第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午後問題21~25】

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21 対応のない正規分布を示す連続変数の2群間の差を検定するときに用いるのはどれか。

1.Fisher の正確確率検定
2.Kruskal-Wallis 検定
3.log-rank検定
4.相関分析
5.Student の t検定

解答
解説
1.× Fisher(フィッシャー)の正確確率検定は、2群の独立性を検定する。両群をクロス集計で2×2などの分割表に入れたとき、両群間の関連が統計的に優位であるかを見る。(χ2乗検定とほぼ同じであり、違いは数値の算出方法が違うのみである。)
2.× Kruskal-Wallis(クラスカル・ウォリス)検定は、3つ以上のグループ間に差があるかどうかを知りたい時に用いるノンパラメトリックな手法の検定である。
3.× log-rank検定(ログ・ランク)は、生存時間解析において、2群の生存時間に差があるかを検定するノンパラメトリックな検定手法のことである。
4.× 相関分析は、2変数間の関係を数値で記述する分析方法である。相関関係は、一方の変数が増加すると他の変数も増加する正の相関関係と、一方の変数が増加すると他の変数が減少する負の相関関係に分かれる。異なる集団間における暴露と疾患頻度とを比較観測し、疾患の危険因子を特定しようとする研究などに用いられる。
5.〇 正しい。Student の t検定は、対応のない正規分布を示す連続変数の2群間の差を検定するときに用いる。

 

 

 

 

22 チーム医療において理学療法士が行わないのはどれか。

1.チームのリーダーを務める。
2.要介護認定申請の意見書を作成する。
3.栄養指導について管理栄養士に相談する。
4.人工呼吸器の設定について医師に相談する。
5.福祉用具の貸与についてソーシャルワーカーに相談する。

解答
解説

チーム医療とは?

チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されている。チーム医療がもたらす具体的な効果としては、①疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上、②医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減、③ 医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上、等が期待される。(※引用:「チーム医療の推進について」厚生労働省HPより)

1.3~5〇 各選択肢(チームのリーダーを務める。栄養指導について管理栄養士に相談する。人工呼吸器の設定について医師に相談する。福祉用具の貸与についてソーシャルワーカーに相談する。)は、理学療法士に限らず他の職業でも行える。ちなみに、人工呼吸器の設定は、離脱に向けて医師をはじめ、看護師、臨床工学技士その他の職種と相談しながら決定する。呼吸ケアチーム(RST)の一員として理学療法士が参加することも多い。
2.× 要介護認定申請の意見書を作成するのは、理学療法士は行えず医師しか行えない。

(※画像引用:「要介護認定の流れ」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

23 四肢長と測定部位の組合せで正しいのはどれか。

1.棘果長:上前腸骨棘の最下端から内果の最下端まで
2.手長:橈骨茎状突起の最下端から中指の先端まで
3.上腕長:肩峰の最前端から肘頭の最突出点まで
4.前腕長:肘頭の最上端から尺骨茎状突起の最下端まで
5.転子果長:小転子の最上端から外果の外側突出点まで

解答
解説
1.〇 正しい。棘果長は、「上前腸骨棘の最下端から内果の最下端まで」である。
2.× 手長は、「橈骨茎状突起の最下端から」ではなく、橈骨茎状突起と尺骨茎状突起を結ぶ中点から中指の先端までである。
3.× 上腕長は、肩峰の最前端から「肘頭の最突出点まで」ではなく、肩峰の最前端から上腕骨外側上顆までである。
4.× 前腕長は、「肘頭の最上端から尺骨茎状突起の最下端まで」ではなく、上腕骨外側上顆から橈骨茎状突起までである。
5.× 転子果長は、「小転子の最上端から外果の外側突出点まで」ではなく、大転子から外果までである。

 

 

 

 

 

24 除細動が必要となる可能性が高い不整脈はどれか。

1.Ⅰ度房室ブロック
2.心室頻拍
3.単発の上室期外収縮
4.慢性心房細動
5.連続しない心室期外収縮

解答
解説

 除細動は、不整脈に対しての治療の一つで、電気的な刺激や薬物等の外力によって異常な電気信号経路を遮断し、正常の電気信号経路への改善を促す方法である。その一つにAED(自動体外式除細動器)がある。AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。

 

1.× 房室ブロックは、心房まで伝わった心臓収縮のための正常な電気刺激が心室にうまく伝わらず、全身に血液を送る心室のリズムが遅くなったり、停止したりする状態である。房室ブロックは、その重症度によってⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度房室ブロックに分けられる。そのなかでもⅠ度房室ブロックは、健常者にもみられることが多く、通常、治療は不要である。
2.〇 正しい。心室頻拍は、脈が突然1分間に180など急激に速くなっているものの、心電図の波形が一定のもの。これに対し、心室細動は脈のかたちが一定ではなく不規則で、心室がけいれんを起こし1分間の脈拍数が300など数えられないくらい速くなった状態である。心室頻拍は血圧が保たれ、すぐには意識を失わないこともあるが、心室細動になると、発症から5~10秒で意識がなくなって失神し、その状態が続くとそのまま亡くなることが多い。心室頻拍の場合も、ほうっておくと心室細動に移行して、意識がなくなって突然死を起こすことがある。除細動の適応である。また、基礎心疾患を伴う場合は、植え込み型除細動器(ICD)の適応となる。
3.× 単発の上室期外収縮は、上室(主に心房)が早期に異常興奮するために起こる。生活習慣の改善や薬で対応するケースが多い。自覚症状が強い場合、β遮断薬やNaチャネル遮断薬を用いる。
4.× 慢性心房細動は、心房細動の状態がずっと続く状態で、心室に電気が不規則に伝導するために、心室の収縮が不規則に起こる病気である。塞栓症の予防のため、抗凝固療法(ワーファリン)新規経口抗凝固薬(NOAC)を行う。
5.× 連続しない心室期外収縮は、心室(心臓の下側にある2つの部屋)で発生した異常な電気刺激によって、正常な拍動が起こる前に心室が活性化され、それにより余分な拍動が生じる病態である。生活習慣の改善や薬で対応するケースが多い。治療は必ずしも必要ではないが、心室頻拍や心室細動の発生が危惧されれば治療の対象となる。

除細動の適応

心室頻拍(VT)や心室細動(VF)等の重篤な不整脈。
その他にも心房細動(AF)・心房粗動(AFL)等にも施行される。

 

 

 

 

25 腱反射が亢進する疾患はどれか。

1.多発性筋炎
2.多発性硬化症
3.Guillain-Barre 症候群
4.尿毒症性ニューロパチー
5.Duchenne 型筋ジストロフイー

解答
解説

 腱反射が亢進していると考える場合は、上位運動ニューロンの障害と考えられる。上位運動ニューロンは、大脳皮質運動野や脳幹に始まり、運動情報を下位運動ニューロンに伝える経路、またはその神経細胞のことである。

1.× 多発性筋炎は、筋肉の炎症(筋原性障害)により、筋肉に力が入りにくくなったり、疲れやすくなったり、痛んだりする病気である。腱反射は減弱もしくは消失する。
2.〇 正しい。多発性硬化症は、脳や脊髄、視神経のあちらこちらに病巣ができ、様々な症状が現れるようになる病気である。腱反射は亢進する。
3.× Guillain-Barre 症候群は、複数の末梢神経が障害される病気(ポリニューロパチー)であり、腱反射は減弱することが多い。
4.× 尿毒症性ニューロパチーは、尿毒症患者にみられる末梢神経障害であり、下肢遠位から始まる左右対称性の痛みや灼熱感を伴う上行性異常感覚、感覚鈍麻、運動障害、筋萎縮が起こる。腱反射は減弱もしくは消失する。
5.× Duchenne 型筋ジストロフイーは筋原性障害であり、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病であり、腱反射はアキレス腱反射を除いて減弱ないし消失する。

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

 

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