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31 遂行機能障害に対する介入方法として最も適しているのはどれか。
1.ペグ法
2.自己教示法
3.直接刺激法
4.間隔伸張法
5.物語作成法
解答2
解説
遂行機能障害とは、物事を計画し、順序立てて実行するという一連の作業が困難になる状態である。遂行機能障害に対する介入方法としては、解決方法や計画の立て方を一緒に考える問題解決・自己教示訓練が代表的である。よって、選択肢2.自己教示法が正しい。自己教示法は、認知的技法の1つで、D.H.マケインバウムによって開発された。自らの言葉で自分自身に教示を与えることにより、それが刺激となって自分の行動を変容させる方法である。
1.× ペグ法とは掛け釘のことで、記憶すべき事柄を並んだペグに引っ掛けて覚えようとする記憶術である。例:自分の身体の部分に上から番号を振る(①頭、②目、③鼻)。覚えるものをそこに関連付けて記憶する。①電車:頭の中に電車がぐるぐる回っているイメージ、②懐中電灯:目からライトで照らしているイメージ、③ポット:鼻からお湯を出しているイメージ。
3.× 直接刺激法は、注意機能に対する介入方法で、注意機能を要する課題を直接行わせるものである。
4.× 間隔伸張(長)法は、記憶したい事柄に対する質問をするまでの時間を次第に長くして、記憶を保持する期間を伸ばしていくことを目的とする手法である。記憶の改善テクニックであり、認知症などに適応となる。
5.× 物語作成法は、「リンク法」と呼ばれることもある記憶術の一つである。覚えたい内容をストーリー化することによって長期記憶にアプローチする方法である。
32 中等度の片麻痺患者に対する前開きカッターシャツの着衣動作指導の導入として正しいのはどれか。
1.立位保持が可能となってから開始する。
2.ぴったりしたサイズのものを選択する。
3.非麻痺側の袖から通す。
4.麻痺側の袖は肩まで引き上げる。
5.ボタンは真ん中から留める。
解答4
解説
カッターシャツとは、ワイシャツと同じものである。ワイシャツは東日本で多く呼ばれ、西日本ではカッターシャツと呼ぶことが多い。片麻痺患者が上着を着るときには、麻痺側の袖を先に通す。脱衣は健側から、着衣は患側から行う。前開きシャツ(ワイシャツやカッターシャツ)は、①麻痺側の袖を通す、②麻痺側の肩に服をかける、③非麻痺側の袖を通すといった手順で着る。
1.× 立位保持が可能となってから開始する必要はない。本症例は、中等度片麻痺患者であるため、立位で行うと筋緊張亢進したり、転倒の危険性も高まるため座位から練習するのが良い。
2.× 「ぴったりしたサイズのもの」ではなく、導入時はゆったりとしたサイズのものを用い、ある程度ゆとりがある状態で練習する。
3.× 「非麻痺側の袖から」ではなく麻痺側から袖を通す。
4.〇 正しい。麻痺側の袖は肩まで引き上げる。
5.× ボタンは、「真ん中から」ではなく下から留める。下からボタンをはめるとボタンずれを防げるためである。
33 片側前腕能動義手の患者(能動フック使用)が両手動作を行う。
日常活動における義手での操作と健手での操作の組み合わせで適切なのはどれか。
解答3
解説
義手では細かい操作や重量のかかる作業を行うのは困難であり、必要に心して利き手交換にて動作を行う。
1.× 毛糸針に毛糸を通すといった毛糸針の細いものは、義手側でウレタンや発砲スチロール・針山のようなものに刺して固定し、健手で毛糸を持ち毛糸針の穴に通す。
2.× 茶碗のご飯をスプーンで食べる動作は、義手で茶碗を支え、健手に持ったスプーンですくう。
3.〇 正しい。歯ブラシに歯磨き粉をつける動作は、義手で持った歯ブラシに、健手で歯磨き粉を絞ってつける。
4.× ハンカチにアイロンをかける動作は、義手でハンカチを押さえ、健手でアイロンをかける。
5.× ハンマーで釘を打つ動作は、義手側でゴムのようなものに挟むか刺すかでいったん釘を補助的に固定し、健手に持ったハンマーで打つ。
34 背側型コックアップ・スプリントの製作において、トレースし、型紙を作る方法として正しいのはどれか。
1.紙の上に手背側を接地してトレースする。
2.尺骨茎状突起の位置をマーキングする。
3.全指の指尖をトレースする。
4.前腕遠位1/4の位置をマーキングする。
5.前腕部は前腕幅と同じ幅で型紙をとる。
解答2
解説
背側型コックアップ・スプリントは、手掌・前腕掌面がスプリント材で覆われておらず、装具自体が邪魔にならないものである。
1.× 紙の上に、「手背側」ではなく手掌面を接地してトレースする。フィッティングの際、前腕回内位(機能的肢位)で行うためである。
2.〇 正しい。尺骨茎状突起の位置をマーキングする。なぜなら、骨の突起物をそのままにしておくと、皮膚や皮下組織を傷つけてしまうためである。
3.× 全指の指尖をトレースする必要はない。なぜなら、背側型コックアップ・スプリントは、手指部分が開放されているためである。
4.× 「前腕遠位1/4」ではなく、前腕近位1/3の位置をマーキングする。なぜなら、肘関節屈曲運動を制限しないように、スプリント長を調整するためである。
5.× 前腕部は、「前腕幅と同じ幅」ではなく前腕幅よりも大きめに型紙をとる。
35 重症度分類Ⅲ度(中等度)の脊髄小脳変性症の患者に対する生活指導で適切なのはどれか。
1.筋力増強訓練は控える。
2.家具の配置変更を検討する。
3.歩隔をできるだけ狭くする。
4.柄の細いスプーンを使用する。
5.杖はできるだけ軽量なものを用いる。
解答2
解説
脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)
多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)
本症例は、脊髄小脳変性症の患者であり、重症度分類Ⅲ度(中等度)とは、”中等度の障害:何らかの介助を要するが、歩行は介助なしに行える”レベルである(解説下に詳しく重症度分類をのせたので参考にしてほしい)。脊髄小脳変性症は、小脳かその連絡線維の変性により、主な症状として運動失調を呈する疾患の総称である。
1.× 筋力増強訓練は控える必要はない。筋の廃用性萎縮を防ぐため、筋力増強訓練を行う。
2.〇 正しい。家具の配置変更を検討する。ふらついてもぶつからず、転倒を防げるような家具配置に変更する。
3.× 歩隔をできるだけ狭くすると反対に不安定となる。脊髄小脳変性症でみられる運動失調では、左右への動揺・歩隔の拡大(ワイドベース)がみられる。 歩隔を狭くするとバランスが保てず立位保持が困難となるため狭くする必要はない。
4.× 柄の「細いスプーン」ではなく太いスプーンを使用する。つかみやすくするためである。
5.× 杖は軽量なものより重たい方が良い。枚が軽すぎると振戦の影響でぶれが生じ反対に不安定となる。ある程度の重さがある方が安定し運動失調がある場合には、下肢に重錘を用いるとよい。
下記の①②③のうち、いずれかを満たすこと
① modified Rankin Scale:下記の中で3以上
0.まったく症候がない。
1.症候はあっても明らかな障害はない:日常の勤めや活動は行える。
2.軽度の障害:発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える。
3.中等度の障害:何らかの介助を要するが、歩行は介助なしに行える。
4.中等度から重度の障害:歩行や身体的要求には介助が必要である。
5.重度の障害:寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする。
② 食事・栄養:下記の中で3以上
0.症候なし。
1.時にむせる、食事動作がぎこちないなどの症候があるが、社会生活・日常生活に支障ない。
2.食物形態の工夫や、食事時の道具の工夫を必要とする。
3.食事・栄養摂取に何らかの介助を要する。
4.補助的な非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)を必要とする。
5.全面的に非経口的栄養摂取に依存している。
③ 呼吸:下記の中で3以上
0.症候なし。
1.肺活量の低下などの所見はあるが、社会生活・日常生活に支障ない。
2.呼吸障害のために軽度の息切れなどの症状がある。
3.呼吸症状が睡眠の妨げになる、あるいは着替えなどの日常生活で息切れが生じる。
4.喀痰の吸引あるいは間欠的な換気補助装置使用が必要。
5.気管切開あるいは継続的な換気補助装置使用が必要。
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【OT/共通】脊髄小脳変性症についての問題「まとめ・解説」