第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午後問題21~25】

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21. 最もエビデンスレベルが高いのはどれか。

1. 無作為化比較試験
2. コホート研究
3. 症例集積研究
4. 症例対照研究
5. 症例報告

解答

解説

 ● 図:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014に記載されている「エビデンスのレベル分類」
1. 〇:無作為化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial、ランダム割付比較試験)は、エビデンスレベルⅡである。無作為化比較試験とは、予防・治療の効果を科学的に評価するための介入研究のことをいう。対象者を無作為に介入群(治療などの介入実施群)と対照群(従来通りの治療群、もしくは介入しない群)とに割付け、その後の健康現象(罹患率・死亡率)を両群間で比較するもの。無作為割付によって、既知・未知の交絡を制御することが期待されることから、他のデザインと比べて最もエビデンスレベルが高い手法である。
2. ×:コホート研究は、エビデンスレベルⅣaである。コホート研究は、前向きコホート研究・後向きコホート研究・縦断研究があり、短期間に大量のデータを得られるという長所があるが、一方で時間経過による変化が及ぼす影響、因果関係については把握できないという短所がある。
3. ×:症例集積研究(ケースシリーズ研究)は、エビデンスレベルⅤである。症例集積研究は、ある治療法を、何名かの患者さんに用いて治療経過や結果を観察し、そのデータをまとめて報告したもので、記述研究の一つである。端緒として、症例集積研究では対象となった患者さんの数は多くなっても、結果を比べる対照を設けていないことが多いため、症状の改善や副作用の発現などがその治療によるものかどうか明らかにすることはできない。そのため、他の分析的研究よりもエビデンスレベルは低い。
4. ×:症例対照研究(ケース・コントロール研究)は、エビデンスレベルⅣbである。症例対照研究は、症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法である。曝露と疾病発症の関連を明らかにする。欠点としては,選択バイアスや情報バイアスの影響が入りやすいことなど。
5. ×:症例報告は、エビデンスレベルⅤである。症例報告は、個別の症例の治療を経験した後に、教科書的な経過をたどらなかったもの、あるいは教科書的な治療を超える工夫を行ったものについて、今後の参考に資するために詳細を報告する。個別の症例を対象であるため、エビデンスレベルは低い。

 

 

 

 

 

22. 慢性閉塞性肺疾患の呼吸機能検査の所見で低下がみられるのはどれか。

1. PaCO2
2. 残気率
3. 全肺気量
4. 肺拡散能
5. 肺コンプライアンス

解答

解説
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。肺の中の気管支に炎症がおきて、咳や痰が出て、気管支が細くなることによって空気の流れが低下する。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

1. ×:Ⅱ型呼吸不全(肺胞低換気)になるため、PaCO2高くなる(高二酸化炭素血症)。
2. ×:残気率は高くなる。なぜなら、呼気が不十分となる病態であるため。その結果、息を吐けない症状(口すぼめ呼吸)が起こる。
3. ×:全肺気量は増加する。なぜなら、肺の過膨張が起こるため。全肺気量とは、肺活量と残気量の合計が全肺気量である。
4. 〇:正しい。肺拡散能は低下する。なぜなら、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺胞が弾力性を失って古くなった風船のように膨れてしまう肺気腫にもなりやすく、肺胞の破壊におる肺胞ガス交換面積の減少と肺毛細血管の破壊が生じやすいため。肺拡散能とは、肺胞から肺胞上皮および毛細血管内皮を介して赤血球へガスを運搬する能力を測定するものである。
5. ×:肺コンプライアンスは上昇する。肺コンプライアンスとは、簡単に言うと肺や胸郭系などの伸びやすさを表す。肺が線維化して固くなる疾患では肺コンプライアンスは低下し、逆に肺の過膨張をきたす肺気腫等の疾患では上昇する。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の検査所見
  • 増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
  • 減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

 

 

 

 

 

23. 継続的な持久力運動で低下するのはどれか。

1. 中性脂肪
2. 筋内毛細血管数
3. 最大酸素摂取量
4. インスリン感受性
5. 筋内ミトコンドリア量

解答

解説

持続力運動の目的

①心肺機能の改善
②骨量減少の予防
③軽症高血圧の改善
④脂質代謝改善
⑤糖代謝改善など

1. 〇:正しい。中性脂肪は低下する。なぜなら、持続的な運動は、糖質だけでなく中性脂肪もエネルギー源とするため。
2. ×:筋内毛細血管数は増加する。なぜなら、骨格筋内での酸素の利用効率が高まるため。筋線維当たりの毛細血管数が増加する。
3. ×:最大酸素摂取量は増加する。なぜなら、呼吸・循環機能の改善が起こるため。
4. ×:インスリン感受性は増加する。そのため、血糖値を低下させる。
5. ×:筋内ミトコンドリア量は増加する。継続的な持久力運動でミトコンドリアを増え、より多くのエネルギーが生み出され、持続的な運動が楽に疲れにくくなる。

 

 

 

 

 

24. 病的反射と刺激方法の組み合わせで正しいのはどれか。2つ選べ。

1. Chaddock反射:足の内果の下方を後ろから前へこする。
2. Gonda反射:足の第4指をつまみ下方へ引っ張る。
3. Gordon反射:アキレス腱を強くつまむ。
4. Oppenheim反射:脛骨内縁を上方から下方へこすりおろす。
5. Schaeffer反射:足底面の外縁を踵から上へ向かってこすり上げる。

解答2,4

解説
1. ×:Chaddock反射(チャドック反射)は、足の「内果」ではなく外果の下方を後ろから前へこする。バビンスキー反射の変法で、錐体外路障害で陽性となる。
2. 〇:正しい。Gonda反射(ゴンダ反射)は、足の第4指をつまみ下方へ引っ張る。
3. ×:Gordon反射(ゴードン反射)は、「アキレス腱」ではなくふくらはぎを強くつまむ。
4. 〇:正しい。Oppenheim反射(オッペンハイム反射)は、脛骨内縁を上方から下方へこすりおろす。
5. ×:Schaeffer反射(シェーファー反射)は、アキレス腱を強くつまむ。設問である「足底面の外縁を踵から上へ向かってこすり上げる」反射は、バビンスキー反射である。

 

完璧に覚えたい方用にまとめました。参考にしてください↓

【暗記用】反射中枢の組み合わせを完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

25. 身体計測で正しいのはどれか。

1. 体重の測定は午後6時ころが望ましい。
2. 身長は両側前方を開角せずに測定する。
3. 胸囲は安静呼吸の呼気の終わりに測定する。
4. 棘果長は上前腸骨棘から外果までの長さを測定する。
5. 手長は尺骨茎状突起から第3指先端までの長さを測定する。

解答

解説
1. ×:体重の測定は、「午後6時」ではなく午前10時ころが望ましい。
2. ×:身長は両側前方を、「開角せず」ではなく裸足で30~40度前方開角位で直立させ測定する。
3. 〇:正しい。胸囲は安静呼吸の呼気の終わりに測定する。ちなみに、乳頭の直上の高さと肩甲骨下角の直下の高さを結ぶ水平線での周径を測定する。
4. ×:棘果長は、上前腸骨棘から「外果」ではなく内果までの長さを測定する。
5. ×:手長は、「尺骨茎状突起から」ではなく橈骨茎状突起と尺骨茎状突起を結ぶ中点から、第3指先端までの長さを測定する。

 

2 COMMENTS

匿名

53p22の解説が不適切だと感じます。
糖尿病になっている時点でそれに対する運動療法を行なっていれば3次予防になると考えるのですが。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
分かりにくい解説だったと思いまして修正しました。
ご確認いただき、それでもご不明な点などございましたらお気軽にコメントください。
また、コメントの際は、該当する問題のページにてコメントくださると幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。

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