第55回(R2) 作業療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

 

46 気分安定薬で再発の防止や頻度の減少が最も期待できる疾患はどれか。

1. 気分変調症
2. 血管性うつ病
3. 双極性障害
4. 適応障害
5. 非定型うつ病

解答3

解説
1.× 気分変調症は、慢性の抑うつ気分が数年間以上続くが、反復性うつ病性障害ほど重篤ではない疾患である。抗うつ薬精神療法が主な治療法である。
2.× 血管性うつ病は、高齢者に多く、微小な脳梗塞や萎縮像が伴っているうつ病である。抗うつ薬が主な治療法である。
3.〇 正しい。双極性障害は、気分安定薬で再発の防止や頻度の減少が最も期待できる疾患である。気分安定薬は、抗躁薬ともよばれている。躁状態の改善に有効であるが、気分障害に関連した疾患の再発防止にも有効である。抗躁薬の炭酸リチウムは効果が現れる血中濃度と副作用が現れる濃度の幅が狭いため、血中濃度をこまめに測定して中毒症状を予防する必要がある。重度で運動失調、せん妄、意識障害がみられる。
4.× 適応障害は、重大な生活上の変化やストレス性の出来事の結果に対して、順応できるまでの間に起こる主観的な苦悩と情動障害である。抑うつ気分に対して抗うつ薬を使用する。不安に対して抗不安薬を使用する。
5.× 非定型うつ病は、抑うつ気分や倦怠感はあるが、定型的なうつ病と比較して身体症状・精神症状・パーソナリティが逆の症状である疾患である。例えば、非定型うつ病は、仮眠傾向となり、食欲・体重は増加しやすい。また、パーソナリティは他責であり、感情は周囲の環境や自分の状況に反応する。抗うつ薬にも反応が悪いが抗うつ薬・抗不安薬などを組み合わせて処方することがある。

 

 

 

 

 

 

47 疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。

1. 解離性健忘:自律訓練法
2. 身体化障害:系統的脱感作法
3. 強迫性障害:曝露反応妨害法
4. PTSD<外傷後ストレス障害>:フラッディング
5. 心気障害:持続エクスポージャー法

解答3

解説
1.× 解離性健忘:自律訓練法は、シュルツにより開発された。自己催眠により全身をリラックスさせ、心身のコントロールを行うものである。適応疾患は、成人の心身症不安神経症強迫性障害である。ちなみに、解離性健忘(解離症の一種)は、通常のもの忘れでは一般的に失われることのない重要な個人的情報を想起できなくなる病態である。心的外傷またはストレスによって引き起こされることが多い。治療は精神療法やときに催眠法または薬剤を使用する面接法を併用する。
2.× 系統的脱感作法は、古典的条件付けに基づく行動療法の一つであり、ウォルピにより創始された。不安恐怖の治療法として開発され適応疾患として、神経症性障害摂食障害である。徐々に不安を感じる刺激を大きくして慣れさせる方法をとる。ちなみに、身体化障害(身体症状症)は、身体的訴えが多発性で繰り返し起こり、しばしば変化する身体症状を主とするものである。多くの医療機関を受診して、身体的症状を説明する原因はないといわれても受診を続け、本人は抑うつや不安が持続し、周囲との人間関係も悪くなる。治療の主体は支持的精神療法認知行動療法
である。抗不安薬などの薬物療法は依存を招く可能性があるため行わないことが多い。
3.〇 正しい。強迫性障害に対し、曝露反応妨害法は適応疾患である。他にも、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)に用いられる曝露反応妨害法とは、行動療法の一つであり、不安を起こさせる弱い刺激にさらすとともに不安を抑える行動を禁止(反応妨害)し、不安は何もしなくても時間とともに軽減していくことを体験させ、徐々に刺激を強くしていく方法である。例えば、不潔恐怖の場合に手洗いをさせない(反応妨害)などである。ちなみに、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)とは、死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態です。
4.× PTSD<外傷後ストレス障害>:フラッディングは、曝露反応妨害法と同様に恐怖刺激を提示するのであるが、初めから最大の恐怖を提示し、患者はパニック状態にはなるものの、パニックが収まる頃には恐怖感も収まっていることを体験させるものである。適応疾患として、強迫性障害恐怖症に用いられるが、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)の場合は恐怖の再体験となり症状を悪化させるので用いられない。
5.× 持続エクスポージャー法(エクスポージャー:曝露)の適応疾患は、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)である。心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)の認知の特徴は「世界はすべて危険なものだ」「自分はそれに対して無力だ」ととらえてしまうことであるとし、患者を安全でトラウマを十分に回想できる状況に置いて、出来事の記憶の中には様々な要素があることに気づかせ、「そのようにとらえる必要はない」というように認知を修正できるようにする方法である。ちなみに、心気障害は病気ではないのに何か重大な病気にかかっているのではないかと不安な状態である。治療の主体は、精神療法認知行動療法が主に用いられる。

 

 

 

 

 

 

48 我が国の自殺の現状で正しいのはどれか。

1. 自殺者数は増加傾向にある。
2. 自殺者数は男性より女性が多い。
3. 自殺の発生は四季の中では秋が多い。
4. 年齢階級別の自殺者数は50 歳代が最も多い。
5. 自殺の原因・動機として最も多いのは家庭問題である。

解答4

解説
1.× 自殺者数は、増加傾向ではなく、減少している。(2010年以降)
2.× 逆である。自殺者数は、女性より男性が多い。男性が女性の2~2.5倍である。ちなみに、日本に限らず、自殺は世界のどの国でも男性の方が多い。
3.× 自殺の発生は、四季の中では秋ではなく春(3月)が多い。
4.〇 正しい。年齢階級別の自殺者数は、50歳代が最も多い。ちなみに、2015~2017年は40歳代が最も多かった。
5.× 自殺の原因・動機として最も多いのは、「家庭問題」ではなく、「健康問題」である。ただし、年齢別で異なり、19歳以下では男性は学校問題、女性は健康問題が主たる原因である。高齢者では男女とも健康問題が主たる原因である。

(データ引用:「令和元年中における自殺の状況 – 厚生労働省」より)

 

 

 

 

 

 

49 精神障害者の雇用対策で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 精神障害者は障害者雇用義務の対象である。
2. 就職1年後の職場定着率は他障害に比べて高い。
3. ハローワーク障害者職業紹介状況の就職件数の伸び率は他障害に比べて低い。
4. 障害者雇用対策における精神障害者の定義は「障害者年金を受給している者」である。
5. IPS< Individual Placement and Support >はストレングスとリカバリー志向の実践が特徴である。

解答1/5

解説
1.〇 正しい。精神障害者は、障害者雇用義務の対象である。以前までは身体障害者と知的障害者であったが、平成30年4月1日から精神障害者も含まれることになった。
2.× 就職1年後の職場定着率は、他障害に比べて低い。就職後1年時点の定着率は、身体障害:60.8%、知的障害:68.0%、精神障害:49.3%、発達障害:71.5%である。(※データ引用:「障害者の就業状況等に関する調査研究」より)
3.× ハローワーク障害者職業紹介状況の就職件数の伸び率は、他障害に比べて高い。また、件数はまだ少ないが、発達障害・高次機能障害者の伸び率が高い。(※参考文献:「平成 30 年度 障害者の職業紹介状況等」より)
4.× 障害者雇用対策における精神障害者の定義は、「障害者年金を受給している者」ではなく、「精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者」である。
5.〇 正しい。IPS< Individual Placement and Support >は、ストレングスとリカバリー志向の実践が特徴である。IPS< Individual Placement and Support >は、患者への信頼と可能性を信じることをベースとして、症状の安定度や職業準備性よりも就労意欲を重視し、仕事の中で自分を高め(ストレングス)、最終目的を疾患からの回復(リカバリー)とするものである。

 

 

 

 

 

 

50 感染症への対応で正しいのはどれか。

1. B 型肝炎患者は個室での訓練を原則とする。
2. 開放性結核患者の病室では予防衣を着用する。
3. HIV患者の唾液に触れたら抗体検査を受ける。
4. C 型肝炎患者の使用道具はアルコール消毒する。
5. インフルエンザ患者は解熱後翌日から作業療法室で訓練を開始できる。

解答2

解説
1.× B 型肝炎患者は、個室での訓練をする必要はない。なぜなら、B型肝炎の主な感染経路は、体液感染・血液感染であるため。個室での訓練を原則とするのは、空気感染や飛沫感染患者である。
2.〇 正しい。開放性結核患者の病室では予防衣(ガウン・手袋など)を着用する。なぜなら、開放性結核は空気感染するため。患者の排出物中に結核菌が認められるものへの対応の際は、「N95マスク」を着用する。また、痰や排出物に触れる際には予防衣(ガウン・手袋など)が必要である。
3.× HIV患者の唾液に触れても抗体検査を受ける必要はない。なぜなら、HIVの主な感染経路は、血液感染・性行為感染であるため。注射器の使いまわしや針刺し事故に注意する。また、感染の予防には、性行為においてコンドームの使用などが有用である。
4.× C 型肝炎患者の使用道具に、血液が付着していた場合アルコール消毒しても不十分である。C型肝炎の感染経路は、血液感染や性行為感染である。血液が付着していない使用道具の場合は、接触では感染しない。また、血液が付着した医療用器具・機材などは、まず流水で十分洗浄し、その後加熱(オートクレーブなど)が必要である。加熱ができない場合は、非塩素系消毒剤(グルタールアルデヒド液)あるいは次亜塩素系消毒剤などで消毒する。
5.× インフルエンザ患者の解熱後翌日は、作業療法室で訓練を開始できない。なぜなら、インフルエンザ患者は、少なくとも発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまでは自宅療養または個室隔離とし、飛沫感染予防策を実施する必要があるため。作業療法室での訓練は他患者との接触が多いため、施設内での集団感染につながるおそれがある。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

 

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