第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午後問題91~95】

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91 β遮断薬服用中患者の運動負荷量決定に最も適している指標はどれか。

1.PCI
2.Borg指数
3.Karvonen法
4.安静時心拍数
5.最大予測心拍数

解答
解説

 β遮断薬についての説明をする。通常、慢性心不全の方は心機能が低下しているため、交感神経が活発化している。しかし、長期間このような状態が続くと、心不全はだんだんと悪化していく。β遮断薬は、この神経の働きを抑えることで、無理をしている心臓の動きを少し休める作用がある。長期的に服用することで心不全の悪化を防ぐ薬である。つまり、β遮断薬は「心拍数の低下作用」がある。

1.× PCI(Physiological cost index:生理的コスト指数)は、運動前の安静時心拍数と最適負荷での運動時の心拍数を速度または頻度で除したもので、値が小さいほど運動効率が良いとされる簡易的な運動耐久性指標であり、成人の歩行においては0.1~0.3beat/meterが標準値とされている。β遮断薬は、運動時の脈拍の上昇を抑えるため不適切である。
2.〇 Borg指数(ボルグ指数:)は、主観的運動強度、自覚的運動強度(RPE:rating of perceived exertion)とも呼ばれる。下の図のようにc)自覚的運動強度が使われている。β遮断薬服用中患者の注意点として、発熱、のどの痛み、全身倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、食欲不振、発熱や体のだるさが起きやすくなる場合もある。Borg指数(ボルグ指数)は、自覚的な症状も対応できるため、運動負荷量決定に最も適している指標といえる。
3.× Karvonen法(カルボーネン法)は、年齢や安静時心拍数から運動強度を算出するときに使用される。Karvonen法(カルボーネン法)は「(220-年齢)-安静時心拍数)×運動強度(%)+安静時心拍数」で求めることができる。デメリットとして心拍数の変化でしか対象者を見ておらず、そのほかの症状に対処しきれないことである。
4.× 安静時心拍数は、安静にしているときの心拍数のことである。下の図のようにb)Karvonen法が使用されている。
5.× 最大予測心拍数は、「最大心拍数=220-年齢」で一般的に求めることができます。高齢者の場合は、「最大心拍数=207-(年齢×0.7)」の式を用いる方法もある。

 

 

 

 

92 血友病の臨床症状で最も多いのはどれか。

1.関節内出血
2.血小板数減少
3.出血時間延長
4.毛細血管拡張
5.リンパ節腫脹

解答
解説

 血友病は、深部組織(関節内、筋肉内)への出血が反復し、これにより疼痛、関節拘縮、変形などをきたすため、リハビリテーションの対象疾患となる。下表に詳しくまとめた。

1.〇 正しい。関節内出血を呈す。凝固因子の欠損または凝固因子の活性低下が原因である。
2~5.× 血小板数減少・出血時間延長・毛細血管拡張・リンパ節腫脹の症状は起こらない。

”血友病とは?”

血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。

【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下

【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。

【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション

(※参考:「血友病」Medical Note様HP)

 

 

 

93 多発性骨髄腫に特徴的でないのはどれか。

1.貧血
2.腎障害
3.易感染性
4.病的骨折
5.低カルシウム血症

解答
解説

多発性骨髄腫とは?

 多発性骨髄腫は形質細胞がクローン性に増殖するリンパ系腫瘍である。増殖した形質細胞やそこから分泌される単クローン性免疫グロブリンが骨病変、腎機能障害、M蛋白血症などさまざまな病態や症状を引き起こす。多発性骨髄腫の発症年齢は65~70歳がピークで男性が女性より多く約60%を占める。腫瘍の増大、感染症の合併、腎不全、出血、急性白血病化などで死に至る。

 主な症状として、頭痛、眼症状の他に①骨組織融解による症状(腰痛・背部痛・圧迫骨折・病的骨折・脊髄圧迫症状・高カルシウム血症など)や②造血抑制、M蛋白増加による症状(貧血・息切れ・動悸・腎機能障害)、易感染性(免疫グロブリン減少)、発熱(白血球減少)、出血傾向(血小板減少)などである。

よって、選択肢1~4.貧血・腎障害・易感染性・病的骨折は、多発性骨髄腫に特徴的な症状である
5.× 低カルシウム血症は、多発性骨髄腫に特徴的な症状でない。多発性骨髄腫では、骨破壊による高カルシウム血症が起こる。

 

 

 

94 2型糖尿病患者における運動療法の効果で誤っているのはどれか。

1.インスリン抵抗性の増大
2.血圧低下
3.血糖コントロールの改善
4.脂質代謝の改善
5.心肺機能の改善

解答
解説

2型糖尿病の理学療法

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

1.× インスリン抵抗性の「増大」ではなく、インスリン感受性を改善(抵抗性の改善)する効果がある。インスリン抵抗性の増大は、2型糖尿病の病態の悪化を示している。
2~5.〇 正しい。運動療法の効果として、血圧低下(血管内皮機能が改善)・血糖コントロールの改善(血糖値が下がる)・脂質代謝の改善(中性脂肪減少、HDLコレステロール増加)・心肺機能の改善(最大酸素摂取量の増大)を見込める。

 

 

 

95 骨粗鬆症の原因で誤っているのはどれか。

1.安静臥床
2.胃切除後
3.糖尿病
4.ビタミンA欠乏症
5.副甲状腺機能亢進症

解答
解説

 骨密度は女性の場合、18歳くらいでピークに達し、その後40歳代半ばまでは、ほぼ一定を維持するが、 50歳前後から低下していく。加齢によって骨密度が低下するのは、女性ホルモンの分泌量減少に加えて腸管でのカルシウムの吸収が悪くなったり、カルシウムの吸収を助けるビタミンDをつくる働きが弱くなるなどの理由があげられる。以上のことから、骨粗鬆症になりやすい代表的な病気をあげる。

原因となりやすい代表的な病気

・関節リウマチ
・副甲状腺機能亢進症
・糖尿病
・慢性腎臓病(CKD)
・動脈硬化
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・ステロイド薬の長期服用

よって、
1~3.5.〇 正しい。安静臥床・胃切除後・糖尿病・副甲状腺機能亢進症は、骨粗鬆症の原因となりやすい。
4.× ビタミンA欠乏症は、不十分な摂取、脂肪吸収不良、または肝疾患によって起こることがある。欠乏症により免疫および造血が障害され、発疹および典型的な眼への影響(例として眼球乾燥症夜盲症)が生じる。ちなみに、骨粗鬆症の原因となるのは、骨形成にかかわるビタミンD欠乏である。

 

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