第54回(H31) 作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 円背のある高齢者で正しいのはどれか。

1. 歩行の際に歩隔が狭くなる。
2. 立位時に膝は屈曲位となる。
3. 円背は閉塞性換気障害の原因となる。
4. 円背の治療としてギプス矯正を行う。
5. 立位バランスは、左右より前後の方向がよい。

解答

解説

 円背とは脊椎が過度に後方凸に湾曲した状態である。高齢者では、骨粗鬆症による胸腰椎圧迫骨折から円背に至ることもある。
1.× 歩行の際に歩隔が、「狭くなる」のではなく一般的に広くなる。ちなみに、歩隔とは、歩く時の両足間の横の幅のことである。
2.〇 正しい。立位時に膝は屈曲位となる。
3.× 円背は、「閉塞性換気障害」ではなく拘束性換気障害の原因となる。
4.× 円背の治療として、「ギプス矯正」ではなく体幹装具による脊柱の固定性向上・疼痛緩和・変形進行防止を行う。
5.× 立位バランスは、「左右より前後の方向」ではなく前後より左右の方向がよい。

 

 

 

32 車椅子で自走する場合の住環境整備の留意点で適切なのはどれか。

1. スイッチは床面から10cmの高さに設置する。
2. 自走用6輪型車椅子は段差の通行が容易である。
3. 50cmの段差がある場合スロープの長さを600cm以上にする。
4. 廊下の直進に必要な幅員は左右アームサポートの外側最大寸法で判断する。
5. 廊下を直角に曲がるのに必要な通路幅員は直角部分の前後とも70cm以上必要である。

解答

解説

車椅子の通行幅

数値:【建築物移動等円滑化基準】(建築物移動等円滑化誘導基準)
玄関出入口の幅:【80cm】(120cm)
居室などの出入口:【80cm】(90cm)
廊下幅:【120cm】(180cm)※車椅子同士のすれちがいには180cm
スロープ幅:【120cm】(150cm)
スロープ勾配:【1/12以下】(1/12以下、屋外は1/15)
通路の幅:【120cm】(180cm)
出入口の幅:【80cm】(90cm)
かごの奥行:【135cm】(135cm)
かごの幅(一定の建物の場合):【140cm】(160cm)
乗降ロビー:【150cm】(180cm)

(※参考:「バリアフリー法」国土交通省HPより)
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)

1.× スイッチは床面から、「10cmの高さ」ではなく、100~110cm程度の高さに設置する。車椅子利用者や高齢者に配慮する場合はこれよりも低く、90~100cmに設置する。また、設置場所を選ばないリモコンスイッチが利用できる場合はさらに便利である。
2.× 自走用6輪型車椅子は段差の通行が容易ではない。自走用6輪型車椅子は屋内で使用される目的でつくられており、小回りが利きやすく狭い家屋内でも回転が比較的容易である。屋内の1~2cm程度の段差を超えることは問題ないが、一般的には段差を超えることは得意としない。
3.〇 正しい。50 cm の段差がある場合スロープの長さを600 cm 以上にする。1/12~1/20の勾配が望ましい。それより急だと利用しにくい。または患者自身では利用できない。屋外では、1/15勾配以下が望ましい。
4.× 廊下の直進に必要な幅員は、「左右アームサポート」ではなく、ハンドリムの外側最大寸法で判断する。ちなみに、車椅子の全幅は、70cm以下にJIS規定されており、走行の振れ幅や操作時の両肘の張り出しを考慮すると、通行幅は最低でも90cmは必要である。
5.× 廊下を直角に曲がるのに必要な通路幅員は、直角部分の前後とも「70cm以上」ではなく、90cm以上必要である。

※自走用6輪型車いす(写真引用:わくわく直観堂様HPより)

 

 

 

33 筋電義手で正しいのはどれか。

1. 小児には使用しない。
2. 作業用ハンドはない。
3. 能動義手に比べ把持力が強い。
4. 前腕義手にはハーネスが必要である。
5. 前腕義手より上腕義手の症例が多い。

解答

解説
1.× 小児の筋電義手ものもある。
2.× 作業用ハンドもある。種類として、常用ハンドタイプ作業用タイプがある。
3.〇 正しい。能動義手に比べ把持力が強い。筋電シグナルの強さに応じて開閉速度と把持力が変化するものもある。
4.× 前腕義手は、ハーネスが必要ではない自己懸垂性があるため。
5.× ほとんどが前腕義手の症例である。

 筋電義手とは、小型バッテリーを前腕支持部外装にはめ込み、筋電装置によって手先具の開閉を行う装具である。

【特徴・適応】
①前腕断端長が10cm以上。
②近接関節の可動減制限がない。
③訓練を理解する知的能力があること。など・・・。

【利点】
①把持力がある。
②見栄えがよい。など・・・。

【欠点】
①金額が高い。
②公的給付制度が不十分。
③重い。
④視覚による操作確認が必要。
⑤訓練できる施設が少ない。など・・・。

※筋電義手(写真引用:Ottobock様HPより)

 

 

34 二分脊椎症児の歩行能力においてHofferの分類におけるCA杖歩行群の麻痺レベルと合致するSharrardの分類はどれか。

1. Ⅰ 群
2. Ⅱ 群
3. Ⅲ 群
4. Ⅳ 群
5. Ⅴ 群

解答

解説

 Hoffer分類は、4分類に分けられ、①独歩(CA)、②屋内歩行(HA)、③訓練レベル(NFA)、④歩行不能(NA)である。
 Sharrard分類は、Ⅰ~Ⅵ分類に分けられ、Ⅰ群が最も残存機能が少ない。杖を使用しているため、Sharrard分類のⅢ分類となる。よって、3. Ⅲ 群が適当である。

1. Ⅰ 群:歩行不能で、移動にはすべて車いすが必要である。
2. Ⅱ 群:歩行不能で実用レベルは車椅子であるが、訓練レベルで装具+杖歩行などが可能である。
3. Ⅲ 群:杖歩行で独歩可能である。
4. Ⅳ 群:短下肢装具のみで独歩可能である。
5. Ⅴ 群:足底装具のみで独歩可能である。

Sharrard(シェラード)の分類

第Ⅰ群(胸髄レベル):車椅子を使用している。下肢を自分で動かすことはできない。
第Ⅱ群(L1〜2レベル):車椅子と杖歩行を併用している。股関節屈曲・内転、膝関節伸展が可能。
第Ⅲ群(L3〜4レベル):長下肢装具(L3)または短下肢装具(L4)による杖歩行可能。股関節外転、足関節背屈が可能。
第Ⅳ群(L5レベル):短下肢装具による自立歩行可能。装具なしでも歩行可能。股関節伸展、足関節底屈が可能。
第Ⅴ群(S1〜2レベル):ほとんど装具が不要で自立歩行可能。足関節の安定性が低い。
第Ⅵ群(S3レベル):ほとんど運動麻痺はなく、健常児とほぼ同様の歩行。

 

 

 

35 乳癌患者のリハビリテーションで正しいのはどれか。

1. 術後に倦怠感がある場合には運動療法は行わない。
2. 患側肩関節可動域訓練は術後翌日から積極的に行う。
3. 遠隔転移がある進行した病期の場合には運動療法は禁忌である。
4. 術後放射線治療中に不安感を認める場合には運動療法は行わない。
5. 術後放射線治療中の有酸素運動は貧血などの有害反応を軽減させる。

解答

解説


1.× 術後に倦怠感がある場合、運動療法は行わないと決められているものはない。「リハビリテーション医療における安全管理推進のためのガイドライン2006」から引用すると、リハビリテーションの実施に際して 「倦怠感がある場合」は、「その他の注意が必要な場合」 としているが、運動療法が禁忌であるとはされていない。
2.× 患側肩関節可動域訓練は、「術後翌日から」ではなく、術後5~7日日から積極的に行う(推奨グレードA)。「がんのリハビリテーションガイドライン」より引用。
3.× 遠隔転移がある進行した病期の場合でも運動療法は禁忌にはならない。上肢可動域訓練だけでなく、浮腫など全身状態に応じて、リスクを考慮しながら運動療法を実施することは可能である。
4.× 術後放射線治療中に不安感を認めることは少なくない。そのため、患者の理解を得たうえで拘縮予防を目的に可及的・愛護的に関節可動域訓練を実施する。
5.〇 正しい。術後放射線治療中の有酸素運動は貧血などの有害反応を軽減させる。「がんのリハビリテーションガイドライン」より引用すると、化学療法・放射線治療中もしくは術後の乳癌患者に有酸素運動や抵抗運動、それらを組み合わせた運動療法を行うことは、下痢や貧血など
治療の有害反応を軽減させるので、行うよう勧めるとしている (推奨グレードB)。

がんのリハビリテーションガイドライン

 化学療法・放射線治療中もしくは術後の乳癌、前立腺癌、血液腫瘍患者に対する運動療法(エルゴメーターやトレッドミルを用いた有酸素運動・ストレッチングや筋力トレーニング、また、それらを組み合わせたもの) を行うことにより以下のような効果があり、強く勤めるとしている。

①運動耐用能や筋力の改善
②QOLの改善
③倦怠感の改善
④精神機能・心理面の改善

 

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