第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

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41. 大腿義足装着者の異常歩行と原因の組み合わせで正しいのはどれか。

1. 過度の腰椎前弯:股関節伸展拘縮
2. 外転歩行:股関節屈曲拘縮
3. 義足膝の不安定:股関節伸展筋力低下
4. 伸び上がり歩行:股関節内転筋力低下
5. 分回し歩行:股関節内転拘縮

解答

解説
1. ×:過度の腰椎前弯は、①ソケットの初期屈曲角度不足、②股関節伸展筋力不足、③ソケットの前壁の支持力不足のため起こる。
2. ×:外転歩行は、①会陰部の圧痛や不快感からの回避、②ソケットの内転角度が大きすぎる、③義足長が長い、④股関節に外転拘縮があるため起こる。
3. 〇:正しい。義足膝の不安定は、股関節伸展筋力低下で起こる。股関節伸展筋低下していると、義足を後方へ蹴りだせない。したがって、義足膝の不安定(立脚期での膝折れ)につながる。そのほかの理由として、①体重荷重線が膝継ぎ手の後方を通り過ぎている、②踵が硬すぎる、③ソケットの初期屈曲角不足ため起こる。
4. ×:伸び上がり歩行は、①義足長が長い、②膝継ぎ手の摩擦が低いなど膝屈曲抵抗が弱いため、逆に屈曲抵抗が強すぎて膝が曲がらない時に起こる、③義足に対する不安で膝を屈曲させまいとするため。などが考えられる。
5. ×:分回し歩行は、①義足長が長く足底が地面を擦らないようにするため、②転倒など義足に対する不安で膝を屈曲させまいとするため。などが考えられる。

 

 

 

 

 

42. 軽い運動から激しい運動へと運動強度を徐々に増加させるときの正常な循環応答で正しいのはどれか。

1. 運動中の心拍数変化は主に副交感神経活動の亢進によって生じる。
2. 運動強度の増加に伴い心筋への血流配分率が大幅に増加する。
3. 運動強度が増加しても動脈血酸素含量はほぼ一定である。
4. 運動開始から軽い運動中の心拍出量増加は主に心拍数の増加によって生じる。
5. 中等度から激しい運動中の一回拍出量は直線的に増加する。

解答

解説
1. ×:運動中の心拍数変化(心拍数上昇)は、主に「副交感神経活動」ではなく交感神経の亢進によって生じる。交感神経である血管収縮神経が作用して単位時間当たりの血液量が減少する。
2. ×:運動強度は増加しても、心筋への血流配分率はほとんどが変化ない。激しい運動時に血液配分率が大幅に上昇するのは骨格筋や皮膚である。骨格筋の血流量が心拍出量全体の80%にもなるのに対し、逆に腎や内臓の血流量は大きく減少する。
3. 〇:正しい。運動強度が増加しても動脈血酸素含量はほぼ一定である。ちなみに、静脈血酸素含量は減少するため、動静脈酸素較差は増加する。
4. ×:運動開始から軽い運動中の心拍出量増加は、主に「心拍数の増加」ではなく一回拍出量の増加によって生じる。心拍出量は、「一回心拍出量×心拍数」で示される。どちらが増加しても、心拍出量が増加する。心拍数の増加の刺激には、動脈血圧の下降、静脈還流量増加、吸息、精神運動興奮、激しい痛覚、交感神経活動高揚、カテコールアミン、筋活動、サイロキシン、体温上昇などがある。一回拍出量は、基礎収縮力、前負荷・後負荷の影響を受ける。運動開始から軽い運動中は、主に一回拍出量の増加に伴った心拍出量の増加が起こっている。
5. ×:1回拍出量は、60~80mlで限界がある。運動開始から軽い運動中は、一回拍出量の増加が起こるが、中等度から激しい運動中は、心拍数の増加が直線的に増加する。低負荷強度の運動時の心拍出量増加は主に一回拍出量や動静脈酸素較差が増加することによる。運動強度が上がるに従い、一回拍出量は最大酸素摂取量の40%程度まで増加するが、それ以降はプラトーに達する。後負荷強度の運動時の心拍出量の増加は心拍数の増加に依存する。

 

 

 

 

 

43. 腹圧性尿失禁に対する筋力増強練習の対象で最も優先すべき筋群はどれか。

1. 腹筋群
2. 殿筋群
3. 骨盤底筋群
4. 脊柱起立筋群
5. 股関節外旋筋群

解答

解説

腹圧性尿失禁とは?

 腹圧性尿失禁とは、おなかに力が入ったときに漏れてしまうタイプの失禁のことをいう。40代以上の女性に多いのが特徴の一つである。特に出産を経験した女性では、分娩時の骨盤底筋へのダメージにより、腹圧性失禁を起こすようになる。骨盤底筋は、骨盤の底にある筋。内臓や子宮、膀胱などを本来のあるべき位置に収まるように、下から支える役割を担う。しかし、骨盤底筋が弱くなると、内臓や子宮、膀胱などの臓器が下がり、骨盤内の臓器で一番下側にくるのが膀胱であるため、常に内臓や子宮に押されている形になる。すると、少しの力がお腹にかかっただけで、膀胱を圧迫してしまい、尿漏れが起こすといったメカニズムである。

 よって、選択肢3. 骨盤底筋群の筋力増強練習を優先すべきである。

 

 

 

 

44. 小児でVolkmann拘縮を起こしやすいのはどれか。

1. 上腕骨顆上骨折
2. 上腕骨外顆骨折
3. 上腕骨近位部骨折
4. 上腕骨骨幹部骨折
5. 上腕骨内側上顆骨折

解答

解説

Volkmann拘縮(フォルクマン拘縮)とは?

 Volkmann拘縮は、選択肢1. 上腕骨顆上骨折などの後に起こる阻血性の拘縮のことである。骨折部の腫脹によって上腕動脈が圧迫され、血行障害が生じ、前腕屈曲群の虚血性壊死と神経圧迫麻痺(正中・尺骨神経麻痺)が起こり、特有の拘縮をきたすことをいう。前腕回内位、手関節屈曲位、母指内転、MP関節伸展、IP関節屈曲位の肢位をとる。Volkmann拘縮の症状として、①疼痛、②脈拍消失、③運動麻痺、④蒼白、⑤知覚麻痺、⑥腫脹などである。骨折による血管損傷が直接原因となる一次性のものと、遠位の組織の腫脹による循環障害が原因の二次性のものとがある。二次性のものには、ギプス固定などもその一因となるため、病院によっては屈曲位ギプスを決して行わず、入院して垂直牽引で保存的に加療するか、内反肘予防も含めて観血的整復固定術で早期に確実に治す方法を選択することも多い。特に、選択肢1. 上腕骨顆上骨折は徒手整復が肘屈曲120°くらいで良好となることも多く、この状態でギプスを巻くと主張した肘周囲の血行障害・阻血が起こる可能性が高い。

よって、Volkmann拘縮をもっとも起こしやすいのは選択肢1. 上腕骨顆上骨折となる。

2. × 上腕骨外顆骨折の合併症は、外反肘を生じやすい。
3. × 上腕骨近位部骨折は、高齢者に多く、多くは保存療法にて治療される。
4. × 上腕骨骨幹部骨折の合併症は、橈骨神経麻痺を生じやすい。
5. × 上腕骨内側上課骨折の合併症は、肘の脱臼を生じやすい。

 

 

 

 

 

45. 偽関節を生じやすいのはどれか。2つ選べ。

1. 手の舟状骨骨折
2. 鎖骨骨折
3. 肋骨骨折
4. 大腿骨頸部骨折
5. 踵骨骨折

解答1,4

解説

偽関節とは?

偽関節とは、骨折部位の癒合がうまくいかず、骨折部が可動性を持つ状態のことである。偽関節が生じやすい部位は、①上腕骨解剖頸、②手の舟状骨、③大腿骨頸部、④脛骨中下1/3、⑤距骨である。ちなみに、開放骨折・粉砕骨折・整復後も離開が生じている骨折では、部位によらず骨癒合は遷延しやすい。

よって、解答は、選択肢1. 手の舟状骨骨折選択肢4. 大腿骨頸部骨折となる。

 

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