄積する致死性神経感染症である。初期には精神症状(健忘症、抑うつなど)、視覚障害、歩行障害、運動失調などで発症し、進行すると精神症状が急速に悪化し、高度の認知症に発展する。会話、自発語不能となり、四肢のミオクローヌスも特徴的所見である。様々な症状を呈して、多くは数ヶ月から半年以内、長くとも2年以内で死亡する。
2.× Alzheimer 型認知症は、初期から記銘力障害や見当識障害が出現し、物盗られ妄想、妄想作話、そして作話などが目立つようになり、次第に人格変化が進行していく。
3.〇 正しい。Lewy小体型認知症は、本症例の疾患として考えられる。Lewy小体型認知症は、①幻視(現実的で繰り返し現れる)、②パーキンソニズム、③注意や覚醒レベルの変動、④REM睡眠型行動異常、⑤自律神経機能の異常などが特徴的所見である。
4.× 意味性認知症(前頭側頭葉変性症に含まれる)は、病初期には意味記憶の障害(物品呼称や単語理解の障害)が目立つ。病期の進行に伴い、常同行動や脱抑制・反社会的行動、滞続言語などがみられる。前頭側頭葉変性症は、他に前頭側頭型認知症(Pick病)、進行性非流暢性失語 がある。
5.× 正常圧水頭症は、①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。

 

 

 

 

 

 

14 53歳の男性。うつ病の診断で10年前に精神科通院治療を受けて寛解した。1か月前から抑うつ気分、食思不振、希死念慮があり、入院して抗うつ薬の投与を受けていた。1週前からパラレルの作業療法に参加していたが、本日から他患者に話しかけることが増え、複数の作業療法スタッフに携帯電話番号など個人情報を尋ねてまわるようになった。「食欲も出てきた」と大声を出している。
 この時点での作業療法士の対応として最も適切なのはどれか。

1. 食欲が戻ったので調理実習を計画する。
2. その場で作業療法室への出入りを制限する。
3. 患者との関係作りのため携帯電話番号を教える。
4. 担当医や病棟スタッフに状態の変化を報告する。
5. 行動的となったことを本人にポジティブ・フィードバックする。

解答4

解説

本症例は、1ヵ月前からうつ状態であったが、現在は躁転し躁状態(他患者への話しかけが増え、逸脱行為、食欲増進、大声でしゃべるなど)であると考えられる。躁状態の患者は、行動の抑制がきかず過活動となり、結局疲労してしまうため、活動の区切りを短時間に設定する。躁状態が完全には回復していない時期の患者は、まだ抑制が十分きかないため、自由度の高い作業は避けた方がよい。

1.× 食欲が戻ったとしても調理実習を計画する必要はない。なぜなら、うつ病患者に新たな作業を提示することは、負担となり患者の症状が不安定になりやすい。また躁状態は、刃物や火を使う調理実習は危険性が高い。
2.× その場で作業療法室への出入りを、制限するのではなく、まずは対応を協議することが必要である。担当医や病棟スタッフに状態の変化を報告し、チームで連携を取り合うことが大切である。
3.× 患者との関係作りのため携帯電話番号を教える必要はない。そもそも原則として、医療従事者が患者に携帯電話番号を教えることはしない。
4.〇 正しい。担当医や病棟スタッフに状態の変化を報告する。担当医や病棟スタッフと情報を共有し、対応を協議する。
5.× 行動的となったことを本人にポジティブ・フィードバックする必要はない。なぜなら、ジティブ・フィードバックをすると思者の行為を助長し、躁状態が悪化するため。ちなみに、ポジティブフィードバックとは、今までの発言や行動の中の良い点を取り上げ、自信や自分の将来に対する希望が持てるような明るく前向きな表現を用いて、評価者が被評価者に評価を伝えることである。

躁転とは?

うつ患者が、治療中に躁状態となること。これを「躁転」という。このような患者は、もともと双極性障害であった可能性があり、病歴を再聴取すると、以前に躁状態だったエピソードが明らかになる。薬物療法として、気分安定剤(リチウムバルプロ酸など)が主剤となる。

 

 

 

 

 

 

15 24歳の女性。高校生のころ、授業で教科書を音読する際に声が震えて読めなくなり、それ以降、人前で発表することに恐怖感を抱くようになった。就職後、会議のたびに動悸や手の震え、発汗が生じるようになり「変だと思われていないだろうか」、「声が出るだろうか」と強い不安を感じるようになった。最近になり「人の視線が怖い」、「会議に出席するのがつらい」と言うようになり、精神科を受診し外来作業療法が開始された。
 この患者の障害として適切なのはどれか。

1. 社交(社会)不安障害
2. 全般性不安障害
3. パニック障害
4. 強迫性障害
5. 身体化障害

解答1

解説

本症例のポイント

授業や会議など比較的少人数の集団において他人に注目されたり恥をかいたりすることを恐れ、強い不安を感じている。

1.〇 正しい。社交(社会)不安障害(社会恐怖症)は、対人場面において、過剰な不安や緊張が誘発されるあまり、動悸・震え・吐き気・赤面・発汗などの身体症状が強く発現する。本症例の症状に合致する。
2.× 全般性不安障害は、日常生活において漠然とした不安を慢性的に感じてしまう病気である。特定の状況に苦手意識を感じるパニック障害や社交不安障害とは異なり、不安を感じる事象が非常に幅広い(漠然とした将来の不安など)ことが特徴である。治療法として認知行動療法(セルフコントロール)、薬物療法があげられる。仕事や日常生活など多方面に関する過剰な不安が、少なくとも6か月の間に起こる日が起こらない日よりも多い病態をいう。本症例では、対人関係にのみ不安を生じている。
3.× パニック障害は、突然の激しい動悸、発汗、胸痛が起こり、死ぬのではないかという恐怖を伴う発作(パニック発作)を繰り返す疾患である。予期不安(また発作が起こるのではないかという不安)や広場恐怖(助けを求められない場所や状況を避ける)がみられるのが特徴である
4.× 強迫性障害は、自分でも不合理だと思っている考えが頭から離れず、それを打ち消すために同じ行動を繰り返すものをいう。例として、手洗いに1時間半以上を要しており、本人もおかしいと感じてしながら強い不安が生じ、やめることができていない時などである。
5.× 身体化障害は、多くの身体的訴えはあるものの、その原因がわからないため患者の主観的苦痛が続いている状態をいう。それらを説明できる検査所見はないが、疼痛や身体症状を何年にもわたって訴え続け、深刻な心理的苦痛や社会的障害がみられる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)