第53回(H30) 作業療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

 

41 ワークサンプル法を用いる評価法はどれか。

1.マイクロタワー法
2.VPI職業興味検査
3.職業レディネステスト
4.LASMI(精神障害者社会生活評価尺度)
5.GATB(厚生労働省編一般職業適性検査)

解答1

解説

 ワークサンプル法とは、職業能力適性の評価法の一つで、実際の仕事の一部(ワークサンプル)を対象者に行ってもらい、その出来栄えを量的・質的に評価する方法である。

1.〇 正しい。マイクロタワー法は、ワークサンプル法を用いて職業能力適性を測定する作業見本法の一つである。13の作業課題を小集団で実施する。職場における作業に類似したサンプルを実際に用い、対象者の職業能力、作業態度や意欲、心身の耐久力など、総合的な職業適性をみる。
2.× VPI職業興味検査とは、160項目の具体的な職業に対する興味・関心の有無の回答から、6つの興味領域(現実的・研究的・芸術的・社会的・企業的・慣習的)に対する興味の程度と5つの傾向尺度(自己統制・男性ー女性傾向・地位志向・稀有反応・黙従反応)に対する個人の特性を測定するものである。ワークサンプル法は用いない。
3.× 職業レディネステストとは、VPI職業興味検査と同じ6つの興味領域について興味の強さと職業遂行の自信度を測ることにより、職業に関する自分のイメージをチェックしたり、進路選択への動機づけを促したりするものである。ワークサンプル法は用いない。
4.× LASMI(Life Assessment Scale for the Mentally ill:精神障害者の社会生活評価尺度)は、病棟・デイケア・社会復帰施設などで観察した行動を評価するものである。比較的項目数が少なく(23項目)、簡便で繰り返し使用できるのが特徴である。統合失調症患者に対して行われる。ワークサンプル法は用いない。
5.× GATB(厚生労働省編一般職業適性検査)で評価される能力は、①知的能力、②言語能力、③数理能力、④書記的知覚、⑤空間的判断、⑥形態知覚、⑦運動協応、⑧指先の器用さ、⑨手腕の器用さの9つである。ワークサンプル法は用いない。

 

 

 

 

 

 

 

42 「作業の手順がわからない」、「説明がよくわからない」と訴える統合失調症の患者の認識機能を精査する目的で検査を実施した。図版の一部を図に示す。
 このような図版が含まれるのはどれか。


1.WAB
2.BADS
3.MMSE
4.BACS-J
5.WAIS-Ⅲ

解答4

解説

1.× WAB(Western Aphasia Battery) は、言語機能の総合的な検査である。ただ失語症のタイプ分類ができるだけでなく、失行・半側空間無視の有無・非言語性知能検査を含む包括的な検査が可能である。
2.× BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome:遂行機能障害症候群の行動評価)は、前頭葉の遂行機能を評価する検査であり、カードや道具を用いた6種類の下位検査と1つの質問紙で構成されている。質問紙には合計20の質問があり、①感情・人格、②動機付け、③行動、④認知の4カテゴリーが5段階で評価される.
3.× MMSE(Mini Mental State Examination) は、認知障害の簡便な評価方法である。
4.〇 正しい。BACS-J(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia Japanese Version:統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版)に含まれるロンドン塔検査である。遂行機能を評価する。①言語性記憶と学習、②ワーキングメモリー(作動記憶)、③運動機能、④注意と情報処理速度、⑤言語流暢性、⑥遂行機能の6つの認知機能領域を評価する7つの検査(言語流暢性のみ2つの検査がある)で構成される。
5.× WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale-Ⅲ)は、16~89歳に行われる標準的な知能検査である。

 

 

 

 

 

 

 

43 社会生活技能訓練(SST)の説明で適切なのはどれか。

1.ロールプレイは自由に行う。
2.正のフィードバックを行う。
3.モデリングは最小限にとどめる。
4.ストレスがかからない技法である。
5.モジュールは経験を積んでから行う。

解答2

解説

 社会生活技能訓練 (Social Skills Training:SST) は、アメリカのリバーマンにより提唱された認知行動療法の一つである。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。

1.× ロールプレイは自由に行うことはしない。具体的な場面を設定し、治療者(リーダー)が手本として示しそれぞれ与えられた役柄を演じる。自由度は低いといえる。
2.〇 正しい。正のフィードバックを行う。正のフィードバック(ポジティブフィードバック、正帰還とも呼ぶ)とは、被評価者の意欲や能力が良い方向へ増幅されるフィードバックのことをいう。社会生活技能訓練(SST)は、よかった点を必ずフィードバックする.
3.× モデリングは最小限ではなく、できるだけ多くの機会を作る。モデリング(模倣する)とは、リーダーの行動を適応的な行動パターンを学習することをいう。きるだけ多くモデリングの機会を作る。
4.× ストレスがかからない技法とはいえない。なぜなら宿題が出されたり、課題を行ったりするためである。ある程度のストレスはかかる技法といえる。
5.× モジュールは経験を積んでから行う。モジュールとは、課題領域別の自立生活技能プログラムのことである。このなかには服薬自己管理モジュール、症状自己管理モジュール、基本会話モジュールなどがある。社会生活技能訓練(SST)は、参加するメンバー個人の生活に即して多岐に行われる。ある程度の練習は必要であるが、特に経験が必要なわけではない。

 

 

 

 

 

 

 

44 離脱症状が消退して間もないアルコール依存症の患者に対する作業療法で最も優先される目標はどれか。

1.家族関係の改善
2.基礎体力の回復
3.対人技能の獲得
4.自助グループの参加
5.ストレス対処行動の獲得

解答2

解説

 アルコール依存症の初期治療では、身体的治療離脱症状の管理と治療が行われる。これらの治療が終わった後は、生活リズムをつくることや、体力作りが作業療法の中心となる。その後は、心理教育、内省などによって治療への動機づけを行いながら、仲間づくりや断酒会などの自助グループへの参加生活設計の立て直しを行っていく。

1.× 家族関係の改善は作業療法の導入期には時期尚早である。なぜなら、本人の入院前には家族も精神的に疲弊していることが多いためである。
2.〇 正しい。最も優先されるのは、基礎体力の回復である。入院前の不規則な生活や低栄養により体力が低下しているためである。
3~5.× 対人技能の獲得・自助グループの参加・ストレス対処行動の獲得は、作業療法の導入期には時期尚早である。回復期が終了して社会復帰を目指す時期に行う。

 

 

 

 

 

 

 

45 うつ病による仮性認知症患者の作業療法場面での特徴はどれか。2つ選べ。

1.多幸的である。
2.社交的に振舞う。
3.物忘れが見られる。
4.精神運動抑制が見られる。
5.能力低下に無関心である。

解答3/4

解説

 仮性認知症は、高齢者のうつ病で反応が鈍いなどの症状により、認知症と間違えられるような状態をいうことが多い。うつ病に付随する身体症状(睡眠障害、倦怠感、食欲不振など)の訴えが多くて、背景にある抑うつ気分などの精神症状が表面に現れないものをいう。老年期のうつ病にとりわけ多いわけではなく、もともと「身体症状だけにとらわれず、背景にある精神症状も見逃すな」という警告から出た用語である。

1.× 多幸的といった抑うつ気分などの精神症状が表面に現れない。身体症状(睡眠障害、倦怠感、食欲不振など)の訴えが多いのが特徴である。
2.× 社交的な振舞いをしない。ぼんやりして反応が鈍く、社交的とはいえない。
3.〇 正しい。物忘れが見られる。また集中力や記憶力、判断力の低下がみられる。
4.〇 正しい。精神運動抑制が見られる。精神運動抑制とは、「精神機能の抑制」と「運動性の抑制」を合わせた 総称である。 精神機能の抑制では、忘れっぽい、覚えることが苦手になる、頭が早く 回転しない、自分では決定できない、集中力がなくなるといった軽い 認知症に似た症状が出現する。
5.× 仮性認知症は、能力低下を実感して悩むことが多い

 

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