第53回(H30) 作業療法士国家試験 解説【午後問題11~15】

 

11 43歳の女性。高校の美術教師。2年前に乏突起神経膠腫を発症した。現在緩和ケア病棟で疼痛緩和の治療を受けている。作業療法士時に「死んだらどうなるのでしょうか」と問いかけられた。
 対応として最も適切なのはどれか。

1.「よく分かりません」
2.「あなたはどう思っていますか」
3.「気持ちを切り替えて、作業をしましょう」
4.「そんなことは心配しなくても大丈夫ですよ」
5.「何か楽しくなるようなことを考えましょう」

解答2

解説

 乏突起神経膠腫とは、脳表の近くに発生し、CTでは石灰化を伴うなどの特徴がある。20〜30年かけてゆっくり大きくなるものもあり、生存期間中央値11.6年で、5年生存率約70%とデータがある。本症例は、緩和ケアを受けており、患者の気持ちに添い共感的な対応が必要である。

1.× 「よく分かりません」と言われたら、患者は突き放した感じで受け取る可能性が高く不適当である。
2.〇 正しい。「あなたはどう思っていますか」は、なぜその発言に至ったのか、患者の思いを聞くことができる。共感傾聴を一緒に行える。
3.5.× 「気持ちを切り替えて、作業をしましょう」「何か楽しくなるようなことを考えましょう」と言われてもなかなかできるものではなく、話を反らしているだけである。患者の気持ちに添っていない。
4.× 「そんなことは心配しなくても大丈夫ですよ」と患者の訴えを軽視しており、作業療法士が病状の予後を保証することはできない。

代表的なコミュニケーション・医療面接のテクニック

①共感、②促し、③繰り返し、④解釈、⑤反映、⑥直面化、⑦正当化

 

 

 

 

 

 

 

 

12 18歳の男性。脳梗塞後の右肩麻痺。発症から5か月経過。Brunnstrom法ステージは上肢、下肢ともにⅢ。T字杖で室内歩行は自立しているが、疲労しやすく、すぐに椅子に腰掛ける。遠近感が分かりづらく、平地でつまずくことがある。自宅退院に向けた浴室の環境整備案を図に示す。
 設置する手すりとして必要でないのはどれか。


1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答5

解説

 縦手すりと横手すり、L字手すりの機能の差を大きく理解しておく。縦手すりは”出入り口の動作安定”などのその場での動作に使用する。横手すりは”移動や座位安定”に機能する。そのため、L字手すりは”座位からの立ち上がり”に機能する。

本症例は、脳梗塞後の右片麻痺の患者、上肢・下肢のBrunnstrom法ステージは共にⅢである。歩行はT字杖自立だが、平地でつまずくことがある。座位についての記載はないが、右片麻痺に対して右手に、⑤洗い場横手すりは必要ない。考えられても、左手につけるのが良い。よって、選択肢⑤洗い場横手すりが正答となる。

1.3〇 ①入り口縦手すり、③縦手すりは、浴室の出入りに必要である。
2.〇 ②バスボード用の手すりは、浴槽を跨ぐときに必要である.
4.〇 ④浴槽から立ち上がるときの横手すり(できればL字手すりが望ましい)で必要である。

 

 

 

 

 

 

 

 

13 38歳の女性。性格が几帳面、完全主義。仕事仲間との関係性に悩んでいた。そうした中、浮腫を自覚したため内科を受診したところネフローゼ症候群と診断され、副腎皮質ステロイド薬の投与が開始された。投与開始1ヵ月後から蛋白尿が消失したが、「何事にも興味がわかない」などの言葉が聞かれるようになり、趣味のコーラスもやめてしまった。
 今後検討すべき治療方針として、最も優先順位が高いのはどれか。

1.家族療法
2.音楽療法
3.精神分析療法
4.抗うつ薬による薬物療法
5.副腎皮質ステロイド薬の調整

解答5

解説

 本症例は、ネフローゼ症候群と診断され、副腎皮質ステロイド薬の投与が開始されている。副腎皮質ステロイド薬の副作用は、①易感染性、②骨粗鬆症、③糖尿病、④消化性潰瘍、⑤血栓症、⑥精神症状(うつ病)、⑦満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満などである。「何事にも興味が湧かない」といった訴えや、趣味のコーラスをやめてしまったことから、患者はうつ病と疑われる。

1.× 家族療法とは、家族を対象とした心理療法の総称である。家族との関係が原因となっていると問題文から読み取れず考えにくい。
2.3.× 音楽療法・精神分析療法は、行うとしても回復期が適当である。現時点では、急性期と考えられ優先度は低いと考えれる。
4.× 抗うつ薬による薬物療法を行う前に、原因と考えられる薬物の調整の方が優先度は高い。
5.〇 正しい。副腎皮質ステロイド薬の調整(減量等)を行うのが優先度が高い。

 

 

 

 

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14 47歳の男性。幼少期からクラスメートとの喧嘩が絶えず、しばしば担任から注意を受けていた。中学校卒業後、暴行と障害とで少年院に2回の入院歴、刑務所に4回の服役歴がある。最後の出所後、クリーニング工場に勤めたが、同僚への暴言によるトラブルをきっかけに飲酒量が増加し、飲食店で他の客と口論となって刃物を持ち出して逮捕された。その後、連続飲酒状態を繰り返すようになり、アルコール依存症と肝障害との診断を受けて入院した。作業療法では他の患者の発言に反応して威圧的な態度をとることが多く、指摘しても問題を感じている様子がない。
 合併するパーソナリティ障害として考えられるのはどれか。

1.強迫性パーソナリティ障害
2.境界性パーソナリティ障害
3.回避性パーソナリティ障害
4.自己愛性パーソナリティ障害
5.反社会性パーソナリティ障害

解答5

解説

1.× 強迫性パーソナリティ障害は、秩序・完全主義・精神および対人関係の統一性にとらわれ、柔軟性・開放性・効率性が犠牲にされている傾向にある。
2.× 境界性パーソナリティ障害は、感情・対人関係・自己像が非常に不安定で衝動的であり、見捨てられることに不安を感じ、それを異常に避けようとする傾向にある。
3.× 回避性パーソナリティ障害は、拒絶されることに極端に過敏で、そのために消極的になる傾向にある。
4.× 自己愛性パーソナリティ障害は、自分が素晴らしいと誇大に思い、自己中心的に振る舞う傾向にある。
5.〇 正しい。反社会性パーソナリティ障害は、他人への配慮がなく、衝動的な反社会行動の傾向にある。本症例の特徴である①少年院への入院、②刑務所での服役歴を繰り返す、③口論をきっかけに刃物を持ち出すなど、衝動的で反社会的な行動が当てはまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

15 39歳の男性。アルコール依存症。前回退院後に連続飲酒状態となり、妻からの依頼で2回目の入院となった。入院の際、妻からお酒をやめないと離婚すると告げられた。離脱症状が治るのを待って作業療法が開始された。用意されたプログラムには自ら欠かさず参加し、特に運動プログラムでは休むことなく体を動かしていた。妻には「飲酒による問題はもう起こさないので大丈夫」と話している。
 この患者に対する作業療法士の対応として最も適切なのはどれか。

1.運動プログラムを増やす。
2.さらに努力を続けるように伝える。
3.支持的に接し、不安が示されたら受け止める。
4.離婚されないためということを動機づけに用いる。
5.過去の飲酒が引き起こした問題には触れないでおく。

解答3

解説

 離脱症状が落ち着いた患者には、退院を視野に入れた作業療法を徐々に取り入れていく必要がある。

1.× 運動プログラムを増やすのは不要である。運動プログラムでは休むことなく身体を動かしている。このことから、これ以上の運
動負荷は疲労の蓄積になりうるためである。
2.× さらに努力を続けるように伝えるのは不要である。現在、休むことなく運動しており、そのことを評価し、その一方で、適宜休養ができるようにプログラムを進めていくことが大切である。
3.〇 正しい。支持的に接し、不安が示されたら受け止める。不安を受け止め、共感を示すことは、疾患を持つすべての患者に対して必要である。
4.× 離婚されないためということを動機づけに用いるのは不要である。今のところ、妻には「飲酒による問題はもう起こさないので大丈夫」と話しており、すでに「離婚されないため」ということが、本人がプログラムに参加する動機付けになっていると考えれる。今後は、飲酒をしない生活に向かうため意識付けを行っていく必要がある。
5.× 過去の飲酒が引き起こした問題には触れないでおくのは不要である。飲酒による失敗を否認せずに、本人が受け止め、治療が継続できるように支援することが重要である。

 

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