第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26. Danielsらの徒手筋力テストにおいて座位で筋力3を測定できるのはどれか。

1. 大胸筋
2. 肩甲下筋
3. 上腕三頭筋
4. 下腿三頭筋
5. ハムストリングス

解答

解説
1. ×:大胸筋(肩関節水平内転)は、背臥位で測定する。
2. ×:肩甲下筋(肩関節内旋)は、腹臥位で測定する。ただ、第10版では、座位でのテストとなり、腹臥位は別法となった。
3. 〇:正しい。上腕三頭筋(肘関節伸展)は、別法で座位(段階3~5)にて測定できる。患者に座位をとってもらい、肩関節90°外転し肘関節90°屈曲した状態で測定する。基本的に、腹臥位(段階3~5)、座位(段階0~2)である。
4. ×:下腿三頭筋(足関節底屈)は、立位で測定する。
5. ×:ハムストリングス(股関節伸展・膝関節屈曲)は、腹臥位で測定する。

 

 

 

 

 

27. NRS<numerical rating scale>で正しいのはどれか。

1. 順序尺度である。
2. 10段階で評価する。
3. 疼痛の性質を評価する。
4. 患者間の比較に有効である。
5. 幼児の疼痛評価に使用される。

解答

解説

NRS<numerical rating scale>とは?

NRS<numerical rating scale>とは、0が痛みなし、10が想像できる最大の痛みとして、 0~10までの11段階に分けて、現在の痛みがどの程度かを指し示す段階的スケールのことである。

1. 〇:正しい。順序尺度である。順序尺度とは、1良い 2普通 3悪いのように順序に意味はあるがその間隔には意味がない尺度のことをいう。
2. ×:「10段階」ではなく11段階で評価する。
3. ×:疼痛の「性質」ではなく、程度(強さ)を評価する。
4. ×:痛みはこれまで被験者の体験や人生によって、様々な感じ方がある。NRS<numerical rating scale>は、0が痛みなし、10が想像できる最大の痛みとしているため、個人差が生じると考えられる。そのため、患者間の比較に有効ではない
5. ×:幼児(生後0日から満1歳未満までの子)の疼痛評価に使用できないフェイスペインスケール(FPS)は、3歳以上であれば使用できる。

 

 

 

 

 

28. 若者と比較した高齢者の歩行で正しいのはどれか。

1. 歩隔は狭くなる。
2. 歩幅は大きくなる。
3. 腕の振りは減少する。
4. 両脚支持期は短くなる。
5. 遊脚相における足尖と床面との距離は大きくなる。

解答

解説
 高齢者は若者よりもバランス障害や柔軟性の低下により、歩隔が拡大し、歩行速度が低下する。また股・膝・足関節の動きが小さくなり、二重支持期が延長する。さらに、ほかにも歩幅の減少、歩行率の低下、遊脚相/立脚相比は立脚期が延長し遊脚期が短縮する。重心の上下動は減少し骨盤回旋や頭部の上下動も減少する

1. ×:歩隔は、「狭くなる」のではなく拡大する。ちなみに、歩隔とは、歩く時の両足間の横の幅のことである。
2. ×:歩幅は、「大きくなる」のではなく狭くなる。ちなみに、歩幅とは、一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの距離を示す。
3. 〇:正しい。骨盤の回旋が乏しくなり、それに伴う腕の振りは減少する。
4. ×:両脚支持期は、「短くなる」のではなく延長する。
5. ×:遊脚相における足尖と床面との距離は、「大きくなる」のではなく小さくなる。そのためつまづき転倒も多くなる。

 

 

 

 

 

29. 下腿義足の静的アライメントにおいて、つま先の浮き上がりが観察され、膝折れを起こしそうな不安定感の訴えがあった。
 ソケットへの対応で適切なのはどれか。

1. 外側へ移動させる。
2. 後方へ移動させる。
3. 内側へ移動させる。
4. 初期屈曲角度を減らす。
5. 初期内転角度を減らす。

解答

解説
 つま先の浮き上がりが観察され、膝折れを起こしそうな不安定感の原因として、初期屈曲角度が過大していることが考えられる。「つま先の浮き上がり」=「足部の背屈位」であり、ソケットの初期屈曲角度が大きいことによりソケットを後方へ押し出しやすくなっている状態と考える。「膝折れを起こしそう」=「膝の伸展が困難」であると考える。よって、解答は選択肢4. 初期屈曲角度を減らす。である。

1.× 外側へ移動させる場合は、①ソケットの内側上縁に緩みがある、②外側上縁に当たり疼痛がある、③足部に対してソケットが内側になっているなどの症状がみられるときである。
2.× 後方へ移動させる場合は、足底が平らに接地していても膝折れが起こりやすいときである。
3.× 内側へ移動させる場合は、①ソケットの外側上縁に緩みがある、②足部に対してソケットが外側になっているなどの症状がみられるときである。
5.× 初期内転角度を減らす場合は、靴の外側が浮き上がる場合などである。

 

 

 

30. 膝関節内反変形のある変形性膝関節症患者にみられる歩行の特徴はどれか。2つ選べ。

1. 立脚相:外側スラスト
2. 立脚相:立脚側への体幹傾斜
3. 立脚相:立脚肢の反張膝
4. 遊脚相:分回し
5. 遊脚相:遊脚側の骨盤下制

解答1,2

解説
 内反変形のある変形性膝関節症の歩行で特徴は、①立脚期に外方動揺(外側スラスト)が起こりやすい。これは変形による骨自体の安定性低下や膝関節の支持組織(筋や靭帯)の機能障害による影響が強く、周囲関節の機能異常や不良姿勢によって増強することもある。

1. 〇:正しい。立脚相に外側スラストが起こる。外側スラスト(ラテラルスラスト:lateral thrust)ともいう。外側スラスト(ラテラルスラスト:lateral thrust)は、歩行の立脚期において、膝関節が外側へスライドするように動揺する現象のことである。膝関節内反変形(O脚)に見られやすい。
2. 〇:正しい。立脚相に立脚側への体幹傾斜が起こる。膝への痛みを避けるため、重心線を膝に近づけるよう体幹傾斜が起こる。また、内反膝があると立脚測下肢へのスムーズな重心移動が困難であるため、体幹の同側傾斜による代償がみられる。
3. 4. ×:立脚相の立脚肢の反張膝・遊脚相の分回しは、主に片麻痺患者にみられる歩容である。
5. ×:遊脚側の骨盤下制のトレンデレンブルグ徴候といい、反対側の中殿筋の弱化で起こる。変形性股関節症患者によくみられる歩容である。

 

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